「心不全を疑う咳」の特徴はご存知ですか?進行すると現れる症状も医師が解説!

心不全を疑う咳にはどんな特徴がある?Medical DOC監修医が心不全の初期症状・末期症状・なりやすい人の特徴などを解説します。

監修医師:
佐藤 浩樹(医師)
目次 -INDEX-
「心不全」とは?
心不全とは、心臓に何らかの異常が生じ、ポンプ機能が低下し心機能が悪化した結果、全身に必要な血液を十分に送り出せなくなった状態をいいます。それに伴い、さまざまな症状が起こります。増悪と寛解を繰り返し、徐々に悪化していくのが特徴です。
心不全を疑う咳にはどんな特徴がある?
心不全を疑う咳は、心臓の働きが弱まり肺にうっ血が生じることで起こるもので、感冒などに伴う咳とは異なります。主な特徴を3つあげて解説いたします。
体位で症状が変化する咳
心不全では、心臓機能低下により肺に血液が滞りやすくなるので、咳が出やすくなります。横になると、さらに血液がたまるため、咳が強くなるのが特徴と言えます。座ると楽になることが多いです。
労作により症状が変化する咳
心不全の咳は、階段を上る、歩くなどの労作によって増悪することが多いです。心臓が十分に血液を送り出せず、軽い動作でも肺のうっ血が悪化するためと考えられます。安静になると改善することが多いです。
咳に伴う痰の色が異なる
心不全では、肺に水分が溜まることで、水っぽい薄いピンク色の痰が出ることが多いです。これに対し、肺がんでは、気道が腫瘍で傷つきやすいため、出血に伴う鮮やかな血痰や茶色い痰がみられることが多く、痰の性状が異なります。
心不全を発症すると咳が出る原因
心不全による咳は、日常生活で経験することの多い、風邪をはじめとする感染症による咳とは原因が異なります。主な原因を3つあげて解説いたします。
肺うっ血による気道刺激
心不全では、心臓のポンプ機能が低下するため、心臓に溜まった血液は送り出せなくなります。その結果、送り出せなかった血液が肺に溜まりやすくなります。この状態が「肺うっ血」です。肺うっ血になると、肺の血管から水分が染み出しやすくなるため、肺の中が水っぽい状態になります。そのため、気道が常に刺激された状態のため、軽い刺激でも咳が起こりやすくなります。
左心系の機能低下による肺内圧の上昇
左心系とは、心臓の左心房と左心室をさします。左心不全を起こすと、肺から左心房に戻る血液が滞るようになり、肺の血管内圧が高まります。そのため、血管からしみ出た水分が肺の組織に広がり、肺が拡張しづらくなる事が多いです。その結果、肺が固くなった状態となり、気道内のわずかな刺激でも気道が反応しやすくなり、咳を誘発する要因になります。
肺水腫
心不全が進行すると、肺に溜まった水分がさらに増えて「肺水腫」になり、肺の内部が液体で満たされた状態になります。この液体が気管に流れ込むことで、泡状の痰が生じ、咳が止まりにくくなります。ピンク色の痰が出ることも少なくありません。
心不全の前兆となる初期症状
心不全の前兆となる段階では、心臓の働きは弱まり始めていますが、臓器へ送られる血液量はまだ大きく低下していません。そのため、日常生活では気づきにくい軽い変化として現れ、年齢や体調のせいと受け取られることも少なくありません。こうした小さな変化に早めに気づき、適切な対処法を知ったうえで医療機関を受診することが大切です。代表的な症状を3つあげて解説いたします。
労作時の息切れ
心臓のポンプ機能が弱くなると、体を動かすために必要な酸素を十分に送り届けられなくなります。そのため、軽い動作でも呼吸が苦しくなりやすくなります。初期の段階では、階段を上がる、早歩きするといった身近な動作で息切れを感じることが多く、休むと回復することが多いです。見逃されやすい症状なので注意してください。
足首・下肢のむくみ
心臓の働きが低下すると、血液がうまく戻れず、足首やすねに余分な水分がたまりやすくなります。朝はむくみが目立たなくても、夕方になると靴下の跡が目立ったり、足が重く感じたりします。初期段階では休むと改善しますが、進行するとむくみが続き、体重が増えることが多いです。心不全に気づく重要なサインです。
横になると息苦しい
心臓のポンプ機能が低下すると、肺から心臓に戻る血液が滞り、肺の血管に圧力がかかりやすくなります。その結果、水分が肺にしみ出し始め、肺水腫の初期状態が生じます。横になると血液が心臓に戻りやすくなるため、この状態が悪化し、息苦しさを感じます。体を起こす、枕を高くするなどの体位で呼吸が楽になるのが特徴です。
心不全が進行すると現れる症状(末期症状)
心不全が末期まで進行すると、心臓のポンプ機能が大きく低下し、全身の臓器へ十分な血液を送れなくなります。そのため臓器の働きが弱まり、全身の機能が徐々に落ちていきます。自力で日常生活を送ることが難しくなり、安静中心の生活となることで生活の質も低下してしまうことも多いです。状態が深刻になると余命に影響を及ぼすこともあり、適切なケアがより重要となります。3つの症状をあげて解説いたします。
