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「腹部大動脈瘤の前兆となる5つの初期症状」はご存知ですか?予防法も医師が解説!

 公開日:2024/08/30
「腹部大動脈瘤の前兆となる5つの初期症状」はご存知ですか?予防法も医師が解説!

腹部大動脈瘤の初期症状とは?Medical DOC監修医が腹部大動脈瘤の初期症状・原因・セルフチェック法・検査・治療法・予防法などを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。

佐藤 浩樹

監修医師
佐藤 浩樹(医師)

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北海道大学医学部卒業。北海道大学大学院医学研究科(循環病態内科学)卒業。循環器専門医・総合内科専門医として各地の総合病院にて臨床経験を積み、現在は大学で臨床医学を教えている。大学では保健センター長を兼務。医学博士。日本内科学会総合専門医、日本循環器学会専門医、産業医、労働衛生コンサルタントの資格を有する。

「腹部大動脈瘤」とは?

心臓から全身に血液を送る大動脈が、腹部を通る部分で瘤のように異常に膨らむ病気です。大動脈の壁が弱くなることによって起こり、徐々に大きくなるのが特徴です。動脈硬化が主な原因で、高血圧、脂質異常症、喫煙などがリスク要因です。

腹部大動脈瘤の前兆となる初期症状

初期症状は無いことがほとんどです。でも、瘤が大きくなるにつれて、腹部に症状が出ることが多いです。また、何科を受診すればよいか判断に迷う場合もあると思います。以下の解説を参考にして受診する科の参考にしてください。

腹部にしこりを感じる

腹部大動脈瘤が大きくなるにつれて、腹部にしこりを感じることがあります。このしこりは脈を打つのが特徴です。動脈の拍動が直接皮膚に伝わるためです。手で触れると、脈が打つ感じを確認できる場合もあります。しかし、腹部にしこりがあるからといっても、他の病気の可能性も考えられるため、気になる場合は早めに内科を受診しましょう。

腹部の痛み

この痛みは通常、動脈瘤が拡大する際に周囲の組織や臓器に圧迫を加えることで起こります。この痛みは、長時間立っていたり、歩いたり、体位を変えたりする時に強くなることがあります。持続する場合は、内科、消化器科、循環器科を受診しましょう。

吐き気や嘔吐

腹部大動脈瘤が大きくなり、周囲の消化管を圧迫することで起こります。消化器疾患などでもみられるため、原因を特定するためには、内科、消化器科、循環器科を受診しましょう。

下肢の痛みや冷感

腹部大動脈瘤が大きくなると、下肢への血流が悪くなるため、下肢の痛みや冷感が起こることがあります。特に、運動をした後や長時間立っていた後に、症状が出やすい傾向があります。

背中の痛み

大動脈瘤が後方の脊椎や神経に圧力をかけるためです。特に、体動時に増強することがあります。この症状は、他の疾患に伴うものと区別が難しいことがしばしばあります。そのため、症状が続く場合は、内科、循環器科、整形外科を受診しましょう。

腹部大動脈瘤の主な原因

腹部大動脈瘤は、動脈の血管壁が脆くなり、血管が膨らむ疾患です。主な原因は以下の3つがあります。

動脈硬化

動脈硬化は主な原因の一つです。血管の内壁にコレステロールなどが沈着して、血管が硬くなり、弾力性が低下した状態です。そのため、血管壁が脆くなり、膨らみやすくなります。
生活習慣病と深い関係があるので、健診などで生活習慣病リスクを指摘された際は、内科の受診をお勧めします。

高血圧

高血圧は、血管の内壁に常に高い圧力がかかる状態です。したがって、この状態が長期間継続すると、血管は傷つきやすくなり、血管が脆くなります。最終的に、血管が膨れる状態となり、腹部大動脈瘤が形成されます。高血圧を指摘された場合は、内科や循環器科を受診し、適切な指導を受けましょう。

