「食道がんの検査費用」はどれくらいかご存知ですか?検査方法も解説!【医師監修】
食べ物を飲み込み胃へ送るときに通る食道でもがんは発生します。食道でがんが大きくなった場合、食道が狭窄してしまい食べ物がつかえてしまうでしょう。
食べ物がつかえる程がんが大きくなると、食べ物を飲み込もうとするたびに喉の詰まりや吐き気が表れるでしょう。
そのため、食道がんが食道を狭窄してしまう前に、治療する必要があります。
今回は、そのような食道がんのステージ別の治療方法や検査について、費用面にも触れながら解説します。
監修医師:
田中 茉里子(医師)
目次 -INDEX-
食道がんとは
食道の構造は内部から粘膜・粘膜下層・筋層・外膜の4つに分類できます。そして、食道がんは粘膜から発生しやすいです。
食道がんは大きくなってくると、食べ物の進行を妨害してしまい、飲み込みづらさや嘔吐を引き起こしてしまいます。また、食道は腸と比べ、構成する壁が少ないです。
そのため、粘膜に発生したがんが食道外に浸潤しやすいです。そのような食道がんの発生に関わるリスク因子は喫煙と飲酒です。
飲酒によって発生するアセトアルデヒドは発がん性物質であり、アセトアルデヒドの分解能力が弱い方は食道がんの発生リスクが高いとされます。また、熱い飲食物を摂取することで食道がんのリスクが高まるとする報告もあります。
食道がんかどうかを確定する検査方法と費用
食道がんの判定は内視鏡検査で行うのが主流です。
食道は上部消化管に区分され、食道がんの検査をする場合は上部消化管を内視鏡で検査する必要があります。今回は、そのような上部消化管の検査について解説します。
上部消化管内視鏡検査
上部内視鏡検査では、食道の粘膜の色や凹凸を直接確認できます。
観察するなかで、がんの位置や広がり、数なども確認可能です。観察する際には、特殊な色素を粘膜に散布します。また、異常と疑われる組織があればその組織を採取し、病理検査にかけることもできます。
上部消化管造影検査
上部消化管造影検査では、バリウムを飲み食道を通過するところをX線で撮影することで、食道内腔を評価することができます。
この検査では、がんの場所や大きさ、食道内腔の狭さなどを観察することができるでしょう。検査にかかる費用は12.000円(税込)程度です。
食道がんの進行度を診断する検査方法と費用
がんの治療を進めるうえで、がんの進行度を調べるのはとても重要です。
そのため食道がんと発覚したら、進行度も評価する必要があります。ここでは、食道がんの進行度を診断するための検査方法と費用について紹介します。
CT・MRI検査
CT検査はX線を使用して身体の内部を描出する検査です。
MRI検査は磁気を使って身体の内部を描出する検査で、どちらもがんの大きさや転移の有無などを調べる目的で使用されます。
CT検査にかかる費用は3割負担で6,000〜8,000円程度で、MRI検査の場合は8,000〜10,000円程度です。
PET検査
PET検査はがん細胞が増殖のためにブドウ糖を多く取り込む習性を利用した検査です。
放射性フッ素を付加したブドウ糖を注射し、ブドウ糖の集積具合を撮影します。費用は26,000〜30,000円程度です。この検査はほかの画像検査などで診断がつかない場合にのみ保険適用になるので注意が必要です。
超音波内視鏡検査(EUS)
超音波内視鏡検査(EUS)は内視鏡の先端についた超音波装置によって、食道壁の構造を観察する検査です。
がんの進行度・広がり・リンパ節への転移の有無を調べることができます。費用は6,000円程度かかります。
血液検査(腫瘍マーカー)
食道がんが発生した場合、腫瘍マーカーと呼ばれる物質が血液内に産生されます。腫瘍マーカーは複数あり、食道がんに関係するものは以下の3種類です。
- SCC
- CEA
- CYFRA
早期診断に関しては有用性は確立されていませんが、数値の変化によってがんの状態が悪化していないかといった評価で用いられます。
検査費用は検査するマーカーの対象が多い程値段が上がるでしょう。単体のマーカー検査では3,000円程度です。
生検
生検は、がんと疑われている部分から鉗子を用いて組織を採取するものです。
