マグミットの副作用とは?知っておくべきリスクと対策
マグミット錠(酸化マグネシウム製剤)は制酸作用と緩下作用があり、制酸剤や便秘薬として処方されます。
効果がマイルド・副作用が少ないなどの理由で下剤の第一選択薬として多くの医療機関で使われており、服用経験のある方も多いのではないでしょうか。
使いやすい薬ですが、使い方を誤ると高齢者や腎機能障害のある場合は重い副作用があらわれる場合があり、適正使用するよう注意喚起がなされています。
酸化マグネシウムを服用中の患者さんのなかには、副作用の説明書を受け取って不安に思われた方も多いでしょう。
そこでこの記事ではマグミット錠を安心・安全に使用していただくために、基本情報も含め副作用について詳しく解説します。適正使用についても紹介していますので参考にしてください。
監修薬剤師:
佐孝 尚(薬剤師)
北海道医療大学薬学部 卒業 現在はセンター薬局グループに薬剤師として勤務しながら株式会社イヤクルを創業。不動在庫医薬品取引プラットフォームアプリ【イヤクル】を運営。
保有免許・資格
薬剤師免許
マグミットの副作用
マグミットの重大な副作用に高マグネシウム血症が挙げられます。
マグミットの有効成分である酸化マグネシウムは1950年から日本薬局方に収載されており、副作用が「下痢」「血清マグネシウム値の上昇」程度と少なく、長い間安全性が確立された医薬品とされてきました。
しかし2008年に重篤な高マグネシウム血症(死亡例を含む)が報告され、高齢者や腎機能障害のある方が長い間服用していると、マグネシウムの血中濃度が高くなり高マグネシウム血症を発症する場合があることが明らかになりました。健康な成人ではマグネシウムの体内への吸収率は4%程度と低く、通常の服用量では過剰摂取になることはありません。
しかし高齢・腎機能障害などが原因で排泄能力が低下した場合や重症の便秘などで体内に長時間薬がとどまった場合など、マグネシウムの血中濃度が増え過ぎて高マグネシウム血症を発症する可能性があります。高マグネシウム血症になると神経・筋肉・消化器・循環器などにさまざまな症状があらわれます。
主な副作用は不整脈・呼吸抑制・口渇悪心・嘔吐・血圧低下などです。それぞれ以下に説明します。
不整脈
高マグネシウム血症の特徴は、心機能・神経筋機能・呼吸機能の障害です。
心臓の筋肉内で伝導障害が生じた場合に徐脈性不整脈が起きることがあり、心電図上でPR間隔やQT間隔の延長が確認できます。徐脈の自覚症状としては「めまい」「息切れ」「脈が遅くなる」「気を失う」などがあります。
呼吸抑制
高濃度のマグネシウムイオンは筋線維細胞膜の興奮性を低下させる作用があり、骨格筋の弛緩性麻痺が生じます。
骨格筋である呼吸筋も興奮性の低下により呼吸抑制となります。自覚症状は「息切れ」「息苦しい」などです。
口渇
血中のマグネシウムが増えて中枢神経が抑制されると唾液の分泌が減少し口渇を感じることがあります。
高齢者に酸化マグネシウム錠が追加処方された場合、その後の経過観察中に喉が渇いたりしないか注意が必要です。
実際に、喉の渇きを訴えた患者さんの血清マグネシウムを測定したところ高値を示したため服用中止となり、その後血清マグネシウム値が基準値まで低下し口渇も改善したという事例もあります。
悪心・嘔吐
高マグネシウム血症の初期症状として悪心・嘔吐がありますが、ストレスなどさまざまな要因でも起きるためこの症状だけで高マグネシウム血症かどうか判断することはできません。
初期症状としてはほかに、立ちくらみ・めまい・力が入りにくくなる・体がだるい・眠気でぼんやりするなどがあり、このような症状が合併するようであればすぐに医療機関を受診しましょう。
血圧低下
マグネシウムはカルシウムに対し拮抗作用があり、相互に作用して血管の緊張性を調整しています。マグネシウムが過剰になると、カルシウムの働きが弱まり血管が拡張しやすく血圧低下となります。
自覚症状は「めまい」「倦怠感」「頭痛」「気を失う」などです。初期症状として起立性低血圧があらわれますが、症状が進むにつれ低血圧となります。
以上、マグミットの重大な副作用とされる高マグネシウム血症の症状について説明しました。
副作用は誰にでも同じように起きるのではなく、吸収・代謝・排泄能力などさまざまな要因によって起きると考えられます。
マグミットに関しても、副作用が誰にでも起きるわけではなく高齢や腎機能障害がある方など排泄能力が低下している場合には注意が必要である、という具合に正しく理解しましょう。
マグミット錠330mgの基本情報
