どれくらいの「頻度で咳が続くと肺がん」を疑った方がいいかご存知ですか?医師が解説!

どれくらいの頻度で咳が続くと肺がんを疑った方がいい?Medical DOC監修医が咳以外の肺がんの初期症状・原因・なりやすい人の特徴などを解説します。

監修医師:
羽田 裕司(医師)
名古屋市立大学医学部卒業。聖隷三方原病院呼吸器センター外科医長、名古屋市立大学呼吸器外科講師などを歴任し、2019年より現職。肺がんを始めとした呼吸器疾患に対する外科治療だけでなく、肺がんの術前術後の抗がん剤治療など全身化学療法も行う。医学博士。外科学会指導医/専門医、呼吸器外科学会専門医、呼吸器内視鏡学会指導医/専門医、呼吸器学会専門医。
目次 -INDEX-
「肺がん」とは?
肺がんは、肺や気管支の細胞ががん化したものです。タバコやアスベスト吸入歴などが発生リスクを高めることが知られています。
肺がんは早期の段階では無症状のことも多いです。しかし、咳や痰などの症状が現れ、医療機関を受診し肺がんが発覚するといったこともみられます。
咳は、風邪や肺炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などが原因となる場合もあります。また、心不全、副鼻腔炎、逆流性食道炎など、呼吸器疾患以外が原因となることもあります。いずれにしても、長引く場合には注意が必要です。
今回の記事では、肺がんに伴う咳にはどういった特徴があるのかについて解説します。
肺がんを疑う咳にはどんな特徴がある?
咳は風邪などの病気の場合でも起こり得る症状です。しかし、以下のような特徴がある場合には注意が必要です。
なかなか治らず次第にひどくなる
風邪などによる咳の場合、通常は自然によくなることも多いです。あるいは、肺炎や気管支炎などによるものであれば、治療しなければ症状が悪化することもあります。ただし、その場合は咳のほかに高熱が出る、身体がだるくなるといった症状も現れるため、医療機関を受診することが多いでしょう。ほかに特に症状がなく、元気なのに咳がずっと続き、だんだん悪くなるような場合には、一度内科あるいは呼吸器内科を受診するようにしましょう。
もともとあった咳が増える
タバコを今まで吸ってきた、あるいは今も吸っている方のなかには、COPDなどが原因となり咳がもともと多く出ている方もいらっしゃるでしょう。しかし、最近になって咳が増えてきたという場合には、肺炎や肺がんなどの新たな病気の可能性もあります。念のため医療機関を受診しましょう。
血が混じる痰を伴う
肺や気管支から出血があると、痰に血が混じることがあります。咳がないときでも、あるいは咳をした際に痰やつばに血が混じるような場合には、何らかの病気を示唆するサインかもしれません。血痰は、肺がん以外にも肺結核や気管支拡張症などの呼吸器の病気、あるいは心不全などの心臓の病気など、原因はさまざまです。もし血が混じる痰が出た場合には、医療機関を受診するようにしましょう。
どれくらいの頻度で咳が続くと肺がんを疑った方がいい?
風邪やアレルギーに伴う咳は、1〜2週間ほどで治ることが多いです。しかし、3週間経過しても咳が改善しない場合、注意が必要です。念のため、2週間経っても治らない咳がみられる場合には、呼吸器内科や循環器内科、あるいは内科を受診することをおすすめします。
肺がんが進行すると咳はどのような特徴が現れる?
