「低用量ピルが避妊に効果があるのは何日目からか」ご存知ですか?医師が監修!
近年、手軽で確実性の高い避妊方法として「低用量ピル」を服用する女性が増えてきました。法改正により医師からネット上での診断・処方が可能になったため、より身近になったことでも知られています。
避妊以外にも様々な悩みを解決できる可能性があるため、使用を検討したことのある方も多いのではないでしょうか。
今回はそんな低用量ピルの効果的な使用方法について解説していきます。
服用する際のポイント・避妊目的の低用量ピルの種類・正しく効果を出すための注意点・よくある疑問など、知っておきたい情報をまとめました。
これからピルの使用を検討する方や気になる点がある方は、ぜひ参考にしてみてください。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
低用量ピルについて
低用量ピルとは、女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロン(薬用の人工成分はプロゲスチンとも)の含まれた内服薬のことを指します。これらのホルモンは本来女性の体内で生成され、主に妊娠・出産に関わる様々な変化を引き起こします。
これを飲むことで、一部の機能をコントロールできるのが低用量ピルです。またピルにはOCと呼ばれるものとLEPと呼ばれるものの2種類があり、それぞれホルモンの含有量や使用目的が異なります。
LEPは、医師が治療に際して必要と判断したときに処方される保険適用薬です。一般に避妊用で使用される低用量ピルは、保険適用外のOCにあたります。
OCは比較的簡単に入手でき、健康な女性が日々服用することを前提として作られています。ここでは避妊やそのほかの効果を期待して服用される低用量ピル(OC)を取り上げ、使用の際の注意点を解説していきましょう。
避妊目的の低用量ピルの効果は何日目から期待できるのか
避妊目的の低用量ピルには、錠剤の数によって1シート28錠タイプと21錠タイプの2つの種類があります。28錠タイプには7錠の偽薬(薬効成分の入っていない錠剤)が含まれているため、実際は21錠タイプと容量は変わりません。
21錠タイプは1シート飲み終わるたびに7日間の休薬期間を設け、28錠タイプは偽薬が休薬にあたるため休みなく飲み続けます。低用量ピルの服用中には基本的に、この休薬(もしくは偽薬)期間に消退出血と呼ばれる生理様の少量出血が起こります。
このことを踏まえ、飲み始めの日を調整することで自分に都合が良いように周期を設定することが可能です。ここではよくある低用量ピルの服用周期によって、避妊効果の出る時期を解説していきます。
生理初日の服用
生理が始まって24時間以内に飲み始める低用量ピルのことを、「Day1スタートピル」と呼ぶこともあります。特別な都合が無ければ、基本的に避妊目的の低用量ピルはこのDay1スタートピルです。
低用量ピルを生理初日に飲み始めた場合、その当日から避妊効果が得られるとされるためです。薬を飲み始めた回の生理終了後からは休薬期間に合わせて少量の出血があるため、元の生理周期を大きくずらすことなくスムーズにピルの服用を始められます。
Sundayピルの服用
元の生理周期に関わらず、日曜日に低用量ピルを飲み始める方法もあります。こちらは「Sundayピル」とも呼ばれ、大体4週目の月曜から金曜に休薬期間が重なるため週末に予定を入れやすくなるメリットがあります。基本的な服用方法は以下の3パターンです。
- 最後の生理があってから、初めての日曜日に服用を開始する。
- 月曜から金曜の間に生理が始まった場合は、次の日曜に服用を開始する。
- 日曜に生理が始まった場合は、その日に服用する。
このうち1と2では、飲み始めてからおよそ7日間服用を続けることで避妊効果が発揮されます。Day1ピルと違い即効性がないため、スケジュールをきちんと管理するようにしましょう。3の場合はDay1ピルと同じ扱いになるため、服用を始めたその日から避妊効果があるとされます。
生理不順の場合
低用量ピルは、避妊以外にも月経不順の改善効果が期待できます。ですが稀発・頻発など生理周期が定まらない場合は、低用量ピルの開始時期に迷ってしまうかもしれません。
基本的には生理開始日に飲み始めるDay1スタートが推奨されますが、なかなか生理が来ない場合にはそれ以外の日に飲み始める場合もあります。
また生理初日を逃してしまっても、生理開始から5日以内に服用を始めれば大きな問題はないとされます。月経不順が見られる場合は、処方の際にきちんと医師と相談して開始時期を決定するのがおすすめです。
生理初日以外に飲み始めた場合は、内服開始から最低でも7日以上服用を続けることで高い避妊効果・月経周期の改善効果を得ることができます。
避妊目的の低用量ピルの種類
前述の通り、低用量ピルは1シートの錠剤数や飲み始めの時期によって呼び分けられる場合があります。ですがこれとは別に薬自体の種類もいくつかあり、服用者の希望や取り扱い医院によって様々な薬が処方されます。
主な違いは含まれるホルモン成分の違いです。とはいえ、基本的に「低用量ピル(OC)」として扱われているものに大きな薬効の差はありません。ここでは避妊目的の低用量ピルとしてよく処方されるもののうち、代表的な3種類についてご紹介いたします。
トリキュラー
トリキュラー錠には21錠タイプと28錠タイプがあり、服用時期によって赤褐色・白色・淡黄褐色・白色の順番になっています。21錠タイプの場合は最後の白色錠剤がありません。
ホルモン成分としてレボノルゲストレル・エチニルエストラジオールが含まれています。またトリキュラーは「3相性」と呼ばれるタイプで、錠剤の色(飲むタイミング)ごとにホルモン成分の含有量が異なるのが特徴です。
