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「膵臓がん」を発症した際に「効果的な食べ物」はご存知ですか?医師が解説!

 公開日:2024/08/29
「膵臓がん」を発症した際に「効果的な食べ物」はご存知ですか?医師が解説!

膵臓がんに効果的な食べ物とは?Medical DOC監修医が膵臓がんになる可能性の高い食べ物・予防する食べ物・発症のリスクを上げやすい食べ物・予防法などを解説します。

関口 雅則

監修医師
関口 雅則(医師)

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浜松医科大学医学部を卒業後、初期臨床研修を終了。その後、大学病院や市中病院で消化器内科医としてのキャリアを積み、現在に至る。内視鏡治療、炎症性腸疾患診療、消化管がんの化学療法を専門としている。消化器病専門医、消化器内視鏡専門医、総合内科専門医。

「膵臓がん」とは?

膵臓がんは、胃の後ろに位置する20センチほどの細長い臓器である膵臓から発生する悪性腫瘍です。
膵臓には、食物の消化を助ける膵液(すいえき)を作る外分泌機能と、血糖値を調整するインスリンなどのホルモンを作り分泌する内分泌機能の2つの役割があります。
膵臓がんの多くは、膵液の通り道である膵管から発生します。
初期症状には乏しく、進行し腹痛や腹部膨満感、また急激に悪化したり発症したりする糖尿病がきっかけとなり見つかることがあります。
今回の記事では、膵臓がんのリスクを高める食べ物や、予防のために役立つ情報を科学的根拠に基づいてお伝えします。

膵臓がんのリスクを高める食べ物

日本の国立がん研究センターによれば、膵がんのリスクとなる食品は「データ不十分」となっています。
一方で、膵臓がんのリスクを高める食べ物についてのさまざまな研究もあります。そこで、今回はそうした食べ物についてご紹介していきます。

加工肉

加工肉は、通常亜硝酸塩で保存されており、N -ニトロソ化合物および複素環アミンが含まれています。これらの化合物には、発がん性があるとされており、これが膵臓がんリスクを高める可能性があります。また、国際がん研究機関(IARC)は、加工肉を「ヒトに対する発がん性がある」と分類しています。
具体的には、ソーセージ、ハム、ベーコン、サラミなどがあります。
一方、農林水産省からは、こうした加工肉を一切摂らないようにする必要はないという通達も出ています。完全に食事から加工肉を取り除くことも難しいので、日常的に食べすぎないようにすると良いでしょう。

赤肉

赤肉とは、牛肉、豚肉、羊肉(ラム、マトン)、馬肉、山羊肉を含む、「哺乳類」の肉のことです。鶏肉や七面鳥などは含みません。
赤肉を高温で調理すると、発がん性があると考えられている複素環アミンや多環芳香族炭化水素が生じる可能性があります。また、
赤肉を取りすぎると、ヘム鉄の吸収が増え、酸化ストレスが大きくなり、DNAが損傷する可能性が高くなるという報告があります。その結果、膵臓がんリスクを増加させるリスクがあります。

高糖質食品・砂糖

高糖質食品や砂糖の過剰摂取は、慢性的な高インスリン血症につながる可能性があります。
インスリンはIGF-1というホルモンの生物活性を増加させます。IGF-1はアポトーシスの抑制や細胞増殖を刺激することで、がんの進行を促進する可能性があります。その結果、膵臓がんのリスクが増加する可能性が考えられます。
具体的な食品名としては、飴や砂糖入りの清涼飲料水、ケーキ、クッキーなどがあります。

飽和脂肪酸を豊富に含むもの

飽和脂肪酸の摂りすぎで、2型糖尿病の発症リスクが高まることが示唆されている研究があります。2型糖尿病になると、先ほど述べたように慢性的な高インスリン状態となり、結果として膵臓がんになるリスクが高まる可能性があります。
そのため、飽和脂肪酸を過度に摂取することは避けた方がよいでしょう。
バター、生クリーム、ラード、脂身の多い肉の摂りすぎには気をつけましょう。

アルコール

大量のアルコール摂取は膵臓がんのリスクを高める可能性があります。
大量とは、具体的には1日あたりのエタノールの摂取量で男性では50g /日以上、女性では25g /日以上が目安となります。
おおよそ、アルコール度数5%のビール500mlにはエタノール20gが含まれています。そのため、男性では500ml缶を2.5本、女性では1本強飲み続けることは膵臓がんのリスクになり得るということになります。

