30代が「食道がんになる確率」は?症状や予防する方法も医師が解説!
公開日:2025/05/31


監修医師:
井林雄太(井林眼科・内科クリニック/福岡ハートネット病院)
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大分大学医学部卒業後、救急含む総合病院を中心に初期研修を終了。内分泌代謝/糖尿病の臨床に加え栄養学/アンチエイジング学が専門。大手医学出版社の医師向け専門書執筆の傍ら、医師ライターとして多数の記事作成・監修を行っている。ホルモンや血糖関連だけでなく予防医学の一環として、ワクチンの最新情報、東洋医学(漢方)、健康食品、美容領域に関しても企業と連携し情報発信を行い、正しい医療知識の普及・啓蒙に努めている。また、後進の育成事業として、専門医の知見が、医療を変えるヒントになると信じており、総合内科専門医(内科専門医含む)としては1200名、日本最大の専門医コミュニティを運営。各サブスぺ専門医、マイナー科専門医育成のコミュニティも仲間と運営しており、総勢2000名以上在籍。診療科目は総合内科、内分泌代謝内科、糖尿病内科、皮膚科、耳鼻咽喉科、精神科、整形外科、形成外科。日本内科学会認定医、日本内分泌学会専門医、日本糖尿病学会専門医。
目次 -INDEX-
30代が食道がんに罹患する確率
食道がんは日本では全がんのなかでも件数が少なく、患者さんの約70%は60~70代に集中しています。30代の発症はまれですが、男性の方が多くなっています。
30代男性が食道がんになる確率
30代男性が食道がんを発症するケースはごく少数です。2016年に全国で報告された30代男性の新規患者数は31人でしたが、2019年には28人とほぼ横ばいです。それでも喫煙歴や飲酒習慣などリスク要因を多く持つ男性では30代でも発症しうるため油断はできません。30代女性が食道がんになる確率
30代女性の食道がんはさらにまれですが、近年わずかに増加傾向があります。例えば2016年に全国で報告された30代女性の新規患者数は15人でしたが、2019年には30人と2倍に増えています。これは喫煙者や習慣的に飲酒する女性の割合増加が一因とされています。とはいえ30代女性の発症率は低く、ほとんどの方にとってリスクは高くありません。ただし、症状がある場合は年代に関わらず早めに検査を受けることが重要です。若年層が食道がんにかかる要因
喫煙と飲酒は日本人の食道がんの最大危険因子です。タバコの煙に含まれる有害物質やアルコール摂取によるアセトアルデヒドが食道粘膜を傷つけ、がん発生を促します。遺伝的にアルコール分解酵素の働きが弱い体質の方(お酒を飲むと顔が赤くなる方)は、少量の飲酒でもアセトアルデヒドが蓄積しやすく、食道がんリスクが高まることが報告されています。さらに喫煙と飲酒の両方の習慣がある方では、その相乗効果でリスクが一段と高まります。
このほか胃食道逆流症(GERD)も重要な危険因子です。慢性的な強い胃酸の逆流は下部食道の粘膜に炎症を起こし、通常の扁平上皮が胃に似た粘膜(バレット食道)に置き換わることがあります。このバレット食道は食道腺がんの発生母地、いわば前がん病変として知られています。過度の肥満はGERDを引き起こしやすいため、将来的な危険因子となりえます。
若年層で食道がんを発症する背景には、若い頃からの喫煙、飲酒習慣や肥満傾向、さらには遺伝的要因も考えられます。近年の研究で、親や兄弟姉妹など近親者に食道がん患者さんがいる場合、自分が食道がんになるリスクも有意に高まることが示されています。
このように、30代といえども喫煙・多量飲酒・肥満・家族歴などの要因が重なる場合、食道がんのリスクは上昇します。
食道がんの初期症状
食道がんは初期には自覚症状がほとんどないとされています。早期のがんが食道粘膜内にとどまっている段階では、痛みや不快感を感じない場合が大半で、健康診断の内視鏡検査などで偶然発見されることもあります。
ごく初期に症状が出る場合でも、熱いものを飲み込むとしみる、飲食物が喉から胸に下りるときチクチクと軽い痛みを感じるなど一過性の違和感程度です。胸の違和感や軽い痛みは早期発見の手がかりになりえるため、繰り返し感じるようなら注意が必要です。
進行した食道がんの症状
食道がんが進行してくると、食道内腔をふさぐように腫瘍が大きくなり、さまざまな症状が現れます。代表的な症状には飲み込みにくさ(嚥下困難)や胸の痛み、体重減少、声のかすれ、咳、吐き気・嘔吐などがあります。これらはがんが大きく広がった結果生じる症状で、日常生活に支障を来すほど顕著になることもあります。以下に進行がんで見られる主な症状を解説します。