採取した組織は病理検査にかけられ、がんかどうかを診断します。内視鏡検査を行い、がんと疑われる部位があれば、内視鏡検査に付与して生検が実施されます。
そのため、内視鏡検査にかかる費用に上乗せされるでしょう。生検自体の検査費用は3.000円(税込)程度です。3割負担になれば、もう少し安く済むでしょう。
食道がんステージ別の治療法
がん治療では、腫瘍の大きさ・転移の有無などによってステージ0~4まで分けられます。
そして、ステージによって治療方法が異なり、食道がんでも同様です。ここでは、食道がんのステージごとの治療方法について解説します。
ステージ0〜1の場合
ステージ0は粘膜にとどまっている状態のがんのことです。
治療としては食道を温存できる内視鏡による切除術が選択されるでしょう。しかし、病変範囲が広く切除術を行った後に食道が細くなる場合は、放射線治療や外科的手術が行われる場合もあります。
次にステージ1では、外科的手術が標準治療として選択されます。手術だけでなく、放射線治療も選択することができます。
放射線治療と化学療法を組み合わせた化学放射線療法は、手術と同程度の治療効果が得られるという報告もあります。
ステージ2〜3の場合
ステージ2~3では、手術できる状態であれば手術が選択されます。
手術のなかでも、術前に化学療法を行ったうえで手術を行う方法が標準治療とされています。体力がなく手術が受けられない場合やそもそも手術を希望しない場合は、化学放射線療法や放射線療法を単独で行う治療が選択されるでしょう。
ステージ4の場合
ステージ4のなかでも、ステージ4aは化学放射線療法が標準治療となり、ステージ4bでは化学療法が標準治療として推奨されています。
また、がんによる痛みや狭窄などがあって苦痛を伴う場合は、それらを緩和する治療も行われます。
食道がんの検査と費用についてよくある質問
ここまで食道がんの検査や費用について紹介しました。ここでは「食道がんの検査や費用」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
食道がん検査に保険は適用されますか?
田中 茉里子 医師
食道がんの疑いがあり、精査を目的とした検査であれば保険適用になります。食道がんを疑う症状や所見がない場合には保険適用外です。何らかの症状があれば保険適用で検査が受けられますので、医師に相談してください。
費用負担を軽減する方法はありますか?
田中 茉里子 医師
費用負担を軽減する方法としては、高額療養費制度があります。高額療養費制度とは、医療機関や薬局での支払いがひと月のうち一定額を超えた場合に、その超過分が補助される仕組みです。これにより、高額な医療費がかかっても負担が軽減されます。上限額は収入や年齢によって異なるため、詳細は事前に確認することが大切です。
編集部まとめ
食道がんは腫瘍が増大・転移する前に、早期に治療した方が予後がよいです。
食事の際に、食べ物が飲み込みにくいといった症状がある場合は、早急に検査を受け原因を調べましょう。
食道がんを疑い検査を受ける場合は、保険適用になるため費用は3割負担になるでしょう。
がんは早期発見・早期治療が重要です。食道がんと疑わしき症状がある場合は、早急に受診し医師に相談しましょう。
食道がんと関連する病気
「食道がん」と関連する病気は2個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する病気
- 胃食道逆流症
- バレット食道
どちらの疾患も食道がんのリスク因子です。そして、これらの疾患は喫煙や肥満など生活習慣に関わる因子によって生じやすくなります。食道がんを予防するために、まずは生活習慣から見直すことが大切です。
食道がんと関連する症状
「食道がん」と関連している、似ている症状は4個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 飲食時の胸の違和感
- 体重減少
- 胸や背中の痛み
- 咳や声のかすれ
これらはどれも食道がんが進行するにつれて生じる症状です。食道がんの初期は自覚症状がほとんどないため、早期発見は困難です。少しでも早期に見つけるためには、食道がんを疑う症状を自覚したらすぐに医療機関を受診し、検査を受けることが大切です。