「口腔がん」を発症すると口のどこに「痛み」を感じる?医師が徹底解説!
公開日:2024/10/02


監修歯科医師:
五島 志織(歯科医師)
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九州大学歯学部卒業。大学卒業後、同大学の付属病院で研修医終了後、クリニックで歯科医師として勤務後、現在、九州医療スポーツ専門学校で講師として、解剖学、生理学、病理学、衛生学などを、歯科衛生士学科、看護学科、柔道整復師学科の学生に指導中。
目次 -INDEX-
「口腔がん」とは?
口腔内にできる癌を総称して口腔がんといいます。 口唇がん、頬粘膜がん、歯肉がん、硬口蓋がん、舌がん、口底がんなどがありますが、口腔がんの中で一番多いのは、舌がんであり、全体の40パーセントをしめます。 舌がんの男女比は2:1で、ほかの口腔がんに比べ、平均年齢も低く、20~40代の罹患もしばしばみられ、後発部位は、舌縁、あるいは舌下面です。 口腔がんの治療は主に3つで、外科的療法(手術)、放射線療法、化学療法(抗がん剤治療)で、1つだけでなく複数を採用することも多いです。 がんの治癒の目安としての5年生存率は70~80%ほどです。口腔がんを発症すると口にどんな痛みを感じる?
初期の口腔がんでは痛みを伴うことはあまりありません。 しかし、がん硬結という固いしこりのようなものがみられることはあります。口腔がんを発症すると口のどこに痛みを感じる?
口腔がんで痛みを生じることは少ないのですが、進行していくと痛みを伴うことがあります。 痛みはがんの原発巣で出現することが多いので、口腔がんで40%をしめる舌が一番痛みを生じるところだと考えられます。舌
口腔がんが一番できやすい場所は舌です。口腔がんのうち40%を占めます。 舌でも特に、舌縁にできやすいです。歯肉
舌がんに続いて多いのは歯肉(歯ぐき)がんです。全体の30%を占めます。 舌がん、歯肉がんで口腔がんの70%を占めます。 上顎・下顎別では、下顎歯肉は上顎歯肉の約1.7倍多いです。 また、上下顎ともに臼歯部に好発します。口腔がんと口内炎の見分け方
口内炎はよく見られる病気なので、口内炎があるといつも口腔がんを疑うわけにはいきませんが、2週間以上口内炎が治らない場合は口腔がんの可能性もあるので、専門医を受診することがおすすめします。 口腔がんの初期症状は、痛みのようなはっきりとしたものはありません。しかし口腔内の粘膜の変化が現れることがあります。 口腔粘膜症状としては、色が白くなったり、赤みが強くなる、ただれる、ざらざらしたり、しこりを感じるといったものになります。 しかしこれらの症状は口腔がんだけにみられるわけではないので、症状だけで口腔がんとその他の疾患を見極めるのは極めて困難です。 このため、セルフチェックを行い、このような症状がみられる場合は、歯科、歯科口腔外科または耳鼻咽喉科の専門医への受診をお勧めします。口腔がんを発症し痛みも伴う場合のステージ分類とは?
口腔がんが原発巣の大きさ、リンパ節転移の有無、遠隔転移の有無により、ステージ0、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、ⅣA、ⅣB、ⅣCに分けられます。 ステージが進むにつれて、予後も悪くなります。 口腔がんは、初期には痛みを感じることは少なく、無痛性の腫脹が見られます。しかし、特徴としては、硬結といわれ、がんの部分はとても硬くなるのが特徴です。 進行していくと、痛みがでることもありますが、どのステージから痛みがでるという明確な基準はありません。口腔がんの主な症状
舌がん
痛みは少なく、白色の沈着物、赤みがみられ、表面がただれることもあります。 特に見た目として口内炎に似ていることが多々みられるため、自己判断は困難です。 舌がんは初期には、白斑や紅斑があるびらんや小潰瘍がみられることが多いです。 さらに進行すると潰瘍と硬結(がんにより組織が硬くなること)を伴う腫瘍を形成します。 また、リンパ節転移をおこしやすいです。 発症したと思ったら、歯科、口腔外科もしくは耳鼻咽喉科を受診すると良いです。 受診時には、いつから見られたか、または、がんが遺伝性のものもあるので、家族にがんの既往がある場合は、医師に伝えたほうが良いです。 また、がんが生活習慣病の一種なので、生活歴特に、たばこや酒などの嗜好品も伝えると良いです。 がんは早期発見早期治療が一番治癒につながるので、少しでも疑いがある場合は早めの受診をお勧めします。歯肉がん
臨床症状は乏しく、患者本人は気付きにくいことが多いが、歯肉の腫脹や潰瘍の形成がみられます。 また、歯肉は組織が薄いため、比較的早期に顎骨の吸収がみられることから、歯の動揺により、自覚することもあります。口腔がんの主な原因
生活習慣
がんは生活習慣病の一つなので、口腔がんも悪い生活習慣が原因の一つになります。 喫煙や過度の飲酒などが、がんを引き起こす生活習慣となります。 悪い生活習慣はがんだけでなく、脳疾患や心疾患の原因にもなるので、なるべく健康的な生活を送るようにしましょう。口腔内の物理的刺激