呼吸困難
末期心不全では、肺に水分が滞りやすくなるため、安静時でも息苦しさが強くなります。体を起こした姿勢をとると一時的に楽になることがありますが、根本的改善にはつながりません。会話が困難なほどの呼吸困難になることも多いです。緊急性が高く、早急に循環器科を受診してください。
全身のむくみ・体重増加
心臓のポンプ機能低下が高度のため、全身からの血液の環流が滞る状態になります。その結果、体内の水分が蓄積し、足だけでなく腹部や全身がむくむ状態となる事も少なくありません。この状態が継続すると、体重増加にもつながります。受診先は循環器科で、利尿薬の調整を含む治療が行われることが多いです。呼吸困難を伴うむくみは緊急度が高いので、救急車を要請するなど、早急な対応が必要です。
極度の全身倦怠感
末期心不全に至ると、血流が臓器に十分届かないため、極度の全身倦怠感が起こり、日常生活に支障が出る場合が多いです。さらに重症化すると、ぼんやりするなどの意識障害が起こることもあります。安静にしても改善が認められないことが多いです。家族など周囲の人が患者さんの意識の変化に気づくなど注意を払う必要があります。このような症状が現れた場合は、早急に循環器科を受診ください。
心不全になりやすい人の特徴
心臓に慢性的な負荷を与える疾患を有すると心不全になりやすくなります。主な疾患は、生活習慣病です。代表的な疾患を3つあげて解説いたします。
高血圧を有する人
高血圧は常に心臓へ負担をかけるため、放置すると徐々に心臓の働きが弱まっていきます。その結果、全身にさまざまな障害が現れるようになります。初期の高血圧は自覚症状がほとんどないため、受診が遅れやすいことが問題です。健診などで血圧高値を指摘された場合は、症状がなくてもそのままにせず、早めに医療機関へ相談することが大切です。
糖尿病を有する人
血糖が高い状態が長く続くと、血管や心筋に常にダメージを与えるため、心臓のポンプ機能が弱まってきます。初期には疲れやすさや動いたときの違和感として現れることもありますが、気づかないまま進行することが少なくありません。血糖値の異常や体調の変化に気づいた場合は、内科または循環器科を受診し、早めに対応することが重要です。
腎機能低下がある人
腎機能が落ちると体内の水分や塩分のコントロールがうまくできなくなり、血圧が上がりやすくなり、心臓に負担がかかります。初期は自覚しにくいものの、足の重さやむくみとして現れることがあります。こうした変化に気づきましたら、塩分を控えて安静にすると、楽になることが多いです。続く場合は、医療機関を受診してください。受診先としては、内科、腎臓内科、循環器科が適しています。
「心不全と咳」についてよくある質問
ここまで心不全と咳の特徴などを紹介しました。ここでは「心不全と咳の特徴」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
心不全が悪化するとどんな症状が現れますか?
佐藤 浩樹 医師
心不全が悪化すると、心臓のポンプ機能がさらに低下し、全身への血液供給が不十分になります。そのため、さまざまな症状が起ります。呼吸苦、むくみ、全身倦怠感などが代表的な症状です。末期状態に進展すると、活動に著しい障害が出るため、日常生活を送ることが難しくなってきます。
まとめ
心不全は、日常の生活管理や基礎疾患の治療をしっかり行うことで予防できる病気です。高血圧、糖尿病、腎機能低下などの背景がある場合は、早い段階から適切な治療を続けることが重要です。また、息切れやむくみといった小さな体調の変化にも注意し、気になる場合は早めに医療機関を受診しましょう。普段の体調管理と医療との連携が、心不全を予防するための最も確実な方法です。
「心不全」と関連する病気
「心不全」と関連する病気は10個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
呼吸器系
- 肺塞栓症
- 慢性肺気腫
内分泌系
列記した疾患はいずれも心不全のリスクとなります。医療機関を受診し、これらの疾患の適切な治療により心不全の予防は可能です。
「心不全」と関連する症状
「心不全」と関連している、似ている症状は7個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
今後、高齢化がさらに進み、心不全の患者さんの増加が予想されています。このような症状に気づいた場合は、放置せずに医療機関を受診ください。早期の適切な対応が、心不全の発症や進行を防ぎます。




