「骨髄異形成症候群の余命」はどのぐらい?症状や治療法についても解説!
骨髄異形成症候群は、骨髄の血液を作る細胞に異常が生じることで、赤血球などの血液細胞を正常に作れなくなる病気です。
発症から緩やかに進行するため自覚症状がほとんど認識できない方もおり、健康診断で発見されることも少なくないのが特徴です。
この記事では、発症してからの余命や症状、治療法を解説していきます。
監修永井 恒志
平成15年金沢医科大学医学部卒。東京大学医学部附属病院内科研修医を経て東京大学大学
院医学系研究科教官時代に大型放射光施設SPring8を利用した多施設共同研究(国立循環器
病研究センター、東海大学ほか8研究機関)をリードし、多数の国際医学雑誌に論文を発表した。
特に免疫細胞であるM1マクロファージの画期的な機能の一端を解明した。現在は腫瘍免疫学の
理論に基づきがんの根絶を目指してがん免疫療法の開発と臨床応用を手掛けている。
目次 -INDEX-
骨髄異形成症候群とは?
骨髄異形成症候群とは、血液の中にある赤血球・白血球・血小板などの血液細胞を正常な状態で作れなくなる病気です。
血液細胞は骨の中心部にある骨髄で、血液の源となる造血幹細胞から作られます。骨髄異形成症候群は、造血幹細胞に生じた異常が原因と考えられています。
1つの病気ではなく、複数の疾患からなる病気の集合体で、 原因不明の後天的血液の病気です。何らかの原因により以下の3つが状態が起こります。
- 血球形態異常(異形成)
- 血球機能異常
- 血液細胞が未熟な血液細胞で成長が止まる
骨髄異形成症候群は中高年層に多くみられ、急性骨髄性白血病への移行や感染、出血などの骨髄不全が危惧されます。急性骨髄性白血病へ移行する場合を除いては、緩やかに進行していくでしょう。骨髄異形成症候群には以下の2つの特徴があります。
- 赤血球・白血球・血小板の減少
- 血液細胞が骨髄に多い状態
骨髄で血液細胞がうまく作られず、赤血球や白血球などの量が減少します。骨髄の中に未熟な血液細胞がたくさんあるにも関わらず、血液の中には数が少ないのです。
そのため骨髄で作られた血液細胞が、十分に成長できずに死んでしまったり、形が異常でうまく働けなくなったりします。正常な血液細胞の数が減ることで、貧血や出血・感染症を起こしやすくなるでしょう。
一方無症状の方もいるため、健康診断などで発見されるケースも見られます。
骨髄異形成症候群の症状
骨髄異形成症候群は、正常な血液細胞の減少が原因でさまざまな症状があらわれます。ここでは、骨髄異形成症候群に見られる4つの症状をご紹介します。
貧血
細胞が正常に機能するためには、酸素が必要です。細胞に酸素を運ぶ働きをする正常な赤血球(ヘモグロビン)の数が減少することで、身体は酸欠状態になります。このときに息切れや動悸、倦怠感、顔色が悪くなるなどの貧血の症状が現れます。
あざ・出血
出血したときに止血する働きがある正常な血小板が減少することで、皮膚や粘膜からの鼻血やあおあざ、歯肉出血などが起こりやすくなります。
感染症
身体に入ってきた雑菌やウイルスと戦う正常な白血球が減ることで、本来備わっていた免疫力が低下します。 健康な人には害がないようなカビや細菌・ウィルスにも感染しやすくなり、肺炎などの感染症にかかりやすくなります。
症状の進行は遅い
骨髄異形成症候群は急性骨髄性白血病に移行する場合を除いて、 緩やかに進行していくのが特徴です。このため、自覚症状がまったくなく、健康診断などで血液細胞の減少が指摘されて発見されるケースもあります。
骨髄異形成症候群の診断・治療
骨髄異形成症候群は、検査の結果によって低リスク群と高リスク群に分けられ、リスク群に合った治療を行います。ここでは、骨髄異形成症候群での治療方法を紹介していきます。
抗がん剤投与
抗がん剤投与は高リスク群の患者さんに行われる治療の1つです。
高リスク群は急性骨髄性白血病に転化するリスクが高いため、急性骨髄性白血病への移行予防や異常細胞の増殖抑制が抗がん剤投与の目的です。高年齢やドナーが見つからない、合併症を有しているなどの理由から、同種造血幹細胞移植を行わない場合に選択できます。
また一部の患者さんには、急性骨髄性白血病への移行予防や生存期間を延ばすために、急性白血病治療の基準に沿った抗がん剤以外の化学療法が選択されることもあります。
同種造血幹細胞移植
同種造血幹細胞移植は、ドナーから採取した造血幹細胞を点滴のように患者さんの血管へ注入する治療です。
