「炎症性乳がんの初期症状」はご存知ですか?なりやすい人の特徴も医師が解説!

炎症性乳がんの初期症状とは?Medical DOC監修医が炎症性乳がんの初期症状・原因・なりやすい人の特徴・検査・治療法や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。

監修医師:
山田 美紀(医師)
目次 -INDEX-
「炎症性乳がん」とは?
炎症性乳がんとは、乳房の皮膚が乳腺炎のように赤くなる特殊な乳がんです。皮膚のリンパ管ががん細胞によって詰まり、乳房の広い範囲で皮膚の赤みやむくみを引き起こします。乳がんのうち約0.5〜2%にしかない、比較的まれなタイプの乳がんです。
「炎症性乳がん」と「乳がん」の違いとは?
乳がんは一般的に乳腺内に腫瘤(しこり)を形成しますが、炎症性乳がんではしこりをほとんど認めません。乳腺炎に似た症状であるため、診断が遅れるケースもあります。また、通常の乳がんに比べ、進行が早く、悪性度が高いとされています。
炎症性乳がんの前兆となる初期症状
炎症性乳がんの初期症状をご紹介します。
乳房の赤み
乳房の広い範囲に皮膚の赤みが見られます。数週間から数か月で急速に広がります。症状がある場合は、乳腺科を早めに受診しましょう。
乳房のむくみ
炎症性乳がんではしこりは触れませんが、乳房全体がむくむことがあります。今までになかった乳房の左右差がある場合、早めに乳腺科を受診しましょう。
オレンジの皮のような皮膚
炎症性乳がんでは皮膚が厚くなります。毛穴が目立つようになり、まるでオレンジの皮のような凹凸のある皮膚になることがあります。症状がある場合は、早めに乳腺科を受診しましょう。
乳房の熱感
炎症性乳がんでは乳房の熱感を自覚することがあります。症状がある場合は、早めに乳腺科を受診しましょう。
脇のリンパ節の腫れ
炎症性乳がんは進行が早く、乳房周囲のリンパ節にがんの転移を認めることがあります。脇のリンパ節に転移すると、リンパ節の腫れを触れることがあります。症状がある場合は、早めに乳腺科を受診しましょう。
炎症性乳がんの主な原因
炎症性乳がん特有の原因は分かっていません。乳がんの主な原因についてご紹介します。
女性ホルモンへさらされる期間が長い
乳がんの発症や進行にはエストロゲンという女性ホルモンが関係しています。エストロゲンが出ている期間が長いと乳がんになるリスクが高まります。初経年齢が早い、閉経年齢が遅い、または出産や授乳の経験がない等がリスク因子となります。定期的に乳がん検診を受けていただくことが大切です。
生活習慣
乳がんになる原因として、様々な環境要因があります。肥満が乳がん発症のリスクを高めることが分かっています。脂質の多い食習慣や運動不足は肥満の原因となります。また、飲酒や喫煙などの生活習慣が乳がんになるリスクを高めるとわかっています。バランスの良い食事と運動習慣を心がけることが大切です。
遺伝性
乳がんの5〜10%は遺伝性であるといわれています。血縁関係のあるご家族に乳がんの方がいる場合、乳がんになるリスクが高くなります。ご家族に乳がんの方がいる場合は、特に定期的な乳がん検診が重要です。乳がんに関連する遺伝子は様々あることが分かっています。中でもBRCA1/2遺伝子は、乳がんの家族歴がある等の条件を満たす乳がん患者さんは保険適用で検査ができます。
炎症性乳がんになりやすい人の特徴
乳がんになりやすい人の特徴についてご紹介します。
月経のある期間が長い
乳がんの発症にはエストロゲンが関係しています。月経のある期間が長いとエストロゲンが出ている期間が長いため、乳がんになりやすいと考えられます。初経年齢が早いことや閉経年齢が遅いことが乳がん発症リスクとなることがほぼ確実です。
出産・授乳経験がない
乳がんの発症にはエストロゲンが関係しており、出産歴や授乳歴も乳がんと関連があります。出産経験のない場合は出産経験のある人よりも2.2倍乳がん発症のリスクが高いといわれています。授乳経験がない場合も乳がんの発症リスクが高いことは確実と分かっています。
閉経後の肥満
閉経後の肥満は乳がんの発症リスクを高めます。脂肪細胞からエストロゲンが供給されるためことが原因と言われています。肥満はさまざまな病気の原因となるため、バランスの良い食習慣や運動習慣を心がけましょう。
過度の飲酒
飲酒は閉経前後にかかわらず、乳がん発症リスクを高めます。また、アルコールの摂取量が増えるほどリスクが高まることもわかっています。アルコールが乳がんにどのようなメカニズムで影響を与えるのかはわかっていませんが、飲みすぎに注意しましょう。
