「子宮頸がんのステージ3」の症状や予後はご存知ですか?【医師監修】
ステージ3の子宮頸がんは、がんが骨盤内や腟まで広がっている進行がんです。
この段階の治療は難しくなりますが、近年の医療技術の進歩により、適切な治療とケアによって予後を改善できる可能性があります。
この記事ではステージ3の子宮頸がんの診断方法、治療方法、予後などについて詳しく解説します。
監修医師:
山本 康博(MYメディカルクリニック横浜みなとみらい)
東京大学医学部医学科卒業 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医 日本内科学会認定総合内科専門医
目次 -INDEX-
子宮頸がんとは?
子宮頸がんは、子宮の入り口にあたる子宮頸部にできるがんで、ヒトパピローマウイルス(HPV)による感染が原因とされています。HPVはごくありふれたウイルスであり、感染しても自然消失することがほとんどです。
しかし一部の方は長期間の感染により、子宮頸部に異形成と呼ばれる前がん病変を生じることがあります。この状態を放置すると、やがて子宮頸がんになります。早期の子宮頸がんは予後がよいとされていますが、ステージが進むにつれて治療が難しくなるため、定期検診や早期発見が重要です。
子宮頸がんの診断方法
子宮頸がんの検査は、がん検診で実施される細胞診検査と検診で異常が見つかった際に行われる精密検査があります。近年のがん検診では細胞診検査に加えてHPV検査と呼ばれる検査も普及してきました。
それぞれの検査方法について詳しく解説します。
細胞診検査
細胞診検査は、子宮頸がん検診で一般的に行われている検査方法です。子宮頸部をヘラやブラシでこすって細胞を採取し、その細胞を顕微鏡で観察することで、がん細胞などの異常な細胞の有無を確認します。
この検査は、生理中だと正しい結果が得られない場合があるため、生理終了後3日経ってから受けることが推奨されています。
HPV検査
HPV検査は細胞診検査で得られる結果に加えてヒトパピローマウイルス(HPV)の感染有無を調べられる検査です。検査方法は、細胞診検査と同じように、子宮頸部から細胞を採取します。
細胞診検査では細胞の状態のみを観察しますが、HPV検査では細胞の状態に加えてウイルスの有無も確認できるため、将来的に子宮頸がんになるリスクをより詳しく評価できます。
組織診検査
組織診検査は、細胞診検査やHPV検査で異常が見つかった場合に行われる精密検査です。コルポスコピー(拡大鏡)を利用して病変部位を拡大しながら観察し、組織を採取して顕微鏡で詳しく調べます。
また場合によっては、子宮頸部を円錐状に切除する円錐切除術を行って、組織診検査を行う場合もあります。
画像検査
子宮頸がんの診断で行われる画像検査は次にあげる4つの検査があります。
- 経腟超音波検査
- MRI検査
- CT検査
- PET検査
経腟超音波検査はプローブと呼ばれる機器を膣に挿入し、子宮や卵巣の状態を観察します。CTやMRI検査ではX線や磁力を用いて全身の臓器を画像化することができます。これらの画像検査で、がんの大きさや広がり以外にもほかの臓器にがんが転移していないか確認することも可能です。造影剤と呼ばれる薬を投与することで、より診断精度が向上します。
PET検査は放射性フッ素を付加したブドウ糖液を注射し、がん細胞に取り込まれるブドウ糖の分布を撮影することで、がんの広がりを調べる検査です。超音波やCT、MRI検査においてがんが転移しているか判断できなかった場合に行います。
ステージ3の子宮頸がんの症状
ステージ3の子宮頸がんは、ほかの臓器への転移は認められていないものの、膣壁や骨盤壁への浸潤や近くのリンパ節に転移がある状態です。ステージ3の子宮頸がんの症状について詳しく解説します。
不正出血
不正出血とは月経時以外に性器から出血することをさします。一般的に早期の子宮頸がんでは症状が現れにくいですが、ステージ3の子宮頸がんは子宮頸部以外に膣壁にも浸潤している状態であり、これらの部位から出血することがあります。
腰痛
ステージ3の子宮頸がんでは、腎臓の機能が影響を受けることがあり、水腎症(腎臓に尿が溜まる状態)を併発する場合があります。この水腎症が原因で腰痛が生じることがあります。
排尿時の痛みや出血
ステージ3の子宮頸がんは、膀胱に直接浸潤はしていないものの膀胱周囲にがんが広がっているため、排尿時に痛みや出血を伴うことがあります。
全身の倦怠感
ステージ3はがんが進行した状態であり、がんの代謝産物や免疫応答が原因で全身の倦怠感を引き起こすことがあります。
ステージ3の子宮頸がんの治療方法
ステージ3の子宮頸がんの治療は、手術が行われることは少なく、化学療法と放射線療法を併用する同時化学放射線療法が行われることが一般的です。ステージ3の子宮頸がんの治療法について詳しく解説します。
化学療法
化学療法は抗がん剤を用いてがん細胞を攻撃・破壊する治療法です。この方法は、原発巣(最初にがんが発生した部位)だけでなく、全身に広がったがん細胞にも効果があります。子宮頸がんの化学療法では、シスプラチンという薬剤を使用することが一般的です。
場合によっては、ほかの抗がん剤の併用やがんの血管新生(新しい血管の形成)を阻害する働きをもつ分子標的薬を使用することもあります。