食欲不振
食道がんが大きくなると食べ物がつかえる感じが強くなり、食事が思うように食べられなくなります。硬いものが飲み込みにくくなり、次第にやわらかい食べ物や液体しか通らなくなるほど食道が狭くなります。ひどい場合は水さえ通らず唾液も飲み込めなくなり、口から戻してしまうこともあります。このように十分に食事が食べられなくなることで食欲が低下し、結果として体重減少が顕著になります。がん患者さんにしばしば見られる痩せも、食道がんでは食事摂取量の低下が一因となります。背中や胸の痛み
がんが食道の壁を越えて周囲組織に広がると、胸の奥や背中の痛みが現れます。これは腫瘍が食道周囲の臓器や神経に浸潤するためです。例えば食道のすぐ後ろにある脊椎や、そばを走る大動脈までがんが達すると背中の激しい痛みを感じることがあります。また、肺や心臓付近まで広がった場合にも胸痛が起こりえます。かすれ声や咳
食道がんが進行すると、声のかすれ(嗄声、させい)や慢性的な咳が出ることがあります。これは食道がんが喉や気管支に関わる部分へ及んだ徴候です。具体的には、声帯の動きを司る反回神経という神経が食道付近を走行しており、がんがその神経に浸潤すると声帯がうまく動かず声がかすれてしまいます。また、食道は気管と隣接しているため、がんが気管や気管支を圧迫、侵食すると刺激で咳が出たり、気道が狭くなることで呼吸困難や喘鳴を伴うこともあります。嘔吐
食道がんが原因で起こる嘔吐は、主に食道の通過障害によるものです。前述のように腫瘍で食道がふさがると食べ物や飲み物が胃まで届かず、飲み込んだものを吐き出してしまうことがあります。特に進行がんでは一口目から飲食物がつかえてしまい、そのまま逆流して吐いてしまう場合もあります。食道自体の狭窄による吐き気や嘔吐のほか、がんによる全身状態の悪化や食事摂取不足で胃腸の動きが低下し、むかつきや嘔吐を感じることもあります。また、腫瘍がただれて食道内で出血し、それを吐くと吐血として現れる場合もあります。食道がんを予防するために30代からできること
30代からの生活習慣の見直しが、将来の食道がん予防につながります。第一にタバコとお酒を控えることです。まず禁煙することで、食道のみならずさまざまながんのリスクを下げられます。次に飲酒量を減らすことも重要です。特に、顔が赤くなる体質の方は少量でも負担になるため、深酒は避け適量にとどめましょう。週に3日以上の飲酒や、一日あたり日本酒2合以上の多量飲酒はリスクを上げるとされるので注意が必要です。
食生活の改善も予防に役立ちます。野菜や果物に含まれるビタミンや食物繊維は食道がんの予防因子とされており、日々の食事で積極的に食べるようにしましょう。栄養バランスのよい食生活は体重管理にもつながり、肥満による胃酸逆流(GERD)の予防にもなります。過度の肥満は避け、適正体重を維持することが望ましいです。
また、定期的ながん検診や内視鏡検査も検討してください。食道がんは早期には症状が乏しいため、胃カメラ検査で早期発見できる場合があります。特に喫煙・飲酒習慣が長い方、胸や喉の違和感が気になる方は、30代からでも内視鏡検査を受けておくと安心です。
このように禁煙・節酒、食生活の改善、適正体重の維持、早期検査といった対策を30代から実践することで、将来の食道がんリスクを大きく下げることができます。健康的な生活習慣はほかの病気の予防にもつながりますので、ぜひできることから始めてください。
まとめ
30代で食道がんになる確率は低く、特に女性ではごくまれです。しかし、喫煙や飲酒などの生活習慣によっては若くして発症する可能性も否定できません。食道がんは初期症状が乏しく、進行すると飲み込みづらさや胸の痛み、声のかすれなど生活に支障を来す症状が現れます。30代のうちからタバコやお酒と上手に付き合い、野菜中心の食事や適度な運動で健康管理を心がけることが大切です。少しでも気になる症状があれば年代を問わず医療機関を受診し、必要に応じて内視鏡検査を受けましょう。
関連する病気
食道がんと似た症状を示す、または同時に発生する可能性のある病気には以下のようなものがあります。- 逆流性食道炎
- バレット食道
- 食道狭窄
- 食道憩室
- 食道アカラシア
関連する症状
食道がんに関連する症状は以下のような症状が挙げられます。これらの変化を正しく把握することが鑑別に役立ちます。- 嚥下困難
- 体重減少
- 胸部の痛み・圧迫感
- 吐き気・嘔吐
- 嗄声
- 咳