3相性の低用量ピルは体内における自然なホルモン分泌量と近いため、副作用などのリスクが軽減されるともいわれます。
マーベロン
マーベロン錠にも21錠・28錠のタイプがあり、21錠タイプは白色錠剤のみで構成されます。28錠タイプの偽薬のみ、緑色の錠剤です。ホルモン成分はデソゲストレルのみで、これ1種で卵胞ホルモン・黄体ホルモンの両方の効果を持っています。
ホルモン成分が1種類のみのマーベロンは「1相性」と呼ばれ、服用時期によるホルモン量や比率の差はありません。本薬は基本的に、生理初日の服用開始が推奨されています。
ヤーズ
ヤーズ錠(ヤーズ配合錠)は28錠タイプのみが一般に普及しており、淡赤色の錠剤と白色の偽薬で構成されています。ホルモン成分はドロスピレノン・エチニルエストラジオールの2種類です。
ヤーズは低用量ピルの中でも第4世代と呼ばれる比較的新しい部類で、他2種にはあまりない「子宮内膜の成長抑制」という効果があります。
子宮内膜(生理の際にはがれ落ちる膜性構造物)の成長が抑制されることで、出血量の軽減や生理痛の改善に効果があるとされています。
低用量ピルを服用していても避妊に失敗する理由
低用量ピルを飲んでいても避妊に失敗してしまう場合には、いくつかの原因が考えられます。
1つめは薬の飲み忘れです。低用量ピルは毎日1錠ずつ服用することが前提となっているため、薬を飲み忘れてしまうと排卵抑制機能が発揮されないことがあります。
2つめは、十分に避妊効果が発揮される前に性行為を行ってしまった場合です。生理初日に服用を開始するDay1スタートピルではその日から避妊効果があるとされますが、もちろん100%ではありません。
また、定期的に低用量ピルを服用しているにもかかわらず生理様の出血が無いと、妊娠してしまったのではないかと勘違いしてしまう場合もあります。もともと生理不順気味の方にはよくある現象ですが、続くようであれば医師に相談するのがおすすめです。
低用量ピルで避妊効果を得るための正しい服用方法と注意点
低用量ピルによる避妊効果を正しく得るためには、第1に飲み忘れをなくすよう心がけましょう。前述の通り、低用量ピルは毎日決まった時間に1錠ずつ服用することで効果を発揮します。
特に休薬期間後の飲み忘れが不安な方は、偽薬を含む28錠タイプを使用するといいでしょう。また、朝起きてすぐや歯磨きの前など、自分で覚えやすい服用タイミングを決めておくのもおすすめです。
さらに服用初日から避妊効果があるとされるDay1スタートピルの場合でも、服用から7日以上経ってからの方が避妊の確実性は上がります。
低用量ピルの効果を過信せず、余裕を持ったスケジュールを立てるように心がけましょう。不安な場合はコンドームなどと併用することで、より確実な効果が期待できます。
低用量ピルの避妊効果に関するよくあるQ&A
最後に、低用量ピルの服用についてよくある疑問をまとめてご紹介します。近年はネット上の診断・処方により手軽に使用できるようになった低用量ピルですがその反面、医師から詳しい話を聞く機会は少なくなっています。
気になる点を残したままの服用開始は、思わぬトラブルや不十分な効果の原因です。ここでご紹介する以外にも気になることがあれば、病院を受診した際に尋ねたり、インターネット上の問い合わせ機能などを活用したりして解決するように心がけましょう。
低用量ピルを飲み忘れたら避妊効果はどうなりますか?
基本的には、「絶対に飲み忘れないこと」が前提です。とはいえ、忙しい時期やイベントの最中にはうっかり飲み忘れてしまう場合もあるかもしれません。
毎日定期的に服用し続けている低用量ピルでは、1日の飲み忘れはほとんど避妊効果に影響はないとされます。飲み忘れた分の錠剤をすぐに服用し、翌日から通常通りの服薬を続けてください。
ただし2錠以上飲み忘れた場合は、排卵抑制効果が薄れて生理が来る場合や妊娠してしまう場合があります。このときは飲み忘れた分は服用せず、新しいシートで服用を再開します。
連続して7日以上服用するまでは避妊効果が十分に発揮されない場合があるため、他の方法も併用して避妊を行いましょう。
低用量ピルは避妊以外にも効果が期待できますか?
低用量ピルは薬の服用ペースに合わせて生理周期をコントロールするため、月経不順の改善が期待できます。
ヤーズなどの錠剤では子宮内膜の成長を抑制する効果もあるため、生理の際の出血量を減らしたり生理痛が軽減されたりするのも特徴です。
また低用量ピルは避妊以外にも、ホルモンバランスが整うことにより肌荒れの改善など様々な効果が期待できます。
低用量ピルの服用をやめたら何日目から妊娠可能ですか?
低用量ピルは、継続的な服用を中止することで通常通りの排卵を再開することができます。
低用量ピル服用者に対して行われた調査によれば、服用中止後1週目では20%ほどのごく少数が妊娠し、1年後にはおよそ80%以上が妊娠することができたそうです。
多くの場合は服用中止後数週間から数ヶ月の間に通常の生理出血が再開するとされ、以降徐々に妊娠可能性は上がっていきます。理論上は服用中止直後から妊娠することは可能ですが、健康面への負担軽減や確実性を求める場合は、服用中止から1年ほどの期間を見ておくとよいでしょう。
編集部まとめ
今回の記事では低用量ピルの避妊効果について、種類ごとの違いや注意点を中心にご紹介してきました。
インターネットを通じて気軽に入手できるようになった低用量ピルですが、100%の避妊効果はないこと・副作用が見られる場合があることをよく覚えておきましょう。
また低用量ピルの服用だけでは、性感染症を予防することはできません。より高い安全性を求めるのであれば、コンドームなどを併用することをおすすめします。
注意事項や服用方法をよく確認し、正しく効果を発揮できるよう心がけましょう。
参考文献