「皮膚がんの種類」とは?原因やできやすい部位なども解説!【医師監修】

皮膚がんは多いがんではありませんが、さまざまな種類があります。また、肉眼的に見えるため、早期発見や治療が可能ながんの一つです。そこでこの記事では、皮膚がんとその種類について概説します。

監修医師:
井林雄太(井林眼科・内科クリニック/福岡ハートネット病院)
皮膚がんとは
皮膚がんとは、皮膚に存在する細胞が悪性化して増殖するがんの総称です。皮膚は表皮や真皮、皮下組織および汗腺、毛根などの付属器から構成されますが、これら皮膚を構成するあらゆる細胞から発生しうるため、皮膚がんの種類は大変多岐にわたります。一方で、年間およそ10万人あたり20人程度とその罹患者数は多くはありません。
皮膚がんの主な原因として知られているのは紫外線への曝露です。その他にも、遺伝的要因や家族歴、多数のホクロ(色素性母斑)、免疫力などが挙げられます。また、皮膚がんのできやすい部位は、多くが日光に晒される顔面や頭部、手足などに好発します。
皮膚がんの種類
皮膚がんはその発生する細胞の種類によって大きく、上皮系と悪性黒色腫、間葉系の皮膚がんに大別できます。
上皮系の皮膚がん
上皮系の皮膚がんは表皮を構成する細胞や皮膚の付属器(汗腺、皮脂腺、毛包)由来のがんで、下記のような種類があります。
基底細胞がん
皮膚がんのなかで最も多いがんです。表皮の一番下にある基底細胞が悪性化したもので、顔面など日光が当たりやすい部位に好発します。小さく光沢のある隆起として現れることが多く、中央がただれて潰瘍状になる例もあります。進行はとてもゆっくりしていますが、放置すると病変が皮膚の深部まで広がり周囲組織を破壊することがあります。遠隔転移はほとんど起こらないとされています。
有棘細胞がん
表皮の有棘細胞(角化細胞)が悪性化したがんです。長年の紫外線曝露や慢性的な炎症、傷が発生母地になることが知られています。有棘細胞がんは高齢者の顔面、頭皮、手の甲などに発生しやすく、表面が硬く角化した赤色~茶色の結節や、中心がただれた潰瘍として現れます。進行すると近くのリンパ節や肺など遠隔の臓器へ転移する可能性があります。
乳房外パジェット病
乳房以外の皮膚に発生するパジェット病という特殊なタイプの皮膚がんです。汗の一種であるアポクリン汗腺の細胞が悪性化すると考えられており、外陰部や肛門周囲、腋の下などに生じます。湿疹に似た境界不明瞭な淡紅色~褐色の斑点、皮疹が長期間にわたって持続し、かゆみを伴うこともあります。初期には表皮内にとどまってゆっくりと広がり、症状も赤みや軽い湿疹程度ですが、進行して真皮に浸潤すると周囲組織への浸潤やリンパ節転移を起こすことがあります。
メルケル細胞がん
メルケル細胞と呼ばれる神経由来の細胞が悪性化したもので、まれですが進行が速く転移しやすい神経内分泌腫瘍です。主に高齢者の頭部や顔面に発生することが多く、このがんも紫外線曝露との関連が指摘されています。皮膚には赤紫色~赤色の小さなしこりとして現れ、痛みはないことが多いです。大変増殖が早いため早期にリンパ節へ転移しやすく、診断時にすでに近傍のリンパ節が腫れている例も少なくありません。
汗腺がん
汗腺がんは汗を分泌する汗腺から発生する悪性腫瘍です。発生頻度が極めて低い希少がんです。発生部位にしこりや腫瘤ができる程度で、初期には湿疹や良性のできものと見分けがつきにくいことがあります。確定診断には組織の病理検査が必要です。汗腺がんは患者数が少なく、再発あるいは転移例に対する有効な薬物療法の確立にはいたっていません。
脂腺がん
脂腺がんは皮脂を分泌する脂腺から発生する悪性腫瘍です。汗腺がんと同様、発生頻度が極めて低い希少がんです。発生部位にしこりや腫瘤ができる程度で、初期には湿疹や良性のできものと見分けがつきにくいことがあります。確定診断には組織の病理検査が必要です。脂腺がんは患者数が少なく、再発あるいは転移例に対する有効な薬物療法の確立にはいたっていません。
毛包がん
毛包がんは毛をつくる毛包組織から発生する悪性腫瘍です。汗腺がんと毛包がんと同様、発生頻度が極めて低い希少がんです。発生部位にしこりや腫瘤ができる程度で、初期には湿疹や良性のできものと見分けがつきにくいことがあります。確定診断には組織の病理検査が必要です。毛包がんは患者数が少なく、再発あるいは転移例に対する有効な薬物療法の確立にはいたっていません。
