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「乳がん検診」の「乳腺エコーのメリット」は?良性と悪性の違いについても医師が解説

 公開日:2025/05/26
乳がん検診の乳腺エコーのメリットは?良性と悪性の違いについても医師が解説

乳がんは女性の多くが罹患する可能性がある病気です。 乳がん検診では、身体への負担が少ない超音波検査が利用されることが一般的です。この検査によって乳がんの早期発見が期待できるほか、ほかの病気が見つかることもあります。 この記事では、乳がん以外に見つかる可能性のある病気や、精密検査が必要となる場合についても説明します。ぜひこの機会に、乳がん検診を受けることをご検討ください。

山本 康博

監修医師
山本 康博(MYメディカルクリニック横浜みなとみらい)

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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい院長
東京大学医学部医学科卒業 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医 日本内科学会認定総合内科専門医

乳がんとは

乳がんは、主に乳管から起きる乳腺組織のがんです。乳がんの約90%が乳管から発症するといわれますが、小葉から発症することもあり、これは小葉がんと呼ばれています。また稀ですが、乳管や小葉以外の箇所から発症することもあります。
乳がんの症状はしこりが主で、自分で触ったときに気がつくことが多いでしょう。ほかの症状には以下のものがあります。
  • 乳輪にえくぼのようなくぼみができる
  • 乳房の形が変わる
  • 胸にただれが生じる
乳がんは女性が発症しやすいがんの1つで、約14人に1人の割合で起きるといわれます。また、女性が発症しやすいがんですが、男性も発症するがんです。

乳がん検診の超音波検査(乳腺エコー)

乳がんの主な検査法である乳腺エコーは、超音波を利用する検査です。身体にプローブと呼ばれる器具をあて超音波を流し、体内からはね返る超音波を画像にします。
以下で、乳腺エコーのメリット・デメリットやマンモグラフィとの違いなどを解説します。

乳腺エコーのメリット

乳腺エコーは身体への負担が少ない検査方法です。痛みを感じず、放射線検査のような被ばくの心配もないため、妊娠中の女性や高齢の患者さんであっても安心感を持って受けられるメリットがあります。乳腺エコーの画像では乳腺が白、ほとんどの乳がんは黒く写ります。
マンモグラフィ検査で高濃度乳房とされたときや、乳腺が厚く触診での判定が難しい場合に有効な検査方法です。

乳腺エコーのデメリット

画像をその場で見られるためリアルタイムでの確認ができて便利ですが、微小な石灰化は発見しづらいというデメリットがあります。石灰化とは乳がんで起きる乳腺組織に小さなカルシウムが固着したものです。
また、超音波は骨や空気を通りにくいという特徴があるため、臓器の種類や状況によっては検査が難しくなります。そのため乳がんを発症していなくても、精密検査が必要となる場合があるでしょう。

マンモグラフィとの違い

エコー検査が機器を肌に当てて確認するのに対して、マンモグラフィは乳房を挟んで行うレントゲン撮影なので痛みがあります。ただマンモグラフィでは乳房を伸ばすことができ、乳腺の重なりは少なくなるので、乳腺エコー検査の画像ではわからない程の小さながんの発見が可能です。
マンモグラフィの画像は組織の異常や石化が白く写りますが、乳腺も白く写ります。そのため、乳腺の密度が高い高濃度乳房の場合は異常を発見しづらいことがデメリットです。

乳がんエコー検査の主な所見は?良性と悪性の違い

乳腺エコーをした場合、乳がん以外の病気が見つかるときがあります。主な所見を6種類紹介します。

乳腺症

胸にしこりや痛み、そしてハリが起きます。悪性のしこりは乳がんですが、乳腺症は良性のしこりです。胸のしこりに気がついて受診した患者さんのなかで、特に多い症例ともいわれ、乳腺エコーを受けると乳腺症と診断されることが多いでしょう。
また、30代から40代の女性がかかりやすい疾患で、ホルモンバランスの乱れが発症の原因と考えられています。良性の疾患なので治療は通常必要ありません

葉状腫瘍

乳腺エコーで発見される主な腫瘍の中に葉状腫瘍があります。乳がんは乳腺から生じますが、 葉状腫瘍は乳腺以外の間質からの発症です。ほとんどの葉状腫瘍は良性と判断されますが、悪性やどちらともとれないとされる場合もあります。治療方法は手術による切除です。

