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「急性リンパ性白血病の予後」はご存知ですか?生存率や治療法も解説!【医師監修】

 公開日:2024/12/30
「急性リンパ性白血病の予後」はご存知ですか?生存率や治療法も解説!【医師監修】

急性リンパ性白血病(ALL:acute lymphoblastic leukemia)は、血液がんの1つです。小児の発症率が高めで、成人での発症率は1年間で10万人に1人程度のため稀といわれています。

白血病は深刻な病気だと重く考えている方も少なくありません。では、急性リンパ性白血病を発症すると予後はどうなるのでしょうか?

本記事では、急性リンパ性白血病の予後・予後不良因子・治療法について詳しく解説します。よくある質問にもお答えしていきますので、ぜひ参考にしてください。

山本 佳奈

監修医師
山本 佳奈(ナビタスクリニック)

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滋賀医科大学医学部 卒業 / 南相馬市立総合病院や常磐病院(福島)を経て、ナビタスクリニック所属/ 専門は一般内科

急性リンパ性白血病とは

急性リンパ性白血病は、血液細胞の元となる造血幹細胞が異常をきたし、骨髄でがん化した血液細胞が増殖する血液がんの病気です。血液細胞が正常に作られなくなると、貧血・出血などの症状が現れます。
白血病と診断される患者さんの数は1年間で約1万5000人で、がん全体の1%です。一方、小児がんのなかでは小児白血病の罹患者は1年間で約1000人と罹患率が高くなっています。
小児白血病のうち、7割が急性リンパ性白血病です。急性リンパ性白血病の進行速度は速く、症状が強く出る特徴があります。また、再発率が約20%と高いことも特徴です。

急性リンパ性白血病の予後

それでは本題である急性リンパ性白血病の予後について解説していきましょう。ここでは急性リンパ性白血病を発症した場合の生存率を成人と小児に分けてお伝えします。

成人の生存率

成人の生存率は年齢によって異なります。

  • 15~60歳:30~40%
  • 60歳以上:10%

上記は5年生存率を示しています。治療によって約8割以上は寛解しますが、そのうち約6割で急性リンパ性白血病の再発も報告されています。

小児の生存率

小児での発症率が高い急性リンパ性白血病は、発症の年齢中央値が13歳であるといわれています。しかし、成人の生存率とは異なり、小児の生存率は長期的にみても70〜80%を維持しています。

急性リンパ性白血病の予後不良因子

急性リンパ性白血病を発症した成人の生存率が低いのはなぜなのでしょうか。それには予後不良因子が関係しています。

  • 年齢
  • 診断時の白血球数
  • 染色体・遺伝子
  • 寛解までの期間

この4つの予後不良因子についてそれぞれ解説します。

年齢

小児の生存率とも関係しますが、年齢を重ねれば重ねる程、免疫力・臓器の働き・治癒力は低下してしまいます。一方、小児の急性リンパ性白血病は治療反応が良好であるため、生存率が長期的に高く保たれているのが現状です。
子どもは内臓機能が正常に保たれているため副作用が出にくく、強い治療にも耐えられる傾向があります。もちろん、治療の効果には個人差がありますが、成人よりも小児の方が効果が出やすいことが挙げられます。また、35歳以上では予後不良になりやすいため注意が必要です。

診断時の白血球数

診断時の白血球数が通常の数値より増減している場合も注意が必要です。採血での白血球数が 30,000/μl以上であるときや、T-ALLは白血球数が100,000/μl以上の場合には予後不良因子として診断されます。

染色体・遺伝子

予後不良因子には染色体や遺伝子も関連しています。染色体といっても種類はさまざまです。

  • 白血病細胞核型の染色体数が23(半数体)
  • 白血病細胞核型の染色体数が46未満(低二倍体)
  • 白血病細胞核型の染色体数が66~68(近三倍体)
  • 白血病細胞核型のt(4:11)KMT2A-AF4を含むt(v:11q23)MLL(KMT2A)再構成
  • 白血病細胞核型のt(5:14)IL3-IG
  • 白血病細胞核型のt(8:14)・t(8:22)・t(2:8) C-MYC再構成
  • フィラデルフィア(Ph)染色体t(9:22)BCR-ABL1の存在

上記のように白血病細胞核型の染色体の数などによって予後不良因子かどうかが判断されます。また、遺伝子による予後不良因子はBCR/ABLの遺伝子異常が確認された場合になります。

寛解までの期間

寛解(かんかい)とは、病気の症状が一時的に軽くなったり消えたりした状態を指しています。この寛解までの期間も予後不良因子に関連します。
予後不良因子と判断されるのは、寛解までに要した期間が4〜6週間以上の場合です。また、寛解率も年齢を重ねるごとに低下していくことに留意が必要です。

