「口腔がんの早期発見」するには?セルフチェック法や検査方法も解説!
お口は、言葉を発したり会話や食事を楽しんだり、命の入り口ともたとえられる大事な場所です。そのような場所にできる口腔がんは、日常の暮らしに影響を及ぼす深刻な病気といえるでしょう。
一方で、口腔がんは早期発見・早期治療すれば、5年生存率が90%以上と大変高いこともわかっています。また、ほかのがんとは違い、ご自分で患部を直接見ることができるので早期発見がしやすいかもしれません。
今回は、口腔がん早期発見のための対策や予防、検査方法などを解説します。普段からできるセルフチェックも紹介しますので、ご参考のうえ早期発見に努めてください。
監修医師:
山下 正勝(医師)
保有免許・資格
歯科医師
日本外科学会 外科専門医
緩和ケア研修修了
JATEC(外傷初期診療ガイドライン)コース修了
NST医師・歯科医師教育セミナー修了
嚥下機能評価研修修了
目次 -INDEX-
口腔がんとは?
口腔がんは、お口の中にできる悪性腫瘍です。口腔がんの約90%は、舌・歯茎・頬粘膜・硬口蓋・口腔底などの粘膜組織に発症します。初期症状は、がんができた部位が赤や白に変色したり変形したりしますが、まだ痛みはありません。
また、初期のがんステージ1での発見率は17%と低いのが現状です。進行するにつれ、粘膜のただれ・痛み・出血などに加え、お口が開けにくい・食べ物が飲みにくいなどの自覚症状が現れることもあるでしょう。口腔がんの発生頻度は全がんの約1%と高くはありませんが、罹患率は上昇傾向にあります。
早期発見が遅れてしまう理由はいろいろありますが、初期には明確な症状や痛みがなく、口内炎などほかの粘膜疾患と見間違えてしまうことも多いためだと考えられます。
口腔がんを早期発見するには?
口腔がんはそのほとんどが、早期発見によって治療可能です。以下のような方法で、早期発見に努めましょう。
月に1回程度セルフチェックを行う
口腔がんの初期段階では、痛みや出血といったはっきりした症状はありません。そのため、月に1回程度はご自分で鏡などを使ってお口の中のセルフチェックを行いましょう。特に白く変色していないか、赤みが強くなっていないか、舌やお口の中の粘膜の色の変化を念入りに見てください。
気になる症状があればすぐに医療機関に相談する
口腔がんが進行すると、見た目にも明らかな色の変化が現れ、痛み・出血などの症状が出てきます。また、舌の動きが悪くなり、話しにくい・食べ物を飲み込みにくいなどの自覚症状を生じることもあるでしょう。
硬いしこりを感じる・顎の下のリンパ腺が腫れているなどの場合は、 がんがかなり進行している証拠かもしれません。少しでも気になる症状がある方は、躊躇せず耳鼻咽喉科など専門の医療機関で受診してください。
口腔がんのセルフチェック方法
口腔がんのできやすい場所は、舌・歯茎・頬の粘膜です。鏡などで簡単に確認できるので、月1回のセルフチェックが推奨されています。特に、中高年齢で喫煙や飲酒などの習慣がある方は、必ず行ってください。セルフチェックのポイントは、以下のとおりです。
- 口内炎が2週間以上続く
- 口腔内の粘膜が赤くまたは白く変色している
- 口腔内にできた傷が治らない
- 舌の赤みが強くただれている
- 歯茎の腫れや出血がある
- 唇や舌のしびれ
- 味を感じない
- 舌やお口を動かしにくい
- 顎の下のリンパ腺が腫れている
セルフチェックの大切なポイントを順番に説明しましょう。
なかなか治らないしこり・腫れがないか
お口の中を指でよく触って、なかなか治らないしこり・腫れがないかチェックします。
ほかにも、ただれ・ザラつき・しこりを感じる部分がないか、隅々まで指で触って確認してください。舌の表面がザラザラしていてしこりを感じる場合は要注意なので、直ぐに専門家に診てもらいましょう。
粘膜が赤くなったり白くなったりしていないか
お口の中の粘膜が赤くなったり白くなったりしていないか、色の変化をチェックしてください。
特に、赤や白の炎症を発症していて2週間以上続く場合は、口腔がんの可能性を疑いましょう。
治りにくい口内炎はないか
痛みがない・治りにくい口内炎がある場合は、口腔がんを疑ってください。ただの口内炎だと思って放置していたためにがんが進行してしまったということも少なくありません。
もし2週間以上続く口内炎があるならば、早めに医療機関に相談してください。
合わない入れ歯で違和感が出ていないか
合わない入れ歯を我慢して使い続けていると、お口の中に違和感が生じます。鏡を使ってお口の中に、噛んだ傷はないか・治らない噛み傷はないか、よく確認しましょう。
合わない入れ歯は、使用を中断してかかりつけの歯科医師による調整とメンテナンスが必要です。がんかどうか判断が難しい場合は、総合病院の歯科口腔外科で受診してください。
食べ物が飲み込みにくくないか
舌がんの初期には知覚や味覚が鈍くなってくるので、鏡を見ながらお口の中を指で触ってみて、唇や舌にしびれがないか触診してください。舌の内部の神経にまでがんが及ぶと、食べ物の味がしなくなります。
