「咽頭がんを疑う咳」にはどんな特徴があるの?咳以外の症状も解説!【医師監修】
咽頭がんは初期症状が現れにくいため、早期発見が難しいがんです。咳は、咽頭がんを早期に発見できる症状の1つになります。
本記事は、咽頭がんと咳の関連性や初期症状についての解説です。咽頭がんを早期発見するためのキーポイントも紹介します。
咽頭がんの可能性がある咳や症状に早い段階で気付けるよう、初期症状について事前に把握しておきましょう。
監修医師:
山本 康博(MYメディカルクリニック横浜みなとみらい)
東京大学医学部医学科卒業 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医 日本内科学会認定総合内科専門医
目次 -INDEX-
咽頭がんとは?
咽頭がんは頭頚部がんの一種で、鼻腔から食道をつなぐ管に発生するがんです。発症する位置によって、上咽頭がん・中咽頭がん・下咽頭がんの3種類に分類されます。咽頭がんのほとんどは、管の粘膜組織である扁平上皮から発症するがんです。
咽頭がんの原因としては、過度な飲酒や喫煙のほかに、EBウイルスやHPVなどのウイルスが挙げられます。咽頭がんは初期に自覚できる症状がないケースもあり、発見した際には症状が進んでいることも少なくありません。
咽頭近くにはリンパ節が集まっていることから、がんがリンパ節に転移するケースも少なくないため、早期に発見することが咽頭がん治療のうえで重要なポイントになります。
咽頭がんと咳の関連性
咽頭がんは初期症状が現れないケースもありますが、まったく症状が出ないわけではありません。特に、咳は咽頭がんの早期発見につながる初期症状の1つになります。咽頭がんに関わる咳にはどのような特徴があるのでしょうか。
咳は咽頭がんの初期症状のひとつ
先述したように、咳は咽頭がんにおける初期症状の1つです。
咽頭は喉の近くに位置し、初期症状として喉に関わる症状がよく見られます。咳の場合は、がんの発症による咽頭への刺激および咽頭部分の炎症が症状の原因です。普段よりも咳をする回数が増えた、断続的に咳が続くようになったなど、少しでも咳に違和感を覚えた場合は早めに医師へ相談しましょう。
咳が長い期間続くことが特徴
咽頭がんによる咳は、長い間続くことが特徴です。
咽頭は、食べ物や空気が通過する頸部の管を指します。そのため、呼吸器系にも影響を与える可能性のあるがんです。咳が長く続く場合、咽頭に発生したがんが呼吸器系の器官に悪影響を及ぼし、炎症や刺激を与えている可能性があります。
咽頭がんでなくとも、長期的な咳は喉や呼吸器系に何らかの異常が起こっていると考えられるため、注意が必要です。
血痰が出始めたら要注意
咳が長く続くのと同時に、血痰が現れ始めたら、早急に病院で検査を受けましょう。
血痰が出るようになった場合、喉からの出血が痰に混じっている可能性があります。喉からの出血は、咽頭がん、特に中咽頭がん・下咽頭がんに現れやすい症状です。
少しでも痰に血が混じるようになったら、なるべく早く耳鼻咽喉科を受診するようにしましょう。
咽頭がんの咳以外の症状
咽頭がんには、咳以外の初期症状もあります。特によく見られるのは、喉や首に関わる症状です。ここからは、咽頭がんの咳以外の初期症状について解説していきます。
声のかすれ・変声
声のかすれ・変声は、中咽頭がん・下咽頭がんでよく見られる初期症状です。
咽頭で発生したがんが声帯やその周辺に影響を与えることで、声のかすれや変声が起こります。普段よりも声が出しにくい、いつもの声ではない状態が続いた場合は、一度病院で検査を受けましょう。
耳への放散痛
耳への放散痛は、耳の近辺で咽頭がんが発生する、あるいは耳の近くまでがんが拡大することで見られる初期症状です。
咽頭がんが耳近辺の神経経路に悪影響を与えることで、痛みが生じます。耳への放散痛を含む耳の異常は、上咽頭がんで見られやすい症状です。
痛み以外に、耳が詰まる感覚や耳が聞こえにくい状態が起こる場合もあるため、これらの症状が見られたらなるべく早く耳鼻咽喉科に相談しましょう。
嚥下障害
嚥下障害は、中咽頭がん・下咽頭がんでよく見られる初期症状です。
咽頭がんによる腫瘍や炎症が食道に影響し、物を飲み込む際に違和感が現れます。嚥下障害は初期症状として見られることもありますが、下咽頭がんの場合、がんが進行した際の症状として現れるケースもあるようです。
少しでも物の飲み込みに違和感を覚えた場合、早めに病院を受診する必要があります。
首のしこり・腫れ
首のしこり・腫れは、咽頭がん全般に見られる初期症状です。
