目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. 三大疾病
  4. がん
  5. 「骨肉腫の好発年齢」はご存知ですか?症状や発生しやすい部位も解説!

「骨肉腫の好発年齢」はご存知ですか?症状や発生しやすい部位も解説!

 公開日:2025/01/11
「骨肉腫の好発年齢」はご存知ですか?症状や発生しやすい部位も解説!

骨肉腫(こつにくしゅ)という病気をご存知でしょうか。骨肉腫を題材にしたマンガやドラマも多数あるため、病名は知っているという方も少なくないでしょう。

では、骨肉腫は一体どのような病気なのでしょうか。本記事では、骨肉腫の好発年齢・発生しやすい部位・症状を解説します。

骨肉腫の疑いがある方や骨肉腫の知見を広めたい方は、ぜひお目通しいただければ幸いです。

永井 恒志

監修永井 恒志

プロフィールをもっと見る
医師、医学博士(東京大学)、東海大学大学院客員准教授。
平成15年金沢医科大学医学部卒。東京大学医学部附属病院内科研修医を経て東京大学大学院医学系研究科教官時代に大型放射光施設SPring8を利用した多施設共同研究(国立循環器病研究センター、東海大学ほか8研究機関)をリードし、多数の国際医学雑誌に論文を発表した。
特に免疫細胞であるM1マクロファージの画期的な機能の一端を解明した。現在は腫瘍免疫学の理論に基づきがんの根絶を目指してがん免疫療法の開発と臨床応用を手掛けている。

骨肉腫とは?

骨肉腫は悪性腫瘍が骨に発生する代表的ながんの1種です。日本国内では年間200人程つまり人口100万人あたり1〜1.5人程度が発症しており、がんのなかでは稀な部類です。また、男女での発症率は1.5:1とやや男性のリスクが高い傾向にあります。
骨肉腫を発症したうちの約6割は、膝に位置する大腿骨(だいたいこつ)と脛骨(けいこつ)の膝関節側に腫瘍が発生します。腫瘍が発生した骨は侵蝕に伴って破壊され、まるで腫瘍が骨のように形成されることが特徴です。見た目による変化が少ないため、骨に変化があらわれるまで症状が進行してしまうことも珍しくありません。
骨肉腫が四肢に発症していて転移のない場合、近年の5年生存率は70〜90%です。早期発見と早期治療が重要視される病気であると留意しましょう。

骨肉腫の好発年齢

骨肉腫を発症する年齢分布は一体どのようになっているのでしょうか。ここからは骨肉腫の好発年齢について解説します。

10代

骨肉腫の発症リスクが高いのは中学生〜高校生、つまり思春期である10歳代に発生しやすい病気です。発症率は約50〜60%に該当するとされています。さらに、15歳前後で発症リスクが急増することも判明しています。15歳前後で膝に違和感を覚えた場合には注意が必要です。
10代は活発な運動や急速な骨の成長に伴って発見が遅れる傾向にあるため、少しの痛みが生じた場合でも病院へ受診することをおすすめします。

40歳以上

骨肉腫の発症リスクが高いのは10代の思春期ですが、約30%は40歳以上で発生します。40〜50歳くらいで第2の発症ピークがくるため、注意が必要です。忙しい世代でもあり、人生100年時代の折り返し地点でもあります。
骨肉腫の発生部位によっては気付きにくい病気のため、定期的な検診を受けることが大切です。

骨肉腫が発生しやすい部位

骨肉腫が発生しやすい部位は、膝に位置する大腿骨と脛骨の膝関節側だと先述しました。ではほかに骨肉腫が発生する部位はあるのでしょうか。発生しやすい部位について解説していきます。

膝の周囲

骨肉腫の発生部位のなかでも、約60%を占めているのが膝の周囲です。膝の大きな皿のような膝骸骨(しつがいこつ)の上にある、少しくぼんだところの骨端線(こつたんせん)から骨が速く成長する骨幹端部(こっかんたんぶ)にかけて発生します。骨肉腫は転移性のがんであるため、転移のありなしで予後が大きく変化します。

肩の周囲

膝の周囲に次いで発生しやすい部位は、上腕骨のある肩の周囲です。骨肉腫は血流によって転移します。そのため、肩の周囲に骨肉腫が発生してしまうと、肺に転移する可能性がとても高くなります。実際に肺への転移が数多く報告されているのが現状です。
診断時に肺転移があったとしても、薬物療法と外科治療で肺に転移した骨肉腫部を切除することにより、20〜30%の治癒が期待できます。

大腿骨の股関節に近い部分

骨肉腫は膝の周囲に近い大腿骨や骨幹(こっかん)の股関節に近い部分にも発生します。肺転移に次いで、同じ骨のなかや別の骨への転移もよく見られます。
ここで留意してほしいのは、別の骨への遠隔転移や広範囲の肺転移巣がある場合には、効果的な治療は難しくなることです。転移する可能性が大いにある病気だからこそ、早期発見と早期治療が求められています。

