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「スキルス胃がん」は胃カメラで「見落とされる」?信頼できる検査方法について医師が解説!

 更新日:2025/08/15
「スキルス胃がん」は胃カメラで「見落とされる」?信頼できる検査方法について医師が解説!
胃がんのなかでも、スキルス胃がんは胃壁全体に広がり、初期段階では内視鏡での発見が困難な特殊なタイプのがんです。そのため、診断が遅れ、進行した段階で発見されることが多く、予後が不良であるとされています。本記事では、スキルス胃がんの特徴、症状、予後を詳しく解説するとともに、見逃しを防ぐための検査方法や生活習慣の改善策も解説します。
井林雄太

監修医師
井林雄太(井林眼科・内科クリニック/福岡ハートネット病院)

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大分大学医学部卒業後、救急含む総合病院を中心に初期研修を終了。内分泌代謝/糖尿病の臨床に加え栄養学/アンチエイジング学が専門。大手医学出版社の医師向け専門書執筆の傍ら、医師ライターとして多数の記事作成・監修を行っている。ホルモンや血糖関連だけでなく予防医学の一環として、ワクチンの最新情報、東洋医学(漢方)、健康食品、美容領域に関しても企業と連携し情報発信を行い、正しい医療知識の普及・啓蒙に努めている。また、後進の育成事業として、専門医の知見が、医療を変えるヒントになると信じており、総合内科専門医(内科専門医含む)としては1200名、日本最大の専門医コミュニティを運営。各サブスぺ専門医、マイナー科専門医育成のコミュニティも仲間と運営しており、総勢2000名以上在籍。診療科目は総合内科、内分泌代謝内科、糖尿病内科、皮膚科、耳鼻咽喉科、精神科、整形外科、形成外科。日本内科学会認定医、日本内分泌学会専門医、日本糖尿病学会専門医。

スキルス胃がんとは?特徴と症状、予後を解説

本章では、スキルス胃がんの特徴、症状、そして予後を解説し、スキルス胃がんの全体像を知っていただきます。

スキルス胃がんの特徴

スキルス胃がんは、胃がんのなかでも胃壁全体に広がる特殊なタイプのがんです。胃の壁を硬く厚くしながら進行し、粘膜の表面に大きなしこりや潰瘍を作らないのが特徴です。がん細胞が胃の壁内に散らばるように増殖するため、早期には内視鏡で見ても異常がわかりにくい場合があります。進行が大変早く、がん細胞がお腹の中に広がる転移(腹膜播種)が起こりやすく、症状が出て気付いたときにはかなり進行していることが多いがんです。

スキルス胃がんの症状

スキルス胃がんに特有の初期症状はありません。一般的な胃がんと同様に、胃もたれや胃痛、胸やけ、食欲不振、吐き気、黒色便などが起こることがあります。しかし、スキルス胃がんでは初期には自覚症状が乏しく、症状があらわれたときにはすでに病状がかなり進んでいるケースが少なくありません。胃の壁全体が硬くなるため、進行すると少量の食事でお腹がいっぱいになることや、体重減少、腹水によるお腹のハリなどが現れることもあります。

スキルス胃がんの予後

スキルス胃がんの予後は不良とされています。スキルス胃がんは内視鏡による発見が難しい場合もあり、早期に発見ができず進行してから見つかることもあります。早期発見により治療が行われることもありますが、腹膜播種にまで及んでいると予後は悪くなってしまいます。

スキルス胃がんを見落とさないための検査方法

スキルス胃がんの見落とし防止には、通常の胃カメラに加えて新しい技術や補助検査を活用することが有効です。主な対策として次のような方法があります。

高精度の内視鏡(拡大内視鏡・NBI観察)

近年、内視鏡そのものの性能が向上し、特殊な観察モードが開発されています。拡大内視鏡は病変部を詳細に拡大して観察でき、NBI(狭帯域光観察)は特殊光で粘膜表面の微細な構造や血管を強調表示する技術です。通常の白色光では見えにくいごく小さな病変も検出しやすくなるため、これらを組み合わせることで従来は見落としていたような早期がんも発見できるようになりました。スキルス胃がんでも、ごく初期に粘膜表面に現れるわずかな変化をこれら内視鏡ならとらえられる可能性があります。

MRI

内視鏡検査で異常が疑われる場合や、胃の状態を総合的に評価するために画像診断を併用することがあります。造影CT検査は胃の周囲臓器への浸潤やリンパ節転移の有無を調べる検査で、場合によってMRI検査やPET検査も行われます。MRIは軟部組織のコントラストに優れ、胃壁の厚みや周辺への広がりを精密に描出できます。特に拡散強調MRI画像では微細な組織の変化をとらえられるため、スキルス胃がんによる胃壁肥厚の評価に有用です。

