「骨肉腫が転移」しやすい臓器は何かご存じですか?症状も医師が解説!
公開日:2025/11/03

希少がんの1つである骨肉腫は、好発年齢が10代と若いのが特徴です。 この病気は全世界的に治療法が確立されており、その方法に則って治療が行われるのが一般的です。 では、そもそも骨肉腫とはどのような病気なのでしょうか。また骨肉腫でみられる主な症状とは、どのような症状なのでしょうか。 この記事では、骨肉腫について症状・治療方法・ほかの臓器への転移について解説します。ぜひ参考にしてみてください。

監修医師:
眞鍋 憲正(医師)
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信州大学医学部卒業。信州大学大学院医学系研究科スポーツ医科学教室博士課程修了。日本スポーツ協会公認スポーツドクター、日本医師会健康スポーツ医。専門は整形外科、スポーツ整形外科、総合内科、救急科、疫学、スポーツ障害。
目次 -INDEX-
骨肉腫とは?
骨肉腫とは、骨や軟骨にできるがんで、発生数の少なさから希少がんの1つとされています。いくつかある希少がんのなかでは、発生頻度が高いとされており、新規に罹患する年間患者数は200〜250人程度です。好発年齢は10代で、10代後半は発症のピークとされています。また、男女比は1.5:1でやや男性の方が起こりやすい病気です。
この病気の好発部位は、ひざ関節周辺で、大腿骨の下端や脛骨の上端は発生しやすい部位とされています。発生原因はほとんどの場合で不明ですが、放射線治療・骨パジェット病・線維性骨異形成などに続発しての発生報告例もあります。
骨肉腫の症状
骨肉腫の主な症状は患部の腫れ・痛み・骨折です。しかし10代に発症する方がほとんどのため、痛みの原因を成長痛と自己判断してしまうことも珍しくありません。怪我をしていないのに、1ヵ月を超えても痛みが引かない場合や腫れが見られる場合には、医療機関の受診がおすすめです。
患部の腫れ
骨肉腫が発生している部位の腫れが起こることがあります。また、がんが進行していると腫れだけでなく、腫瘍そのものを触知可能な場合もあります。患部の痛み
一般的に、骨肉腫が発生した部位に痛みが起こります。運動後や安静時に痛みが強くなるのが特徴です。また夜間にのみに痛みが現れることもあります。骨折
骨肉腫が発生している部位は、骨が弱くなってしまうことがあります。これは、健康的な骨と比べると、とても骨折しやすい状態です。この状態で起こる骨折を病的骨折といいます。通常の骨折では、骨折時には骨の折れる部位に大きな力がかかります。しかし病的骨折は、わずかな力でも起こることがあるため、注意が必要です。
骨肉腫の治療方法
骨肉腫は、世界的に標準的な治療方法が確立されています。その治療法とは、術前に薬物療法を行い、腫瘍を縮小させて外科治療を行う方法です。さらに術後には再度、薬物療法を行うことで再発・転移の予防をします。外科治療
骨肉腫の手術として行われるアプローチ方法は、広範切除とされています。これは、腫瘍とその周囲の正常な組織を一塊で一緒に切除する方法で、がん細胞を残さず完全に取り除くことが目的です。このとき、手術で重要な血管や神経を残すことが可能な場合は、患肢温存術が行われます。しかし残念ながらこれらを残すことが難しい場合には、手足の切断が避けられません。このような場合には、人工関節を入れたり、再建手術を行ったりすることで、できる限り機能の維持を図ります。
薬物療法
すでに転移している骨肉腫では、抗がん剤の使用が中心の治療方法となります。なかでも手術と薬物療法を併用した治療では、抗がん剤の使用が再発率や治癒率に大きく影響します。骨肉腫の治療に使用される抗がん剤は、主に以下の3つです。
- メトトレキサート
- シスプラチン
- アドリアマイシン
放射線治療
骨肉腫の治療の1つに、放射線治療があります。しかしこの治療法は一般的にあまり使用されません。なぜなら、放射線治療は骨肉腫にあまり効果的でない治療とされているためです。単独で行われることは、あまりない放射線治療ですが、手術の補助的な治療法として選択されることがあります。これらの治療法は、腫瘍の大きさや発生した部位によって選択・決定されます。
緩和ケア・支持療法
緩和ケアの目的は、骨肉腫を患ったことによる心・身体・社会的苦痛を緩和することです。また、支持療法とは、がんの症状や治療に伴う副作用・合併症・後遺症の予防や治療のことを指します。本来、緩和ケアという言葉は、生命を脅かす程重い病気にかかった患者さんを対象に使用されることがほとんどです。しかしこれらの治療は、骨肉腫による苦痛を感じていれば、いつでも対象になります。
若年者に発症がよくみられる骨肉腫は、家族や周囲からの適切なサポートが生活の質への影響をもたらしやすいとされています。
骨肉腫は転移する?
