「食道がん」を発症すると体のどこに「痛み」を感じるの?初期症状も医師が解説!
食道がんを発症すると体のどこに痛みを感じる?Medical DOC監修医が食道がんの初期症状・痛みを感じる部位・原因・検査法や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
齋藤 雄佑(医師)
日本外科学会外科専門医。日本医師会認定産業医。
目次 -INDEX-
「食道がん」とは?
食道がんは、食道に発生する悪性腫瘍です。食道は、口から胃へと食べ物を運ぶ管状の臓器であり、その内側の粘膜からがんが発生します。食道がんには主に2つの種類があります。
● 扁平上皮がん: 食道がんの約9割を占め、喫煙や飲酒との関連が強い。
● 腺がん: 胃酸の逆流などにより食道下部に発生しやすく、近年増加傾向にある。
食道がんの前兆となる初期症状
食道がんの初期症状は、比較的軽微で気づきにくい場合があります。しかし、早期発見・早期治療が予後を大きく左右するため、以下の初期症状に注意が必要です。
胸やみぞおちの違和感や痛み
がんが食道の壁に浸潤したり、周囲の組織を圧迫したりすることで、胸やみぞおちに違和感や痛みが生じることがあります。初期は鈍痛や圧迫感であることが多く、進行すると焼けるような痛みや持続的な痛みに変わることがあります。逆流性食道炎などの良性疾患でも、おなじような症状がでることがあり、区別がつきづらいです。このような症状があるときは消化器内科を受診しましょう。緊急性は高くありませんが、早めの受診が大切です。
食べ物がつかえる
食道がんが進行すると、食道の内腔が狭くなり、食べ物がスムーズに通過しにくくなります。特に固形物の飲み込みづらさが目立ち、進行すると水や唾液さえも飲み込みにくくなることがあります。消化器内科を受診しましょう。緊急性は高くありませんが、放置すると症状が悪化し、食事が困難になる可能性があります。
声のかすれ
食道がんが進行し、反回神経という神経を圧迫すると声帯の動きが悪くなり、声のかすれが生じることがあります。風邪などによる一時的な声のかすれとは異なり、長期間続く、または悪化していく傾向があります。声のかすれの症状があれば、耳鼻咽喉科または消化器内科を受診しましょう。緊急性は高くありませんが、早めの受診をおすすめします。
体重減少
食道がんが進行すると、食欲低下や食べ物の飲み込みづらさから体重が減少することがあります。特に食事量を減らしていないにもかかわらず体重が減る場合は注意が必要です。原因不明の体重減少があれば、お近くの内科を受診しましょう。緊急性は高くありませんが、早めに受診をしましょう。
長引く咳
食道がんができることで胃酸の逆流症状が出たり、時には食道と気管支の間に瘻孔(穴)ができたりすると、咳が長引くことがあります。風邪などの咳とは異なり、長期間続く、または痰に血が混じる場合は注意が必要です。呼吸器内科または消化器内科を受診しましょう。長引く咳は呼吸器疾患の可能性もあるため、早めの受診をおすすめします。
食道がんを発症すると体のどこに痛みを感じる?
食道がんの痛みは、がんの進行度や発生した場所によって異なります。初期は自覚症状がないこともありますが、進行すると以下の部位に痛みを感じることがあります。
胸部や背中の痛み
食道の中でも胸部食道にがんができた場合には胸部や背中の痛みを伴うことがあります。がんが食道の壁に浸潤したり、周囲の組織を圧迫したりすることで発生する痛みです。初期は間欠痛であることが多いですが、進行すると持続的な痛みに変わることがあります。気になる症状があるときは消化器内科や内科を受診しましょう。
みぞおちの痛み
食道がんが腹部食道に発生した場合、みぞおちに痛みが生じることがあります。胃痛と似たような痛みであることが多く、食事中や食後に悪化することがあります。みぞおちの痛みだけの場合は消化器内科を受診しましょう。みぞおちの痛みが締め付けられるような痛みであったり、冷や汗が出たりするような場合は心臓の病気である可能性があるため、その時はできるだけ早めに医療機関を受診してください。
喉付近の痛み
食道がんが頸部食道に発生した場合、喉付近の痛みや異物感を感じることがあります。特に飲み込む際に痛みが強くなる傾向があります。良性の疾患でも同様の症状がでることがあるので耳鼻咽喉科または消化器内科を受診しましょう。緊急性は高くありませんが、他の疾患の可能性も考慮し、早めに受診することが大切です。
肩や首の痛み
食道がんが進行し、頸部リンパ節や神経に転移すると、肩や首に痛みが生じることがあります。初期は鈍痛であることが多く、進行すると持続的な痛みや痺れを伴います。肩や首の痛みがあるときは整形外科系疾患の可能性もありますが、症状が改善がないときは消化器内科を受診しましょう。
食道がんの主な原因
食道がんの発生には、複数の要因が複雑に絡み合っていると考えられています。以下に主な原因を挙げます。
喫煙