長引く咳は肺がんを示唆する症状の一つです。進行した肺がんの場合以下のような症状を伴う可能性があります。
咳込んだ時に胸が痛む
肺がんの症状の一つとして、深呼吸や咳、笑った時などに悪化する胸の痛みがあります。
咳き込む時にヒューヒューという音がする
肺がんが気管支を圧迫すると、空気の通り道が狭くなります。その結果、咳や深呼吸によって呼吸の音にヒューヒュー、ゼーゼーといった雑音が混じるようになる場合があります。医学的にはこの雑音は喘鳴(ぜんめい)といいます。
咳が出ることに加えて声のかすれも加わる
肺がんが進行し、声を出すことなどに関わる反回神経という神経に及ぶと、声のかすれが生じることがあります。 咳に加え、声がかすれるといった症状がありなかなか治らない場合は、呼吸器内科や耳鼻咽喉科の受診をすると良いでしょう。
咳以外の肺がんの初期症状
肺がんは、初期段階では症状が現れないことも多くみられます。以下のような症状は肺がんのみで現れるものではありませんが、このような症状が長引く、あるいは悪くなっていくようなことがあれば医療機関の受診をお勧めします。
痰が多くなる
痰は、空気の通り道である気道から分泌されています。肺がんが大きくなり、肺がんからの分泌物が増えると痰の量が増えることがあります。血液が混じるような場合には、さらに注意が必要です。
発熱が長引く
肺がんが気管支を塞ぐことで、閉塞性肺炎という肺炎を引き起こすことがあります。その際には、高熱が出たり、発熱が5日間以上続いたりといったケースが見られます。熱がなかなか下がらないという場合は、医療機関を受診しましょう。
動くと息苦しくなる
肺がんが進行すると、肺や心臓の周りに水がたまることがあります。それぞれ、胸水、心嚢水といいます。すると、肺や心臓が圧迫され、動きが妨げられることによって息苦しさが現れます。動くと息苦しいという症状があり、だんだん悪くなっていくときには、呼吸器内科や循環器内科を受診するようにしましょう。
肺がんの原因
ここでは、肺がんのリスクを高める要因として考えられる原因を挙げていきます。
喫煙
喫煙は肺がんのリスクを高めます。タバコを吸う人が肺がんになるリスクは、そうでない方と比較し、男性では4.4倍、女性では2.8倍とされています。
受動喫煙でも、肺がんリスクは約1.3倍に増加します。
アスベスト吸入歴
アスベストやラドン、ヒ素などを、仕事に従事している際に吸入した方も、肺がんリスクが高くなることが知られています。
慢性閉塞性肺疾患
肺気腫や慢性気管支炎などの慢性閉塞性肺疾患は、肺がんのリスクを高めるとされています。
肺がんになりやすい人の特徴
肺がんになるリスクが高い可能性がある方として、以下のような特徴が挙げられます。
タバコを吸っている
喫煙は肺がんのリスクを高めます。しかし、喫煙している方が禁煙すると、肺がんになるリスクが下がり、年齢が早い段階であればあるほどその効果が高まるとされています。そのため、今タバコを吸っている方であれば、少しでも早めの禁煙をおすすめします。
過去にアスベストに関連する仕事をしていた
アスベストは石綿とも呼ばれ、過去にビルなどの保温断熱目的で壁に吹き付けられていました。アスベストは吸い込むと肺の細胞を傷つけ、肺がんのほかにも肺線維症(じん肺)や悪性中皮腫などを引き起こす可能性が知られています。過去にアスベスト関連の仕事をしたかもしれないという方は、お近くの労災病院などの専門医療機関に相談してみるとよいでしょう。
50歳以上の男性
肺がんの方は40歳以上になると増加し、50歳以上になるとさらに急激に罹患リスクが高まります。また、本邦では一生のうちに肺がんになる割合は男性7.4%、女性3.1%というデータもあります。
咳や痰などの症状がある場合には、早めに医療機関を受診しましょう。また、日本では40歳以上から年に1回の肺がん検診が推奨されています。定期的な健康チェックを欠かさないようにしましょう。
「肺がんを疑う咳の頻度」についてよくある質問
ここまで肺がんを疑う咳の頻度などを紹介しました。ここでは「肺がんを疑う咳の頻度」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
肺がんを発症し、咳が出始めた場合のステージ分類について教えてください。
羽田 裕司 医師
肺がんを発症し、咳が出始めても、症状だけではステージを決めることはできません。
ただし、症状が出始めてから発見された肺がんは、検診で発見された場合よりも進行している頻度が高いとも報告されています。
肺がんは早期の段階では無症状のことも多いので、定期的に健康診断を受けることが大切です。また、喫煙など肺がんリスクを高める行動を控えることも重要です。
編集部まとめ
今回の記事では、肺がんに伴う咳の特徴について解説しました。咳は肺がん以外の呼吸器や循環器の病気に伴っても現れ、何らかの病気のサインとなっていることもあります。2週間以上経っても治らない咳がある場合には、医療機関を受診するようにしてください。
「肺がん」と関連する病気
「肺がん」と関連する病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
肺がんと関連する病気には、これらのようなものがあります。咳や痰などの症状が続く場合には、医療機関を受診しましょう。
「肺がん」と関連する症状
「肺がん」と関連している、似ている症状は10個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください
関連する症状
- 咳
- 血が混じる咳
- 胸、背中、肩の痛み
- 突然起こる息切れ
- 声枯れまたは喘鳴
- 飲み込みにくくなる、または飲み込むときに痛みがある
- ばち状指(指先が丸く平たく変形すること)
- 原因不明の体重減少
- 疲労感や脱力感
- 食欲不振
肺がんと関連する症状には、上記のようなものがあります。呼吸器の症状以外にも、体の他に症状が現れることがあります。気になる症状がある場合には、医療機関を受診しましょう。