喫煙
喫煙している方が乳がんになりやすいことはほぼ確実と分かっています。喫煙はさまざまな病気の原因となるため、なるべく早く禁煙することをおすすめします。
炎症性乳がんの検査法
炎症性乳がんはしこりがないことが多く、マンモグラフィ検査のみでは発見することは難しいです。超音波検査などを組み合わせることが重要です。
マンモグラフィ検査
乳がんの検査はまず乳腺科でマンモグラフィを行います。乳房を圧迫し、X線で撮影します。数分で終わる検査であり、入院は必要ありません。マンモグラフィではしこりや石灰化を検出しますが、炎症性乳がんはしこりがないため、診断が難しいことが多いです。
乳腺超音波検査
超音波検査は乳房にしこりがあるかどうかを確認するのに有用な検査です。乳腺科で行います。20分程度の検査で、入院は必要ありません。炎症性乳がんはしこりがないことが多く、皮膚の肥厚やリンパ節の腫大を確認することができます。
組織診断
マンモグラフィや超音波検査で悪性の可能性がある病変を認めた場合、乳腺科で組織診断を行います。炎症性乳がんではしこりを認めないため、赤く肥厚した皮膚の一部を採取します。局所麻酔を行った後に、病変を採取します。採取した組織を顕微鏡で確認し、確定診断をすることができます。10分程度の検査で、入院は必要ありません。
炎症性乳がんの治療法
炎症性乳がんでは、まず薬物療法を行います。薬物療法によって腫瘍が縮小し、手術が可能になった場合、手術治療や放射線療法による局所治療を行います。
薬物療法
炎症性乳がんではまず乳腺科で薬物療法を行います。化学療法(抗がん剤)の点滴に通院をします。アンスラサイクリン系の抗がん剤とタキサン系の抗がん剤を順次行います。HER2陽性乳がんでは抗HER2薬を、トリプルネガティブ乳がんでは免疫チェックポイント阻害剤を併せて使用します。また、ホルモン受容体陽性乳がんの場合は手術後にホルモン療法を行います。
手術
薬物療法によって腫瘍が縮小し、手術ができる状態になった場合、手術を行います。炎症性乳がんでは乳房全切除が行われることが多いです。また、リンパ節に転移を認める場合は、腋窩リンパ節郭清も行います。1週間程度入院し、乳腺外科で治療を行います。
放射線療法
炎症性乳がんでは手術を行った後に、再発予防のために胸壁や周囲のリンパ節に放射線療法を行います。放射線治療科に4〜5週間の通院が必要です。
「炎症性乳がんの初期症状」についてよくある質問
ここまで炎症性乳がんの初期症状などを紹介しました。ここでは「炎症性乳がんの初期症状」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
炎症性乳がんの進行スピードはどれくらいでしょうか?
山田 美紀 医師
炎症性乳がんは通常の乳がんと比べて、進行スピードが速いことが多いです。数週間から数か月で進行することがあり、次の乳がん検診までの間に進行することがあります。
炎症性乳がんステージ4の生存率はどれくらいですか?
山田 美紀 医師
炎症性乳がんのステージ4は乳房から離れた部位に転移している状態です。炎症性乳がんに限らず、乳がんステージ4の5年生存率は38.6%と報告されています。
編集部まとめ
炎症性乳がんは通常の乳がんと比べて進行スピードが速く、乳房の広い範囲に赤みやむくみが生じます。しこりがないことが多く、マンモグラフィで見つけることが難しいため、診断が遅れることもあります。気になる症状がある場合は、早めに乳腺科を受診することをお勧めします。
「炎症性乳がん」と関連する病気
「炎症性乳がん」と関連する病気は2個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
乳腺科の病気
婦人科の病気
- 卵巣がん(遺伝性乳がん卵巣がん症候群の場合)
炎症性乳がんの症状は乳房が赤くなるため、乳腺炎と似た症状が起こります。しかし、乳腺炎とは全く異なる病態です。症状がある場合は、乳腺科を受診しましょう。また、遺伝性乳がん卵巣がん症候群の場合は、乳がんや卵巣がんになるリスクが高くなります。
「炎症性乳がん」と関連する症状
「炎症性乳がん」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 乳房の赤み
- 乳房のむくみ
- オレンジの皮のような皮膚
- 乳房の熱感
- 脇のリンパ節の腫れ
炎症性乳がんは乳房の赤み、熱感など乳腺炎と似た症状が出現します。気になる症状があれば、乳腺科を受診しましょう。
