「メラノーマの原因」はご存知ですか?なりやすい人の特徴も解説!【医師監修】
メラノーマは黒っぽい色をしているため、ほくろのがんとも呼ばれます。ほくろやあざと見分けがつきにくいため、発見が遅れることも少なくありません。
さらに、進行・転移が早く再発も多いので、皮膚がんのなかでも悪性度が高いことがわかっています。
今回の記事では、メラノーマの原因と発症リスクを中心に紹介していきます。記事の後半では、メラノーマを予防する方法についても解説しますので参考にしてください。
監修永井 恒志
平成15年金沢医科大学医学部卒。東京大学医学部附属病院内科研修医を経て東京大学大学
院医学系研究科教官時代に大型放射光施設SPring8を利用した多施設共同研究(国立循環器
病研究センター、東海大学ほか8研究機関)をリードし、多数の国際医学雑誌に論文を発表した。
特に免疫細胞であるM1マクロファージの画期的な機能の一端を解明した。現在は腫瘍免疫学の
理論に基づきがんの根絶を目指してがん免疫療法の開発と臨床応用を手掛けている。
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メラノーマとは?
メラノーマは、皮膚の色素細胞であるメラノサイトががん化して発生する悪性の腫瘍です。日本人の発症は10万人あたり1~2人と低く、これまで希少がんとして扱われてきました。
ただし、紫外線の増加や高齢化などの影響に従い、死亡数はここ40年間で4倍にも増えています。病気の進行が極めて早く、手術をしても早期に再発したり転移したりすることも少なくありません。また、メラノーマの多くはほくろと同じく茶褐色~黒褐色の色素斑や腫瘤であるため、良性・悪性の判別が難しいことも早期発見を遅らせる原因になっています。
メラノーマが疑われる場合は、メラノーマに熟知した皮膚腫瘍科の専門医師に早めに診てもらい、納得のいく治療を受けるようにしましょう。
メラノーマの原因
メラノーマの発生原因は、実はまだはっきりとは解明されていません。しかし、中年以降の白人に発生数が多いことから、人種差・年齢・遺伝的要因・環境因子などが関係していると考えられています。
ここでは、メラノーマの原因について順番に解説します。
紫外線の大量暴露
日本皮膚科学会のメラノーマ診療ガイドラインによると、慢性の紫外線暴露よりも間欠的かつ大量暴露が危険因子との調査報告があります。メラノーマはメラニン色素を作り出すメラノサイトががん化して発生する皮膚がんであることからも、紫外線の大量暴露は発症原因の1つに考えられます。
物理的な刺激
メラノーマは全身の至る所に発症しますが、日本人の約50%は末端黒子型と呼ばれるタイプで手のひらや足の裏などに好発します。なかでも、約30%を占める好発部位は足底であることから、歩行など繰り返される機械的な刺激との関連性の深さを示しています。
このことからも、メラノサイトは物理的な刺激によって遺伝子変異を引き起こし、がん化して悪性の腫瘍になることが説明できるでしょう。
免疫力の低下
環境庁の調査によると、紫外線のなかでも波長の長いUVAはUVBに比べて皮膚の免疫力を抑制するため、光老化の原因となることがわかってきました。メラノーマは皮膚の抵抗が弱まる中高年以降に多いことからも、免疫力低下が発症リスクを高めると考えられます。
特にエイズや血液系のがんによって免疫力が低下している方、臓器移植後の免疫抑制剤を使用している方は注意が必要です。
先天性色素性母斑
先天性巨大色素性母斑は、生まれつき存在する黒褐色のあざです。遺伝的に母斑細胞がメラニン色素を産生するため、色素性母斑となって皮膚上に現れます。確率は出生2万人に1人程度とされていますが、放置しておくと悪性のメラノーマに転じる可能性もあるので注視が必要でしょう。
一般的には手術で切除しますが、母斑の大きさや部位によってさまざまな治療法があります。
メラノーマになりやすい要因がある人
メラノーマになりやすい人には、どのような傾向があるのでしょうか。ここでは、なりやすい要因がある人の特徴を説明します。
色白な人
メラノーマには人種差が認められ、一般的に白色人種に発生頻度が高い傾向があるとされています。日本人であっても約20%の方はOCA2という色白の遺伝子を保有しているといわれます。
人種差に限らず色白の方はメラニン色素が少ないため、日焼けや紫外線への感受性が高く、結果としてメラノーマを発症しやすいでしょう。
日焼けしやすい人
日光に当たるとすぐに赤くなって日焼けしやすい人は、メラノーマになるリスクが高くなります。また、メラノーマは子どもの頃に強い日焼けをすることが特によくないとされています。過去に水ぶくれなど重度の日焼けをしたことがある方は、注意しましょう。
紫外線を多く浴びている人
マリンスポーツが好きで年中太陽を浴びている人、漁業・農業など炎天下で仕事をしている人などは、メラノーマになりやすい傾向があります。紫外線を多く浴びるとメラニン色素の生成が活性化され、日焼けや炎症によって皮膚の免疫力が低下するためと考えられます。
ほくろ・そばかすの多い人
