「胃がんの予防法」はご存知ですか?予防する可能性の高い食べ物も医師が解説!
胃がんの予防法とは?Medical DOC監修医が胃がんの予防法・胃に負担をかけやすい食べ物・予防する食生活などを解説します。
監修医師:
和田 蔵人(わだ内科・胃と腸クリニック)
目次 -INDEX-
「胃がん」とは?
胃がんは、正常な胃の粘膜がさまざまな危険因子にさらされることで変化し、がん細胞が発生したものです。
胃は食べ物の通り道であり、食べ物の影響を受けやすいです。また、飲み水や食べ物と一緒に口からピロリ菌が体内に入る事によって感染し、胃がんが発生する危険因子となります。このように、胃がんの発生には食事の与える影響が多く、予防をするためには、食事について考えることが大切です。
胃がんの予防法
ピロリ菌の除菌
ピロリ菌の感染が胃がんの最も重要な危険因子であるとわかっています。日本では衛生環境が改善され、若い世代での感染率は低下しています。しかし、1970年代生まれでのピロリ菌感染率は34.9%、1960年代生まれで49.1%、1950年代生まれで59.1%[陽伊1] と高齢になるほどピロリ菌の陽性率が高く、注意が必要です。ピロリ菌の感染が判明した場合、除菌することで胃がんの発生率が低下することが分かっています。しかし、完全にリスクがなくなるわけではないため、定期的ながん検診は重要です。
また、ピロリ菌は胃潰瘍や十二指腸潰瘍の原因でもあります。潰瘍を繰りかえす方では、除菌をすることで潰瘍の再発を予防することもできます。
塩蔵食品を控える
塩分は血圧を上昇させ、循環器疾患のリスクになります。一方、漬物や干物、塩蔵魚、魚卵などの塩蔵食品は胃がんの危険因子です。塩分濃度が高いという事以外に、塩蔵の過程で生成されるニトロソ化合物が胃がんのリスクをあげているのではないかと考えられています。野菜や魚介類はカリウムやEPAなど体に良いとされる栄養素も多く含んでいます。このため、健康を考え、野菜や魚介類を積極的に摂取している方もいるでしょう。野菜や魚介類を食べる際には、薄味のものや生鮮ものを選択すると良いでしょう。
禁煙をする
日本人において喫煙者は非喫煙者と比較し、2倍胃がんになりやすいと報告されています。また、そのほかの多くのがん(肺がん、食道がん、膵臓がん、大腸がん、肝細胞がん、膀胱がん、頭頚部がんなど)においても、危険因子です。喫煙は「百害あって一利なし」と言われています。禁煙を心がけましょう。一定の条件を満たせば、禁煙外来を利用して禁煙を補助する治療を受けることもできます。相談をしてみましょう。
節酒
日本人の男性において飲酒量が1日当たりエタノール摂取量で1日23g(日本酒1合、ビール500ml、ワイン120ml、焼酎1合)以上の場合に胃がんのリスクが有意に上昇すると報告されています。アルコール量が増えるほどそのリスクは上昇し、お酒を飲まない人と比較し、1日当たりのエタノール摂取量が23~46gで1.09倍、46~69gで1.18倍、69~92gで1.21倍、92g以上で1.29倍とリスクの上昇がみられます。この結果は女性では見られませんでしたが、女性では飲酒量が少ない方が多かったためと考えられ、男性と同様に節酒することがお勧めです。アルコール量を23g(日本酒で1合)未満の節酒を心がけましょう。
定期的な検診
胃がんは初期では症状が出にくいです。2019年のがん患者罹患数の調査において、男性で3位、女性で5位と日本人で比較的多いがんといえます。胃がんはピロリ菌が陽性の場合には除菌と、胃の定期的な検診や検査を受け、早期に発見することが非常に大切です。日常的な予防とともに、定期的な胃がん検診も行いましょう。
胃に負担をかけやすい食べ物・食生活
胃の調子が悪い時に、どのような食べ物を避けるべきか解説します。
高塩分食
胃がんの危険因子としても、塩蔵食品が報告されています。また、塩分が高い食べ物は、胃の粘膜を刺激して胃酸の分泌が多くし、胃炎の原因ともなります。
普段から、塩分は少なめの味付けに慣れることも良いでしょう。
脂肪の多いもの
脂質が多い食事は消化・吸収に時間がかかり、胃に負担をかけやすいです。胃腸の調子が悪い時には脂質が多い食事は避け、あっさりとしたヘルシーな食事を摂ることをお勧めします。
刺激が強いもの
刺激が強い辛い食べ物や酸味のある食べ物も胃の粘膜を刺激して、胃酸の分泌を促します。このため、胃が荒れやすくなり不調の原因となります。胃の調子が悪い時には、薄味の食べ物とし、辛い物や酸味のあるものは食べないようにしましょう。
食物繊維の多いもの
