「鉄分の効果」は男女で違う？サプリの効果についても管理栄養士が徹底解説！

「鉄分」とは？

人体に必要なミネラルの一種で、成人の体内には約3gから4gが存在します。そのうち70％は、赤血球のヘモグロビンや筋肉中のミオグロビンに存在し酸素を運搬するはたらきをしています。残りの30％は、肝臓や骨髄、筋肉などに貯蔵鉄としてストックされています。 食品中の鉄には、肉や魚などのたんぱく質に結合したヘム鉄と、野菜などに含まれる非ヘム鉄があります。ヘム鉄は非ヘム鉄よりも吸収が良く、特に動物性食品からの摂取で効率的に体内に取り込まれます。非ヘム鉄の吸収は、ビタミンCや動物性たんぱく質と一緒に摂取することで高まります。

鉄分の一日の摂取量

必要な鉄分の量は、年齢や性別によって異なります。 成人男性(18~64歳)：約7.0～7.5 mg/日 成人女性(18~64歳)： 約10.5～12.0 mg/日 妊婦：約20 mg/日 女性は特に月経や妊娠中に鉄の必要量が増えるため、男性に比べて推奨量が高めに設定されています。

【男性】鉄分の効果

酸素の運搬能力向上

鉄は血液中のヘモグロビンの成分であり、酸素を全身に運ぶ役割を果たします。十分な鉄分があることで、筋肉や臓器に酸素が効率的に供給され、疲労感の軽減や持久力の向上が期待されます。

エネルギー代謝の促進

鉄はエネルギー代謝に関わる酵素の働きにも関係しています。細胞のエネルギー生産を支えるため、十分に摂取することで、日常生活や仕事でのエネルギー効率を高める効果があります。

免疫機能のサポート

鉄は免疫機能の正常化にも重要な役割を持っています。適切な鉄分摂取は、免疫細胞が効果的に働くのを助け、感染症や病気に対する抵抗力を高めます。

【女性】鉄分の効果

貧血予防

鉄分が不足すると、血液中のヘモグロビンが減少し、体に酸素が十分に行き渡らなくなるため、疲労感やめまい、息切れなどの症状が出やすくなります。特に女性は、月経により定期的に血液を失うため、鉄不足による鉄欠乏性貧血が起こりやすくなります。鉄を十分に摂取することで、これらの症状を防ぐことができます。

妊娠中の健康維持

妊娠中は母体と胎児の両方に酸素を供給するため、鉄の必要量が大幅に増加します。妊婦が鉄不足に陥ると、胎児の発育に悪影響を与えるリスクがあるため、妊娠中は特に多くの鉄分摂取が推奨されます。鉄分は胎児の正常な発達や健康をサポートし、早産や低体重出産のリスクを減少させます​

疲労感の軽減

鉄が不足すると、全身の細胞に酸素が十分に行き渡らなくなり、エネルギー不足を感じることがあります。これは特に女性に多く見られる症状で、疲れやすくなる、集中力が低下するなどの日常的な影響があります。鉄分を補うことで、体内の酸素供給が正常化され、疲労感の軽減に繋がります。

鉄分サプリの効果はどれくらいで出る？

鉄分サプリの効果が出るまでの期間は、個人の健康状態や鉄欠乏の程度によって異なりますが、一般的には以下のような時間がかかるとされています。 鉄欠乏性貧血の改善を目指してサプリメントを摂取した場合、効果を感じ始めるまでには数か月程度が必要とされています。これは、体内で鉄がヘモグロビンとして蓄積され、血液中の酸素運搬能力が回復するまでの時間です。症状の改善は、疲労感やめまい、息切れの軽減などから始まることが多いです。 鉄サプリを摂取する際は、医師の指導のもとで行うことが推奨されます。過剰摂取は鉄過剰症を引き起こし、肝臓や心臓に負担をかけることがあるため、自己判断での長期使用は避けることをお勧めします。