先天的・後天的にかかわらず、ほくろやそばかすの数が多い程、メラノーマの発症リスクが高いと考えられています。さらに、ほくろの大きさが大きい・形状が非定型であればある程、メラノーマのリスクは高くなります。
紫外線を多く浴びる程、その刺激から肌を守るためにメラニン色素を生成し、シミやそばかすが増えてしまうという悪循環に陥ることにも注意が必要でしょう。
メラノーマのリスクを減らす方法
ここからは、メラノーマの予防に有効とされる方法を紹介していきます。以下のような対策を自分でも行い、少しでも疑わしい場合は医療機関を受診するようにしましょう。
紫外線対策
天候に関係なく、目に見えない紫外線は降り注いでいます。日常的に日焼け止めクリームを塗る・帽子をかぶるなど、徹底した紫外線対策を行うことが大切です。
日傘や日陰を利用したり、長袖やストールなどで身体の露出を減らしたりするほか、紫外線の強い時間帯は外出を避けるなどの工夫をしましょう。
足の裏や足の親指に黒色の変化がないか確認する
メラノーマは、歩行で外部刺激を受けやすい足の裏に発生することがあります。これは末端黒子型と呼ばれる日本人に多い病型で、色や形が不規則で平らな色素斑であったり、一部が盛上がっていたりします。
これらの特徴を目安に、自分の身体を定期的に観察し、特に足の裏や靴がよく当たる足の親指に黒色の変化がないか確認するようにしましょう。
皮膚に日常的な刺激を与えない
メラノーマの疑いがあるほくろやあざは、頻繁に触ったり傷つけたりすることで大きく拡大して悪性化する恐れがあります。日焼けはもちろん、間違ったスキンケア・過度なマッサージなど皮膚に日常的な刺激を与えないようにしましょう。メラノーマの疑いがあるときは、自分で対応しようとせず医療機関を受診してください。
メラノーマについてよくある質問
ここまでメラノーマの原因・要因・なりやすい人の特徴・リスクを減らす方法などを紹介しました。ここからは「メラノーマ」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
紫外線対策は確実にメラノーマ予防につながりますか?
永井 恒志 医師
日本人のメラノーマの発症は、過半数が足裏など日光の影響のない部位に好発するため紫外線の関与は少ないのではないかと考えられていました。しかし、昨今は環境破壊によって紫外線の量も増えてきており、日本人にも色白の肌質やさまざまな発症リスクを持った人が存在することもわかっています。メラノーマの発症リスクに関与しているUVBおよびUVA両方の紫外線をカットするサンスクリーン剤を使用することで、肌の露出部分でのメラノーマの発生率は減少します。
日光が当たりにくい部位にメラノーマはできますか?
永井 恒志 医師
紫外線とは関係なく生じるメラノーマには、末端黒子型と呼ばれるものがあり、ある遺伝子の変異が関連しているとされています。日光が当たらない部分でも、皮膚のどこにでも発生する可能性があるので注意して観察しましょう。好発部位は男性では胴体で、女性は脚、日本人では約30%が足の裏に発症します。その他、爪に黑い縦縞・手のひらに黒い斑点として生じることもあり、顔や体幹にできることもあります。
編集部まとめ
今回は、メラノーマの原因やなりやすい人の特徴や予防法などを説明してきました。
近年ではオゾン層破壊などにより地球に届く紫外線の量は増えています。日本人のメラノーマの発症は10万人に1~2人と少ないものの、発症頻度はこの30年で2倍以上に増えていることにも注意すべきでしょう。
記事内でお伝えしたように、普段から紫外線対策などで防御しておくことが大切です。そしてメラノーマの疑いを感じたら、なるべく早期に総合的に診断を仰ぎ、納得のいく治療を受けるようにしましょう。
メラノーマと関連する病気
「メラノーマ」と関連する病気は4個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
爪に爪甲色素線条という黒い縦筋が生じることがあります。思春期以降に見られる場合はメラノーマの可能性がありますので、色が濃くなったり爪全体に広がってきたりした場合は皮膚科を受診してください。また、日光を浴びすぎることでできる皮膚がんには、メラノーマのほかに日光角化症・有棘細胞がん・基底細胞がんがあります。皮膚がんには、黒くなるもの・赤くなるもの・その他の3タイプがありますが、このうち黒いものにはメラノーマと基底細胞がんがあります。基底細胞がんは30~40歳代から、日光角化症は60~70歳代から多くなる傾向です。
メラノーマと関連する症状
「メラノーマ」と関連している、似ている症状は6個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 褐色から黒色をしている
- 形が左右非対称
- 輪郭がギザギザしている
- 色むらがある
- 大きさが6mm以上ある
- 拡大・変化する
メラノーマと関連する症状は、はじめは黒褐色のシミ(色素斑)・ほくろ・腫瘤として皮膚の表面にあらわれます。痛みやかゆみなどの自覚症状はほぼありません。拡大とともに色調が不均一になり、進行するとしこりや腫瘍などが生じます。急激に拡大した場合には悪性化する可能性もあり、先天性巨大色素性母斑はメラノーマ発症のリスクもあるので注意しましょう。