食物繊維は消化されにくいため、胃腸に負担をかけます。便秘や大腸がんの予防には良いとされますが、胃腸の調子が悪い時には食物繊維の多い根野菜やきのこ類などは控えましょう。柔らかい食べ物を摂取することをお勧めします。
アルコール・カフェイン
多量の飲酒は胃がんの原因にもなり、注意が必要です。胃腸の調子が悪い場合には、アルコールの摂取を控えた方が良いでしょう。
また、コーヒーなどのカフェインを多く含むものは、胃酸の分泌を促進する働きがあります。胃酸が出すぎることで、胃粘膜に悪影響を及ぼします。調子が悪い時には摂取を控え、カフェインの入っていない飲料を選びましょう。
胃がんを予防する食べ物・食生活
胃がんを予防するためにはどのような食事が勧められるでしょうか。今までの報告で胃がんの予防効果があると報告があるものをいくつかご紹介します。
減塩食
塩蔵食品の摂取は胃がんのリスクとなります。漬物や干物、魚卵(たらこ、すじこなど)などの塩蔵食品の摂りすぎに気を付けましょう。
節酒
アルコールの過剰摂取は胃がんのリスクとなります。1日平均のアルコール摂取量として日本酒1合、ビール500ml、ワイン1杯(120ml)未満の適量での節酒が勧められます。
野菜・果物を摂取する
野菜や果物の摂取量が多い群では胃がんのリスクの低下がみられたと報告されています。抗酸化作用のある成分が多い野菜や果物を摂取することで、ピロリ感染などによる細胞のダメージを抑える効果があるのではないかと考えられています。しかし、この研究は他の危険因子の影響についての検討が不十分であり、現在のところ確実なものではありません。しかし、野菜や果物などをバランスよく摂取することは胃がんの予防として効果が期待できるため、なるべくバランスよく摂取することをお勧めします。
ヨーグルト
ヨーグルトは乳酸菌を含み、整腸作用があると言われています。この乳酸菌の中でも「lactobacillus gasseri OLL 2716株」(LG21)は、他の乳酸菌に比べ高い胃酸耐性と胃粘膜付着能を持つのが特徴で、ピロリ菌に感染しにくくしたり、感染したピロリ菌の減少効果がると報告されています。しかし、このヨーグルトのみで完全に治療ができるわけではありません。定期的な検診は必要です。
食品であるため、取り入れやすい予防法であると考えられます。気になる方は是非試してみてください。
緑茶を飲む
日本人女性においては、緑茶の摂取が胃がんのリスクを低下させる可能性があるという報告がありますが、結論ははっきりしていません。また、男性に関しては、現在のところ胃がんリスクとの関連が認められていません。緑茶のポリフェノールの抗酸化作用などにより胃がんを予防できる可能性があるのではないかと期待されていますが、今後の研究結果が待たれます。
「胃がんの予防法」についてよくある質問
ここまで胃がんの予防法などを紹介しました。ここでは「胃がんの予防法」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
胃がんを予防するために生活習慣で気をつけるべきポイントについて教えてください。
和田 蔵人 医師
胃がんを予防するためには、禁煙、節酒とともに塩蔵食品を控える、野菜、果物をバランスよく食べることも重要です。また、LG21乳酸菌を含むヨーグルトの摂取などを検討することも良いでしょう。
しかし、いずれの方法も完全ではなく、定期的な検診を併用することが大切です。
編集部まとめ
胃がんを予防するためには食事や生活習慣にも気をつけることが非常に大切です。禁煙、節酒は基本です。そのほかにも、塩蔵食品摂取を控える、野菜・果物を多めに摂取することや、ピロリ菌の減少効果や感染予防効果があると言われているLG21乳酸菌を含むヨーグルトの摂取も良いでしょう。
しかし、いずれの予防法も完全ではありません。胃がん検診を定期的に受診するようにしましょう。
「胃がん」と関連する病気
「胃がん」と関連する病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
内科の病気
胃がんと症状が似ているものとして、上記のような病気が挙げられます。症状のみでは区別がつきにくいです。胃痛や吐き気、食欲低下など症状がある場合には消化器内科を受診しましょう。
「胃がん」と関連する症状
「胃がん」と関連している、似ている症状は7個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 胃痛
- 嘔気、嘔吐
- 食欲低下
- 体重減少
- 貧血
- 胸やけ
- 黒色便
胃がんの症状として上記のようなものが挙げられます。症状のみでは胃がんと他の病気の区別がつかないため、これらの症状がある場合には消化器内科で相談しましょう。