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「肺がんの抗がん剤治療」は何があるかご存じですか?副作用も医師が解説!

 公開日:2025/10/11
「肺がんの抗がん剤治療」は何があるかご存じですか?副作用も医師が解説!

肺がんは患者さんごとに異なる特徴を持つ病気です。特に重要なのは、肺がんの組織型が何なのか、ドライバー遺伝子変異があるのか、がん細胞にPD-L1が多く認められるのかという点です。治療にあたっては、これらの特徴と、肺がんの進行具合であるステージに基づいて適切な抗がん剤が選択されます。

本記事では、肺がんの治療で使用される抗がん剤の種類とその特徴、治療期間、副作用を解説します。

稲葉 龍之介

監修医師
稲葉 龍之介(医師)

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福井大学医学部医学科卒業。福井県済生会病院 臨床研修医、浜松医科大学医学部付属病院 内科専攻医、聖隷三方原病院 呼吸器センター内科 医員、磐田市立総合病院 呼吸器内科 医長などで経験を積む。現在は、聖隷三方原病院 呼吸器センター内科 医員。日本内科学会 総合内科専門医、日本呼吸器学会 呼吸器専門医、日本感染症学会 感染症専門医 、日本呼吸器内視鏡学会 気管支鏡専門医。日本内科学会認定内科救急・ICLS講習会(JMECC)修了。多数傷病者への対応標準化トレーニングコース(標準コース)修了。がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了。身体障害者福祉法第15条第1項に規定する診断医師。

肺がんの抗がん剤治療とは

抗がん剤治療は、全身のがん細胞を制御するために行われます。そのため、リンパ節やほかの臓器への転移があるとき、疑われるとき、予防するときに行われます。

抗がん剤とは

抗がん剤とは、がん細胞の増殖を抑えて死滅させる薬剤です。がん細胞を直接傷害する薬剤や、身体に作用して間接的にがん細胞の増殖を抑える薬剤があります。

肺がんにおける抗がん剤治療の効果

肺がんにおける抗がん剤治療は、完治を目的とした手術療法・放射線療法の治療効果を高める効果と、がんの進行を抑制して元気に過ごせる時間を延ばす効果があります。

肺がんの治療で使用される抗がん剤の種類

肺がんの治療で使用される抗がん剤は大きく細胞傷害性抗がん薬、分子標的治療薬、免疫チェックポイント阻害薬の3種類に分けられます。

細胞傷害性抗がん薬

細胞傷害性抗がん薬は、がん細胞を直接傷害して死滅させる抗がん剤です。肺がんにおいては、シスプラチン、パクリタキセルなどのプラチナ製剤と、ペメトレキセド、パクリタキセル、アルブミン懸濁型パクリタキセル、ドセタキセル、エトポシド、イリノテカン、アムルビシンなどが用いられます。

分子標的治療薬

分子標的治療薬は、がん細胞が増殖するのに重要なポイントを狙い撃ちする抗がん剤です。肺がんにおいては、がんの発生や進行に関わる遺伝子であるドライバー遺伝子変異と、がんが増殖するために必要な栄養血管の形成を担う血管内皮増殖因子(VEGF)を標的とした治療が行われています。

ドライバー遺伝子変異は非小細胞肺がん患者さんの一部のみで認められます。具体的な遺伝子変異にはEGFR遺伝子変異、ALK融合遺伝子、ROS1融合遺伝子、BRAF遺伝子V600E変異、MET遺伝子変異、RET遺伝子変異、NTRK融合遺伝子、KRAS遺伝子G12C変異、HER2遺伝子変異があります。

VEGFを標的とした分子標的治療薬は血管新生阻害薬とも呼ばれます。肺がんにおいてはアバスチン、ラムシルマブが使用されています。細胞傷害性抗がん薬や、ドライバー遺伝子変異を標的とした分子標的治療薬と組み合わせて用いられます。

免疫チェックポイント阻害薬

免疫チェックポイント阻害薬は、患者さんの免疫に作用する抗がん剤です。人間には病原体や異常な細胞を排除する免疫システムが備わっています。しかしがん細胞は免疫システムの機能を低下させることで、攻撃を受けない仕組みを持っています。

がん細胞による免疫システムの機能低下に関わるタンパク質としてPD-1、PD-L1、CTLA-4があります。免疫チェックポイント阻害薬はこのPD-1、PD-L1、CTLA-4を阻害することで免疫システムを活性化させ、がん細胞を排除します。

患者さんのがん細胞にPD-L1が多く認められる場合には、免疫チェックポイント阻害薬単独による治療を行います。PD-L1が少ない場合には、細胞傷害性抗がん薬と組み合わせます。