この治療法は副作用が強く、患者さんへの負担も大きいですが、唯一治療が見込める方法とされています。そのため、これまでの研究でも、高リスクと判断された時点で速やかに同種造血幹細胞移植を行うことが望ましいとされています。
輸血など対症療法
低リスク群の治療として、輸血や薬物療法などの対症療法があります。患者さんの持つ別の疾患や生活の状況などを考慮したうえで、血球の減少に対して輸血を行います。
輸血や薬物療法は、急性骨髄性白血病への移行予防や生存期間を延ばすための対症療法です。輸血の際は、白血球の減少とともに機能異常が起きやすいことから、感染症のリスクを下げるために適切で十分な抗生物質や抗真菌薬の使用が必要です。
経過観察のみのケースも
患者さんの症状が軽い場合は、治療を行わず経過観察のみのケースもよくあるでしょう。骨髄異形成症候群の症状や病気の状態は患者さんによってさまざまで、リスクや病状にあわせた治療が行われます。
骨髄異形成症候群の余命
骨髄異形成症候群に限らずですが、低リスクか高リスクかによって、余命の長さが変わります。ここでは、骨髄異形成症候群を発症してからの余命について解説します。
病状によって余命は大きく変わる
骨髄異形成症候群の生存期間は、病状によって大きく変わります。
16 歳以上の骨髄異形成症候群に対する移植後 5 年生存率は、 約50%です。急性骨髄性白血病へ移行した場合は、1年程度とされています。病気の種類や症状が発症した年齢によって、10年後に生存している場合もあります。
進行が遅ければ10年後生存率は高い
患者さんのなかには、症状とうまく付き合いながら生活できている方も多く、発症した年齢や病気の種類によっては、診断されてから10年後も生存している率が80%を超えるケースがあります。
急性骨髄性白血病に移行した場合は予後不良
骨髄異形成症候群から急性骨髄性白血病に移行した場合は予後不良で、 余命は1年程度とされています。急性骨髄性白血病は白血病のなかでも進行が早く、無治療なら発見後数日から数週間で死に至る可能性がある疾患です。
骨髄異形成症候群についてよくある質問
ここまで骨髄異形成症候群の症状や治療などを紹介しました。ここでは「骨髄異形成症候群」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
骨髄異形成症候群の原因は何ですか?
永井 恒志 医師
骨髄異形成症候群の原因は、ほとんどの場合は原因不明です。過去にほかのがんに対して抗がん剤治療や放射線治療を受けた数年後に、治療の副作用として発症する治療関連骨髄異形成症候群(t-MDS)があります。何らかの原因によって、血液を作る細胞の遺伝子に異常が発生することで発症すると考えられています。
骨髄異形成症候群の診断方法は?
永井 恒志 医師
骨髄異形成症候群の診断は、血液検査と骨髄検査を行います。血液検査で血管内を流れる血液中の血球減少と形態異常がみられること、骨髄検査で血球の形態異常が認められることで確定されます。
編集部まとめ
骨髄異形成症候群は、血液細胞が減少し、正常に働かなくなることでさまざまな症状があらわれます。
症状の現れ方や治療法、余命などは患者さんによって異なります。早期に診断し、適切な治療を受けることで、症状の改善や生活の質の向上が可能です。
しかし、早期の段階では症状がない場合もあるため、定期的に健康診断を受けて身体の健康状態を確認するとよいでしょう。
ご自身やご家族で、少しでも気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
骨髄異形成症候群と関連する病気
「骨髄異形成症候群」と関連する病気は6個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する病気
- 急性骨髄性白血病(AML)
- 骨髄増殖性腫瘍(MPN)
- リンパ系腫瘍
- 固形がん
- 再生不良性貧血
- 巨核球減少性血小板減少症
腫瘍やがんの病気は高リスク群になりやすく、貧血や血液細胞の減少に関連する病気は低リスク群になりやすいです。定期的な診察を行って、早期発見と治療で寛解を目指しましょう。
骨髄異形成症候群と関連する症状
「骨髄異形成症候群」と関連している、似ている症状は5個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
骨髄異形成症候群は、発症した場合できるだけ早く診断を受けて適切な治療や経過観察を続けていくことが大切です。少しでも気になる症状があれば、自己判断せず医療機関を受診しましょう。