骨肉腫はほかのがん同様、転移する可能性があります。ここでは転移しやすい部位とその治療法について解説します。肺への転移
肺は、骨肉腫が転移しやすい臓器です。骨に形成した骨肉腫は、血液の流れによってほかの臓器へたどり着き、そこでがん細胞を増やします。肺には全身の血液が集まるため、さまざまな臓器からがん細胞が運ばれてしまい、転移しやすいといわれています。同じ骨の中やほかの骨への転移
肺に次いで、骨への転移はよくみられます。がん細胞が発生した骨と同じ骨のなかに転移が起こったり、別の骨へ転移したりすることがあります。転移した場合の治療方法
骨肉腫の転移が見つかった場合、発見されていないがん細胞も血流に乗って転移している可能性があるため、治療法は薬物療法が第一選択です。限局した部位の転移であると確認できた場合や、薬物療法後に残ったのが一部のがん細胞になった場合は、手術療法・放射線療法・ラジオ波による治療が行われることもあります。
骨肉腫の転移についてよくある質問
ここまで骨肉腫の進行速度・症状・治療法などを紹介しました。ここでは「骨肉腫の転移」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
骨肉腫が肺に転移した場合どのような症状が出ますか?
身体にあるさまざまな臓器のうち、呼吸機能を司りガス交換を担う肺は、大量の血液が流れ込む臓器です。そのため、身体のあらゆるところに発生したがんが、転移しやすい部位とされています。転移性肺腫瘍は、ある程度進行するまで、無症状に経過することがほとんどです。しかし、がんが大きく成長すると、血痰・肺炎・呼吸困難・気胸などさまざまな症状を引き起こします。
転移が疑われる場合どのような検査を行いますか?
骨肉腫はさまざまな部位への転移の可能性がありますが、なかでも肺に転移しやすいことがわかっています。肺への転移が疑われる場合、以下のような検査が行われるのが一般的です。
- 胸部X線検査
- 胸部CT検査
- 胸部MRI検査
- PET検査
- 腫瘍マーカー
- 喀痰細胞診
- 気管支鏡検査
- 針生検
- 胸腔穿刺
編集部まとめ
骨肉腫は、そのほとんどが10歳代で発生し、10代後半に発生のピークを迎えます。 骨に発生して痛みや腫れを伴うがんで、発生しやすい部位は膝関節周囲の骨です。 転移がみられることも少なくないため、その治療は手術によるがんの切除と転移・再発予防として薬物療法が行われます。 骨肉腫は、発生する時期と症状が成長痛と似ているために、見過ごされて放置されてしまうこともある病気です。 腫れていたり痛みが長期に渡ったりするときは、医療機関へ早めに受診しましょう。骨肉腫と関連する病気
「骨肉腫」と関連する病気は4個程あります。各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
骨肉腫・ユーイング肉腫・脊索腫・軟骨肉腫は、骨に発生する肉腫です。これらは肉腫と呼ばれる種類のがんで、骨や軟部組織などにできるがんとされています。また、骨肉腫の一般的な症状である痛みは、成長痛の症状との判別が難しいことが問題となっています。
骨肉腫と関連する症状
「骨肉腫」と関連している、似ている症状は2個程あります。各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
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