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「白血病の生存率」はご存知ですか?小児・成人別に解説!医師が監修!

 公開日:2024/04/17
「白血病の生存率」はご存知ですか?小児・成人別に解説!医師が監修!

「白血病」と聞いたとき、どのような症状や治療を思い浮かべるでしょうか。

昔のドラマなどでは「とても重篤な病気」として扱われることが多かったため、恐ろしく感じる方もいるかもしれません。

しかし、白血病は医学の進歩が如実に現れている病気のひとつです。

この記事では白血病の種類や生存率・寛解率、治療方法などについて解説します。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

白血病とは?

白血病とは、血液の中にある白血球・赤血球・血小板を作る「造血幹細胞」に異常をきたし、白血病細胞が作られてしまう病気です。
これにより白血球・赤血球・血小板が本来の役目を果たせなくなり、体調を崩しやすくなったり、風邪を引きやすくなったりします。そのため「長引く体調不良がきっかけで病院に行ったら、白血病が見つかった」というケースが珍しくありません。
職場の健康診断で血液検査をした際に異常が見つかり、精密検査をしたところ白血病だったという場合もあります。

白血病の生存率は?

白血病は年齢に関係なく発生する病気であり、明確な発症原因は未だ不明です。
治療が長引くことも多く「白血病になったらどのくらい生きられるのか」と気になる方も多いでしょう。年代によって、白血病になった後の生存率は変わるのでしょうか。

小児の生存率

小児の白血病では急性リンパ性白血病(ALL)や急性骨髄性白血病(AML)が多くみられます。いずれも医療の進歩により、近年では飛躍的に生存率が上がりました。
小児急性リンパ性白血病では約99%が完全寛解・約80%が長期生存可能という数字が出ています。急性骨髄性白血病は約80~90%が完全寛解し、約60%が長期生存可能と考えられています。
個人差はありますが、小児が白血病になった場合も速やかに治療を開始することで、生存率を高めることが可能といえるでしょう。

成人の生存率

成人における白血病の5年生存率は男性43.4%・女性44.9%、平均して44.0%という統計があります。
小児よりもかなり低いように感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、ほかのがんと比較すると、これは決して低い数字ではありません。生存率という点からみると、白血病よりも低い数字が現れるがんも存在します。
また、白血病の種類によっては治療が必要なくなる「寛解」という状態まで回復することがあります。

白血病の寛解率とは?

寛解率とは、患者さん全体の人数に対してどのくらいの方が寛解したかという割合を表した数字です。
白血病では種類ごとに寛解率が異なりますが、年齢が若い患者さんほど寛解率が高くなりやすい傾向にあります。
例を挙げると、急性骨髄性白血病(AML)では80%前後、急性リンパ性白血病(ALL)では小児90%前後・成人80%前後です。しかし、寛解は「病気が消えた」という状態ではありません。一度寛解した後、再発する可能性もゼロではないのです。

白血病の種類

白血病は、その症状によってさまざまな種類に区分されます。ここでは白血病の中でもよくみられる以下の5種類について解説します。

  • 急性骨髄性白血病
  • 急性リンパ芽球性白血病
  • リンパ芽球性リンパ腫
  • 急性前骨髄球性白血病
  • 慢性骨髄性白血病

多くの白血病に共通する特徴のひとつが「風邪に似た症状が多い」ことです。発熱や頭痛が長引いている・徐々に強くなっている場合は、速やかに医療機関で相談しましょう。

急性骨髄性白血病

急性骨髄性白血病(AML)は、その名の通り進行が早い種類の白血病です。突然症状が現れ、急速に悪化していくことが特徴です。
症状としては息切れ・動悸・鼻血・歯茎からの出血・発熱・頭痛・関節痛などがあります。また、急性骨髄性白血病は小児の白血病のうち約25%を占める病気です。小さな子どもに疑わしい症状が出た場合は、さらに注意が必要といえます。

