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「男性が発症する乳がんの特徴」はご存じですか?女性の乳がんとの違いも医師が解説!

 更新日:2025/12/02
「男性が発症する乳がんの特徴」はご存じですか?女性の乳がんとの違いも医師が解説!

男性でも、乳房にがんが生じるリスクがあることをご存じでしょうか。 男性乳がんは大変まれながんではありますが、男性乳がんになりやすい患者さんの特徴や、どのような症状が出るのかなどを解説します。参考にしていただけると幸いです。 男性乳がんになりやすいのは、どのような特徴を持つ患者さんでしょうか。 男性乳がんでは身体のどこに、どのような症状が出やすいでしょうか。 男性患者さんも無関係ではない乳がんについて、理解を深めましょう。

上 昌広

監修医師
上 昌広(医師)

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東京大学医学部卒業。東京大学大学院修了。その後、虎の門病院や国立がん研究センターにて臨床・研究に従事。2010年より東京大学医科学研究所特任教授、2016年より特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所理事長を務める。著書は「復興は現場から動き出す(東洋経済新報社)」「日本の医療格差は9倍 医療不足の真実(光文社新書)」「病院は東京から破綻する(朝日新聞出版)」「ヤバい医学部(日本評論社)」「日本のコロナ対策はなぜ迷走するのか(毎日新聞出版)」。

男性乳がんとは?

男性乳がんは男性の乳房に発生するがんです。乳がんにかかる患者さんの99%は女性であり、男性の発症は珍しいため、一般的な乳がんと区別して男性乳がんと診断されます。
女性は生涯で8人に1人が乳がんと診断されるのに対して、男性は1,000人に1人が乳がんと診断されています。男性乳がんは症例が少ないため発見が遅れるケースが多いです。しかし一般的な乳がんとステージ分類は同じであり、治療成績に大きな違いはありません。

男性乳がんの特徴

男性乳がんには以下のような特徴があります。
  • 乳がんの遺伝子があるとかかりやすい
  • 環境やホルモンの影響で引き起こされる
  • 乳輪や腋にしこりが現れる
  • 皮膚の潰瘍が起こる
  • 乳頭から出血する
以下の項目で、上記の特徴を詳しく解説します。男性乳がんの特徴を知って、早期発見につなげましょう。

乳がんの遺伝子があるとかかりやすい

男性乳がんは一般的な乳がんよりも、遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)と呼ばれる遺伝性の乳がんである確率が高いがんです。例えば患者さんのご両親、またはお子さんが乳がんになった場合、患者さん自身の乳がんリスクも高い状態にあります。
遺伝性乳がん卵巣がんの原因は、BRCA1とBRCA2という遺伝子変異だとわかっています。ただしこれらの遺伝子変異があると、かならず男性乳がんになるというわけではありません。男性乳がんのうちBRCA1変異がある患者さんは0~4%、BRCA2変異がある患者さんは4~16%に留まります。
これらの遺伝子変異がある患者さんは、リスク低減のための手術を受けることも可能です。

環境やホルモンの影響で引き起こされる

男性乳がんには、遺伝以外にも複数のリスク因子があるため注意が必要です。例えば環境要因では、放射線被ばくの習慣があった方は男性乳がんのリスクが上がります。ホルモン関連の要因としては以下のような疾患や状態が挙げられます。
  • 血清エストラジオールの増加
  • クラインフェルター症候群
  • 女性化乳房
  • 肝疾患
  • 肥満
  • 精巣異常
ほかにも高齢な方や黒人の方も男性乳がんリスクが高まります。該当する方は乳房の違和感に注意して、男性乳がんの早期発見に努めましょう。

乳輪や腋にしこりが現れる

ここからは男性乳がんを発症した際に現れる症状を解説します。まず気をつけたいのがしこりです。男性乳がんでしこりが表れやすい箇所は、男性の乳腺が集まっている乳輪の後部です。
また、腋のリンパ節が腫れ(腋窩リンパ節腫脹)、しこりとして触れるケースがあります。乳がんのしこりは痛みを伴わないのが特徴です。

皮膚の潰瘍が起こる

男性乳がんを発症すると、皮膚の潰瘍(かいよう)が起こるケースもあります。乳がんが皮膚に広がってえぐれたような傷になった状態です。
進行すると傷から浸出液や血液が出たり臭気を放ったりします。がん全体でみた皮膚転移が起きる確率は5~10%程度ですが、乳がんはほかのがんよりも皮膚転移しやすく、皮膚潰瘍が起こりやすいです。