乳腺嚢胞

乳腺嚢胞は、体内にできた袋状のものです。袋内部には液体がたまり、ほとんどは良性ですが、低確率で悪性に変化することがあります。これは腺様嚢胞がんで、乳腺にできれば乳がんと診断されます。
ただ乳がんではあっても、治る確率はとても高く、10年後の生存率は95%とされているほどです。そのため、転移が起きていなければ、薬物療法が不要と判断されることもあります。

乳腺線維腺腫

乳腺線維腺腫は、10代後半から40代までと幅広い年齢の女性にできやすい腫瘍です。症状は、胸に2cmから3cm程の良性のしこりができます。必ず治療をしなければならない腫瘍ではありませんが、3cm以上のサイズに変化することもあります。そのような場合は葉状腫瘍と診断されることがあり、その際は手術が必要です。

乳管内乳頭腫

30代から50代の年齢層の女性にできやすい良性の腫瘍です。症状はしこりができますが、気がつかない場合がほとんどです。しこりによる痛みもなく、見た目にも変化は少ないので普段の生活に支障は起きません。ただ乳頭から血の混じった液体が出ることがあり、しこりが大きくなる場合もあります。そうなると、悪性の乳がんによる症状と診断される場合もあるでしょう。
乳頭からの出血が長期間出続けるようなら、すぐに病院へ行って医師の判断を仰ぎましょう。状況によっては、乳がんと判断されなくても手術が必要な場合があります。

乳管拡張症

症例数の少ない症状です。40歳〜60歳代の女性に起きやすく、乳管に炎症と拡張が起きる疾患です。ほとんどが良性のもので、即治療とはなりません。ただ、エコー検査で腫瘍が確認された場合は、悪性の可能性があると判断されることもあります。

乳がんエコーで精密検査が必要なケース

乳がんのエコー検査を受けると、1から5までのカテゴリに分類されます。それぞれのカテゴリ判定ではどのような所見がなされ、精密検査が必要なのはどのような場合なのか、以下で解説します。

超音波検査(乳腺エコー)のカテゴリ判定

カテゴリ1の段階では異常ありと判断されることはありません。よって、乳がんを発症している可能性はほとんどないと考えられます。カテゴリ2の奪回では異常所見があるものの、乳がんが発生していない良性の状態と判断されるので、精密検査を受けなくても問題ありません。
カテゴリ3は異常があるとみなされた状態です。分類としては良性の部類とみなされますが、乳がんの発症を疑う必要があります。カテゴリ4は所見段階においても悪性であり、乳がんを発症している可能性が高いとされる状態です。最後のカテゴリ5は、所見段階でも高確率で乳がんを発症していると判断されます。

カテゴリ3以上のときは医療機関を受診

所見においてのカテゴリが3以上だと判断された場合、医療機関での精密検査を受けるよう告げられるでしょう。特に4と5の状態であれば、乳がんを発症している可能性がかなり高いため、可能な限り検査を急ぐ必要があります。乳がんは発見が早い程治る可能性が高いがんです。

乳がんエコーの良性と悪性の違いについてよくある質問

ここまで乳腺エコーや検査で見つかる所見などを紹介しました。ここでは「乳がんエコーの良性と悪性の違い」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

良性のしこりが乳がんになる可能性はありますか?

山本 康博医師山本 康博(医師)

良性と判断されたものが悪性となり、がんへと進行する可能性は低いとされていますが、絶対ではありません。良性と判断された患者さんのなかには、しこりが大きくなった経験をした方もいます。不安であれば、精密検査を受けましょう。別の病気が見つかる可能性もあります。

要精密検査の場合、乳がんの可能性は高いですか?

山本 康博医師山本 康博(医師)

必ず乳がんであるということはありません。所見では乳がんの可能性があるとされても、精密検査でしっかり確認した結果、問題なしとされることもあります。そのため、要精密検査と結果が出ても不安にならず、落ち着いて受診しましょう。

編集部まとめ

乳がんは女性が発症しやすい病気で、早期発見が鍵となります。 何らかの異常を感じたら、すぐに病院で検査を受けましょう。 異常を感じなくても、定期的に検診を受けることで早期発見につながりやすくなります。 また乳がんでなくても、ほかの病気が見つかる可能性もあります。 1つの病院での診断結果に不安があれば、セカンドオピニオンを受けるとよいでしょう。

乳がんと関連する病気

「乳がん」と関連する病気は6個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する病気

ほとんどが良性ですが、状態によっては悪性と判断される場合があります。

乳がんと関連する症状

「乳がん」と関連している、似ている症状は3個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

しこりができる場所やサイズによっては、触っても気がつかないことがあります。また痛みや出血が起きても、異常なしとされる場合があります。少しでもおかしいと思ったら、病院へ行きましょう。

この記事の監修医師