膵臓がんを予防する可能性のある食べ物

それでは、ここからは膵臓がんを予防する可能性が示されている食べ物について解説していきます。

野菜

野菜には多くの抗酸化物質、ビタミン、ミネラルが含まれており、これらは細胞の損傷を防ぎ、がんの発生を抑える効果があります。特に緑黄色野菜は、ビタミンCやベータカロテンが豊富です。ほうれん草、ケール、ブロッコリー、にんじんなどがあります。

新鮮な果物

果物にも、多くのビタミンCや抗酸化物質が含まれています。これらの抗酸化物質には、がん細胞の成長を抑制する効果があります。特にベリー類はポリフェノールという抗酸化物質も豊富に含まれます。ブルーベリー、ラズベリー、オレンジ、リンゴなどがあります。

ナッツ

ナッツには健康的な脂肪、ビタミンE、抗酸化物質が豊富に含まれており、これががん予防に寄与するとされています。
75,680人の女性を対象にした前向き研究で、ナッツ類を週2回以上28g摂取した人は、膵臓がんの発症リスクが有意に低下していました。ナッツ類には、アーモンド、くるみ、カシューナッツ、ピスタチオなどがあります。

全粒穀物

全粒穀物には、食物繊維が豊富に含まれており、がんリスクを低減させることが示唆されています。地中海式ダイエットとがんリスクに関する研究では、全粒穀物が膵臓がんを含むいくつかの種類のがんに対する保護効果がわかりました。全粒穀物としては、玄米、オートミール、全粒小麦パン、キヌアなどがあります。

ビタミンDを豊富に含む食品

ビタミンDには、細胞の増殖を抑えたり、細胞死を促進したりする作用によって、がんを予防できる可能性が考えられています。
このビタミンDが、膵臓がんの予防や治療にも役立つ可能性を示す研究結果が出つつあります。鮭、マグロ、卵黄、強化ミルクなどにはビタミンDが豊富に含まれています。

膵臓がんを発症した際に効果的な食べ物

膵臓がんの治療には、化学療法や放射線治療、手術があります。いずれの治療も体に大きな負担をかけるため、健康的な食事や栄養を維持することが難しくなります。そこで、膵臓がんを発症した際に、治療に耐えられる体力を維持するために効果的な食べ物についてご紹介します。

高タンパク食品

脂肪分が少なく、タンパク質を豊富に含む食品を摂りましょう。タンパク質は細胞の修復や免疫システムの正常化を助けます。鶏肉や魚、卵、ナッツ類、また大豆製品や低脂肪乳製品などがあります。

消化しやすい食べ物

膵臓がんの治療では、抗がん剤などを使用したり、手術をしたりすることも多くあります。副作用で消化に影響が出る可能性があるので、消化しやすい食べ物を選ぶようにします。
例えば、細かく刻んだり柔らかく茹でたりした食べ物が良いでしょう。

全粒穀物品

全粒穀物には、複合炭水化物と食物繊維が豊富に含まれています。これらは身体にとって優れたエネルギー源となるでしょう。オートミールや全粒粉パン、玄米などがあります。硬いパンなどの場合には、ミルクに浸すなどして食べやすく工夫すると良いでしょう。

色鮮やかな野菜や果物

カラフルで、皮ごと食べられるような野菜や果物は、抗酸化物質を多く含みます。ファイトケミカルとも言われ、がんの治療を受ける上で役立つでしょう。野菜や果物を、1日5回位以上食べるようにしましょう。

不飽和脂肪酸

不飽和脂肪酸は、細胞の成長を助け、臓器を保護するために役立ちます。例えば、オリーブオイルやキャノーラオイル、アボカド、ナッツ、魚に含まれる脂などがあります。

膵臓がんを発症した際に避けた方が良い食べ物

それでは、膵臓がんを発症した際に避けた方が良い食べ物も解説していきます。

消化が難しい食品

膵臓がんの治療中には、消化機能が低下していることがあります。そのため、赤身の肉や豚肉、生野菜などの食べ物は避けた方が良いでしょう。

高脂質な食べ物

揚げ物や脂っこい食べ物は、消化不良を引き起こす可能性があります。例えば、生クリームや肉の脂などの摂りすぎには気をつけましょう。

高糖質な食品

膵臓がんの患者さんは、糖分の多い食べ物を消化することが難しい場合があります。飴や甘い炭酸飲料、ケーキなどの食べ物は血糖値を上昇させる可能性があります。また、栄養に乏しいこともよくありますので、甘いものを食べたい場合には栄養価の高いものに置き換えるようにしましょう。

過剰なカフェイン

がん治療中には、脱水症状を防ぐために十分な水分摂取が必要です。一方で、過剰なカフェイン摂取は脱水症状を起こす可能性があります。コーヒーや紅茶、一部の栄養ドリンクといったカフェインを多く含む飲み物の飲み過ぎは避けるべきでしょう。

