「悪性リンパ腫は何科」を受診したらよい?症状・原因についても解説!【医師監修】
悪性リンパ腫とは、リンパ球という白血球の一種ががん化する病気です。疑わしい症状がある場合は、内科または血液内科の受診が推奨されます。
本記事では悪性リンパ腫は何科を受診すればいいのかについて以下の点を中心にご紹介します。
- ・悪性リンパ腫とは
- ・悪性リンパ腫の症状
- ・悪性リンパ腫の診療科
悪性リンパ腫は何科を受診すればいいのかを理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
目次 -INDEX-
悪性リンパ腫とは
繰り返しになりますが、悪性リンパ腫とは、白血球の一種であるリンパ球ががん化する疾患です。リンパ球は主にリンパ節、脾臓、扁桃腺、血液中などに存在し、病原体から体を守る役割を担っていますが、悪性リンパ腫は、リンパ球が異常増殖することで発症します。
年間10万人あたり30人程度が発症する頻度の高い血液がんで、適切な診断と治療が重要です。
悪性リンパ腫の症状
悪性リンパ腫の症状は、病気の種類によって異なるものの、共通して見られるのはリンパ節の腫れや圧迫感です。特に首、脇の下、足の付け根などのリンパ節が多い部位に腫れやしこりが現れます。この腫れはゴムのような硬さで、痛みは伴わない場合があり、持続的に増大して全身に広がることがあります。しかし、急速に腫れが大きくなる場合には痛みが生じることもあります。肺に増大すると胸に水がたまり、胸部や腹部のリンパ節に発症する場合、健康診断などで偶然発見されることもあります。
全身的な症状としては、倦怠感、原因不明の高熱(38度以上)、食欲不振、原因不明の体重減少、激しい発汗や寝汗、かゆみや発疹などが挙げられます。病気の進行とともに悪化する傾向にあり、日常生活に支障をきたします。症状が現れた場合には、速やかに医療機関への受診が推奨されます。
悪性リンパ腫の原因
悪性リンパ腫の原因は解明されていませんが、いくつかの要因が関与していると考えられています。まず、ウイルス感染や細菌感染が一部のリンパ腫の発症に関連しているといわれています。例えば、エプスタイン・バールウイルス(EBV)やヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ピロリ菌などがリンパ腫のリスクを高めるとされています。
また、細胞内での遺伝子突然変異が発症に寄与することもあります。染色体の異常により、がん遺伝子が活性化し、リンパ系細胞ががん化してしまうのです。この遺伝子変異が、細胞の異常な増殖を引き起こし、結果として悪性リンパ腫の発症に至ります。
さらに、免疫不全者は、悪性リンパ腫の発症率が高いことが指摘されています。免疫機能が低下すると、体内の異常細胞を適切に排除する能力が減少し、がん化するリスクが増すためです。これらの要因が複雑に絡み合い、悪性リンパ腫の発症に至ると考えられていますが、悪性リンパ腫の原因の究明にはさらなる研究が必要とされています。
悪性リンパ腫の診断・検査
悪性リンパ腫の診断には、まずリンパ節の腫れに気付いた際や精密検査でリンパ節の異常が見つかった場合に、医師の判断で生検が行われます。リンパ節の腫れは感染症などさまざまな原因で起こるため、正確な鑑別診断が重要です。生検では腫れているリンパ節や病変の組織を採取し、顕微鏡で詳細に調べます。また、B細胞やT細胞、NK細胞などの細胞の性質を確認する検査や、染色体や遺伝子の異常を調べる検査も行われます。
診断が確定した後は、病気の広がりを把握するための検査が開始されます。検査は血液検査、尿検査、レントゲン検査、心電図、心臓の超音波検査、胃カメラなどの基本検査に加え、全身のCTスキャンやPET検査などがあります。なかでもPET検査はホジキンリンパ腫や中悪性度リンパ腫の病期決定や治療効果の判定に有用とされています。
これまで、病気の広がりはAnn Arbor分類に基づいて分類されていましたが、2014年よりAnn Arbor分類の修正版であるLugano分類が、国際悪性リンパ腫会議で作成されました。
画像検査(FGD-PET/CT・骨髄検査)の結果から、悪性リンパ腫の病期はⅠ期、Ⅱ期、Ⅱ期bulky、Ⅲ期、Ⅳ期に分類されます。
骨髄検査は局所麻酔を使用し、腸骨に針を刺して骨髄組織を採取する方法で行われます。
こうした詳細な検査により、治療方針が決定されます。
悪性リンパ腫の治療
悪性リンパ腫の治療は、リンパ腫の種類や進行度、患者さんの状態に応じて慎重に決定されます。以下では、薬物療法と放射線治療を解説します。
薬物療法(抗がん剤治療・分子標的治療)
悪性リンパ腫の治療で、薬物療法は中心的な役割を果たします。薬物療法(抗がん剤治療)は、複数の抗がん剤を組み合わせる多剤併用療法が行われています。
非ホジキンリンパ腫に対しては、CHOP療法、R-CHOP療法、Pola-R-CHP療法、BR療法などが用いられます。ホジキンリンパ腫にはABVD療法やA-AVD療法が用いられます。治療は外来通院で行われますが、再発時には異なる抗がん剤の組み合わせが選択されます。