急性リンパ芽球性白血病

急性リンパ芽球性白血病は、「急性リンパ性白血病」(ALL)と表記されることもあります。これは白血球を形作っている「リンパ球」になる前の細胞ががん化して起こる病気です。
他の白血病と比較すると、脳や脊髄などの中枢神経に影響が及ぶことがある点が特徴です。急性リンパ芽球性白血病特有の症状としては、リンパ節の腫れが挙げられます。
リンパ節は首・脇の下・鼠径部などに存在し、免疫機能の要となっている器官です。リンパ節が腫れると、しこりのような状態になり、皮膚の表面から触れられるため気づきやすいでしょう。
リンパ節は風邪などの身近な感染症でも腫れることがありますが、長引く場合は白血病やそのほかの病気を疑い、医療機関を受診してください。また、急性リンパ芽球性白血病は小児の白血病のうち約75%を占めている病気です。急性骨髄性白血病と同様に、周囲の大人が気を配りましょう。

リンパ芽球性リンパ腫

リンパ芽球性リンパ腫は、急性リンパ芽球性白血病と同様に、リンパ球ががん化して発生する病気です。症状も似ており、貧血・息切れ・動悸・鼻の内側や歯茎などからの出血が挙げられます。
骨髄で白血病細胞が増殖している場合に急性リンパ芽球性白血病、リンパ節で増殖している場合はリンパ芽球性リンパ腫です。治療法としては急性リンパ性白血病と同様で、抗がん剤を主軸とし、段階的に再発予防・治癒を目指していきます。
リンパ芽球性リンパ腫は小児向けの治療法が成人にも有効な場合があり、医師による慎重な判断が求められます。リンパ芽球性リンパ腫も進行が早い傾向があるため、粘膜からの出血などといった疑わしい症状が出た場合には、速やかな受診と治療開始が必要です。

急性前骨髄球性白血病

急性前骨髄球性白血病(APL)は、白血病の中でも出血を伴う症状が強く出る病気です。
歯肉・鼻・網膜・皮下などの目に見える部分のほかに、頭蓋内出血や過多月経等もみられます。過多月経によって婦人科を受診した・抜歯の際に止血困難になったなどがきっかけで、発見されやすい病気です。
ほかには、動悸・息切れ・発熱といったほかの白血病でみられる症状も現れます。

慢性骨髄性白血病

慢性骨髄性白血病(CML)は赤血球・白血球・血小板などを作る「造血管細胞」に異常が起き、これらが無制限に増えることで本来の働きができなくなる病気です。
慢性期→移行期→急性転化期という経過をたどり、慢性期にはほとんど症状がないことが特徴といえます。慢性という名の通りゆっくりと進行するため、初期段階では自覚症状がほとんどありません。
移行期や急性転化期に入ると、息切れ・動悸・出血・倦怠感・発熱・脾臓の腫れによる腹部膨満感などが現れます。

急性骨髄性白血病の治療

急性骨髄性白血病の治療には、「標準治療」として用いられている方法が複数存在します。
標準治療とは、科学的な根拠に基づいて、多くの患者さんに推奨されている治療方法です。ここでは、よく用いられる4種の治療方法について解説します。

  • 細胞障害性抗がん薬による薬物治療
  • 急分子標的薬による薬物治療
  • 化学療法
  • 造血幹細胞移植

これら全てを一度に行うわけではなく、患者さんの症状に合わせていくつかの薬や治療法を組み合わせて治療していきます。副作用が強く出る場合には、治療に使う薬を変更したり、副作用を抑える薬を併用したりすることも可能です。
また、妊孕性(にんようせい)の温存についても注意が必要となります。妊孕性とは、生殖機能のことです。将来子どもを持ちたいと考えている方は、男女ともにその旨を申し出ましょう。
患者さんが小児の場合はまだ考えにくいかもしれませんが、将来子どもを持ちたいと思う可能性を考え、慎重に検討しましょう。

