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「急性前骨髄球性白血病の治療期間」はご存知ですか?症状・原因も解説!

 公開日:2024/10/04
「急性前骨髄球性白血病の治療期間」はご存知ですか?症状・原因も解説!

急性前骨髄球性白血病という病気をご存知ですか。
急性前骨髄球性白血病は、前骨髄球ががん化し、血中に多量に流出することで特徴付けられる形態の急性白血病です。
急性前骨髄球性白血病の治療期間はどのくらいなのでしょうか?
本記事では急性前骨髄球性白血病の治療期間について以下の点を中心にご紹介します。

  • ・急性前骨髄球性白血病とは
  • ・急性前骨髄球性白血病の症状
  • ・急性前骨髄球性白血病の治療について

急性前骨髄球性白血病の治療期間について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。

山本 佳奈

監修医師
山本 佳奈(ナビタスクリニック)

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滋賀医科大学医学部 卒業 / 南相馬市立総合病院や常磐病院(福島)を経て、ナビタスクリニック所属/ 専門は一般内科

急性前骨髄球性白血病とは

急性前骨髄球性白血病は、前骨髄球ががん化し、血中に多量に流出することで特徴付けられる稀な形態の急性白血病です。この種の白血病は、血液を凝固させる働きをするトロンボプラスチンに類似した物質を持つ前骨髄球が血液凝固に関与し、がん化することによってその機能が破壊され、播種性血管内凝固を引き起こすとされています。
このため、患者さんは重篤な出血リスクを抱え、特に脳出血などの致命的な合併症を引き起こす危険性が高まります。

急性前骨髄球性白血病の症状

急性前骨髄球性白血病の症状には、特異的な徴候はなく、一般的に不特定の症状が長期化することがあります。
主な症状としては、発熱、骨痛、リンパ節の腫れ、出血傾向、倦怠感、頭痛、精巣の腫れなどが挙げられます。
特に急性前骨髄球性白血病では、播種性血管内凝固症候群(血液が固まりやすくなり、全身の細い血管の中で血栓が多発する病気)を合併するリスクが高く、貧血による全身の倦怠感や息切れ、鼻血や歯茎からの出血の増加、感染症に対する抵抗力の低下が見られることがあります。

また、皮膚に無故に紫斑が現れる、口内に紫がかった潰瘍ができるなどの症状もあります。病気が進行すると、重篤な場合には脳内出血が起こることもあります。

急性前骨髄球性白血病の検査と診断

急性前骨髄球性白血病の診断には、まず問診が始まります。
問診により体調不良や特定の症状が発見され、白血病の可能性が疑われる場合、骨髄液の採取が行われます。この検査により、異常な前骨髄球の増殖やAuer小体の存在が確認され、診断が確定します。

特に急性前骨髄球性白血病では、t(15;17)(q22;q12)の染色体異常(PML-RARA融合遺伝子)の存在が診断の重要な指標となります。
また、骨髄細胞の形態学的特徴や特定の遺伝子変異の検出も診断に寄与します。

これらの手法を組み合わせることで、急性前骨髄球性白血病の迅速で精密な診断につながります。

急性前骨髄球性白血病の治療について

急性前骨髄球性白血病は、治療法が確立されている白血病の一種です。
以下で、治療方法と治療期間について詳しく説明します。

治療方法

急性前骨髄球性白血病の治療は、まずビタミンの一種である全トランス型レチノイン酸(ATRA)を使用して白血病細胞を成熟した白血球に分化させる分化誘導療法が行われ、寛解を目指します。
さらに、亜ヒ酸を併用することで治療効果が向上するとされています。

寛解後には、地固め療法として化学療法が行われ、再発を防ぐための維持療法も行われます。
再発例や難治性の場合には、分子標的薬や抗体治療が有効とされており、場合によっては造血幹細胞移植も検討されます。
これにより、治療の選択肢が広がり、治療成績の向上につながっています。

治療期間

急性前骨髄球性白血病の各治療期間の目安は、以下のとおりです。

  • ・寛解導入:入院から4週間程度
  • ・寛解後の地固め療法:1回で約5週間の入院(3回程度行われます)
  • ・維持療法:約1~2年間(1ヵ月に1、2回通院しながら抗がん剤治療を受けます)

