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「高齢者の肺がんの進行速度」は早い?遅い?早期発見するための検査法も解説!

 公開日:2025/01/15
「高齢者の肺がんの進行速度」は早い?遅い?早期発見するための検査法も解説!

一般的に高齢者の肺がんは進行が遅いと考えられていますが、実際はどうなのでしょうか。

肺がんは初期段階ではほとんど症状が現れず、受診したときにはすでに進行しているケースが少なくありません。

この記事では高齢者の肺がんの進行速度とともに、早期発見のための検査法や肺がんになったときの治療法も解説します。ぜひ予備知識として活用し、肺がん発生への備えとしてください。

松本 学

監修医師
松本 学(きだ呼吸器・リハビリクリニック)

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兵庫医科大学医学部卒業 。専門は呼吸器外科・内科・呼吸器リハビリテーション科。現在は「きだ呼吸器・リハビリクリニック」院長。日本外科学会専門医。日本医師会認定産業医。

肺がんとは

肺がんは気管支や肺胞の細胞が、がん化したものです。主な組織型は腺がん・扁平上皮がん・大細胞がん・小細胞がんの4つで、肺がんのなかで半数以上を占めるのが腺がんです。
初期には症状があまり見られず進行して初めて症状が現れるケースが多々あり、咳・痰・血痰・胸の痛み・動悸・発熱などとなってあらわれます。進行すると転移する場合があり、リンパ節・肺のほかの部位・胸膜・脳・副腎・肝臓などへの転移が多くみられます。

高齢者の肺がんの進行速度

一般に高齢者のがんは進行が遅いと認識されがちです。たしかに悪性度が低い部類のがんはゆっくりと大きくなるので、進行して発見されるまでに時間がかかり、高齢になって初めて発見されるケースも少なくありません。それをさして高齢者のがんは悪性度が低く進行も遅いと表現できるかもしれません。
その一方で、高齢者が進行の早い悪性度の高いがんにかかることも稀ではありません。これはがんが遺伝子にできた傷が原因で発生するためであり、遺伝子の傷は年齢を重ねるにしたがって数が増えるからです。以上のことから、高齢者のがんは進行が遅いと一律に判断できないと結論されます。

高齢者の肺がんを早期発見するための検査

肺がんに限らず、がんの治療・寛解のためには早期発見がたいへん重要です。高齢者が肺がんを早期に発見するための検査法には以下のようなものがあります。
気になる症状がある場合は、早めにこれらの検査を受けてください。

喀痰細胞診

細胞診とは細胞の観察によりがんの診断やがん検診を行うものです。採取した細胞を染色後がん細胞の有無を顕微鏡で調べる方法で、従来の組織診に比べ負担も少なく結果も早い検査法です。
細胞診のうち痰の細胞を調べるものを喀痰細胞診といい、肺門部にできる主に扁平上皮がんはこの方法で見つけやすいとされます。痰を採取するだけの簡単な検査であり、できるだけ起床時の早朝に痰を採取し、それを3日間続けます。

気管支鏡検査

気管支鏡と呼ばれるやわらかい管をお口から挿入し、先端のビデオカメラで気管支の内部を観察するものです。気管支鏡の外径は5mm程です。気管支鏡検査では観察のみでなく肺から組織の採取もでき、その組織で細菌検査や病理組織検査を行う場合もあります。

胸部X線検査

いわゆるレントゲン検査であり、おおむね初回に行われる検査です。放射線被曝量も少なく簡便なため広く普及しており、肺がん検診でも用いられる方法です。
しかしX線写真は一方向のみの画像のため、肋骨や血管・心臓・横隔膜などの重なり合いのなかでは詳しい判断がつかない場合もあります。また、中心型肺がんや濃度の淡い陰影などは発見しにくいともいわれます。

CT検査

肺がんの薄い陰影や心臓、横隔膜などに隠れて見えない肺がんは、胸部X線検査では見つけにくいですが、CT検査を行い発見できる場合があります。そのためCT検査では、X線検査よりさらに早く肺がんの発見が可能です。一方で、CT検査には放射線被曝の可能性が高いデメリットもあります。

がん遺伝子検査

がんはさまざまな遺伝子の異常が積み重なることで発症し、同じ肺がんであってもがんの部分に生じる遺伝子の変異は患者さんごとに異なります。がん遺伝子検査とはがんのもつ遺伝子の特徴を調べ、個々の患者さんに特徴的な遺伝子異常を見つけ出して治療法の選択に役立てるものです。
従来のがん遺伝子検査は1つか2つの遺伝子を対象としていましたが、近年複数の遺伝子を一度に調べられるがん遺伝子パネル検査が行われるようになりました。

肺がんの治療法

肺がんの治療には、症状や進行度に応じて5つの治療法が存在します。ご自身が発症した場合に備えて、予備知識として活用してください。

手術療法

肺がんに対する手術では主にがんが存在する肺葉および周辺のリンパ節を切除します。腫瘍が小さくリンパ節転移がない場合には区域切除や部分切除などの縮小手術に留めることもありますが、がんが進行し肺葉の切除だけでは取り切れない場合は片方の肺を全部取り除く肺全摘術を行います。
通常手術は全身麻酔で行い、早期のがんに対しては胸腔鏡手術と呼ばれ、内視鏡とビデオカメラを使った小さな切開のみの手術となりますが、腫瘍が大きい・リンパ節が腫れているなどの場合は開胸手術となるでしょう。