分子標的治療は、がん細胞の分子のみを標的とする新しい治療法です。分子標的薬は従来の抗がん剤とは異なる副作用があり、投与初期にアレルギー反応が起こるものもあります。また、肺や心臓への影響にも注意が必要です。
放射線治療
悪性リンパ腫の放射線治療は、高エネルギーのX線を体の外から照射してがん細胞を破壊し、小さくする効果が期待されています。病巣が1つで小規模な場合(I期)や初期のリンパ腫(I期または隣接するII期)に対して、単独で行われることが多く、がん細胞の増殖を抑制し、死滅させることを目指す治療法です。また、短期間の化学療法と併用して行うこともあります。
放射線治療の副作用は、照射された部位に起こる皮膚炎や粘膜炎です。また、全身症状として、吐き気、だるさ、食欲低下、嘔吐、白血球減少などが見られることがあります。副作用の程度は個人差があり、症状が強い場合には、症状を和らげる治療が行われます。副作用は治療終了後2〜4週間程度で改善しますが、患者さんごとに異なる経過をたどります。
放射線治療は、悪性リンパ腫の治療で重要な役割を果たしており、早期の段階で効果が期待できます。治療の効果を引き出しつつ、副作用を抑えるために、医療チームが綿密な計画を立てて治療を進行します。
悪性リンパ腫の診療科
悪性リンパ腫の疑いがある場合、最初は内科への受診が推奨されます。内科では基本的な検査を行い、専門的な診断や治療が必要と判断された場合は、血液内科や腫瘍内科への紹介が行われます。
また、悪性リンパ腫は多岐にわたる臓器に影響を及ぼすことがあるため、外科や放射線科の医師と連携を取りながら治療を進めることも重要です。
悪性リンパ腫についてよくある質問
ここまで悪性リンパ腫を紹介しました。ここでは「悪性リンパ腫」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
悪性リンパ腫の治療後の注意点を教えてください
中路 幸之助(医師)
悪性リンパ腫の治療後は、二次がんや心血管疾患などの晩期合併症に注意が必要です。治療が完了しても、定期的な医療フォローアップが重要となり、再発や新たな健康問題の兆候を早期にとらえるために、診察や血液検査、CT検査などを継続して受けることが推奨されています。また、不調を感じた際は速やかに医師に相談し、必要な対応を行うことが大切です。
悪性リンパ腫の予防法はありますか?
中路 幸之助(医師)
悪性リンパ腫の予防方法は確立されていませんが、定期的な健康診断を受けることで、早期に症状を発見しやすくなります。
なかでもリンパ節の異常な腫れを感じた場合は、速やかな医療機関への受診が推奨されます。また、悪性リンパ腫の患者さんは再発のリスクがあるため、定期的なフォローアップが重要です。
まとめ
ここまで、悪性リンパ腫は何科を受診すればいいのかをお伝えしてきました。悪性リンパ腫は何科を受診すればいいのかについての要点をまとめると以下のとおりです。
⚫︎まとめ
- ・悪性リンパ腫とは、白血球の一種であるリンパ球ががん化する疾患
- ・悪性リンパ腫の症状は種類によって異なるものの、共通して見られるのはリンパ節の腫れや圧迫感で、全身症状は倦怠感、原因不明の高熱、食欲不振、原因不明の体重減少、激しい発汗や寝汗、かゆみや発疹などが挙げられる
- ・悪性リンパ腫の疑いがある場合、内科受診が推奨されるが、専門的な診断や治療が必要と判断された場合は、血液内科や腫瘍内科への紹介が行われる
悪性リンパ腫と関連する病気
悪性リンパ腫と関連する病気は14個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法などの詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
内科の病気
- 濾胞性リンパ腫
- MALTリンパ腫
- リンパ形質細胞性リンパ腫
- マントル細胞リンパ腫
- びまん性大細胞型B細胞リンパ腫
- バーキットリンパ腫
- 慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫
- 末梢性T細胞リンパ腫、非特定型
- 血管免疫芽球性T細胞リンパ腫
- 未分化大細胞型リンパ腫
- 成人T細胞白血病リンパ腫
- 節外性NK/T細胞リンパ腫、鼻型
- 皮膚のリンパ腫(菌状息肉症など)
- ホジキンリンパ腫
具体的な症状や治療法については、担当の医師と相談しましょう。
悪性リンパ腫と関連する症状
「悪性リンパ腫」と関連している、似ている症状は7個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- リンパ節の腫れ
- 倦怠感
- 原因不明の高熱(38度以上)
- 食欲不振
- 原因不明の体重減少
- 激しい発汗・寝汗
- かゆみや発疹
これらの症状が持続する場合、または新たにあらわれた場合、医師の診察を受けることが大切です。