鉄分が不足すると現れる症状

疲労感や倦怠感

鉄が不足すると、血液中のヘモグロビンが減少し、酸素が全身に十分に行き渡らなくなるため、慢性的な疲労や無気力を感じることが多いです。

めまいと頭痛

鉄不足は脳への酸素供給が不足するため、めまいや頭痛が頻繁に起こることがあります。特に立ち上がったときにめまいを感じやすくなります。

集中力や記憶力の低下

鉄は脳の酸素供給にも関わっているため、集中力が低下したり、物忘れが増えたりすることがあります。特に仕事や学習に支障が出ることが考えられます。

動悸・息切れ

酸素運搬能力が低下すると、日常的な活動でも息切れが起こりやすくなります。 鉄不足は心臓にも影響を与え、心臓が酸素不足を補うためにより速く血液を送り出そうとするため、動悸や息切れを感じることがあります。

爪や髪の異常

爪や髪にも異常が現れやすくなります。 これらの症状が進行すると「鉄欠乏性貧血」と診断されることがあるので、鉄分を多く含む食品を摂取するか、早めに医療機関で検査を受けることが大切です。

鉄分を過剰摂取すると現れる症状

ヘモクロマトーシス(鉄過剰症)

鉄が体内に過剰に蓄積されることで起こる疾患で、肝臓や心臓、膵臓などの多臓器にダメージを与えます。鉄のサプリメントを長期間にわたって過剰に摂取することで深刻な障害を起こすリスクが高まるため注意が必要です。

色素沈着

過剰な鉄分が皮膚に沈着することで、皮膚に灰色や青白い色素沈着が見られることがあります。特に顔や手のひらに現れやすいです。

糖尿病のリスク増加

鉄の過剰摂取はインスリン抵抗性を引き起こすことがあり、これが糖尿病のリスクを高める要因となります。

消化器系の不調

鉄を過剰摂取すると、胃腸への刺激が強くなり、吐き気、嘔吐、下痢、便秘などの消化器症状が現れることがあります。

ホルモンバランスの乱れ

鉄分の過剰摂取は、体内の酸化ストレスを増加させ細胞にダメージを与えるため、内分泌系に負担がかかると考えられています。

鉄分を多く含む食品

レバー

レバーは食品の中でも特に鉄分が多く、100gあたり約6〜30mgの鉄分を含んでいます。含有量は種類や調理法によって異なりますが、豚レバーや鶏レバーが特に豊富です。

赤身の肉(牛肉、豚肉など)

部位によって異なりますが、100グラムあたり約2.6～3.5mgの鉄分が含まれています。

赤身の魚(マグロ、カツオなど)

魚類には鉄分だけでなく心血管の健康をサポートするオメガ-3脂肪酸も含まれており、全体的な健康を促進します。

ほうれん草・小松菜

100ｇあたり約2.0~3.0㎎の鉄分が含まれます。胡麻和え・白和え・磯和えなど、胡麻や大豆製品、海苔などと組み合わせ使用することで鉄分がさらに強化できます。

切干大根

切り干し大根には、100gあたり3.1mgの鉄分が含まれます。切干大根は煮物が一般的ですが、お味噌汁に入れたり、水で戻してサラダに使用したりと、幅広く活用できます。

鉄分の効果的な摂取方法

鉄分を多く含む食品の摂取

動物性食品のヘム鉄にはレバーや赤身肉・魚介類、植物性食品の非ヘム鉄には緑葉野菜、豆類、海藻類、ナッツなどがあります。

鉄分と一緒に摂取すると効果を高める栄養素・食品

鉄分の吸収を高めるためには、ビタミンC（柑橘類、ブロッコリー）、動物性タンパク質（牛肉、魚）を組み合わせて摂取することが効果的です。カルシウムやカフェインを大量に含む食品と同時摂取する場合は、時間をずらすことで吸収効率が上がる可能性があります。

鉄分の効果を高める摂取タイミング

規則正しい食事で鉄分を意識的に摂ると、体内の鉄分レベルが安定します。空腹時、特に朝食や昼食に取り入れることで日中の活力を高める助けになります。