「肺がんステージ4の主な5つの症状」はご存知ですか?転移しやすい部位も医師が解説!

Medical DOC監修医が肺がんステージ4の症状・自覚症状・転移しやすい部位・余命・生存率・検査法・治療法や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。

監修医師:
羽田 裕司(医師)
名古屋市立大学医学部卒業。聖隷三方原病院呼吸器センター外科医長、名古屋市立大学呼吸器外科講師などを歴任し、2019年より現職。肺がんを始めとした呼吸器疾患に対する外科治療だけでなく、肺がんの術前術後の抗がん剤治療など全身化学療法も行う。医学博士。外科学会指導医/専門医、呼吸器外科学会専門医、呼吸器内視鏡学会指導医/専門医、呼吸器学会専門医。
目次 -INDEX-
「肺がん」とは?
肺がんは、気管支や肺胞の細胞ががん化したものです。
肺がんが他の臓器に転移すると、IV期(ステージ4)という状態になります。
今回の記事では、肺がんステージ4ではどのような症状が現れるのかについて詳しく解説します。
肺がんステージ4の症状
肺がんは、脳や骨、肝臓、副腎などに転移しやすいとされています。ステージ4の肺がんでは、肺がんがこれらの臓器に転移することで、以下のような症状が現れることがあります。
頭痛や吐き気
肺がんの脳転移によって、吐き気や嘔吐、ひどい頭痛が引き起こされることがあります。
手足の麻痺
がんが脳や脊椎、脊髄に転移した場合に、手足の麻痺が起こることがあります。
脳転移や骨転移以外の原因でも麻痺が起こることがありますので、突然症状が出た場合は早急に受診しましょう。
骨転移による痛み
骨転移そのもの、あるいはがんが骨に転移することで骨が弱くなり、骨折しやすくなります。こうした原因によって、その部位に痛みを感じる場合があります。
黄疸
黄疸とは、体の皮膚や、目の白目の部分が黄色くなることです。
がんが肝臓に転移すると、肝臓の機能が低下し、黄疸が現れる場合があります。
がんの転移以外の原因による肝機能障害、胆嚢結石や胆嚢炎なども黄疸の原因となります。
食欲不振と体重減少
がんが肝臓に転移することで、肝臓の機能が損なわれ、食欲が低下したり体重が減ったりするような症状がみられます。また、がんの進行に伴い、がん悪液質という状態になって食欲低下や倦怠感が起こることがあります。
肺がんステージ4の症状に自覚症状はある?
肺がんステージ4になると、以下のような症状が現れる可能性があります。
一方で、副腎への転移など、症状が特にみられないこともあります。
頭痛や吐き気
肺がんの脳転移により、強い頭痛や吐き気が生じることがあります。進行すると、意識障害や視力低下を伴うこともあるため注意が必要です。
手足の動かしづらさ、排尿・排便コントロールが困難になる
肺がんが脳に転移したり、脊椎に転移して脊髄を圧迫したりすると、手足の麻痺が起こったり、排尿・排便コントロールが困難になる可能性があります。特に、がんによる脊髄圧迫は緊急性が高いです。
背中や腰の痛み
肺がんが骨に転移すると、その部位に痛みが生じる可能性があります。
特に、背骨の骨である脊椎に転移すると、腰痛や背中の痛みが引き起こされます。
肺がんから転移しやすい部位
肺がんは、リンパ液の流れにのってリンパ節に転移する他、血液に乗ってさまざまな部位に転移することが知られています。ここでは、肺がんが転移しやすい他の臓器について解説します。こうした症状が見られる場合には、肺がんの治療を受けている場合には主治医に早めに報告しましょう。
骨
骨は肺がんの転移する部位として代表的なものの一つです。特に、非小細胞肺がんというタイプの肺がんでは、最も一般的な転移部位は骨であるとする報告もあります。
痛みや神経症状の他、がんの骨転移により血液中のカルシウム濃度が高くなり、口渇、多飲といった脱水症状やイライラ感や昏迷、昏睡といった症状が引き起こされることもあります。
脳
肺がんは脳にも転移しやすく、記憶障害や頭痛、吐き気などの症状を引き起こすことがあります。
肝臓
肺がんは肝臓にも転移しやすいとされています。
肺がんが肝臓に転移すると、お腹の右側の不快感や痛み、嘔気、食欲不振や体重減少などが現れることがあります。また、腹水といってお腹に水が溜まる状態になったり、黄疸が現れたり、皮膚のかゆみが生じるということもみられます。
肺がんステージ4の余命・生存率
肺がんの遠隔転移がある場合、つまりステージ4の5年生存率は6.4%と報告されています。
ステージ3も、肺から離れたリンパ節に転移したり、肺がんそのものが大きくなったりした状態です。しかし、ステージ4との違いは脳や骨、肝臓、副腎など他の臓器や、もう一方の肺などへ転移があるかどうかなどの点です。
ステージ4の肺がんは完全に治すことは難しいため、症状を和らげることが治療の中心となります。
治療は転移している部位や患者さんの状態に応じて選択されます。
呼吸器内科や放射線治療科、整形外科、腫瘍内科、緩和ケア科など複数の科が協力し、治療にあたります。
肺がんステージ4の検査法
肺がんステージ4では、がんが他の臓器やもう一方の肺などに転移しています。肺のレントゲン検査は肺がんそのものをチェックすることができますが、ステージ4肺がんの場合にはその詳細を調べるためには以下のような検査方法があります。
MRI検査
MRI検査は、磁気を用いた画像検査です。
骨や脳への転移を詳細に調べることが可能です。
所要時間は約30分から1時間程度です。
呼吸器内科や整形外科、脳神経内科や神経内科が検査をオーダーして放射線科で検査を行います。