さらに舌の筋肉にまでがんが進行すると、舌やお口をうまく動かせない・食べ物がうまく飲み込めないといった深刻な症状が出るので、ただちに医療機関で受診してください。
口腔がんの検査方法
口腔がんは目で見たり触れたりできるところに発症するため、自分でも簡単にチェックすることができます。
ただし、セルフチェックで判断が付かない場合は専門家の判断が必要です。自覚症状や明らかな異変に気付いたら、口腔がんの診療を行っている耳鼻咽喉科・歯科口腔外科など専門的な医療機関で検査を受けましょう。口腔がんの検査には、大きく分けて以下の3つがあります。
- 視診・触診
- 病理検査
- 画像診断
以下に、順番に説明します。
視診・触診
視診は、舌や粘膜に白斑や赤くなっている部分がないか目で見て調べます。触診は、口腔内にしこりや盛り上がりがないか、首のリンパ節への転移がないか実際に指で触れて確認します。
病理検査
視診・触診で口腔がんが疑われたら、確定診断には病理検査が欠かせません。細胞診は、病変を綿棒で軽くこすって組織を採取し、顕微鏡でがん細胞かどうか調べます。組織生検は、麻酔をして病変と周辺の組織の一部を切除し、顕微鏡で調べます。
画像診断
CT検査では、X線を照射し、身体を輪切りにした状態で3D画像にて確認できます。がんの位置・大きさ・周囲への広がり・リンパ節に転移しているかどうか確認します。検査後に口腔がんと診断されたら、がんの大きさや浸潤の状態などからステージを決定し、治療法を選択することになるでしょう。
口腔がんの早期発見についてよくある質問
ここまで口腔がんの早期発見の大切さ・セルフチェック・検査方法などを紹介しました。ここでは、「口腔がんの早期発見」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
口腔がんの種類を教えてください。
山下 正勝 医師
- 舌がん(54.2%)
- 下歯肉がん(14.5%)
- 上歯肉がん(9.1%)
- 頬粘膜がん(9.0%)
- 口腔底がん(8.9%)
- 硬口蓋がん(3.0%)
- 口唇がん(0.9%)
このうち、舌にできる舌がんが日本人に多く発症し、口腔がん全体の54.2%と過半数を占めているのがわかるでしょう。歯肉がんは、歯茎にできるがんのことで舌がんに次いで2番目に多く、口腔がんの約25%を占めます。上顎より下顎に多く発生します。
頬の内側にできる頬粘膜がん・舌と下側の歯茎の間にできる口腔底がん・上顎にできる硬口蓋がんが続き、唇にできる口唇がんは、発症率0.9%とあまり高くありません。
口腔がんのリスクファクターを教えてください。
山下 正勝 医師
口腔がんのリスクファクターの主なものに、喫煙・飲酒・口腔内の不衛生などがあります。なかでも、タバコの煙には多くの発がん性物質が含まれており、非喫煙者と比べて喫煙者の口腔がんの罹患リスクは約5.2倍とされています。禁煙・アルコールを控えるなど生活習慣を見直すことも大切かもしれません。また、口腔内が細菌で汚染されていると、口腔がんを発症しやすくなります。その他、歯周病やむし歯の放置・合わない入れ歯・被せ物の破損などによる慢性的な刺激もリスクファクターとしてあげられます。お口の中に傷や炎症を作らないため、合わない入れ歯や悪い歯並びは整えてください。
編集部まとめ
今回は、口腔がんの早期発見の大切さについてそのセルフチェック・検査方法などを解説しました。
口腔がんは初期症状のうちに発見すれば、簡単な治療で治すことは可能で、後遺症もほとんど残ることはありません。
早期発見のためには月に1回のセルフチェックが大切です。ご自身またはご家族で気になる症状や異変があるという方は、自分で判断を下す前になるべく早く医療機関に相談してください。
口腔がんと関連する病気
「口腔がん」と関連する病気は4個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
口唇がんは唇にできるがんで、口腔がんの一種です。セルフチェックと検診を行って早期発見・早期治療を目指しましょう。
また、口腔がんは、咽頭・喉頭がん・食道がん・肺がんと重複しやすいことがわかっているため、治療前後にはこれらのがん検査が必要です。
口腔内の何か心配な症状が見られたときには一人で悩まずに、早めに医療機関で受診して相談してください。
口腔がんと関連する症状
「口腔がん」と関連している、似ている症状は3個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 白板症(口腔白板症)
- 紅斑症(紅色肥厚症)
- アフタ性口内炎
白板症は、口腔がんの前がん病変です。舌・歯肉・頬粘膜などにみられる白斑状のザラザラした病変で、将来がん化する可能性は約3~14.5%といわれています。同じく、将来がん化する病変に紅斑症があります。
アフタ口内炎は口腔内のあらゆる場所に発症する、3~5mm程度の小円形の炎症です。また、口腔は咽頭や鼻腔とつながっており、これらの部位に進展したり、全身に転移をきたすようになりますので注意が必要です。これらの症状が長引いていると感じたなら早めに医療機関で受診してください。