全体で、7~9ヵ月程度の入院治療が必要です。治療の合間に外泊や短期退院が可能な場合もあります。

初期治療には全トランス型レチノイン酸(ATRA)を用いた分化誘導療法が行われ、白血病細胞を成熟した白血球に変化させます。
白血球数が少ない場合はATRA単独、それ以外では抗腫瘍薬を併用します。
寛解後は、播種性血管内凝固症候群の治療と並行して化学療法を2〜3コース行い、その後約2年間ATRAによる維持療法を続けます。

日本の治療成績は良好とされ、70歳未満の患者さんでは寛解導入率が約90%、10年無病生存率が約70%に達します。
再発した際には亜ヒ酸を用いた治療も行われます。

急性前骨髄球性白血病の予後

急性前骨髄球性白血病は、近年の治療進歩により予後が大幅に改善されました。
現在、急性前骨髄球性白血病の5年生存率は約90%に達し、かつては最も致死的な急性白血病の一つとされた病態が、治癒を目指せる疾患へと変わりました。
日本では、JALSG APL204プロトコールに基づき、白血球数に応じた寛解導入療法と地固め療法を実施し、低リスク群にはトレチノイン、高リスク群にはタミバロテンによる維持療法を約2年間行います。

一方、海外では低リスク群に対してATRAと三酸化ヒ素(ATO)の併用療法が行われ、維持療法を省略するケースが多いようです。
これらの治療法により、再発・難治性の症例を除き、急性前骨髄球性白血病の予後は大きく改善されたといえます。

急性前骨髄球性白血病についてよくある質問

ここまで急性前骨髄球性白血病を紹介しました。ここでは「急性前骨髄球性白血病」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

急性前骨髄球性白血病の原因を教えてください。

山本 佳奈医師山本 佳奈(医師)

急性前骨髄球性白血病の原因は完全には解明されていませんが、15番染色体と17番染色体の相互転座によるPML/RARα融合遺伝子の形成が関与しています。この遺伝子は、白血球の正常な分化・成熟を阻害し、前骨髄球の異常な増殖を引き起こします。
また、他の悪性腫瘍に対する化学療法や放射線治療後、あるいはダウン症などの先天性疾患を持つ人々にも発症しやすとされています。

急性前骨髄球性白血病は珍しい病気ですか?

山本 佳奈医師山本 佳奈(医師)

急性前骨髄球性白血病は珍しい病気です。米国では毎年約3,000例しか診断されていません。
急性前骨髄球性白血病の標準的な治療法は全トランス型レチノイン酸と亜ヒ酸の併用療法ですが、内出血や重度の腎障害などの副作用が生じることがあります。これらの合併症は分化症候群と呼ばれます。
急性前骨髄球性白血病はまれであるため、多くの腫瘍医がこの病気の患者さんを診る機会が少ないと考えられ、合併症の認識や治療に精通していない場合があります。

まとめ

ここまで急性前骨髄球性白血病の治療期間についてお伝えしてきました。急性前骨髄球性白血病の治療期間についての要点をまとめると以下の通りです。

⚫︎まとめ

  • ・急性前骨髄球性白血病の治療は、通常、半年弱の入院治療が必要
  • ・急性前骨髄球性白血病は、前骨髄球ががん化し、血中に多量に流出することで特徴付けられる稀な形態の急性白血病
  • ・急性前骨髄球性白血病の主な症状としては、発熱、骨痛、リンパ節の腫れ、出血傾向、倦怠感、頭痛、精巣の腫れなどが挙げられる

急性前骨髄球性白血病と関連する病気

急性前骨髄球性白血病と関連する病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法などの詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

血液・腫瘍内科の病気

  • 慢性骨髄性白血病(CML)
  • 急性骨髄性白血病(AML)
  • 急性リンパ性白血病(ALL)
  • 慢性リンパ性白血病(CLL)
  • 成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)
  • 骨髄異形成症候群(MDS)

具体的な症状や治療法については、担当の医師と相談しましょう。

急性前骨髄球性白血病と関連する症状

「急性前骨髄球性白血病」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

これらの症状が持続する場合、または新たにあらわれた場合、医師の診察を受けることが大切です。

この記事の監修医師