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「ICD(植込み型除細動器)」の費用や装着後の寿命はご存知ですか?【医師解説】

 公開日:2025/12/26
「ICD(植込み型除細動器)」の費用や装着後の寿命はご存知ですか?【医師解説】

ICD(植込み型除細動器)とは?Medical DOC監修医がペースメーカーとの違い・費用や寿命・日常生活での注意点などを解説します。

佐藤 浩樹

監修医師
佐藤 浩樹(医師)

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北海道大学医学部卒業。北海道大学大学院医学研究科(循環病態内科学)卒業。循環器専門医・総合内科専門医として各地の総合病院にて臨床経験を積み、現在は大学で臨床医学を教えている。大学では保健センター長を兼務。医学博士。日本内科学会総合専門医、日本循環器学会専門医、産業医、労働衛生コンサルタントの資格を有する。

「ICD(植込み型除細動器)」とは?

ICD(植込み型除細動器)とは、心臓に致死的不整脈が起こった際に自動で電気ショックを与え、正常な心拍リズムへ戻す医療機器です。心室細動や心室頻拍などの致死性不整脈による突然死を予防します。胸部皮下に小型の機器本体を植込み、機器本体と心臓を電極リードで接続して使用します。心拍を24時間体制で監視し、異常を検知すると除細動やペーシングを即座に行うことで命を守ります。致死性不整脈に対して薬物療法では十分な効果が得られない患者さんにとっては、生命予後を改善する治療法とされています。装着後は定期的な点検や電池交換が必要ですが、適切な管理により日常生活を安全に過ごすことが可能になります。

「ICD(植込み型除細動器)」と「ペースメーカー」の違い

ICD(植込み型除細動器)とペースメーカーはいずれも心臓に埋め込む医療機器ですが、役割が異なります。ペースメーカーは、心拍が遅くなる徐脈に対して一定のリズムで電気刺激を送り、心拍を安定させる機器です。一方、ICDは、心室細動や心室頻拍など命に関わる重篤な不整脈を感知すると、自動的に電気ショックを与えて正常なリズムへ戻し、突然死を防ぐ機器です。つまり、ペースメーカーは「心拍の補助」が中心であるのに対し、ICDは「致死性不整脈への緊急対応」を目的としている点が違いです。

ICD(植込み型除細動器)の費用

ICD(植込み型除細動器)の費用は、機器本体、手術費、入院費、検査費、術後の管理費などが合計されるので高額です。総額は医療機関、治療内容によって異なりますが、数百万円程度になるのが一般的です。実際の負担額は保険適用の有無や自己負担割合で大きく変わります。以下にその違いについて解説します。

保険適用の場合

ICD(植込み型除細動器)は保険適用となるため、実際の自己負担額は大幅に軽減されます。高額療養費制度が適応となるからです。患者さんの所得金額に応じて支払う金額は変動しますが、月あたり数万円程度となることが多いです。

自費診療の場合

日本では、ICD(植込み型除細動器)植込みを自費で行うケースはほとんどありません。自費の場合、費用負担は大きいです。機器本体の価格に加え、手術費、入院費、術後管理費などがすべて自己負担となるからです。その費用を自費で支払う場合、総額は数百万程度になることが多いです。また、ICD(植込み型除細動器)埋め込み後の、外来費用、機器管理、消耗品の交換など継続的な費用も加味する必要があります。

どんな病気に罹患すると植込み型除細動器が必要になる?

植込み型除細動器が必要となるのは、命に関わる重篤な不整脈を起こす危険性が高い病気に罹患した場合です。具体的な疾患を5つあげて解説します。植込みは、入院のうえ局所麻酔による手術が必要で、循環器科や心臓血管外科のある総合病院で行われます。

心筋梗塞後の心機能低下

心筋梗塞を起こすと、心筋の一部が壊死し、心臓の収縮力が低下します。この状態になると、心室頻拍や心室細動などの致死性不整脈が発生しやすくなり、突然死の危険性が高まります。そのため、命を守る目的で、ICDの植込みが推奨されます。
一方、補助人工心臓は低下した心臓のポンプ機能を補助する治療であり、不整脈を防ぐICDとは役割が異なる治療です。

肥大型心筋症

肥大型心筋症は、心筋が異常に厚くなり、心臓の拡張が妨げられる疾患です。若年において、運動時に致死性不整脈が起こり、突然死を来すケースがあるので要注意です。突然死のリスクが高いと判断された場合、予防的にICDの植込みが検討されます。
補助人工心臓は、本疾患において適応となることは稀ですが、著明な心機能低下を伴う重症心不全に進行し、他の治療で十分な改善が得られない場合には考慮されます。

ブルガダ症候群

ブルガダ症候群は心電図異常と致死性不整脈を特徴とする遺伝性疾患で、突然心停止を起こす危険性があります。自覚症状が無い患者さんが多いですが、失神歴や心停止の既往がある患者さんではICDの植込みが検討されます。主に、植込み型除細動器による管理が中心で、補助人工心臓が適応となることはほとんどないです。