乳頭から出血する

乳頭から出血している場合は、男性乳がんの疑いがあります。出血に限らず、乳頭から分泌物が出ている場合は乳房に異変が起きているため、早急に医療機関に相談しましょう。

男性乳がんの治療法

がんの治療法を決める際は以下のポイントに留意しながら、担当医と患者さんが話し合いを行います。
  • がんのステージ
  • がんの種類(組織型や病理学的グレード分類など)
  • 患者さんの希望
  • 患者さんの生活環境
  • 患者さんの健康状態
男性乳がんの治療法の選択肢は、基本的に女性に発症する乳がんの場合と同じです。ただし身体的特徴から、選択される治療法が異なるポイントもあります。以下で詳しく解説するので、参考にしてください。

外科療法

乳がん治療のために行う外科療法には、大きく分けて乳房部分切除術と乳房全切除術の2種類があります。乳房部分切除術とは、がん細胞を含めた乳房の一部を切除する手術です。対して乳房全切除術とは、がん細胞に犯された片方の乳房をすべて切除する手術です。
女性患者さんが乳がんになった場合は、がん細胞のサイズや広がりによってどちらの手術にするかを決定します。小さく、広がる前の乳がんであれば、乳房部分切除術を選んで乳房を温存するのが一般的です。
ただし男性患者さんの場合は、乳がんが乳頭と乳輪付近に発生しやすいため、乳房全切除術が選択されるケースがほとんどです。

放射線治療

放射線治療とはがんに高エネルギーの放射線を当てがん細胞を小さくする治療法ですが、放射線治療のみで乳がんを完治させるのは困難です。
放射線治療は外科手術後の再発リスクを抑えるフォローのためや、末期がんの進行を遅らせるために実施されるのが一般的です。

薬物療法

男性乳がんの外科手術後に行われる薬物療法は、基本的に女性がかかる乳がんと同じ方法で実施されます。ただし希少がんである男性乳がんにおいては、治療データが少ない点が課題です。
例えば術後ホルモン療法では、アロマターゼ阻害薬の有効性に関するデータが乏しいため、副作用の観点からタモキシフェンの投与が推奨されます。

女性の乳がんとの違い

男性乳がんと、女性がかかる乳がんの違いを比べたとき、まず目に付くのは罹患者数の違いでしょう。以下で罹患者数の違いや罹患する患者さんの特徴を具体的に解説します。

罹患者が少ない

罹患者数(りかんしゃすう)とは新たに診断された患者さんの数を指します。2019年に新たに診断を受けた乳がん患者さんは、97,812人でした。
そのうち女性患者さんは97,142人であったのに対して、男性患者さんは670例であったことがわかっています。

罹患の年齢が高い

男性乳がんと女性がかかる乳がんでは、発症する年齢層に違いがあります。乳がんの女性患者さんには40代と60代が多いことが知られています。対して男性乳がんにかかる患者さんには60〜70代と高齢の患者さんが多いです。

男性乳がんの特徴についてよくある質問

ここまで男性乳がんの特徴として症状・治療法・リスク因子・罹患数などを紹介しました。ここでは「男性乳がんの特徴」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。

検査法は女性乳がんと同じ方法ですか?

男性乳がんでも、基本的には女性の場合と同じ方法です。まずは診断のために画像検査を行います。このとき行われる画像検査は、超音波検査やマンモグラフィです。乳がんの疑いが深まれば、追加で生検検査をして診断を確定したり、乳がんの種類を調べたりします。その後は乳がんの広がりを確認するために、CT検査やFDG-PET検査など追加の画像検査が行われるのが一般的です。

男性乳がんの予防方法について教えてください。

乳がん予防には以下の方法が効果的です。
  • 飲酒を控える
  • 体重管理する
  • 適度な運動をする
ほかにもがん全般の予防方法としては、禁煙やバランスのよい食生活の実施など、生活習慣の見直しが推奨されます。

編集部まとめ

男性乳がんは男性患者さんの乳房に発症する希少がんです。女性がかかる乳がんと同様、遺伝やホルモンの影響で発症リスクが高まります。 乳輪や腋にしこりができた、乳頭から出血したなど、乳房に異変がある場合は乳がんの疑いがあるため医療機関を受診しましょう。 治療は基本的に女性がかかる乳がんと同じ方法で行います。 予防のために、過度な飲酒を控えたり適切な体重管理を行ったりなど、健康的な生活習慣を維持しましょう。

男性乳がんと関連する病気

「男性乳がん」と関連する病気は3個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
男性乳がんを含む遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)は、乳がんや卵巣がんのほかにも上記のように複数のがん発症に関係しています。理解を深めて予防につなげましょう。

男性乳がんと関連する症状

「男性乳がん」と関連している、似ている症状は3個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • しこり
  • 乳頭からの出血
  • 皮膚潰瘍
乳がんは進行すると、近くのリンパ節や骨、肝臓、肺、脳などに転移するがんです。症状があるならば放置せず、早めに診療を受けましょう。

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