「骨肉腫の再発率」はご存知ですか?生存率や治療法も解説!【医師監修】
ドラマや漫画でも時折目にする骨肉腫という病気をご存じでしょうか。骨肉腫を発症するのは日本では1年に約200人と言われており、がんのなかではまれな部類に入ります。約50%が10歳代、約30%は40歳代以上で発症しております。
若年層を中心に幅広い年齢で発症している骨肉腫ですが、どのように診断・治療をしていくのでしょうか。再発率や関連する疾患もあわせて解説していきます。
監修医師:
松繁 治(医師)
岡山大学医学部卒業 / 現在は新東京病院勤務 / 専門は整形外科、脊椎外科
主な研究内容・論文
ガイドワイヤーを用いない経皮的椎弓根スクリュー(PPS)刺入法とその長期成績
著書
保有免許・資格
日本整形外科学会専門医
日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医
日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科指導医
日本整形外科学会認定 脊椎内視鏡下手術・技術認定医
目次 -INDEX-
骨肉腫とは?
文字どおり骨に発生する肉腫です。では肉腫とはそもそも何かご存知でしょうか。腫瘍は表皮・消化管・腺組織にできる上皮性腫瘍と、上皮以外(骨・筋肉・脂肪組織・血管・リンパ管・神経組織など)にできる非上皮性腫瘍に分類されます。
悪性の上皮性腫瘍をがん、悪性の非上皮性腫瘍を肉腫と呼びます。つまり、骨肉腫は骨に発生する悪性腫瘍(がん)なのです。
骨肉腫の5年生存率・再発率
骨肉腫の予後は良好なのでしょうか、それとも再発しやすいのでしょうか。初診か再発か・病状の進行・転移の有無などで5年生存率と再発率は大きく変わってきます。
低悪性度骨肉腫の5年生存率・再発率
骨肉腫は進行の度合いによりステージⅠからステージⅣに分けられますが、そのうちステージⅠである低悪性度骨肉腫の予後は良好です。5年生存率は約90%と言われており、再発率は傍骨性骨肉腫では3〜20%・骨膜性骨肉腫では約10%・骨内低悪性度骨肉腫では約15%と低い傾向にあります。
通常型骨肉腫の5年生存率・再発率
初診で転移のない症例では、近年の5年生存率は約70%です。しかし、転移や再発が見られた場合、5年生存率は約20%まで下がります。骨肉腫の死因のほとんどは肺転移によるものです。再発率は転移していない場合は30〜40%ですが、転移していた場合は約70%と大きくあがります。
骨肉腫の予後因子
予後因子とは、病気が今後どのような経過をたどるかを予測するための因子です。骨肉腫の予後因子は、以下が挙げられます。
- 原発腫瘍の部位および大きさ
- 初発時の転移の有無
- 術前化学療法の奏功率
- 根治手術の達成度
骨肉腫は、予後因子によって治療法の変更を推奨しておりません。しかし近年、術前化学療法の効果が不十分であった場合、変更した方が予後改善につながるかどうかの研究がされています。
結果次第では今後の治療方針が大きく変わるかも知れません。
骨肉腫の診断方法
骨肉腫はまれな疾患であるために正確な診断までに時間がかかることがあります。
また良性や悪性の鑑別が難しいケースもあります。痛みや腫瘍・骨の異常がある場合には、決して受診をためらわないでください。
問診
診断の際には、以下の内容を問診します。
- 年齢
- 発生した時期
- 発生した場所
- 日内で痛みの変動はあるか
- 年齢
- 臨床症状
- 現病歴と既往歴
骨の腫脹・腫瘤が見られる疾患は多く、腫瘍性疾患のほかにも外傷や炎症、変形性関節症や代謝性疾患・神経筋疾患その他いろいろな原因が考えられます。これらは問診と丁寧な診察で鑑別できるでしょう。
例えば夜間に痛みが増大する場合は類骨骨種、2〜3ヵ月で腫瘍の増大が見られる場合は骨肉腫、癌の既往があった場合は癌の骨転移が考えられます。
血液検査
骨肉腫は、一般的に血液データでの異常所見はあまり見られません。しかし腫瘍マーカーの一種であるアルカリフォスファターゼの上昇が見られます。
画像検査
画像検査には以下が挙げられます。
- レントゲン
- CT
- MRI
- 骨シンチグラフィー
- PET(陽電子放出断層撮影)
レントゲンでは骨の表面の骨皮質の破壊像や骨破壊と骨形成のバランス、辺縁が明瞭なのか不明瞭なのかの所見、腫瘍の浸潤に対応して骨の表面に新たに骨が作られている像(骨膜反応)の所見などがわかります。
レントゲンでは判別できない微小な変化を見つけられるのがCT検査です。MRI所見では、手術時に切除範囲を決めるために多く用いられます。また病変の性状も評価できる検査です。
例えば組織の硬い肉腫では、化学療法後に細胞が壊死に陥っていても縮小しないことがあり、効果がわかりにくいことがあります。
しかし、MRIを撮影することにより化学療法の前後で効果が出ていることが検証できるのです。骨シンチグラフィー、PET検査は転移の検出に用いられます。
生検
骨肉腫の診断の決定打となるのが生検という病理組織検査です。腫瘍組織を採取して、細胞を病理医が良性なのか悪性なのか、どのような病気なのかを診断します。
生検は針を刺して組織を採取する針生検と、手術によって組織を採取する切開生検や切除生検などの2通りです。