骨肉腫の症状

早期発見に努めるためには、どのような症状が出るのか把握しておくことが大切です。ここからは骨肉腫を発症したときの症状について解説します。

初期は症状が出ないこともある

骨肉腫の発生初期には、症状が出ないこともあります。レントゲン検査をしてもわからないことも珍しくありません。骨折したり骨が変形したりして検査を受けたら骨肉腫だったということもあります。

痛み

症状としてあらわれやすいのが痛みです。週単位から月単位で痛みが発生します。痛みは出たり消えたりしますが、痛みがなくなることはないのが一般的です。
骨肉腫特有の痛みではないため、運動や急速な骨の成長が原因で痛みが生じる可能性もあります。痛みの種類で判断することが難しいため、診断が遅れる可能性があることに留意しましょう。

腫れ

痛みと同様の時期にあらわれる症状が腫れです。ただし、骨肉腫が発生している部位によっては腫れが出ないこともあります。
骨盤や背骨などに骨肉腫が発生した場合は、腫れているかが表面からはわかりにくいため、診断が遅れる傾向にあります。気付くのが遅れて、麻痺の症状が出ることもあるため注意が必要です。

熱感・発赤

骨の可動域が骨肉腫によって制限されることにより、熱感や腫瘍上部の皮膚に発赤が出ることもあります。痛みとともに熱感・発赤が出る傾向にあるため、症状を自覚した場合には我慢せずに病院を受診することをおすすめします。

骨折

初期症状でも先述したとおり、骨折がきっかけで骨肉腫と診断されることもあります。この病的骨折は、骨肉腫の診断症状のなかでも10〜15%に該当しています。
骨折してしまうと治療が難しくなるため、骨腫瘍の疑いがある場合には安静にすることが大切です。

骨肉腫の好発年齢についてよくある質問

ここまで骨肉腫の好発年齢・発生しやすい部位・症状などについて紹介しました。ここでは「骨肉腫の好発年齢」についてよくある質問にMedicalDOC監修医がお答えします。

骨肉腫は10代以下で発症するケースもありますか?

永井 恒志永井 恒志 医師

骨肉腫は10代以下でも稀ですが発症することはあります。発症すると、症状の進行が早いため注意が必要です。もし骨肉腫の症状が進行して外科治療が適用される場合は、通常であれば広範切除といって腫瘍周囲の健康な組織で包んで露出しないようにひとかたまりとして切除されます。この方法は10歳以下のお子さんに適用してしまうと、膝蓋骨の上にある骨端線を取ってしまうため、健康な⾜に比べて10cm以上も短くなります。つまり、これから大幅に身長が伸びる時期のお子さんの場合には、日常生活に支障をきたす可能性を否定できません。これまでは義足や移植手術が求められていましたが、近年は病気の研究や医療技術の発達により、10歳以下のお子さんには患肢温存を試みることもあります。

骨肉腫の治療方法を教えてください。

永井 恒志永井 恒志 医師

骨肉腫の治療方法は、抗がん剤治療・外科治療・放射線治療の3つがあります。しかし、放射線治療は骨肉腫にあまり効果がないと考えられています。一般的には抗がん剤治療や放射線治療が適用されますが、症状の進行具合によっては外科治療が必要です。外科治療が適用される場合には手術前後の化学療法を受けることが必要となるため、治療期間が6ヶ月〜1年程度要すると留意しましょう。

編集部まとめ

今回は骨肉腫の好発年齢・発生しやすい部位・症状について解説しました。骨肉腫は10代と40代で発症リスクが高まる病気です。

人口100万人あたり1〜1.5人程度の発症率とがんのなかでは稀な部類にはなりますが、初期症状が出にくく、気付いたときには症状が進行している恐ろしい病気であることに変わりはありません。

定期的な検診や痛みや腫れなどの違和感を自覚したら、速やかに病院へ受診することに留意しましょう。この記事を読んで、骨肉腫の早期発見・早期治療に役立ててもらえれば幸いです。

骨肉腫と関連する病気

「骨肉腫」と関連する病気は3個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する病気

軟骨肉腫やユーイング肉腫も10代くらいの若年層が発症しやすい悪性腫瘍です。骨巨細胞腫は20〜40代が発症しやすく、上記3つはすべて骨肉腫と同様に骨ががん化する病気になります。初期症状が出にくいため、定期検診を受けることが大切です。

骨肉腫と関連する症状

「骨肉腫」と関連している、似ている症状は3個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 骨の痛み
  • 骨の腫れ
  • 骨折しやすい

骨ががん化するため、骨に関する症状が顕著にあらわれます。痛みや腫れなどの症状を自覚したら、病的骨折につながる前に病院へ受診するよう留意しましょう。早めに治療を受けることが重要です。