マグミット錠は2002年に酸化マグネシウムの錠剤として製造販売が開始されましたが、古くからある薬であるため先発医薬品のない後発医薬品に該当します。
以下に基本情報を詳しく説明します。
製薬会社
マグミット錠は2002年協和化学工業から製造販売開始となり、2022年組織再編によりマグミット製薬株式会社が製造販売事業を引き継いでいます。
製品には丸石製薬株式会社が発売しているものと、シオエ製薬株式会社が発売し日本新薬株式会社が販売しているものがあります。
剤型
白色錠剤のエッジ部分が丸みを帯びた円形の素錠で、錠剤両面に「マグミット 330」の青色の印字がされています。
2021年に剤形変更され、2023年には識別コード刻印から製品名・含量の印字へと変更されました。
成分
有効成分は日本薬局方酸化マグネシウム330mgです。
添加物として結晶セルロース(増量剤)・クロスカルメロースナトリウム(崩壊助剤)・クロスカルメロースナトリウム(滑沢剤)が加えられています。
用法・用量
酸化マグネシウムには3つの用法があり、それぞれ用量が違います。以下に添付文書の内容を紹介します。
- 制酸剤として使用する場合:酸化マグネシウムとして、通常成人1日0.5~1.0gを数回に分割経口投与する。
- 緩下剤として使用する場合:酸化マグネシウムとして、通常成人1日2gを食前又は食後の3回に分割経口投与するか、または就寝前に1回投与する。
- 尿路蓚酸カルシウム結石の発生予防に使用する場合:酸化マグネシウムとして、通常成人1日0.2~0.6gを多量の水とともに経口投与する。
なお、いずれの場合も年齢・症状により適宜増減するとされています。
使用上の注意
重要な基本的注意は、高マグネシウム血症があらわれることがあるので適正使用として以下の3つの点に留意することとされています。
- 使用は必要最小限にとどめる
- 長期投与または高齢者へ投与する場合は定期的に血清マグネシウム濃度を測定する
- 嘔吐・徐脈・筋力低下などの症状があらわれた場合は服用を中止し直ちに受診する
また他の薬剤の効果が減弱するとして併用注意の薬剤があります。主な薬剤は以下のとおりです。
- テトラサイクリン系抗生物質
- ニューキノロン系抗菌剤
- ビスホスホネート製剤
これらの薬剤と併用する場合は服用間隔を2時間以上あけることとされています。
併用注意としては、ほかに大量の牛乳やカルシウム製剤と本剤を一緒に服用すると高カルシウム血症があらわれるおそれがあることなどです。
相互作用や妊婦・授乳婦・高齢者・腎機能障害患者など特定の背景がある患者さんに関する注意など詳細は添付文書に記載されています。
マグミット錠330mgの添付文書
添付文書は、医療医薬品の適正使用を図るために必要な情報を医療関係者に提供する目的で、医薬品の製造販売業者が医薬品医療機器等法の規定に基づき作成した文書です。
記載すべき事項が定められており、主な事項は以下のとおりです。
- 効能または効果
- 用法および用量
- 使用上の注意
- 相互作用
- 副作用
- 薬物動態
- 薬効薬理
マグミット錠330mgの添付文書にも定められた記載事項がすべて載っています。
高マグネシウム血症を注意喚起するために、2008年使用上の注意の改定指示が厚労省より行われ重要な基本的注意と重大な副作用の項目があらたに設けられました。
副作用などの安全上の問題や剤形変更があった場合は改訂されます。新しい添付文書は医薬品医療機器総合機構(PMDA)や製造販売に関わる製薬会社のホームページから確認できます。
添付文書は医師や薬剤師などの医療関係者に提供することを目的としていますので、一般の方には理解しにくいかもしれません。
一般の方向けには、医薬品医療機器総合機構(PMDA)のホームページからも患者向医薬品ガイドで検索すると、薬の情報がわかりやすく説明してあります。
添付文書の内容のうち患者さんにとって必要な情報が記載されているので参考にしてください。
編集部まとめ
酸化マグネシウム製剤であるマグミット錠は便秘薬や制酸剤として多くの医療機関で使用されています。
薬の成分そのものは副作用が少なく安全性が高いのですが、使用を誤ると高マグネシウム血症という重大な副作用があらわれることがあり注意が必要です。
高齢者や腎障害のある方など薬の排泄能力が低下している場合、漫然と使用していると薬の血中濃度が高くなり副作用が起きやすくなります。
薬自体は安全なので、どのような患者さんがどれくらいの期間使用するのかをしっかり見極めたうえで適正使用することが重要となります。
この記事を読んでマグミット錠の副作用について正しく理解し、安心して服用していただけたら幸いです。
参考文献