放射線療法

放射線療法では、リニアックとよばれる治療装置を用いてX線を照射します。X線は胸部単純写真でも使用されますが、放射線療法で使用されるX線はよりエネルギーの高いものです。
放射線ががん細胞のDNAに損傷を与えることを目的とした療法で照射の際には同時に正常細胞にも損傷をきたしますが、正常細胞の方が損傷からの回復が早いため、がん細胞により大きなダメージを与えられます。

薬物療法

現在使用されている薬物は殺細胞性抗がん剤・分子標的薬・免疫チェックポイント阻害薬・抗体‐薬物複合体の4つに分類され、これらの単独使用あるいは併用を行います。薬物は血液を介して全身をめぐるので、肺の外に広がったがん細胞にも作用し、全身治療として有効です。また、手術や放射線治療と組み合わせて薬物療法が施されるケースもあります。

分子標的治療

分子標的治療は薬物療法のひとつで、がん細胞の増殖に関わる特定分子のみを標的とします。分子標的治療薬の大半は肺がん発生の直接原因になるようなドライバー遺伝子の変異/転座陽性に対する阻害薬です。
それらが検出された患者さんには従来の抗がん剤よりも効果が高いと確認されています。分子標的薬は従来の抗がん剤とは効果が異なるもので、同時に副作用の出方も違ったものになります。

CAR-T細胞療法

CAR-T細胞療法は患者さん自身の血液からT細胞を採取し、人工的に遺伝子を導入してがん細胞を攻撃できるようにしてから患者さんへ戻すがん遺伝子治療です。患者さんの血液から取り出されたT細胞は遺伝子導入によりCAR-T細胞となり、CARとよばれるタンパク質を発現できるようになります。
CARは腫瘍細胞の表面に発現している抗原を認識する能力があり、CAR‐T細胞は体内で腫瘍抗原を認識すると活性化および増殖、腫瘍細胞に強い攻撃を加えます。

高齢者の肺がんの進行速度についてよくある質問

ここまで高齢者の肺がんの進行速度・早期発見法・治療法などを紹介しました。ここでは「高齢者の肺がんの進行速度」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

肺がんの症状について教えてください。

松本 学医師松本 学(医師)

肺がんは初期症状の自覚が少ない病気です。主に下記の症状があげられます。

  • 咳や痰がでる
  • 痰に血が混ざっている
  • 発熱
  • 息苦しい
  • 動悸
  • 胸が痛い

これらの症状が出れば肺がんであると断定できる症状はありませんが、肺がんでは約4割の患者さんが初診でステージ4と診断されているのが現状です。症状がなければ肺がんでないわけではありませんので、早期発見のために検診やレントゲン検査などの意識した受診をおすすめします。

肺がん治療の副作用にはどのようなものがありますか?

松本 学医師松本 学(医師)

化学療法(抗がん剤)は細胞分裂の盛んながん細胞を攻撃しますが、同時に正常な細胞のうち細胞分裂の早い毛髪や消化器などにも影響してしまいます。これが副作用の主な原因です。代表的な副作用として、吐き気・嘔吐・食欲不振・倦怠感・手足のしびれ・脱毛などがあげられ、肝機能障害・腎機能障害・白血球減少・血小板減少などが検査結果として判明する場合もあります。

編集部まとめ

今回は肺がんの進行とその診断方法、治療法を解説しました。肺がんは初期段階での症状がなく、また症状が出ても肺がん特有の症状がないので、患者さん自身で肺がんを疑った頃にはすでに病状が進んでいる場合が少なくありません。

がん治療の予後を良好にし治療の負担を軽くするためには早期発見が重要ですので、定期的な検診受診を強くおすすめします。

肺がんと関連する病気

「肺がん」と関連する病気は3個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する病気

  • 転移性肺腫瘍
  • 間質性肺炎

転移性肺腫瘍は身体の別の箇所のがんが肺に転移したもので、肺原発のがんとは治療方法が異なります。また間質性肺炎の患者さんは肺がんを発症しやすいといわれます。間質性肺炎は風邪やインフルエンザからの感染症で急激に症状が進行・悪化する場合もあるため、発熱・呼吸困難・咳・痰などの症状があらわれた際は早めに医療機関を受診してください。

肺がんと関連する症状

「肺がん」と関連している、似ている症状は4個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 頭痛
  • 目まい
  • 手足の麻痺
  • 手足の痛み

これらはいずれも、肺がんが転移したのちに起こる症状です。肺がんは脳や骨などに転移しやすいので、転移後は上記のような症状があらわれます。肺がんは自覚症状が出て受診した時点ですでに病状が進んでいる場合が少なくないため、症状のないときでも定期的に検診を受け、早期発見に努めることが大切です。

この記事の監修医師