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「乳がんが骨に転移」したらどんな症状が現れるかご存知ですか?医師が解説!

 公開日:2025/01/24
「乳がんが骨に転移」したらどんな症状が現れるかご存知ですか?医師が解説!

Medical DOC監修医が乳がんが骨に転移した場合の症状・検査方法・治療法・余命・転移しやすい場所などを解説します。

山田 美紀

監修医師
山田 美紀(医師)

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慶應義塾大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、総合病院や大学病院にて形成外科、外科、乳腺外科の研鑽を積んできた。医学博士。日本外科学会 外科専門医、日本乳癌学会 乳腺認定医、検診マンモグラフィー読影認定医(A判定)の資格を有する。

「乳がん」とは?

乳がんは乳腺に発生する悪性腫瘍です。乳がんは血液やリンパ液の流れに乗って移動し、乳房から離れた場所で増えることがあります。これを「転移」といいます。乳がんがよく転移する場所の1つが骨です。この記事では、乳がんが骨に転移したらどうなるのか、その症状についてなど詳しく解説します。

乳がんが骨に転移したらどうなる?

転移を有する乳がん患者さんのうち、50%以上に骨転移があるといわれています。術後10年以上たってから転移することもあります。術後いつから骨に転移する心配はなくなると言うことはできません。
骨転移した場合は、完治が難しくなります。がんの進行を抑え、痛みなどの症状を和らげる治療を行います。転移しやすい骨は背骨、骨盤、肋骨、大腿骨、上腕骨、頭蓋骨です。肘や膝より先の骨に転移することは稀です。

乳がんが骨に転移した場合の症状

骨転移によってさまざまな症状が出る可能性があります。

骨の痛み

骨に転移があると、痛みを感じることがあります。背骨に転移すると首や背中の痛み、骨盤に転移すると腰に痛みを感じます。転移場所が大腿骨だと太ももの痛み、上腕骨だと肩や腕に痛みが出ます。骨転移の痛みは長く持続する、徐々に悪化するなどの特徴があります。症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

骨折

背骨、骨盤や大腿骨は体重がかかり、転移があると骨折を伴うことがあります。強い痛みが出る可能性があります。骨折のリスクがある場合は、負荷のかかる動きや転倒に注意しましょう。症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

麻痺

背骨に転移した腫瘍が大きくなる、または背骨の骨折により神経(脊髄)が圧迫されると手足のしびれや麻痺が出ることがあります。転移の場所によっては、排便や排尿が難しくなることがあります。症状がある場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。

のどが渇く

骨転移によって、骨が溶け、血液中のカルシウム濃度が高くなる(高カルシウム血症)とさまざまな症状がでます。はじめは無症状ですが、のどが渇くなどの症状が出ることがあります。高カルシウム血症を放置すると、脱水症状がひどくなり、腎機能の低下、不整脈が起こり致命的になる可能性があります。症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

胃のむかつき、吐き気

高カルシウム血症になると胃腸の働きが悪くなります。胃のむかつき、吐き気や嘔吐などの消化器症状が出ることがあります。症状がある場合は、医療機関を受診しましょう。

乳がんが骨に転移した場合の検査法

乳がんが骨に転移した場合には、以下のような検査が行われます。

骨シンチグラフィ

乳がんの骨転移を疑う場合、乳腺科で骨シンチグラフィを行います。入院の必要はありません。放射性医薬品を用いて行う画像検査であり、全身の骨を一度に検査することができます。しかし、骨転移とは関係のない骨折、感染、打撲や関節症にも反応してしまうため、他の検査が必要となることがあります。

PET-CT

乳がんの転移の診断のためにPET-CTを行うことがあります。外来で検査を行います。放射性医薬品を用いて行う画像検査であり、全身の骨を検査できます。骨転移だけではなく、他の臓器の転移も診断できる点がメリットです。ブドウ糖を使用する検査であり、食後や糖尿病の患者さんには実施できない場合があります。

CT

骨シンチグラフィやPET-CTで骨転移が疑われる場合、CTを行います。入院の必要はありません。この検査によって、骨の変形具合や骨折の危険性の評価を行います。

MRI

骨転移を疑う異常所見がある場合、MRIを行います。入院の必要はありません。MRIによって骨転移の有無や範囲を調べることができます。さらに背骨に転移した場合は神経を圧迫しているかどうかも調べられます。

血液検査

血液検査で血液中のカルシウム濃度を検査できます。基準値より高い場合、高カルシウム血症と診断します。

骨生検

画像検査で骨転移の診断が難しい、または治療方針決定のために、骨の病変の一部を採取して病理検査をすることがあります。針を刺して組織を採取する針生検や手術によって採取する切除生検があります。入院をして検査を行うことが多いです。

乳がんが骨に転移した場合の治療法

乳がんが骨に転移した場合は完治を目指すことが難しくなります。がんの進行を抑える治療と症状をやわらげるための治療を行います。

乳がんに対する薬物療法

骨転移がある場合は身体全体にがん細胞が存在している可能性があるため、全身に効果が行き届く薬物治療を行います。治療は乳腺科に通院して行います。ホルモン療法、分子標的薬、化学療法、免疫療法などの薬物治療があります。乳がんのタイプや進行度、患者さんの状態に合わせて治療を選択します。