外科療法
ステージ3ではがんが子宮を越えて広がっているため、手術ですべてのがんを取り切ることが難しく、原則として手術は行われません。しかし、がんの大きさや広がりの状態によっては手術が適用されることがあります。また、化学療法や放射線療法により腫瘍が小さくなった場合、手術が検討されることがあります。
放射線療法
放射線療法は、がん治療の主要な方法のひとつです。高エネルギーのX線やガンマ線を照射し、がん細胞のDNAを傷つけて死滅させる治療法です。
子宮頸がんにおける放射線療法には、身体の外から放射線を照射する外部照射と子宮や腟に治療用の器具を挿入し、そこから直接放射線を照射する腔内照射があります。放射線療法は根治を目的とする場合のほか、手術後の再発防止や痛みの軽減を目的として行われることもあります。
光免疫療法
光免疫療法とは、光に反応する薬を投与し、がん細胞に集まった後にレーザー光を照射してがん細胞を破壊する新しい治療法です。この方法は、正常な細胞には影響を与えないため、患者さんへの負担が少ない治療として注目されています。
ただし、現時点では光免疫療法は子宮頸がんに関して治験段階であり、保険適用されていません。そのため、現状では上記で紹介した化学療法・外科療法・放射線療法が主な治療法となります。
ステージ3の子宮頸がんの予後
ステージ3の子宮頸がんは進行がんに分類され、がんが子宮を越えて浸潤しているため、予後がよいとはいえません。しかし、適切な治療とその後のフォローアップにより、生存率の向上が期待できます。
ステージ3の子宮頸がんにおける3年生存率は約70%、5年生存率は約60%とされています。
3年生存率は70%
ステージ3の子宮頸がんにおける3年生存率は約70%です。ただし、患者さんの年齢・全身状態・がんの大きさや広がり具合・治療による効果によって、生存率に個人差があります。
5年生存率は60%
ステージ3の子宮頸がんにおける5年生存率は約60%です。一般的にがんは5年以内に再発することが多く、手術によりがんを取り切れた場合でも再発リスクがあります。特にがんの浸潤が深い場合やリンパ節転移がある場合は注意が必要です。
治療後の定期健診や日々の健康管理により再発リスクを減らすことで、予後をさらに良好にできる可能性があります。
子宮頸がんのステージ3についてよくある質問
ここまでステージ3の子宮頸がんの症状と治療方法・予後などを紹介しました。ここでは「子宮頸がんのステージ3」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
ステージ3でも子宮を残すことはできますか?
山本 康博(医師)
ステージ3の子宮頚がんは、がんが子宮を越えて骨盤や腟に広がっているため、手術が難しいことがほとんどです。患者さんによっては痛みや出血などで辛い状態のため、緩和治療を行っていることもある段階です。この段階で子宮を残す治療が可能かどうかは限られた状況のみ検討されます。
ステージ3の場合の治療費用はどれくらいですか?
山本 康博(医師)
ステージ3の治療費用は、患者さんの年齢やがんの進行具合で選択される治療法によって異なるため、一概に提示することは難しいです。特に保険適用外の治療や先進医療を受ける場合には高額な費用がかかる場合もあります。一方で、保険適用の治療を選択した場合、高額医療費制度を利用することで自己負担額を軽減できる場合があります。費用に関して不安のある方は、治療方針を決定する際に医師に相談するとともに、病院内のソーシャルワーカーや相談窓口などで具合的な説明を受けるとよいでしょう。
編集部まとめ
子宮頸がんのステージ3は、がんが骨盤内や腟に広がった状態で、異常な出血や下腹部痛などの症状が現れる段階です。
治療は基本的に化学療法と放射線療法を組み合わせた同時化学放射線療法が行われますが、患者さんの年齢や状態に応じて治療法が選択されることもあります。
治療後の定期的なフォローアップが、再発リスクの低減や予後改善につながるため、適切な治療と治療後のケアを心がけましょう。
子宮頸がんと関連する病気
「子宮頸がん」と関連する病気は2個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する病気
- ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症
- 子宮頸部異形成(子宮頚部上皮内腫瘍)
子宮頸がんはHPVの感染が原因なので、HPV感染症にかかっている場合、子宮頸がんになる可能性が高まります。また子宮頸部異形成は子宮頸がんの前段階であるため、注意が必要です。
子宮頸がんと関連する症状
「子宮頸がん」と関連している、似ている症状は6個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 不正出血や性交時の出血
- 異常なおりもの
- 下腹部痛
- 腰痛
- 血尿や血便
- 下肢のむくみ
不正出血や異常なおりものがきっかけで子宮頸がんが発見されるケースも少なくありません。一方、血尿や血便・下肢のむくみは子宮頸がんが進行した段階でみられる症状です。これらの症状がみられた場合には、早めに医療機関を受診することをおすすめします。