”原因”は不明?「急性前骨髄球性白血病」の見逃さない”特徴的な症状”も医師が解説!

白血病の一つである急性前骨髄球性白血病(APL)をご存じでしょうか。急性前骨髄球性白血病には染色体異常が認められることがわかっていますが、なぜ染色体異常が発生するのかは明確になっていません。
本記事では急性前骨髄球性白血病とはどのような病気なのか、原因・症状・治療法についてご紹介します。

監修医師:
山本 佳奈(ナビタスクリニック)
目次 -INDEX-
急性前骨髄球性白血病とは
急性前骨髄球性白血病(acute promyelocytic leukemia:APL)は急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia:AML)の一つで、急性前骨髄球性白血病は急性骨髄性白血病の10〜15%を占めています。急性白血病の病型分類(FAB分類)では、M3に相当します。
急性前骨髄球性白血病は、骨髄芽球からさらに分化した前骨髄球に遺伝子異常が起き、前骨髄球ががん化した状態のことです。このときの染色体異常はt(15・7)に発生します。この2つの染色体に異常があること、もしくは切断された15番目の染色体と17番目の染色体が相互に結合することで形成されるPMLーRARA融合遺伝子の存在を検出することが、急性前骨髄球性白血病の確定診断となります。
FLT3-ITD変異や-TKD変異・WT1・NRAS・KRAS・ARID1A・ARID1Bなどに遺伝子変異があることも診断には必要です。染色体異常は、染色体G-band法・FISH法・RT-PCR法といった方法で検出します。血液検査では、赤血球・血小板減少を認めることがほとんどです。白血球は増加することがほとんどですが、まれに正常・減少する例もあります。
急性前骨髄球性白血病の原因
急性前骨髄球性白血病はなんらかの影響で遺伝子が変異し発症することはわかっていますが、変異する原因は明確になっていません。遺伝子に傷がつく原因としては下記が考えられています。
- タール、免疫抑制薬などの化学的因子
- 放射線や紫外線などの物理的因子
- ウイルスによる生物学的因子
- 食べ物や喫煙や飲酒などの生活習慣
これらの因子が複雑に絡み合うことで遺伝子異常につながると考えられています。
急性前骨髄球性白血病の症状
急性骨髄性白血病と同様の症状が現れますが、急性前骨髄球性白血病で特徴的な症状は出血のしやすさです。下記で出血傾向についてとその他の症状について説明します。
発熱
正常な白血球が減少しますので、細菌やウイルスが体内に侵入してきたときに体を守ることができず感染症にかかりやすくなります。感染症に罹患すると病原体を攻撃するため発熱します。
疼痛(骨痛)
造血幹細胞がさまざまな細胞へ成長する前に分化を止めてしまうと、白血病細胞が骨髄のなかで増加し骨髄を占領します。その結果、白血病細胞に圧迫され疼痛を感じることがあります。
リンパ節腫大
白血病細胞はリンパ節に溜まってしまうこともあります。これによりリンパ節が腫れたように見えることがあります。
易出血性
正常な血小板が減少しますので出血しやすくなります。特に急性前骨髄球性白血病の場合は線溶過剰型の播種性血管内凝固症候群(DIC)を発症しやすいです。線溶過剰型のDICはフィブリノーゲンの低下が特徴的です。
フィブリノーゲンは血液のゲル化を行う血液中のたんぱく質で、出血量が多量にならないように防ぐ役割があります。この機能が脆弱になることで脳や肺などの重要臓器からの出血を起こし、重篤な症状に至ることがあります。
倦怠感
正常な赤血球が減少するのも白血病の症状の1つです。赤血球は身体のなかで酸素を運搬し、身体はその酸素によって機能しています。赤血球が減少することで、身体の細胞が正常に働かなくなり貧血状態となり倦怠感を感じます。
頭痛
倦怠感と同様に、身体のなかの酸素運搬がうまくできなくなると頭痛が発生します。中枢神経系で白血病細胞が増えた場合にも頭痛が発生することがあります。
精巣腫大
白血病細胞は精巣内にも存在しうることがわかっています。精巣内で白血病細胞が増殖すると精巣の腫大が見られるようになります。
急性前骨髄球性白血病の治療法
急性前骨髄球性白血病の治療法はいくつかありますが、下記の3つの治療法を組み合わせ長期にわたり治療を進めていく必要があります。この項目では3つの治療法をご紹介します。