しこりや腫れは、咽頭がんによる腫瘍が可視化されている状態を指します。上咽頭がんでは頸部リンパ節にがんが転移した兆候として首のしこりが見つかりやすいため、注意が必要です。
持続的なのどの痛み
持続的な喉の痛みは、中咽頭がん・下咽頭がんでよく見られる初期症状になります。
咽頭がんが呼吸器系に悪影響を与えているために発生する症状で、痛みが治まりにくい点が特徴です。喉の痛みが長く続いている、痛みがなかなか引かない場合は、早めに医師へ相談しましょう。
咽頭がん早期発見のキーポイント
咽頭がんを早期に発見するためには、喉の異常に早く気付くことが重要です。どのような異常が咽頭がんの早期発見につながるのか確認していきましょう。
咳が長期間続いているかチェック
咳が長期間続いている場合、咽頭がんの初期症状が現れている可能性があります。
咽頭がんによる咳は、長く続くことが特徴の1つです。目安として、2週間以上咳の症状が続いている場合は、一度医師の診断を受けるようにしましょう。
咳以外の症状も併せて確認
咳と一緒に、以下の症状が現れている場合は注意が必要です。
- 血痰
- 変声
- 鼻の異常(鼻詰まり・鼻血など)
- 耳の異常(痛み・詰まる感覚・聞こえにくさ)
- 嚥下障害
- 首のしこり・腫れ
- 喉の痛み
特に血痰は、喉から出血しているサインにもなりえます。上記の症状が咳と同時に現れている、あるいは長く続いている場合は、なるべく早めに病院を受診しましょう。
発症リスクが高い人は早めに医療機関へ
咽頭がんは、ウイルスによる発症例もありますが、過度な飲酒や喫煙がリスクファクターとして挙げられています。
飲酒や喫煙は、咽頭がん以外のがんや重複がんのリスクにもなる要素です。飲酒量が多い方や喫煙習慣がある方は、少しでも普段と異なる症状が現れたら、すぐに耳鼻咽喉科へ相談しましょう。
咽頭がんについてよくある質問
ここまで咽頭がんによる咳の特徴や初期症状などを紹介しました。ここでは「咽頭がん」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
咽頭がんは早期発見しやすいがんですか?
山本 康博(医師)
咽頭がんは、早期発見が難しいがんです。咽頭がんには咳・変声・首のしこり・喉の痛みなどの初期症状がありますが、患者さんによっては自覚できる初期症状が出ないケースもあります。初期症状がなく病院で検査を受けた際にはすでにがんの進行が進んでいる、あるいはほかの部位にがんが転移しているという事例もあるため、注意が必要です。少しでも咽頭がんの初期症状と重なる症状が見られたら、早めに耳鼻咽喉科へ相談しましょう。
咽頭がんと風邪の咳は何が違いますか?
山本 康博(医師)
咽頭がんと風邪の咳の違いは、咳が続く期間です。風邪による咳の場合、通常は2週間以内に改善していきます。一方、咽頭がんによる咳の場合、改善の兆しが見られないまま2週間以上続くケースが少なくありません。また、咽頭がんによる咳では血痰が混じることもあります。持続的な咳や血痰が見られた場合は、風邪による症状ではない可能性があるため、速やかに病院を受診しましょう。
編集部まとめ
本記事では、咽頭がんによる咳の特徴や初期症状について解説してきました。咽頭がんはほかのリンパ節や臓器に転移しやすいがんの一種です。
咽頭がんには初期症状が見られないケースもよくありますが、少しの異変を見逃さないことで、早期発見が可能な病気でもあります。
長期間の咳・血痰混じりの咳などが見られた場合、すぐに耳鼻咽喉科を受診して、早い段階で適切な治療を受けられるようにしましょう。
咽頭がんと関連する病気
「咽頭がん」と関連する病気は5個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
頭頚部がんの1つである咽頭がんは、発症する位置によって3種類に分けられます。また、咽頭がんの多くが扁平上皮がんです。咽頭がんは、ほかのリンパ節や臓器に転移しやすいがんの一種になるため、早期に発見・治療することが重要になります。
咽頭がんと関連する症状
「咽頭がん」と関連している、似ている症状は6個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 咳
- 声のかすれ・変声
- 耳への放散痛
- 嚥下障害
- 首のしこり・腫れ
- 持続的な喉の痛み
咽頭がんは頸部で発症するため、喉・首の症状がよく見られます。また、腫瘍ができる位置によっては喉・首以外の部位に異常が現れることもある病気です。上記の症状が見られた場合は、なるべく早めに病院を受診しましょう。