不適合補綴物(銀歯、入れ歯を含む)が口腔内にあると慢性的に口腔内の一定の場所に刺激を与えます。これが、がんの要因になることがあります。 このため、口腔内に不適合補綴物があり、痛みや違和感を感じる場合は、すぐに治療が必要になるので、早めの歯科受診をお勧めします。口腔内の不衛生
口腔内の不衛生も口腔がんにつながるため、口腔内も清潔に保っておかなければなりません。ご自身での清掃が大切ですが、自信がない場合は、定期的に歯科医院に行って、歯石除去などの口腔清掃に定期的に歯科医院に来院するのもおすすめです。口腔がんの治療法
口腔がんの治療法は大きく分けて手術を伴う外科的療法、放射線療法、抗がん剤を用いた化学療法の3つです。 症状、年齢、患者さんの基礎疾患など様々な要素を考慮し、適した治療法を決めていきます。また、1つの治療法だけでなく、複数の治療法を組み合わせることも多いです。 また、いずれの治療も口腔外科、耳鼻咽喉科で行われます。外科的療法
外科的療法は、手術を伴うため、入院が必要となります。最も有効で確実な治療法となります。入院期間は、症状により異なってきます。 がんがそこまで大きくなければ、安全域を含めた原発巣の切除のみでいいので、1~2週間ほどの入院になりますが、切除範囲が広くなると、再建手術が必要になります。その場合は、手術時間も長く、丸1日かかることもあります。 また、再建した場合は、リハビリ期間も長くなることから、入院期間が1か月もしくは1か月を超えることもあります。 手術が主なため、患者さんに対しての負担は大きくなりますが、うまくいけば根治には近いため、よく使われる方法です。化学療法
化学療法は、外科的療法の術前、術後の療法としての補助療法として使われることが多かったですが、近年、化学療法と放射線療法の併用により、口腔機能温存を目指して、併用療法による根治的治療法としても用いられるようになってきています。 経口薬もあるが、ほとんどが、静脈内投与(点滴) となります。そのため、近年は、入院よりは外来で行うことが増えてきました。 しかし、化学療法には、有害事象があるため、注意が必要となります。 薬によって有害事象は異なりますが、共通するものとして、骨髄抑制があげられ、好中球減少症、血小板減少症、貧血などが問題となります。放射線療法
放射線療法は、がんの部位に放射線をあてる治療法です。 これは、がん細胞が正常細胞よりも放射線感受性が高く、障害を受けやすいという性質を利用しています。 放射線による正常組織の損傷を許容できる範囲に抑えながら、がん細胞を死滅、あるいは少なくとも増殖できない程度にまで制御しようとしているものです。外科的療法と併用して術前照射、術後照射が多かったが、先述したように、化学療法との併用件数も増えてきました。有害事象としては、照射局所に粘膜炎、味覚障害、唾液分泌障害、咽頭痛や嚥下時痛などがあります。口腔がんのセルフチェック法
セルフチェックポイント(口腔がんの初期症状)- ・口内炎が2週間以上なおらない
- ・舌や口の中の粘膜の色が白く変化する
- ・舌の赤みが強くただれている
- ・舌の表面がざらざらしたり、しこりを感じる
- ・歯ぐきの腫れや出血がある
- ・歯のぐらつきがある
「口腔がんの痛み」についてよくある質問
ここまで口腔がんの痛みなどを紹介しました。ここでは「口腔がんの痛み」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
口腔がんの好発年齢について教えてください。
五島 志織 医師
口腔がんの好発年齢は60台です。しかし、舌がんは20代~40代の比較的若年層でもみられるため、若くても注意が必要になります。
編集部まとめ
口腔がんは初期は痛みを伴うことが少なく、気づきにくいです。しかし、早期発見は完治に大きくつながります。例えば、病期ごとの5年生存率を見てみると、初期であるstageⅠでの5年生存率は85%~95%である一方、末期であるstageⅣだと40~50%になります。 このことから、早期発見早期治療がいかに有効であることがわかります。 また、口腔がんは、自己判断では、口内炎をはじめとした別の口腔粘膜病変と勘違いしてしまうことが多々あるので、少しでもおかしいなと思えば、歯科もしくは口腔外科を一度受診してみるのが良いです。「口腔がん」と関連する病気
「口腔がん」と関連する病気は7個ほどあります。 各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。内科の病気
「口腔がん」と関連する症状
「口腔がん」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。 各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。関連する症状
- 2週間以上治らない口内炎が2週間以上なおらない
- 舌や口の中の粘膜の色が白く変化する
- 舌の赤みが強くただれている
- 舌の表面がざらざらしたり、しこりを感じる
- 歯ぐきの腫れや出血がある
- 歯のぐらつきがある
参考文献




