「膵臓がんは早期発見」できる?なりやすい人と生存率を高める6つの検査を医師が解説!

膵臓がんの早期発見方法とは?メディカルドック監修医が膵臓がんの早期発見方法・生存率・なりやすい人の特徴・症状・原因などを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。

監修医師:
齋藤 雄佑(医師)
日本外科学会外科専門医。日本医師会認定産業医。労働衛生コンサルタント。
目次 -INDEX-
「膵臓がん」とは?
膵臓がんは、その名の通り、膵臓に発生するがんです。膵臓は、胃の後ろ側に位置する、長さ約15cmほどの細長い臓器で、消化酵素を分泌して食べ物の消化を助ける「外分泌機能」と、血糖値を調整するホルモン(インスリンなど)を分泌する「内分泌機能」という、主に2つの重要な役割を担っています。膵臓がんの多くは、消化酵素を運ぶ「膵管」の内側の細胞から発生するため、「膵管腺がん」と呼ばれます。非常に悪性度が高く、早期に症状が現れにくいため、発見された時にはある程度進行しているケースが多いのが特徴です。そのため「難治性がん」の一つとして知られています。
膵臓がんを早期発見する方法
健康診断や人間ドックで腹部超音波検査や腫瘍マーカーなどを含む血液検査を受けることは、膵臓がんの早期発見の一助になる可能性があります。ただし、これらの検査だけで膵臓がんを確実に早期発見できるわけではありません。腫瘍マーカーは進行したがんでも数値が上がらないことがありますし、超音波検査では膵臓全体を鮮明に観察するのが難しい場合があります。家族に膵臓がんの既往がある方、慢性膵炎や糖尿病を患っている方、喫煙や大量飲酒の習慣がある方、膵嚢胞性疾患をお持ちの方は、膵臓がんのリスクが高いとされています。これらのリスク要因に当てはまる場合は、必要に応じて磁気共鳴胆管膵管造影(MRCP)や内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)、超音波内視鏡(EUS)といったより精密な検査を検討することが、早期発見の可能性を高めます。後述するような漠然とした腹部の不調や背中の痛み、急な体重減少、黄疸などの症状が続く場合は、たとえ軽度であっても「おかしいな」と感じたら迷わず消化器内科を受診することが非常に大切です。
膵臓がんを早期発見した場合の余命・生存率
腫瘍径が1cm以下の膵臓がん(Stage0とStage1Aの一部)では5年生存率が80%以上であったと報告されています。現在、早期膵臓がんの定義はまだされていませんが、余命を考えた場合、長期予後が期待できる膵臓がんであるいえます。早期の膵臓がんは造影CTなどの画像検査では腫瘍の直接的な同定が困難な場合が多く、前述の通り、EUSやMRCP、ERCPといった詳細な検査で診断に至るケースがあります。
膵臓がんの検査法
膵臓がんはどうやって発見されるのでしょうか?
まずは患者さんの負担が少ないスクリーニング検査で膵臓がんが疑われるかどうかの判断をします。これから紹介する検査は日帰りの外来検査で実施されます。
腫瘍マーカー・血液検査
腫瘍マーカー(CA19-9、CEA、DUPAN-2など)の測定は、予後予測や治療判定に有用とされています。ただし、膵臓がん以外の病気でも上昇することがあり、がんがあっても上昇しないケースもあるため、これだけで診断はできません。また、肝機能や膵酵素(アミラーゼ、リパーゼなど)の異常も同時にチェックされます。基本的には外来での採血で行われます。
腹部超音波検査(エコー)
超音波を当てることで、膵臓の形や大きさ、異常な影の有無などを確認します。簡便で侵襲が少ないため、人間ドックなどでも行われることが多いです。しかし、膵臓は胃や腸のガスに隠れやすく、特に膵尾部などは観察が難しいことがあります。消化器内科などの外来で実施可能です。
腹部CT・MRI(MRCP)
CTはX線を用いて体の断面を、MRIは磁気を利用して撮影します。特に造影CTは腫瘍の広がりや転移の評価に重要です。MRCPは、胆管や膵管の状態を非侵襲的に評価できるため、早期発見や診断に有用です。いずれも通常は外来で予約制にて実施されます。
超音波内視鏡(EUS)
内視鏡の先端に超音波装置がついたもので、胃や十二指腸の中から膵臓に非常に近い位置で観察するため、詳細な画像が得られます。数ミリ単位の小さな腫瘍の発見にも優れています。病院によっては、検査後に慎重を期して1泊程度の経過観察入院が必要になることもあります。
ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)
内視鏡を口から挿入し、胆管や膵管の出口から造影剤を注入してX線撮影を行う検査です。組織の採取(生検)も可能です。合併症(膵炎など)のリスクがあるため、多くの場合は数日間の入院下で行われます。
膵臓がんになりやすい人の特徴
遺伝的要因・家族歴
家族に膵臓がんの患者さんがいる場合、そうでない人に比べて発症リスクが高まることが知られています。特に「家族性膵臓がん」や、遺伝性膵炎、ポイツ・ジェガース症候群などの遺伝性の病気を持っている場合は注意が必要です。家族歴がある方は、具体的な症状がなくても、早期から消化器内科を受診し精密検査を受けることが推奨されます。必要であれば遺伝カウンセリングも検討されます。
糖尿病の方(新規発症・急激な悪化)
