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「卵巣がんの抗がん剤」にはどんな種類があるかご存知ですか?副作用も医師が解説!

 公開日:2025/10/16
「卵巣がんの抗がん剤」にはどんな種類があるかご存知ですか?副作用も医師が解説!
卵巣がんは女性の卵巣に発生する悪性腫瘍で、初期には自覚症状が乏しく進行してから見つかることが少なくありません。治療の中心は手術による腫瘍の摘出と抗がん剤治療を組み合わせて行います。 本記事では卵巣がんのステージごとの治療法や、代表的な抗がん剤治療の種類、さらに副作用や治療費を解説します。
西田 陽登

監修医師
西田 陽登(医師)

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大分大学医学部卒業。大分大学医学部附属病院にて初期研修終了後、病理診断の研鑽を始めると同時に病理の大学院へ進学。全身・全臓器の診断を行う傍ら、皮膚腫瘍についての研究で医学博士を取得。国内外での学会発表や論文作成を積極的に行い、大学での学生指導にも力を入れている。近年は腫瘍発生や腫瘍微小環境の分子病理メカニズムについての研究を行いながら、様々な臨床科の先生とのカンファレンスも行っている。診療科目は病理診断科、皮膚科、遺伝性疾患、腫瘍全般、一般内科。日本病理学会 病理専門医・指導医、分子病理専門医、評議員、日本臨床細胞学会細胞専門医、指導医。

ステージ別|卵巣がんの治療方法

卵巣がんの治療方針は、がんの進行度合いを示すステージによって異なります。ステージはI期~IV期まで分類され、数字が大きいほど進行した状態を表します。基本的にはどのステージでも手術による腫瘍の切除が治療の中心ですが、進行度に応じて手術後に抗がん剤治療を組み合わせます。

1期卵巣がんの治療法

I期はがんが卵巣の中にとどまっている早期の段階です。治療は外科手術で、一般的に子宮全摘出術+両側付属器切除術、大網切除術などを行います。ただし、顕微鏡レベルで残ったがんが再発する可能性があるため、多くのI期卵巣がんでは術後補助化学療法として抗がん剤治療を追加します。

2期卵巣がんの治療法

II期はがんが卵巣を越えて骨盤内の子宮や卵管、骨盤腹膜などの臓器に広がった状態です。II期でも基本は手術による腫瘍の最大限切除です。子宮や卵巣・卵管はもちろん、がんの広がっている組織を可能な限り切除します。手術でがんを取り切れれば治癒も期待できますが、目に見えないレベルのがん細胞を叩くためにも術後の抗がん剤治療が推奨されます。

3期卵巣がんの治療法

III期はがんが骨盤を越えて腹腔内に広がった状態で、腹膜や腸の表面、リンパ節などへの転移がみられます。治療の中心は手術と抗がん剤治療です。まず外科手術で可能な限り腫瘍を減らすことが目標になります。術後は抗がん剤治療を行います。

4期卵巣がんの治療法

IV期はがんが腹腔の外にも転移した最も進行した段階です。IV期では遠隔転移があるため全身療法である抗がん剤治療が中心になります。遠隔転移している病巣が手術で取りきれそうな場合は手術も行いますが、手術のリスクに対する効果が見込めない場合は無理に大きな手術をせず抗がん剤主体で経過を見ることもあります。IV期では治癒が難しいケースも多いため、治療の目的は症状の緩和と生存期間の延長になります。

卵巣がんの抗がん剤治療の主な種類

卵巣がんの薬物療法には、いくつかのレジメン(治療薬の組み合わせと投与スケジュール)が使われます。ここでは代表的な抗がん剤治療を紹介します。

TC療法

TC療法とはパクリタキセル+カルボプラチン併用療法の略称です。卵巣がんの一次治療で最も広く使われている標準的なレジメンで、タキサン系抗がん剤のパクリタキセルとプラチナ製剤のカルボプラチンを組み合わせて点滴投与します。

dose-denseTC療法

dose-dense TC療法は、TC療法のパクリタキセル投与スケジュールを工夫した治療法です。通常のTC療法ではパクリタキセルを3週に1回投与しますが、dose-dense療法ではパクリタキセルを少量ずつ毎週投与し、カルボプラチンは3週ごとに投与します。

TC+Bev療法

TC+Bev療法は、TC療法に分子標的薬のベバシズマブを併用する治療法です。ベバシズマブはがん細胞が新しい血管を作って栄養を確保するのを阻害する薬剤で、卵巣がんに対しては2013年に適応が承認されました。ベバシズマブは基本的にIII期やIV期の進行がん患者さんに使われます。

その他の抗がん剤治療

卵巣がんの治療では上記のほかにもさまざまな抗がん剤やレジメンが利用されます。例えばドセタキセル+カルボプラチン(DC療法)やシスプラチン+ゲムシタビン、カルボプラチン+ドキソルビシンといった併用療法が再発時などに試みられることがあります。