抗がん剤治療の治療期間

抗がん剤治療の治療期間は、使用する抗がん剤の種類・組み合わせ(レジメン)ごとに決まっています。

一般的にプラチナ製剤は3~4週間ごとに合計4~6回投与するため、治療期間は3~6ヶ月となります。再発が無ければいったん治療は終了となります。

その他の細胞傷害性抗がん薬、血管新生阻害薬、免疫チェックポイント阻害薬も3~4週間ごとに投与します。また、ドライバー遺伝子変異を標的とした分子標的治療薬は毎日内服します。
プラチナ製剤とは異なり、これらの薬剤は肺がんが再発するか、副作用により投与困難となるまで治療を継続します。そのため患者さんごとに治療期間は異なります。

肺がんの抗がん剤治療で生じる主な副作用

抗がん剤治療にはさまざまな副作用が伴います。

悪心・嘔吐

悪心・嘔吐は細胞傷害性抗がん薬で多く認められます。一般的には投与後1~3日から出現し、7日頃には改善します。抗がん剤と吐き気止めの進歩により、生活に支障が出るほどの悪心・嘔吐は減少傾向です。

下痢、便秘

ドライバー遺伝子変異を標的とした分子標的治療薬では下痢を起こしやすい傾向にあります。下痢止めを内服して対応します。

脱毛

細胞傷害性抗がん薬の投与後2~3週間から髪が抜け始めます。ただしこれは一時的な減少であり、細胞傷害性抗がん薬の終了後から次第に新しい髪が生えてきます。

末梢神経障害

手足の神経が障害されて生じるしびれや感覚障害のことです。パクリタキセルとアルブミン懸濁型パクリタキセルに多い副作用です。症状に応じて抗がん剤の減量や休薬、しびれを和らげる薬の内服で対応します。

骨髄抑制

血球を作る細胞が傷害され、免疫を担う白血球、全身に酸素を届ける赤血球、止血を担う血小板が減少することです。細胞傷害性抗がん薬の投与後7~14日に一時的に認められますが、自然に回復します。

皮膚障害

ドライバー遺伝子変異を標的とした分子標的治療薬では、皮膚の乾燥、にきび、爪周囲の炎症などの皮膚障害を多く生じます。そのため保湿剤による予防を行い、悪化した場合にはステロイド軟膏による治療を行います。

その他の副作用

免疫チェックポイント阻害薬により免疫関連有害事象(irAE)と呼ばれる副作用が起きることがあります。これは免疫システムが異常に活性化することで生じる、各臓器の障害やホルモンの過剰・欠乏です。細胞傷害性抗がん薬や分子標的治療薬とは異なり副作用の発症タイミングが予測できず、特徴的な症状がなく一見するとわかりにくい点が特徴的です。

肺がんの抗がん剤治療についてよくある質問

ここまで肺がんの抗がん剤治療を紹介しました。ここでは「肺がんの抗がん剤治療」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

肺がんの抗がん剤治療以外の治療法を教えてください。

手術療法と放射線療法があります。手術療法は、がんが肺の一部分に限局していてリンパ節転移がない場合、もしくはリンパ節転移があっても完全切除が可能な場合に行われます。

放射線療法は活用の幅が広いことが特徴的です。時には手術療法の代わりとして、または切除困難な場合に完治を目的とした化学放射線療法(抗がん剤+放射線療法)として、あるいはがんによる症状を和らげるための緩和照射として行われます。

肺がんの抗がん剤治療の副作用を軽減する方法はありますか。

悪心・嘔吐や下痢、便秘、末梢神経障害など診察や検査ではわからない副作用も多いため、症状が出現した際には医師に伝えることが重要です。そして多くの副作用は症状を緩和する薬剤を使用することで軽減することができます。

肺がんの抗がん剤治療にはどの程度の費用がかかりますか。

使用する抗がん剤の種類などによっても変化しますが、一例を示します。

治療の種類 医療費 3割負担額
プラチナ製剤+細胞傷害性抗がん薬併用療法
(3~4週間の場合)
約3~20万円 約1~6万円
プラチナ製剤+血管新生阻害薬併用療法
(3週間の場合)
約40~45万円 約12~14万円
ドライバー遺伝子変異を標的とした分子標的治療薬(4週間の場合) 約8~75万円 約2~23万円
免疫チェックポイント阻害薬(1回分) 約31~56万円 約9~17万円

https://www.haigan-tomoni.jp/know/treatment/cost.htmlより一部引用)

血管新生阻害薬、ドライバー遺伝子変異を標的とした分子標的治療薬、免疫チェックポイント阻害薬の治療費は高額となります。そのため高額療養費制度障害年金制度を利用することで、自己負担額を減らすことができます。


まとめ


肺がんの治療で使用される抗がん剤の種類とその特徴、治療期間、副作用を解説しました。実際には患者さん一人ひとりによって治療法は異なるため、わからないことや気になったことは医師と相談していきましょう。

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