先天性QT 延長症候群

先天性QT延長症候群は、生まれつき心電図上のQT間隔が延長し、致死性不整脈が起こりやすくなる疾患です。突然の動悸、失神、心室細動による突然死を起こすことがあります。薬物治療でコントロール困難な場合には植込み型除細動器が検討されます。補助人工心臓は通常必要ありませんが、不整脈発作を繰り返し心機能が極度に低下した重症例では最終手段として考慮されることがあります。

カテコラミン誘発多形性心室頻拍(CPVT)

CPVTは、運動や強い緊張などで分泌されるホルモンである、カテコラミンの影響により、心室に心室頻拍や心室細動などの致死性不整脈が起こり、失神や突然死を起こす遺伝性疾患です。主に、運動中や興奮時に発作が起こるのが特徴です。薬物治療でコントロールが難しい場合に、ICDの植込みが検討されます。補助人工心臓が適応となることは稀ですが、重篤な不整脈の反復により心機能が著しく低下し、重症心不全に陥った場合に検討される場合があります。

植込み型除細動器装着後の寿命はどれくらい?

ICDは致死性不整脈による突然死のリスクを大幅に減らすため、生存期間の延長が期待できます。そのため、植込み型除細動器を装着した後の患者さんの寿命は、機器そのものより、基礎疾患や全身状態に左右されます。たとえば、基礎疾患として代表的な心不全の進行度によって寿命は異なります。基礎疾患の管理が寿命を決定するといってもよいでしょう。ちなみに、植込み型除細動器の電池寿命は約5~10年で、定期的な交換と継続的な管理が重要です。

植込み型除細動器装着後の注意点

植込み型除細動器装着後は、精密な機器のため、留意しなければならない注意点があります。日常生活を想定して、5つの注意点をあげて詳しく説明します。

自動車運転

植込み型除細動器患者さんの自動車運転は原則禁止とされています。しかしながら、医師による「運転を控えるべきとはいえない」旨が記載された診断書を公安委員会に提出することで運転が許可される場合があります。詳細は担当医師と相談してください。

植込み部分を圧迫しない

植込み部分を圧迫すると、機器本体のみならず機器と接続されているリード線が損傷することがあります。胸部に植込まれている場合は、シートベルトなどで圧迫しないようにタオル等で保護するようにしましょう。

腕を激しく動かす動作

ぶら下がり健康器の使用、ザイルを使用する登山は避けましょう。運動ばかりではなく、仕事の種類によっても注意を払う必要があります。腕を激しく動かすことにより、本体とつながっているリードの損傷を招くことがあるからです。

磁気が出る機械に近づくこと

磁気による電波が植込み型除細動器の誤作動を起こす可能性があるので、近づくのは危険です。各種溶接機、発電施設、レーダー基地、強い電磁波を発生する機器などが該当します。めまい・ふらつき・動悸など身体に異常を感じたら、すぐにその場から離れましょう。

身体に電気を通す機器

電気風呂、肩こり治療器などの低周波治療器、高周波治療器、医療用電気治療器等は使用しないで下さい。これらの機器が発する電気信号や電磁波によって、植込み型除細動器が誤作動する可能性があるためです。

「ICD(植込み型除細動器)」についてよくある質問

ここまでICD(植込み型除細動器)を紹介しました。ここでは「ICD(植込み型除細動器)」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

ICD(植込み型除細動器)の禁忌事項について教えてください。

佐藤 浩樹佐藤 浩樹 医師

ICD(植込み型除細動器)の禁忌事項としては、致死性不整脈の発生リスクがない場合、装着による明確な利益が期待できない場合、重篤な感染症が存在する場合などがあげられます。また、極度に予後が不良で寿命が著しく限られているケースでは、ICDの効果が十分に発揮されない可能性があるため、適応外となることがあります。精神的・社会的に機器管理が困難な場合も植込みに対して慎重な判断が必要となります。

まとめ

ICDは致死性不整脈による突然死を防ぐため、心拍を常に監視し、必要時に電気ショックで正常化する医療機器です。致死性不整脈を合併する心疾患に適応され、患者さんの予後を改善します。装着後は、定期的受診により、基礎疾患の治療と機器管理が求められます。

「ICD(植込み型除細動器)」と関連する病気

「ICD(植込み型除細動器)」と関連する病気は8個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

循環器系

これらの疾患は、いずれも致死性不整脈による突然死の危険性が高く、ICDは命を守る重要な治療手段となります。

「ICD(植込み型除細動器)」と関連する症状

「ICD(植込み型除細動器)」と関連している、似ている症状は7個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 意識が遠のく
  • 失神
  • 突然の動悸
  • 胸部圧迫感
  • 呼吸困難

これらの症状は、致死性不整脈が起きている可能性を示す重要なサインです。放置すると突然死につながる危険もあるため、これらの症状が起きた場合は、早めに医療機関を受診してください。

この記事の監修医師