骨修飾薬

乳がんが骨に転移すると、骨を溶かす細胞(破骨細胞)が活発になり、骨がもろくなります。骨修飾薬は破骨細胞の働きを抑え、骨でのがん細胞の増殖を抑制します。骨転移による症状をやわらげ、骨折などのリスクを減らす効果があります。骨修飾薬にはゾレドロン酸(ビスホスホネート製剤)やデノスマブ(抗RANKL抗体)があります。乳がんに対する薬物療法と並行して、乳腺科で治療を行います。副作用として顎骨壊死に注意が必要です。虫歯や歯周病がリスクになるため、事前に歯科を受診しましょう。抜歯などの歯科治療が必要な場合は休薬することがあります。

放射線療法

痛みの程度が強い場合、骨転移に対して放射線療法を行うことがあります。放射線治療科に通院して治療を行います。5日または10日間通院する分割照射や1日で行う単回照射が行われています。放射線療法により60~80%の患者さんに対して痛みが改善されたと報告されています。

整形外科手術

大腿骨への転移によって骨折がある場合や骨折のリスクが高い場合、人工骨頭置換術や髄内釘を打ち込む手術を行うことがあります。また、背骨への転移により神経(脊髄)圧迫による麻痺が出てきた場合、圧迫を解除する手術を緊急で行うことがあります。これらの治療は整形外科に入院して行います。手術は身体への負担があるため行うかどうかは医師と相談する必要があります。

鎮痛薬

骨転移の主な症状は痛みです。消炎鎮痛薬や麻薬系鎮痛薬(オピオイド)などを使用して、痛みをやわらげる治療を行います。痛みは我慢せず、担当医と相談して薬の調整をしましょう。

乳がんが骨に転移した後の余命

骨に転移した場合の余命

骨に転移した後の余命が何年なのかは転移の状況や乳がんのタイプによってさまざまです。他の臓器に転移がない場合は余命が長い傾向があります。海外の研究では、骨転移の3年生存率は50.5%と報告されています。

乳がんから転移しやすい部位

骨以外に乳がんから転移しやすい部位についてご紹介します。

肺も乳がんが転移しやすい臓器です。初期の段階では無症状のことが多く、検査で発見されることもあります。症状がある場合は、長引く咳や息苦しさなどがあります。症状が続く場合は、医療機関を受診しましょう。

肝臓

乳がんは肝臓に転移することがあります。肝転移は沈黙の臓器ともいわれ、症状が出づらいです。進行すると、お腹の張り、黄疸、食欲不振、体重減少などの症状が出現してくる可能性があります。気になる症状がある場合は、医療機関を受診しましょう。

乳がんは脳にも転移することがあります。頭痛、めまいや嘔吐などが起こることがあります。転移した場所や程度によっては、麻痺、けいれんや意識障害などの症状が現れることもあります。症状がある場合はすぐに医療機関を受診しましょう。

リンパ節

乳がんはリンパ節に転移することがあります。首のリンパ節など乳房から少し離れたリンパ節に転移した場合は、遠隔転移とみなされます。リンパ節の腫れを自覚することがあります。症状がある場合は、乳腺科を受診しましょう。

皮膚

乳がんが皮膚に転移することがあります。乳房やその近傍の皮膚が多いです。皮膚に赤みやしこりがでます。放置すると潰瘍を形成し、悪臭のある浸出液や出血を伴うことがあります。症状がある場合は、乳腺科を受診しましょう。

「乳がんの骨転移」についてよくある質問

ここまで乳がんの骨転移について紹介しました。ここでは「乳がんの骨転移」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

乳がんが骨に転移した場合、完治するのでしょうか?

山田 美紀山田 美紀 医師

乳がんが骨に転移した場合は、遠隔転移となるため完治は難しくなります。痛みなどの症状をやわらげ、がんの進行を抑える治療を行います。生活の質を保ちながら、長期生存を目指して治療を行います。

乳がんが骨に転移するとどんな痛みを感じやすいのでしょうか?

山田 美紀山田 美紀 医師

骨転移による痛みは数日から数週間、長く持続します。また、徐々に痛みが悪化する傾向があります。症状が持続するときは、医療機関を受診しましょう。

編集部まとめ

乳がんは骨に転移しやすい悪性腫瘍です。乳がんの術後から何年も経過してから転移することもあります。骨転移がある場合は乳がんの進行を抑える薬物治療と並行して、痛みなどの症状をやわらげる治療を行います。骨の痛みが持続する場合は、我慢せずに受診しましょう。

「乳がんの骨転移」と関連する病気

「乳がんの骨転移」と関連する病気は3個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

整形外科の病気

内分泌代謝科の病気

乳がんの骨転移により、病的骨折を起こすことがあります。背骨に転移した場合は腫瘍や骨折により脊髄が圧迫され、麻痺などが生じる可能性があります。症状がある場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。また、骨転移による高カルシウム血症も致命的になる可能性があり、速やかに受診しましょう。

「乳がんの骨転移」と関連する症状

「乳がんの骨転移」と関連している、似ている症状は4個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 骨の痛み
  • 麻痺、しびれ
  • のどの渇き
  • 胃のむかつき、吐き気

骨転移の主な症状は骨の痛みです。進行すると、麻痺などの急を要する症状が出ることがあります。また、高カルシウム血症になると、脱水や消化器症状がでます。放置すると、意識がもうろうとしたり、不整脈を引き起こしたりすることがあるため、速やかに医療機関を受診しましょう。

この記事の監修医師