「声帯ポリープ」で咳が止まらない…対処法やほかに疑われる病気を医師が解説！

咳が長引く、特に痰が切れない感じがするとき、その原因は声帯ポリープかもしれません。声帯ポリープは主に声のかすれ（嗄声、させい）など声の異常を引き起こす良性の病変ですが、人によっては喉の違和感から咳が続くこともあります。ただし、咳が止まらない症状にはその他の原因が考えられるため、安易に自己判断せず適切な診断と対処を受けることが重要です。本記事では、声帯ポリープの概要や症状、咳が止まらない場合の対処法を、耳鼻咽喉科の視点から解説します。また、咳が続くときに疑われるほかの病気も概説し、よくある疑問にもお答えします。

声帯ポリープの概要と代表的な症状

本章では声帯ポリープの概要や原因、その他代表的な症状を解説します。

声帯ポリープの概要

声帯ポリープとは、喉の声帯に生じる良性の腫瘍です。声帯の表面に炎症が起こり、血管が損傷して出血し、その血の塊や組織が隆起してポリープが形成されます。大きさは米粒大から栗粒大程度までさまざまで、通常は左右どちらか一方の声帯に発生します。発症しやすいのは、以下のような要因が挙げられます。

声の酷使 無理に大きな声を出すこと 喫煙 その他の要因 逆流性食道炎や慢性的な副鼻腔炎による後鼻漏など

このように、声帯ポリープは声の出し過ぎや喉への刺激が引き金となって起こります。

声帯ポリープの症状

声帯ポリープの主な症状は嗄声、いわゆる声枯れです。ポリープが声帯の振動や閉鎖の妨げになるため、声がかすれたり、高い声が出しづらくなったりします。また声が途切れやすい、長く話していると声が疲れて出なくなる（音声疲労）といった症状も見られます。また、異物感を感じることもあります。まれな症状ですが、大きな声帯ポリープでは気道（声門）を一部ふさいでしまい、呼吸がしにくくなることもあります。

声帯ポリープの治療法

声帯ポリープの治療は大きく保存的治療と手術治療に分けられます。治療の基本は、まず原因となった声帯への負荷を取り除くことです。具体的には以下のような方法があります。

保存的治療

ポリープが小さく発症して間もない場合や、症状が軽い場合には、声をできるだけ使わないようにすることでポリープが小さくなったり消失したりすることがあります。通常1〜2週間程度、会話や発声を極力控えます。また、必要に応じて発声の言語聴覚士による発声指導・音声治療を行います。 また、消炎薬（抗炎症薬）やステロイド薬を使った治療が行われることがあります。例えば、炎症を抑える内服薬、ステロイドの吸入療法などにより声帯の炎症・腫れを軽減し、ポリープが小さくなることが期待できます。

手術療法

保存的治療や薬物療法で改善しない場合、手術によるポリープ摘出が検討されます。手術は全身麻酔下で喉頭顕微鏡という器械を口から挿入し、顕微鏡下でポリープを直接切除します。

声帯ポリープで咳が止まらないときの対処法

声帯ポリープがある状態で咳が止まらない場合、まずは声帯への負担を減らしつつ咳を和らげる対処を行いましょう。咳自体が声帯を振動させポリープ部を刺激するため、頻繁な激しい咳込みはポリープの治癒を妨げる可能性があります。以下に、咳が続く場合の一般的な対処法を紹介します。

喉を潤す

喉の乾燥は咳を誘発しやすくなります。こまめに水分を補給しましょう。ただし、カフェインやアルコール入りの飲料は喉を乾燥させる恐れがあるため避け、白湯やハーブティー、蜂蜜レモン入りのお湯など刺激の少ない飲み物が適しています。

声帯を安静にする

声帯ポリープの基本は声の安静ですので、会話や発声をできるだけ控えることが重要です。咳込みそうになったらできるだけ喉を潤して息を整え、強い咳払いや大声での呼気排出を避けるよう心がけましょう。

喫煙や飲酒を控える

喫煙は喉を直接刺激し炎症を悪化させるだけでなく、タバコの成分が咳反射を誘発します。ポリープがある場合は禁煙が必須です。また、アルコールも喉を乾燥させることがあるため、症状が落ち着くまでは控えるほうが望ましいでしょう。

咳が止まらない場合に考えられるほかの病気

長引く咳は声帯ポリープ以外にもさまざまな病気で起こります。以下に、咳が止まらないときに考えられる主な疾患をいくつか挙げます。

急性または慢性喉頭炎

喉頭（声帯を含む喉の部分）の粘膜がウイルス感染などで炎症を起こす喉頭炎では、声枯れとともに激しい咳が出ることがあります。急性喉頭炎は風邪の延長で起こることが多く、発熱や喉の痛みを伴い、声がれと乾いた咳が主な症状です。多くは1〜2週間程度で改善しますが、長引く場合は慢性喉頭炎に移行し、喉の不快感や咳が続くこともあります。

ポリープ様声帯

ポリープ様声帯は声帯そのものが左右ともに全体的にむくんで肥厚する病態です。主な原因は喫煙で、ほかにも声の酷使や胃酸の逆流が誘因となります。声帯全体が重く厚くなるため低くしわがれた声が特徴です。喉の違和感や乾燥感を伴うことが多く、乾いた咳が出ることもあります。

気管支喘息・咳喘息

咳が長引く場合、気管支喘息が原因の可能性があります。喘息では気道が慢性的に炎症し過敏になっているため、夜間から明け方にかけての咳発作が典型的です。喘鳴（ゼーゼー・ヒューヒューという呼吸音）を伴う場合もあれば、咳だけが続く咳喘息というタイプもあります。

まとめ

声帯ポリープは喉の酷使や喫煙などによって生じる良性の疾患です。しかし、生活習慣や職業と密接に関わりがあるため、意識した生活を行わなければ改善するのが難しい疾患です。長引く咳や声のかすれなどがあれば耳鼻咽喉科を受診し、適切な対応を行うことができれば早期に症状が軽快していくかもしれません。本記事が声帯ポリープに関する悩みを解消し、皆さんの次の行動につながれば幸いです。

関連する病気

• 喉頭がん
• 胃食道逆流症
• ポリープ様声帯
• 喘息
• 咳喘息
• 喉頭炎

関連する症状

• 嗄声
• 長引く咳
• 喉の異物感