悪性黒色腫
悪性黒色腫(メラノーマ)は、皮膚のメラニンを産生する色素細胞(ほくろの細胞)ががん化したものです。皮膚がんのなかでも特に悪性度が高く、早い段階でリンパ節や他臓器へ転移しやすいという特徴があります。一見するとホクロ(母斑)に似た外観を示すことがありますが、ホクロと比べて色や形が不規則であったり、短期間で大きく変化する点が特徴です。悪性黒色腫の発生には強い紫外線曝露が関与しており、肌の色が白く日焼けしやすい方ほどリスクが高いことがわかっています。日本人に多いタイプの悪性黒色腫は足の裏や指の爪下にできる末端黒子型黒色腫というタイプで、欧米白人に多い日光曝露部の黒色腫に比べて日光との関連が薄いタイプも少なくありません。悪性黒色腫の治療は、まず病変の外科的切除を行います。
間葉系の皮膚がん
間葉系由来の皮膚がんとは、皮膚の真皮や皮下にある結合組織(線維組織、脂肪組織、血管、筋肉など)から発生する悪性腫瘍で、総称して軟部肉腫と呼ばれます。皮膚に発生する軟部肉腫はまれで、日本人では全皮膚がんのなかのごく一部ですが、代表的なものとして以下の種類があります。
隆起性皮膚繊維肉腫
主に皮膚の真皮を構成する線維芽細胞から発生するとされる軟部肉腫で、発育はゆっくりです。若年~中年の体幹に好発し、初期には皮膚の下にしこりができ徐々に隆起してくる程度ですが、次第に皮膚表面にも腫瘤が突出してきます。
血管肉腫
血管の内皮細胞から発生する悪性度の高い皮膚の肉腫です。高齢者の頭皮や顔面に好発し、紫斑や内出血のように見える赤紫色の斑点やしこりとして始まります。外傷がきっかけで発症する例もあります。また、乳がん術後にリンパ浮腫が慢性的に続いている腕や、がんの放射線治療を行った部位の皮膚にも発生することがあります。病変の境界が不明瞭で広がりやすく、皮膚全体に多発することもあります。進行が速く、悪性黒色腫よりも治療が難しい悪性腫瘍で、早期からリンパ節や肺などへの転移を起こしやすいことが知られています。
類上皮肉腫
10代~40代の若年成人に発生するまれな軟部肉腫で、手指や前腕などの四肢に好発します。肉腫でありながら組織学的に上皮に類似した細胞からなることが名前の由来です。皮膚や皮下にしこりを作り、表面が潰瘍状に崩れてくることもあります。早期からリンパ節や肺などへの転移を来すことが多いため予後不良ながんとされています。
平滑筋肉腫
皮膚や皮下組織に存在する平滑筋から発生する悪性腫瘍です。発生頻度はまれで、中高年以降に体幹や四肢に発生することがあります。皮膚もしくは皮下に硬いしこりとして現れ、増大傾向を示します。初期には局所にとどまりますが、大きくなると肺などへ転移することがあります。
脂肪肉腫
脂肪細胞由来の悪性腫瘍で、通常は大腿や後腹膜など深部の脂肪組織に発生しますが、まれに皮下組織に生じることもあります。良性の脂肪腫と異なり、急速に大きくなる無痛性の腫瘤として気付かれます。組織型により低悪性度のものから高悪性度のものまでありますが、一般に再発しやすく他臓器への転移も起こりうる腫瘍です。
まとめ
皮膚がんと一口にいっても、その種類によって治療法は大きく異なります。それぞれに応じた適切な治療が必要ですが、共通して重要なのは早期発見、早期治療です。皮膚がんは皮膚の表面に生じるため自分で目で見て発見できる数少ないがんです。ほくろの色や形の変化、いつまでも治らない傷やできものに気付いたら、できるだけ早く皮膚科を受診してください。皮膚がんを早期に発見できれば、治療による治癒率も高まり、より少ない侵襲で完治を目指すことができます。
関連する病気
皮膚がんと似た症状を示す、または同時に発生する可能性のある病気には以下のようなものがあります。
- 日光角化症
- 色素性母斑
- ボーエン病
- 慢性皮膚炎
- 乾癬
関連する症状
皮膚がんに関連する症状は以下のような症状が挙げられます。これらの変化を正しく把握することが鑑別に役立ちます。
- 皮下出血
- 皮膚の痛み
- 腫瘤の増大
- 腫瘤部の潰瘍形成
- 腫瘤部の色の不均一性