AI(人工知能)による画像診断支援

医療のAI活用も進んでおり、内視鏡画像をAIが解析してがんを見つける試みが行われています。内視鏡専門医レベルの精度で病変を検出できるAIも登場しており、熟練度の差による見逃しを補う技術として期待されています。例えば、国立がん研究センターなどの研究では、ディープラーニングを用いたAIが早期胃がんの94.9%を検出できたと報告されています。

これはほぼ専門医と同等の感度であり、病変の範囲判断(広がりの予測)も専門医とほぼ一致する結果でした。このようにAI診断補助を活用すれば、スキルス胃がんのような発見が難しい病変でも、人間の見落としを減らし早期発見できる可能性があります。ただし、AIはまだ実用化途上であり、過信は禁物ですが、今後ますます精度が向上し臨床現場で役立つことが期待されています。

スキルス胃がんについてよくある質問

ここまでスキルス胃がんの一般的な内容を紹介しました。ここでは「スキルス胃がん」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

スキルス胃がんを早期発見するためにできることは?

井林雄太医師井林 雄太(医師)

まず定期的に胃の検診を受けることです。50歳以上なら2年に1度は胃内視鏡または胃透視検査を受けましょう。若くても、胃の不調が続く場合やピロリ菌感染があるとわかった場合には、年齢に関係なく早めに内視鏡検査を受けることをおすすめします。
次に、ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌です。ピロリ菌感染者が除菌治療を受けることで将来の胃がん発症リスクを大きく下げられます。
また、日頃から塩分を控えめにし、野菜や果物をしっかり摂るなど食生活を整え、喫煙者は禁煙も重要です。これら生活習慣の改善は直接スキルス胃がんを防ぐ特効薬ではありませんが、胃の健康を保ち結果的にリスクを下げます。
最後に、自覚症状に敏感になることです。少しでもおかしいと思う胃の症状があれば我慢せず医療機関で検査を受けてください。症状を放置せず早めに対応することで、結果的に早期発見につながる可能性が高まります。

スキルス胃がんはどのような人がかかりやすい?

井林雄太医師井林 雄太(医師)

ピロリ菌感染者はあらゆる胃がんのリスクが高くなりますので、感染している方は注意が必要です。また、家族に若くしてスキルス胃がんになった方がいる場合も注意が必要です。まれに遺伝的要因で若年発症するケースもありますが、これはごく一部です。さらに、飲酒習慣も関与が考えられており、お酒をたくさん飲むことも胃がんになりやすいとされています。

胃がんと診断されたらセカンドオピニオンを受けるべき?

井林雄太医師井林 雄太(医師)

セカンドオピニオンとは、今診てもらっている主治医とは別の専門医に診断や治療方針の意見を求めることを言います。胃がんのような重大な病気では、主治医の説明だけでなくほかの専門医の話も聞いてみることで、病気への理解が深まり納得して治療に臨みやすくなります。
別の医師からまったく新しい治療法や見解が示されれば治療の選択肢が広がりますし、たとえセカンドオピニオンの結果が主治医と同じ内容だったとしても、「やはり今の方針で間違いないんだ」と安心できるメリットがあります。
遠慮せず希望する旨を主治医に伝えましょう。主治医に紹介状や検査データ一式を準備してもらい、できれば胃がん治療の経験が豊富な病院(がん専門病院や大学病院など)の医師に相談するとよいでしょう。ただし、セカンドオピニオンは自由診療(保険適用外)で費用がかかったり、受診のために時間が必要な場合もあります。治療開始を大きく遅らせない範囲で、早めにセカンドオピニオンを活用するとよいでしょう。

まとめ

スキルス胃がんは、早期発見が極めて難しいために進行した段階で診断されるケースが多く、その予後はほかの胃がんに比べて大変厳しいものとなっています。そのため、定期検診や生活習慣の見直しにより、早期発見の可能性を高めることが重要です。今回の記事でご紹介した検査方法や予防策を参考に、少しでも早い段階での診断・治療につなげることができれば幸いです。

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  • 胃ポリープ
  • 慢性胃炎
  • MALTリンパ腫

関連する症状

  • 上腹部の痛み
  • 食欲不振
  • 体重減少
  • 吐き気・嘔吐
  • 黒色便
  • 胸やけ
  • 胃もたれ
  • 腹部膨満感
  • 全身倦怠感

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