骨肉腫では正確な診断のために手術で十分な組織を採取するのがよいとされる方針もある一方で、切除してから高悪性度の肉腫であると診断されると、追加で切除する必要が生じるリスクも予測されます。
骨肉腫の治療方法
外科手術がすべての肉腫の基本的な治療ですが、近年の臨床研究で抗がん剤治療(化学療法)を手術の前後に行うことが標準的になっております。病態によっては放射線治療を追加します。
手術(広範切除)
腫瘍細胞を取り残さないために、腫瘍を正常な組織で包み込んで切除するのが広範切除です。そのため腫瘍周囲にある正常な骨や筋肉も一部一緒に切除する必要があります。
できるかぎり手足を温存するような手術(患肢温存術)を試みていますが、腫瘍が重要な神経や血管を巻き込んでいる場合には切断を選択せざるを得ないこともあるでしょう。
また、手足を温存できた場合でも、人工関節や自分の骨を再利用するような再建術の併用が必要になることが多くあります。手術前後の化学療法の併用が必須になり、トータルで半年から1年の治療期間が必要となります。
化学療法
近年、骨肉腫に対して広く用いられている化学療法は、以下の4剤を用いた多剤併用療法です。
- アドリアマイシン(DXRまたはADM)
- イホスファミド(IFOまたはIFM)
- シスプラチン(CDDP)
- メトトレキサート(MTX)
MTX・ADM・CDDPは昔から使用されている代表的な標準治療で、欧米でも標準治療として用いられております。IFMは1980年代の試験で結果が出てから補助化学療法に導入されていますが、その位置づけはまだ確立されていません。
近年、術後化学療法にIFMを併用することがMAP療法単独施行に対し優れているかどうかの比較試験が進行中です。具体的な薬の選択や使う時期にはいろいろな方法がありますが、通常はまず化学療法を行った後に外科的切除を行い、術後にも化学療法を追加します。手術療法と化学療法の併用治療により、骨肉腫は良好な生存率が期待できるようになりました。
放射線治療
骨腫瘍は放射線感受性が低いものが多く、通常の放射線治療のみでの根治はあまり期待できません。しかし、通常の手術・化学療法だけでは治療が難しい場合に、補助療法として術前あるいは術後に行うのが放射線治療です。
さらに根治が難しい場合でも、腫瘍による痛みや麻痺などの症状緩和目的で放射線治療を行っています。痛みに関しては約7〜8割のケースで症状の緩和が得られます。
骨肉腫についてよくある質問
ここまで骨肉腫の再発率・診断方法・治療方法などを紹介しました。ここでは「骨肉腫の再発率」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
骨肉腫の再発にはどのような治療が必要ですか?
松繁 治(医師)
骨肉腫の再発は、肺転移と局所再発の2つが多く見られます。肺は骨肉腫の転移部位の約半分の割合を占めます。肺転移した場合は転移巣切除手術が第一選択とされており、切除が難しい場合でも化学療法は推奨されておりません。局所再発は術前化学療法の効果不十分や手術の切除縁が原因となり起こります。局所再発に対しては化学療法と再度広範囲切除術が行われます。
骨肉腫が再発した場合の生存率はどのくらいですか?
松繁 治(医師)
肺転移した場合の5年生存率は約20%、局所再発した場合の5年生存率は20〜30%と言われています。
編集部まとめ
骨肉腫は早期発見できれば予後は良好です。しかし発症率の高い若年層は細胞分裂が活発なため、高齢者より悪性腫瘍の進行が早い傾向にあります。
主張やしこり、痛みを感じたら受診することで早期発見につながるでしょう。
骨肉腫と関連する病気
「骨肉腫」と関連する病気は4個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する病気
- 骨パジェット病
- 網膜芽細胞腫
- ロスムンド・トムソン症候群
- ブルーム症候群
骨パジェット病とは新しい骨細胞の代謝異常により起こる病気で、骨が脆くなって変形し壊れやすくなると言われております。網膜芽細胞腫は網膜にできるがんで、乳幼児に多い病気です。ロスムンド・トムソン症候群は骨格異常や多形皮膚萎縮症などが見られる遺伝性疾患です。
ブルーム症候群も遺伝性疾患で、高確率でがんを合併するのが特徴と言われております。いずれも骨肉腫を含む骨や筋肉の肉腫を発症するリスクが高いといわれています。
骨肉腫と関連する症状
「骨肉腫」と関連している、似ている症状は4個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 痛み
- 腫れ
- 腫瘍発生部位の病的骨折
- 神経が圧迫されたことによる麻痺の出現
レントゲン検査で骨に変化があらわれるまで症状が出ないことも珍しくありません。痛みや腫れは10〜20歳代でよくある成長痛やスポーツ障害でも生じます。痛みがあるだけで過度に骨肉腫を不安視する必要はありません。
症状が数ヵ月以上続いたり、夜間や安静時でも痛んだりする場合は、その他の病気の可能性もあるため近くの整形外科の受診を検討しましょう。骨肉腫は大腿骨・膝に近い下腿の骨・肩に近い上腕骨に発生しやすいとされているため、これらの部位に痛みや腫れがある場合は注意するとよいでしょう。