アルコール

膵臓がんの治療中には、飲酒は避けるべきです。抗がん剤の中には、アルコールによってその効果が強くなったり弱くなったりする可能性があるものもあります。また、アルコールによって膵臓に負担をかけることも懸念されます。ビールやワイン、ウイスキー、焼酎などは避けましょう。

膵臓がんの予防法

膵臓がんを予防するために効果的と考えられる方法について述べていきます。

禁煙する

タバコは膵臓がんのリスクを確実に上げることが分かっています。がんを予防するためには、タバコを吸わないようにしましょう。禁煙が難しい場合には、禁煙外来などの専門医に相談することも効果的です。

健康的な体重を維持する

男性の場合、肥満が膵臓がんのリスクを上げる要因となる可能性があります。
具体的には、BMI(body mass index)が30以上の場合です。女性ではデータ不十分となっていますが、肥満が大腸がんのリスクをほぼ確実に上げることが分かっています。他のがんを防ぐためにも、エネルギーの過剰摂取を避け、適度に運動するなどして肥満にならないようにしましょう。

糖尿病にならないようにする

糖尿病はほぼ確実に膵臓がんのリスクを上げることが分かっています。
新たに糖尿病と診断された人は、膵臓がんを発症するリスクが8倍高いという研究結果もあります。糖尿病の予防のためには、食べ過ぎやアルコールの飲み過ぎに気をつけ、運動し、禁煙することが大切です。また、野菜や大豆製品、海藻、きのこを摂ることも効果的です。

節酒する

日本人のためのがん予防法の一つに、節酒が挙げられています。
膵がん以外に、飲酒には肝細胞がん、食道がん、大腸がんと強く関連していることが分かっています。お酒は、純エタノール換算で、1日あたり23g程度までにしましょう。

膵臓の疾患がある場合には定期的にチェックする

膵臓がんには、前癌病変と呼ばれる病変や腫瘍があります[1] 。例えば、膵上皮内腫瘍性病変(PanIN)、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)、粘液性嚢胞性腫瘍(MCN)などです。こうした病気がある場合には、定期的にかかりつけ医で診察を受けましょう。これにより、病変が膵臓がんになる前に治療を受けられ、膵臓がんの予防へとつながることが期待できます。

「膵臓がんに効果的な食べ物」についてよくある質問

ここまで膵臓がんに効果的な食べ物などを紹介しました。ここでは「膵臓がんに効果的な食べ物」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

膵臓がんやその他のがんの進行を妨げる食べものはありますか?

関口 雅則関口 雅則 医師

膵臓がんやその他のがんの進行を妨げる食べ物については、現在研究の段階です。しかし、新鮮な果物や野菜、ナッツを食事で多く摂取すると、膵臓がんの発症リスクが下がるという報告があります。こうした食べ物を食生活に取り入れると良いでしょう。

がんを発症してしまった場合、積極的に摂取した方がいい食べものはありますか?

関口 雅則関口 雅則 医師

がんを発症した場合、積極的に摂取した方が良い食べ物には、抗酸化物質が豊富なベリー類やビタミンDが豊富な魚、免疫力を高める緑黄色野菜などがあります。また、高タンパク低脂質な白身魚や鶏肉などもよいでしょう。がんを治すことに直接つながるというエビデンスはまだ乏しいですが、治療中の体力を保つことなどに役立つでしょう。

編集部まとめ

今回の記事では、膵臓がんの予防に効果的と考えられる食べ物などについてご紹介しました。現在、膵臓がんのリスクを確実に下げると証明された食事はありません。しかし、節酒や禁煙、肥満の予防などはがんの予防のみならず、他の生活習慣病を防ぐことにも役立ちます。
食事については、新鮮な果物や野菜、ナッツ類、脂肪分の少ないタンパク質、全粒穀物を積極的に摂ると良いでしょう。

「膵臓がん」と関連する病気

「膵臓がん」と関連する病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

消化器内科の病気

  • 膵上皮内腫瘍性病変(PanIN)
  • 膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)
  • 粘液性嚢胞性腫瘍(MCN)

内分泌内科の病気

これらの病気には、自分では予防できないものもあります。健康的な生活習慣を心がけ、定期的な健康診断を受けることがまずは大切です。

「膵臓がん」と関連する症状

「膵臓がん」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 食欲不振
  • 腹部膨満感
  • 黄疸
  • 腰や背中の痛み
  • 体重減少

膵臓がんは初期の段階では無症状であることが多いです。進行してくると上記のような症状が現れます。体調不良を感じたら、消化器内科を受診しましょう。

この記事の監修医師