卵巣がんの抗がん剤治療の主な副作用

抗がん剤治療にはさまざまな副作用が伴います。副作用の出方は使う薬剤や個人の体質によって異なりますが、本章では卵巣がんの治療で起こりやすい主な副作用について解説します。

アレルギー反応

抗がん剤のなかには点滴中にアレルギー反応を起こすものがあります。症状としては皮膚の発疹、冷や汗、息苦しさ、血圧低下などが現れることがあります。

吐き気・嘔吐

吐き気・嘔吐は抗がん剤治療でよく見られる副作用です。卵巣がんの標準的なTC療法では、吐き気止めを点滴前に投与して予防を行うのが一般的です。これにより多くの患者さんで吐き気はかなり抑えられます。

骨髄抑制

骨髄抑制は、抗がん剤の作用で骨髄の血液をつくる働きが低下し、血液中の細胞が減少する副作用です。具体的には白血球減少(免疫力の低下)、血小板減少(出血しやすくなる)、赤血球減少(貧血)などが起こります。

貧血

抗がん剤治療中は骨髄抑制の一環で貧血が進行することがあります。貧血が軽度であれば自覚症状はそれほどありませんが、進行すると全身のだるさ、息切れ、動悸、めまいなどの症状が現れます。

全身倦怠感

全身倦怠感は、言い換えると極度のだるさや疲労感のことです。原因は一つではなく、貧血による酸素不足、薬剤による直接的な疲労感、精神的ストレス、睡眠障害、栄養不足などさまざまな要因が重なって起こります。

末梢神経症状

末梢神経症状とは、手足の末梢神経が障害されることによるしびれや感覚異常のことです。卵巣がん治療に使うパクリタキセルは末梢神経障害を起こしやすい薬剤として知られており、患者さんの70~80%に何らかのしびれ症状が出ると言われています。

脱毛

脱毛も多くの抗がん剤で避けられない副作用です。パクリタキセルやカルボプラチンでは治療開始から2~3週間後あたりから髪の毛が抜け始めます。ただし、これは一時的な現象であり、治療終了後2~3ヶ月もすると新しい髪が生えてきます。

その他の副作用

上記以外にも、卵巣がんの抗がん剤治療ではさまざまな副作用が現れる可能性があります。例えば、口内炎や下痢、便秘などトラブルも起こりえます。爪の変色・変形もタキサン系薬剤で見られることがあります。

卵巣がんの抗がん剤治療にかかる費用

卵巣がんの手術や抗がん剤治療には高額な費用がかかりますが、日本では公的医療保険が適用され、さらに高額療養費制度によって自己負担額が一定額に抑えられる仕組みがあります。 卵巣がんの標準的なTC療法6クールの薬剤費用は、保険適用前の総額で約180万~300万円になります。これらはあくまで目安であり、用量や体重によって増減します。実際の患者さんの負担は、この総額のうち健康保険の自己負担分(通常3割負担)となります。 さらに、高額療養費制度が適用されれば、収入区分にもよりますが1ヶ月あたりの自己負担上限はおおよそ数万円から10万円台に収まります。

卵巣がんの抗がん剤治療についてよくある質問

ここまで卵巣がんの抗がん剤治療について紹介しました。ここでは「卵巣がんの抗がん剤治療」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

卵巣がんの抗がん剤治療に使用する薬はどのように選びますか?

卵巣がんの抗がん剤は、標準治療のなかから患者さん個々の状態に合わせて選択されます。それがTC療法やdose-denseTC療法などです。また、治療中にも効果判定を行い、腫瘍が十分に縮小していない場合は別の薬への切り替えを検討します。

抗がん剤治療はどの程度の期間続きますか?

初回治療の場合、卵巣がんの抗がん剤治療は約3~6ヶ月継続することが多いです。標準的なTC療法で3週間を1クールとし、計6クール行うとすると約4~5ヶ月になります。dose-denseTC療法でも同じく6クール前後ですが、週1回の通院が必要になるためスケジュールは多少タイトになります。

卵巣がんの抗がん剤治療中に仕事を続けることはできますか?

抗がん剤治療中でも、工夫次第で仕事を続けることは可能です。近年は入院ではなく外来通院で治療できるケースが増えており、働きながら治療を両立している患者さんも少なくありません。もちろん、治療が一段落すれば体力が回復して再びフルタイムで働ける可能性は十分あります。

まとめ

卵巣がんの抗がん剤治療について、ステージごとの治療法から代表的な薬の種類、副作用、費用、そして患者さんの疑問まで一通り解説しました。これらの内容は概要的な説明です。本記事が卵巣がんの抗がん剤を調べるきっかけになり、皆さんの疑問や不安を解消するきっかけになれば幸いです。

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