化学療法
化学療法では、急性前骨髄球性白血病の治療で重要な役割を持つ全トランス型レチノイン酸(all trans retinoic acid:ATRA)とアントラサイクリン薬剤をはじめとした抗がん剤の併用が行われます。初めての治療の場合、70歳以下では完全寛解率は90%を超え、長期生存率は80%近いです。
この治療法での課題は、DICと分化症候群に伴う早期死亡対策です。分化症候群は急性前骨髄球性白血病細胞に対する分化誘導作用によってサイトカインの放出や接着因子の作用が報告されています。これにより急性呼吸蒼白症候群に似た症状の、呼吸不全・肺浸潤・うっ血性心不全・胸水・低酸素血症・体重増加の出現に注意が必要です。
分子標的薬
分子標的薬とは、がん細胞に狙いを絞った薬剤のことです。急性前骨髄球性白血病では寛解導入法として全トランス型レチノイン酸(all trans retinoic acid:ATRA)の内服治療があります。この薬剤により白血病細胞を成熟した白血球に分化させることができるのです。
近頃では、ATRAと同様の作用が亜ヒ酸にもあることがわかってきたので、ATRAと亜ヒ酸を併用するとより高い治療効果が得られるとの報告があります。
造血幹細胞移植
造血幹細胞移植は自家造血幹細胞移植と同種造血幹細胞移植にわけられます。自家造血幹細胞移植は、あらかじめ採取・凍結保存していた患者さん本人の造血幹細胞を使用します。同種造血幹細胞移植はドナーから提供された造血幹細胞を移植する方法です。どちらも造血幹細胞を移植する前処置として大量化学療法が必要です。これにより腫瘍細胞を減少させ、移植した細胞の働きを優位にできます。
同種造血幹細胞移植では、白血球のHLAの型の一致度が高い方が移植の条件としてよいとされています。一致度の高い方が、患者さんの免疫細胞がドナーのリンパ球を異物として認識しにくいので、拒絶反応である移植片対宿主病が起こりにくいためです。
急性前骨髄球性白血病の原因についてよくある質問
ここまで急性骨髄性白血病の症状・治療法などを紹介しました。ここでは「急性前骨髄性白血病の原因」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
急性前骨髄球性白血病の診断・検査法について教えてください。
急性前骨髄球性白血病は、骨髄検査により芽球や異常前骨髄球を20%以上認めた場合に診断されます。骨髄検査は骨髄中の血液を採取し調べる骨髄穿刺、骨髄の組織を採取し骨髄組織を調べる骨髄生検があります。どちらも30分程度で終了することがほとんどです。ベッドにうつ伏せの態勢で腰部に麻酔の注射を行い、骨に針を刺し血液か骨髄組織を採取し検査は終了です。
急性前骨髄球性白血病は完治しますか?
急性前骨髄球性白血病の発見後すぐに強力な薬剤を使用し治療することで、検査での異常がなくなり正常な機能が回復した状態の完全寛解になることがあります。そうすることで、急性骨髄性白血病のなかでも長期生存率が高いとの報告があります。
編集部まとめ
急性前骨髄球性白血病は急性白血病のなかでも、分子標的薬であるATRAが確立しているため生存率と寛解率の高い病気です。そのため病気の早期発見と早期治療が大切です。
発症原因が明確になっていないので、風邪をひきやすくなったり関節やリンパの腫れと痛みが気になったりなど、少しでも体調に違和感を覚えたらすぐに病院で受診するようにしましょう。
急性前骨髄球性白血病と関連する病気
「急性前骨髄球性白血病」と関連する病気は5個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
上記の関連する病気は、下記に述べる症状が出現することがほとんどです。感染症に罹患したときと症状が似ているので、ただの風邪と油断せず病院で検査をすることをおすすめします。
急性前骨髄球性白血病と関連する症状
「急性前骨髄球性白血病」と関連している、似ている症状は5個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
どれも軽度の体調不良として見逃してしまいそうな症状です。少しでも体調に異変を感じた場合は、迷わず病院で受診するようにしましょう。