喫煙は、食道がんの最も重要なリスク要因の一つです。タバコの煙に含まれる発がん物質が食道の粘膜を傷つけ、がん化を促進します。喫煙本数や喫煙期間が長いほど、食道がんのリスクは高くなります。禁煙外来または内科を受診し、禁煙サポートを受けましょう。禁煙は食道がんだけでなく、他の多くのがんや病気のリスクを減らすことができます。
過度の飲酒
アルコールは、食道の粘膜を刺激し、炎症を引き起こします。長期間にわたる過度の飲酒は、食道がんの危険因子です。特に喫煙と飲酒を合わせると、相乗効果でリスクがさらに高まります。内科を受診し、飲酒習慣について相談しましょう。節酒または禁酒することで、食道がんのリスクを減らすことができます。
熱い飲食物、刺激物
熱いお茶やスープ、香辛料などの刺激物は、食道の粘膜を傷つけ、炎症を引き起こします。長期間にわたる刺激は避けるべきです。熱いものは冷ましてから、刺激物は控えめに摂取するようにしましょう。
食道がんの検査法
食道がんの検査は、主に以下の方法で行われます。
上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)
消化器内科で、口から内視鏡を挿入し、食道内部を観察します。検査中に病変が発見された場合は、組織を採取し、顕微鏡で詳しく調べる生検を行います。基本的には外来で行われます。検査自体は30分程度で終了し、入院は不要です。生検を行った場合は、結果が出るまで数日〜1週間程度かかることがあります。
バリウム検査
消化器内科または放射線科で、バリウムという造影剤を飲んでレントゲン撮影を行い、食道内部の形状を調べます。病変が疑われる場合は、内視鏡検査で詳しく調べます。外来で行われ、検査自体は15分程度で終了します。入院は不要です。
超音波内視鏡検査(EUS)
消化器内科で、先端に超音波装置が付いた内視鏡を挿入し、食道がんの深達度や多臓器への触接浸潤の有無、周囲のリンパ節への転移を調べます。基本的には外来で行われますが、鎮静剤を使用する場合や合併症のリスクがある場合は、短期間の入院が必要となることがあります。
「食道がんの痛み」についてよくある質問
ここまで食道がんの痛みなどを紹介しました。ここでは「食道がんの痛み」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
食道がんの末期症状について教えてください。
齋藤 雄佑 医師
食道がんの末期症状は、がんの進行度や転移の状況によって異なりますが、以下のような症状が現れることがあります。
激しい痛み: がんが神経や骨に転移すると、激しい痛みが生じることがあります。
嚥下困難: 食べ物や飲み物が全く飲み込めなくなり、栄養摂取が困難になります。
呼吸困難: がんが気管や肺に転移すると、呼吸が苦しくなることがあります。
出血: がんが血管を侵食すると、吐血や下血が起こることがあります。
全身衰弱: がんの進行に伴い、全身の倦怠感や食欲不振、体重減少などが起こります。
食道がんの治療では、手術ができれば手術、手術が難しければ、化学療法や放射線療法を本人の体調によって選択して加療をします。
食道がんを発症すると喉に違和感を感じたりすることはありますか?
齋藤 雄佑 医師
食道がんを発症すると喉に違和感を感じることがあります。特に、がんが頸部食道に発生した場合、以下のような症状が現れることがあります。
● 異物感: 喉に何かが詰まっているような感じがします。
● つかえ感: 食べ物や飲み物が喉を通過しにくい感じがします。
● 痛み: 飲み込む際に喉に痛みを感じることがあります。
これらの症状は、風邪や逆流性食道炎などでも起こることがありますが、長引く場合は医療機関を受診し、検査を受けることをおすすめします。
編集部まとめ 飲み込みづらさを感じたら、早めに消化器内科へ
食道がんは、初期症状が軽微で気づきにくい病気ですが、早期発見・早期治療が重要です。特に喫煙や過度の飲酒などのリスク要因がある方は、定期的な検診を受けることをおすすめします。また、食べ物が飲み込みにくい、胸やみぞおちの違和感や痛み、声のかすれ、原因不明の体重減少、咳が長引くなどの症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
「食道がん」と関連する病気
「食道がん」と関連する病気は3個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
食道がんは早期発見・早期治療が重要です。気になる症状がある場合は、消化器内科を受診しましょう。
「食道がん」と関連する症状
「食道がん」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 胸焼け
- 呑酸(どんさん:すっぱいものが上がってくる)
- 嚥下困難
- 心窩部痛
- 胸部痛
食道がんは早期発見・早期治療が重要です。気になる症状がある場合は、消化器内科を受診しましょう。