喫煙

タバコに含まれる有害物質は、血管に直接的なダメージを与えたり、血管を収縮させたりする作用があります。従って、動脈硬化が進みやすくなるとともに、高血圧にもなります。
喫煙は腹部大動脈瘤を含め、全ての血管病の原因となる重要な因子です。禁煙が大事です。タバコをやめるには、禁煙外来の利用をお勧めします。

すぐに病院へ行くべき「腹部大動脈瘤の初期症状」

ここまでは腹部大動脈瘤の初期症状を紹介してきました。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。

腹部にしこりを感じ、拍動している場合は、循環器科へ

腹部大動脈瘤を疑わせる、最も重要な症状です。放置すると、血管が破裂して、ショックとなり命を失うこともあります。そのため、早期に循環器科を受診し、超音波検査やCTスキャンなどで詳しい検査を受けて、適切な治療を受けることを強くお勧めします。

受診・予防の目安となる「腹部大動脈瘤」のセルフチェック法

  • ・腹部にしこりをふれる場合
  • ・腹部に拍動を感じる場合
  • ・腹部に持続的な痛みがある場合

腹部大動脈瘤の検査法

腹部大動脈瘤は初期には無症状の人が多く、早期発見のためには検査は非常に重要です。主な検査方法として、以下の3つが挙げられます。

超音波検査(腹部エコー)

腹部大動脈瘤のスクリーニング検査として、広く用いられている検査です。腹部にジェルを塗り、超音波を発するプローブを当てることで、リアルタイムで血管の状態がわかります。非侵襲的で痛みがなく、瘤の大きさや位置を正確に評価できます。放射線被曝がないため、身体への負担が少なく、繰り返し行うことができるメリットがあります。主に、循環器科にて行われます。

CT検査

X線を多角的に照射して、得られた情報をコンピューター処理することで断層画像を作成する検査です。大動脈瘤の正確な大きさ、形状、位置を三次元的に把握することができます。造影剤を使用することで、病変の詳細な構造や周囲の臓器との関係も明確に評価できます。被曝のリスクはありますが、その精度の高さから多くの医療機関で使用されています。こちらの検査も、主に循環器科で行われます。

MRI検査

磁気を利用して体内の詳細な画像を取得する検査です。腹部大動脈瘤の評価においても使用され、特に血管の構造や周囲の組織の状態を精密に画像化できます。CT検査と同様に詳細な画像が得られますが、CT検査と比べて放射線被曝が無い利点があります。こちらの検査も、主に循環器科で行われます。

腹部大動脈瘤の主な治療法

腹部大動脈瘤の大きさ、年齢、全身状態、合併症の有無などを総合的に判断して決定されます。主な治療法として、以下の3つが挙げられます。

生活習慣病リスクを考慮しながらの経過観察

小さな腹部大動脈瘤に適応されます。定期的に画像検査を行い、瘤の大きさや進行を監視します。生活習慣病を有する場合は、腹部大動脈瘤を悪化させる要因となりますので、生活習慣の改善とともに、血圧、脂質、血糖値などを定期的に検査してフォローします。悪化した場合には内服治療をメインとして適切な治療が行われます。循環器科での定期的な外来通院が必要です。

ステントグラフト内挿術(カテーテル治療)

腹部大動脈瘤に対する低侵襲治療です。カテーテルを用いて、血管内の病変部位にステントグラフトを挿入し、瘤を内側から補強する治療です。手術時間が短く、回復も早いため、高齢者や全身状態が良くない患者でも可能な治療です。入院期間が短いことが利点です。退院後は、長期的なフォローアップが必要であり、循環器科の定期通院が必要です。

人工血管置換術

腹部大動脈瘤が大きい場合や破裂のリスクが高い場合に行われます。開腹手術で瘤の部分を切除し、人工血管に置き換える手術です。この治療は侵襲性が高いものの、長期間の治療効果が期待できます。入院は必須で、回復までに時間がかかることが多いです。心臓血管外科が担当します。退院後は、長期的な経過観察が必要なため、定期的な外来通院が必要です。