外来で検査を受けることが可能です。
PET-CT検査
PET-CT検査は、PET検査、CT検査という2つの異なる画像検査を重ねるものです。
PET(positron emission tomography:陽電子放出断層撮影)は、FDG(放射性フッ素を付加したブドウ糖)を使って行います。がん細胞は正常な細胞よりもブドウ糖を多く取り込むという性質を持ちます。そのため、PET-CT検査ではがんが全身にどれくらい広がっているかを詳細に検査することができます。
呼吸器内科や腫瘍内科などがオーダーをし、放射線科で検査を行います。
所要時間は、全部で2時間程度です。まずFDGの薬の注射を行い、薬が注射後1時間くらいで全身に分布します。それから約30分程度の撮影を行います。外来で検査可能です。しかし、検査当日は検査前5〜6時間前から糖分の摂取は不可です。
骨シンチグラフィ
骨への転移があるかどうかを調べる検査です。放射性物質を含む薬剤を静脈に注射し、骨の中でがんが存在する部位に集まる様子を画像で確認します。
呼吸器内科や整形外科のオーダーで、放射線科が検査を行います。
所要時間は、全部で約4時間程度です。まず骨シンチグラフィの薬の注射を行い、薬が注射後3時間くらいで全身に分布します。それから約30分程度の撮影を行います。この検査だけならば、食事や飲み物の制限はありません。
呼吸器内科などのオーダーで、放射線科が検査を行います。
肺がんステージ4の治療法
肺がんステージ4の場合には、全身を治療する薬物療法が基本となります。しかし、転移によっていろいろな症状が現れている場合には、それぞれに応じた治療が必要となります。
薬物療法
肺がんステージ4の場合、通常は肺がんそのものに対する手術は適応とならず、薬物治療が中心となります。
がん遺伝子に異常が認められる場合は、それに対応した分子標的治療薬を使用して治療を行います。 一方、がん遺伝子に異常はないものの、がん細胞の表面にPD-L1というタンパク質が多く発現している場合は、免疫チェックポイント阻害薬の効果が期待できます。そのため、免疫チェックポイント阻害薬を単独で使用するか、細胞障害性抗がん薬と併用する治療を検討します。
治療は呼吸器内科や腫瘍内科で行われます。導入時の初回のみ入院が必要となることも多いです。
放射線治療
骨転移や脳転移に対しては、その症状を和らげるために放射線治療を行います。
放射線の線量や回数は患者さんの容体によっても異なりますが、3Gy/回を10回照射する方法が一般的です。骨転移の場合には、8Gy/回を1回のみ照射するなど、短期で終了する方法も取られます。
放射線治療自体は患者さんの一決めなども含めると30分以内には終わり、外来でも治療は可能です。しかし、痛みや麻痺などの症状が強く出ている場合には、入院した上で放射線治療が行われる場合もあります。
手術
骨転移によって、特に脊椎の骨折の可能性が高い場合、手術が行われることもあります。
患者さんの体力や転移の状況に応じて、経皮的脊椎固定、後方徐圧固定、などが選択されます。
整形外科の医師が手術を行います。入院が必要です。手術後には医師の指示のもと、筋力トレーニングや有酸素運動などのリハビリテーションが行われます。
「肺がんステージ4の症状」についてよくある質問
ここまで肺がんステージ4の症状などを紹介しました。ここでは「肺がんステージ4の症状」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
肺がんステージ4と診断された場合、完治しますか?
羽田 裕司 医師
肺がんステージ4と診断された場合、完治することは難しいです。しかし、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬の治療によって、生存期間が改善される例もみられてきています。ステージ4であっても、主治医とよく相談し、治療方針について検討してみることが大切です。
肺がんの進行スピードは早いのでしょうか?
羽田 裕司 医師
肺がんの進行スピードは、肺がんのタイプによって異なります。
小細胞肺がんという種類の肺がんは、特に進行速度が早く、他の臓器に転移しやすいとされています。非小細胞肺がんは小細胞肺がんに比べると進行はゆっくりである場合が多いですが、中には早く進行するタイプもあります。
一般的に、肺がんは初期症状が少なく、発見時には進行していることが多いため、早期診断が重要です。
編集部まとめ
肺がんステージ4は根治が難しいものの、適切な治療で生活の質を維持できる可能性があります。定期的な健康診断での早期発見、禁煙などの予防策も重要です。
「肺がん」と関連する病気
「肺がん」と関連する病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
肺がんと関連する病気には、これらのようなものがあります。咳や痰などの症状が続く場合には、医療機関を受診しましょう。
「肺がん」と関連する症状
「肺がん」と関連している、似ている症状は15個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
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- 食欲不振
- 意識障害
- 頭痛
- 吐き気、嘔吐
- 黄疸
- 手足の麻痺
肺がんと関連する症状には、上記のようなものがあります。特に、肺がんが別の臓器に転移すると、さまざまな症状が起こります。気になる症状がある場合には、医療機関を受診しましょう。