急性リンパ性白血病の治療法

急性リンパ性白血病の治療法は4つあります。

  • 寛解導入療法
  • 強化療法
  • 維持療法
  • 造血幹細胞移植

それでは詳しく見ていきましょう。

寛解導入療法

寛解導入療法とは、急性リンパ性白血病と診断されてから、症状の緩和・病気の治癒を目的に行う化学療法です。

  • プレドニゾロン(またはデキサメタゾン)
  • ビンクリスチン
  • L-アスパラギナーゼ
  • アントラサイクリン系

上記4つの薬剤は白血病細胞を減少させる効果があります。まず4種類の薬剤を4〜5週間かけて投与するのが寛解導入療法です。
このとき、脳と脊髄に白血病細胞が侵入するのを防ぐため、メトトレキサートという薬剤を脳脊髄液に注入します。うまくいけば、寛解導入療法によって白血病細胞を約1/100以下まで減少させることが可能です。

強化療法

強化療法は寛解導入療法の直後から、白血病細胞をさらに減少させることを目的に行う治療法です。寛解導入療法で使用していない薬剤を投与する早期強化療法を行います。

  • シクロホスファミド
  • シタラビン
  • メルカプトプリン

上記のほかにも、高用量L-アスパラギナーゼを20〜30週間の連続投与やVDパルス療法と呼ばれる、ビンクリスチンとデキサメタゾンの薬剤を繰り返し用いられることもあります。
寛解後には寛解導入療法と早期強化療法を繰り返し行うことが一般的です。また、寛解導入療法のときと同様に、メトトレキサートを髄液注入や点滴によって投与することもあります。

維持療法

維持療法は、寛解導入療法と強化治療でも残ってしまった白血病細胞の根絶・再発予防を目的としています。メルカプトプリンを続けて服用し、メトトレキサートを週1回服用する、2剤の内服が一般的です。
この治療は、2年以上行うよう推奨されています。治療は、内服による薬物療法や通院での定期的な薬物療法です。そのため、通学・就労しながら治療できます。

造血幹細胞移植

造血幹細胞移植は症状や治療結果が良くない場合に検討される治療方法です。

  • 染色体異常(低二倍体:通常は46本ある染色体数が44本以下)がある
  • 遺伝子異常がある
  • 通常の治療では再発リスクが高い場合

寛解導入療法を開始してから1ヶ月以上経ても寛解が見られない場合は、造血幹細胞移植が考慮されます。ただし、症状が良くない状態では造血幹細胞移植は行えないため、考慮されるのは強化療法や維持療法を繰り返して寛解が見られてからになります。

急性リンパ性白血病の予後についてよくある質問

ここまで急性リンパ性白血病の予後・予後不良因子・治療法などを紹介しました。ここでは「急性リンパ性白血病の予後」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

再発は何年で起こりやすいですか?

山本 佳奈医師山本 佳奈(医師)

治療が終了してから2年以内に再発するリスクが高まる傾向にあります。治療が終了してから2年以上経っても症状や血液検査の数値に異常がなければ、治った可能性は高いと考えられるでしょう。ただし、急性リンパ性白血病の再発については未知数なところがあります。そのため再発は何年後と断言することはできません。あくまでも、参考程度に認識しておきましょう。

完全寛解率を教えてください。

山本 佳奈医師山本 佳奈(医師)

完全寛解は、顕微鏡を使用して白血病細胞の消失が目に見えるレベルで確認できる状態を指します。完全寛解率は小児と成人で異なります。
・小児:約98~99%
・成人:約36~67%
完全寛解率だけでみると高い数値だと感じる方もいるのではないでしょうか。完全寛解率は病気の症状が一時的に軽くなったり消えたりした状態を数値化したものです。生存率や再発率とはまったくの別物だと留意が必要です。

編集部まとめ

今回は、急性リンパ性白血病の予後・予後不良因子・治療法について詳しく解説しました。

急性リンパ性白血病は診断されたときの年齢・白血球の数・白血病細胞の性質・治療への反応の程度などによって、生存率が大きく異なる病気です。

35歳以上では予後が不良になりやすいため、体調に異変を感じたら注意が必要です。急性リンパ性白血病は進行速度が速いため、早急に病院を受診するよう心がけてください。

少しでも急性リンパ性白血病の疑問解消に役立てられれば幸いです。

急性リンパ性白血病と関連する病気

「急性リンパ性白血病」と関連する病気は3個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する病気

白血病は血液検査や骨髄検査によって診断される病気です。年齢や白血球数によって大きく予後の状態が異なるため、早期発見と早期治療に努めましょう。

急性リンパ性白血病と関連する症状

「急性リンパ性白血病」と関連している・似ている症状は3個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • ふらつきや身体のだるさ
  • 貧血・出血
  • リンパ節と内臓の腫れ

急性リンパ性白血病の症状は風邪症状と似ています。風邪だと思い込んで発見が遅れるケースもあります。体調が優れない場合には、病院を受診することを心がけましょう。

この記事の監修医師