細胞障害性抗がん薬による薬物治療

細胞障害性抗がん薬は、一般に「抗がん薬」と呼ばれることもあります。がん細胞の増殖を邪魔する薬を用いた治療方法です。
アルキル化薬・代謝拮抗薬・微小管阻害薬など、さまざまな種類があります。患者さん一人ひとりに合わせて、薬の種類・量・副作用の対策を調整しながら治療を行います。

分子標的薬による薬物治療

分子標的薬とは、21世紀に入ってから「新しいがんの治療法」として登場した薬です。従来の抗がん剤では、がん細胞だけでなく正常な細胞も攻撃してしまうことがありました。
そのため、副作用が強く出た場合には患者さんや医療関係者の悩みになっていたのです。分子標的薬は「がん細胞に特有のたんぱく質などを攻撃し、正常な細胞は攻撃しない」という特性を持っており、副作用が少ない薬物療法です。
急性骨髄性白血病(AML)に対しては特に効果的な分子標的薬が開発されており、生存率の向上に貢献しています。

化学療法

化学療法は薬物療法の一部です。先に触れた細胞障害性抗がん薬を用いた治療について、「化学療法」と表記することがあります。
抗がん剤などによる副作用を抑えるための治療方法である「支持療法」と対比して使われることもあります。

造血幹細胞移植

造血幹細胞移植は、白血病の患者さんに正常な造血幹細胞を移植し、完治を目指す治療法です。
患者さん本人の正常な造血幹細胞を移植する「自家移植」と、ドナーから造血幹細胞を移植する「同種移植」があります。それぞれにメリット・デメリットがあるため、行う前に慎重な判断が必要です。
いずれの方法でも、移植した後は数ヶ月入院して経過観察・治療が必要となります。術後の生活やお金などに関して、あらかじめ家族や医師と相談しておくことも大切です。

白血病の生存率についてよくある質問

ここまで白血病の症状・治療法・生存率などを紹介しました。ここでは「白血病の生存率」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

白血病で生存率が下がるケースについて教えてください。

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

白血病は速やかに治療を開始することが非常に重要な病気です。初期症状は風邪や貧血といった身近な症状と区別がつきにくく、放置している間に症状が進行し、生存率に悪影響を及ぼす可能性があります。ほかの病気が見つかることもありますので、長引く症状がある場合はできるだけ早く医療機関を受診してください。

白血病の予後について教えてください。

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

白血病の種類によって、治療期間・方法・予後は異なります。例えば慢性骨髄性白血病の場合、早期に治療を開始できた場合は長期生存例も増えました。しかし、急性リンパ性白血病などの場合は、残念ながら予後が悪くなる場合も珍しくありません。個々の治療成績については患者さんの体質や治療薬との相性も関わるため、一概にはいいにくいところです。早期発見・早期治療開始が予後を良好にする確実な手段でしょう。

編集部まとめ

この記事では、白血病の種類・治療方法・生存率などについて解説しました。

白血病はさまざまな種類があり、治療方法についても多種多様です。薬の進化によって、生存率寛解率が向上している種類の白血病もあります。

白血病に罹患した場合は、医師・看護師との信頼関係を築き、副作用や生活上の困りごとを相談できるようにしておくことも重要です。

治療の副作用への対処や生活上のアドバイスのため、薬剤師・管理栄養士・ソーシャルワーカーなども白血病患者さんの治療チームに加わります。

患者さん当人はもちろんのこと、ご家族や周囲の方も悩みを抱え込まずに、これらの専門職へ相談しましょう。

白血病と関連する病気

「白血病」と関連する病気は2個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

これらの病気では白血病と同様の症状が起きることもあるため、鑑別には医療機関での検査が不可欠です。

白血病と関連する症状

「白血病」と関連している、似ている症状は8個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 出血(歯肉出血・鼻出血・皮下出血などを含む)
  • 貧血
  • 息切れ
  • 頭痛
  • 腹部膨満感
  • だるさ・倦怠感

これらは白血病以外の病気でもよくみられる症状です。長引いている・強くなっている症状がある場合は、早めに医療機関を受診してください。

この記事の監修医師