腹部大動脈瘤の予防法

完全に予防することは難しいですが、リスク因子を適切にコントロールすることで、発症のリスクは下げることができます。主なものは、以下の3つです。

血圧の管理

高血圧は主要なリスク因子の一つです。適切な血圧管理は、動脈壁への負担を軽減し、血管が脆くなるのを防ぎます。塩分の摂取を控え、バランスの取れた食事を心がけることが重要です。すでに、高血圧で治療を受けている患者さんは、医師の指導のもとで降圧薬を適切に使用し、血圧を正常範囲に保つことが重要です。

禁煙

喫煙は腹部大動脈瘤のリスクを大幅に高めるため、禁煙は非常に重要です。タバコに含まれる有害物質は、動脈硬化の進展を助長します。自身の努力で禁煙を進めても良いですが、禁煙外来やニコチンパッチ、ガムなどの補助的手段を活用すると効果的です。禁煙は全身の健康状態を保持するためにも、多くの利点があります。

過度の飲酒を控える

1日の飲酒量として、日本酒なら1合、ウイスキーならダブル1杯程度までにとどめることが重要です。過度のアルコール摂取は、血圧の上昇を来し、腹部動脈瘤の発症や進行を助長します。

「腹部大動脈瘤の初期症状」についてよくある質問

ここまで腹部大動脈瘤の初期症状を紹介しました。ここでは「腹部大動脈瘤の初期症状」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

腹部大動脈瘤は何歳以上になると罹患率が上がりますか?

佐藤 浩樹佐藤 浩樹 医師

60歳未満では腹部大動脈瘤の発生は少なく、それ以上の年齢になると著しく増加することが報告されています。欧米の報告では60歳以上の4~9%に腹部大動脈瘤を認め、臨床的に検討が必要となる4cm以上の腹部大動脈瘤は55~64歳の1%,65歳以上の2~4%であるとされています。

腹部大動脈瘤は体のどの辺りにできますか?

佐藤 浩樹佐藤 浩樹 医師

典型的には腎動脈が分岐する血管より下の大動脈にできることが多いです。さらに骨盤に向かう腸骨動脈まで及ぶ瘤となることも多くみられます。これはちょうど、みぞおちから臍の辺りにあたります。

腹部大動脈瘤の平均余命はどれくらいでしょうか?

佐藤 浩樹佐藤 浩樹 医師

一概に回答することはできません。患者さんの年齢、性別、瘤の大きさ、合併症の有無、などにより大きく異なるからです。一般的には、瘤が破裂した場合は予後が悪く、平均余命は短くなると考えられています。

編集部まとめ 腹部に拍動のある腫瘤を感じたら、循環器内科へ

腹部大動脈瘤は、主に高血圧や動脈硬化が原因となり、腹部の大動脈が異様に膨らむ疾患です。初期には症状がほとんどないため、無症状のまま進行することが多いです。でも、膨らみが大きくなりすぎると、破裂して急激な腹痛や背中の痛みが起き、命にかかわる緊急事態となります。早期発見が重要な疾患です。

「腹部大動脈瘤」と関連する病気

「腹部大動脈瘤」と関連する病気は7個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

消化器科の病気

泌尿器科の病気

  • 腎結石

腹部に痛みを感じたり、しこりに触れたりする場合、さまざまな疾患が考えられます。このような症状が起きた場合は、早期に医療機関を受診してください。

「腹部大動脈瘤」と関連する症状

「腹部大動脈瘤」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 腹部違和感
  • 腹部のしこり
  • 腹部の拍動感
  • 下肢のしびれ
  • 腹部の痛み

意外と経験することが多い症状もあり、そのまま様子を見てしまう場合もしばしば見受けられます。しかし、これらの症状が継続する場合は早期に医療機関を受診することをお勧めします。

この記事の監修医師