2型糖尿病の人はリスクがやや高いですが、特に重要なのは「新たに発症した糖尿病」です。50歳以上で急に糖尿病と診断された場合や、持病の糖尿病が急激に悪化した場合には、膵臓がんが原因である可能性があります。特に体重減少を伴う場合は、早急に膵臓の精査をすることをおすすめします。
喫煙・大量飲酒・生活習慣
喫煙は膵臓がんの最大のリスク因子の一つで、本数や年数が多いほどリスクが増加します。また、長期にわたる多量飲酒は慢性膵炎を引き起こし、それが原因で膵臓がんが発生しやすくなります。肥満もリスク因子となるため、適度な運動とバランスの取れた食生活で標準体重を維持することが望ましいです。
膵臓がんの代表的な症状
腹痛・背部痛
上腹部の鈍い痛みが持続し、背中まで響くような痛み方が特徴です。膵臓は背骨に近いため、がんが進行して周囲に及ぶと背中側に痛みが放散します。初期は軽い違和感程度ですが、徐々に強くなります。原因不明の持続する痛みがある場合は、消化器内科を受診し、腹部超音波や血液検査を受けましょう。
黄疸(おうだん)
皮膚や白目が黄色くなる症状です。膵頭部にがんができた場合、胆管を圧迫するため胆汁の流れが滞り、黄疸となります。尿の色が濃くなったり、便の色が白っぽくなったり、皮膚の痒みが出ることもあります。無痛性の黄疸は膵頭部がんを疑う重要なサインであり、速やかな受診とERCP等の処置が必要になる場合があります。
食欲不振・体重減少
膵臓がんでは、消化酵素の分泌低下やがん細胞の影響により、急激な体重減少が起こりやすいです。数か月で明らかな体重減少(原因なく5kg以上など)や倦怠感がある場合は、悪性腫瘍を疑い精密検査を行う必要があります。消化器内科にて血液検査や画像検査を受け、原因を突き止めましょう。
膵臓がんの主な原因
遺伝的背景
膵臓がん患者の数%は遺伝的要因が関与します。家族に複数の患者がいる場合や、遺伝性膵炎などが原因となり得ます。こうした背景がある方では、若い頃からの定期的な膵臓検診が効果的な予防策となります。
生活習慣(喫煙・飲酒・食事)
喫煙はリスクを2倍以上に高める明確な原因です。多量飲酒は慢性膵炎を介して間接的にリスクを上げます。また、肉食・高脂肪食中心の食事は膵液の分泌負担を増やし、悪影響を及ぼす懸念があります。野菜や果物を摂るバランスの良い食生活が重要です。
基礎疾患の影響
代表例は慢性膵炎と糖尿病です。慢性膵炎は長期の炎症により遺伝子ダメージが蓄積し、がんに至ることがあります。糖尿病は発症リスクであるとともに、がんの結果として現れることもあります。また、一部の膵嚢胞(IPMNなど)は放置するとがんに進展し得るため、定期的なフォローが必要です。
「膵臓がんの早期発見」についてよくある質問
ここまで膵臓がんの早期発見について紹介しました。ここでは「膵臓がんの早期発見」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
膵臓がんを早期発見することは難しいのでしょうか?
齋藤 雄佑(医師)
非常に難しいのが現状です。膵臓がんは「沈黙の臓器」と言われる膵臓にできるため、初期症状がほとんどなく、自覚症状で気づくのは困難です。さらに膵臓が体の奥深くにあるため、普通の腹部エコーやレントゲンでは小さな病変を捉えにくいという問題もあります。その結果、症状が出てから見つかる頃には進行している場合が多いのです。現状、国が推奨するがん検診にも膵臓がんは含まれておらず、一般的なスクリーニング手段が確立していません。しかし近年ではMRIやEUSなど性能の高い検査を組み合わせることで、従来よりも小さい膵臓がんを見つけられるケースも出てきました。難しいことに変わりありませんが、リスクの高い方が積極的に検査を受けることや、医療機関での注意深い診察によって完全に不可能ではないと言えます。
まとめ 膵臓がんのリスク因子を理解し早期発見を!
膵臓がんは早期発見が特に難しく予後も厳しいがんですが、近年の医療の進歩により、小さな膵臓がんを捉える手段が増え、治療成績も少しずつ向上しています。早期に見つけて手術・治療ができれば5年生存率が大きく向上し、中には完治する患者さんもいます。そのためには、膵臓がんになりやすいリスク因子をお持ちの方は積極的に検査を受けること、また一般の方も日頃から生活習慣を整え症状に注意を払うことが大切です。軽微な体調の変化でも、長引く場合は遠慮せず医療機関で相談しましょう。膵臓がんは専門的な検査をしなければ診断が難しいため、患者さん自身の心構えと早めの受診がカギを握ります。膵臓がんの治療法は日進月歩で改良されていますので、希望を捨てず専門医と十分に相談して最膳の治療を受けてください。膵臓がんは早期発見・治療が何より重要です。
「膵臓がん」に関連する病気
「膵臓がん」から医師が考えられる病気は7個ほどあります。
各病気の詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
内分泌系の病気
遺伝性の疾患だけでなく、生活習慣に関わる疾患が膵臓がんのリスクになるため、普段から生活習慣の是正を意識しましょう。
「膵臓がん」に関連する症状
「膵臓がん」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状の詳細についてはリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
膵臓がんのサイン
- 背部痛
- 心窩部痛
- 黄疸
- 食欲不振
- 体重減少
- 全身倦怠感
膵臓がんに特徴的な症状はありませんが、体調の異変を感じればすぐに病院を受診してください。
参考文献




