「肺がんステージ4の余命」はご存知ですか?ステージ4の症状も解説!【医師監修】
ご自身やご家族が肺がんステージ4と診断された場合、誰にとってもショックは大きいはずです。そして、余命が大きな関心事となるでしょう。
将来もし肺がんにかかっても少しでも長く生きられるように、前もって肺がんステージ4の特徴や治療法を知っておくことは大切です。
この記事では、肺がんステージ4の余命・生存率を解説します。症状・治療法もまとめているので、参考にしてみてください。
監修医師:
松本 学(きだ呼吸器・リハビリクリニック)
目次 -INDEX-
肺がんとは?
肺がんとは、気管支・肺胞の細胞ががん化したものを指します。組織型には、非小細胞がん(腺がん・扁平上皮がん・大細胞がん)と小細胞がんがあります。
非小細胞がんの多くは腺がんです。小細胞がんは進行が早く転移しやすいのが特徴で、限局型と進展型に分類されます。どの組織型でも、発生要因の1つは喫煙です。
進行すると、がん細胞が周囲の組織を破壊しながら増殖していき、血液・リンパ液の流れに乗って転移する場合があります。日本では男性の死亡率が第1位、女性でも第2位となっており、重要な健康課題です。
肺がんステージ4の余命・生存率
肺がんステージ4と聞くと、余命が短く生存率も低いというイメージを持つ方は少なくないでしょう。ここでは過去の統計に基づき、実際の肺がんステージ4の余命と生存率を解説します。
肺がんステージ4の余命
肺がんステージ4は、原発巣以外に転移または遠隔転移がある場合に診断されます。小細胞がんに罹患し外科的手術が適応外の場合、ステージ4の生存中央値は8〜10ヵ月です。内科的治療が有効な場合でも、限局型で約20ヵ月、進展型では10ヵ月に満たないとされています。
したがって、肺がんステージ4の余命は早ければ1年以内、長くても2年以内となるでしょう。
肺がんステージ4の生存率
2014〜2015年に肺がんステージ4と診断された15,160人の患者さんの統計によると、すべての死因を含めた年数別実測生存率は以下のとおりです。
- 1年:39.5%
- 2年:21.4%
- 3年:13.8%
- 4年:9.8%
- 5年:7.4%
また、純粋にがんのみが死因となる状況を想定して計算するネット・サバイバルでは、5年生存率は8.0%という結果が出ています。
ステージ3でもネット・サバイバルによる5年生存率が28.6%である点をふまえると、肺がんステージ4の生存率は大変低いことがわかります。早期発見の重要性は明らかです。
肺がんステージ4の症状
肺がんは初期段階では症状が出にくく、自覚症状が現れたときにはステージ4まで進行していることがあります。早期発見のために注意しておくべき肺がんステージ4の5つの症状を解説します。
持続的な咳
肺がん患者さんのほとんどの症例でみられる症状が、2週間以上続く持続的な咳です。腫瘍が気道を刺激し、咳症状が引き起こされます。
しかし、咳は一般的な風邪や呼吸器疾患でも広く認められる症状であり、咳の程度も腫瘍の位置によって異なるため、咳のみで肺がんを診断するのは難しいです。問題ないと自己判断して、病院を受診しない患者さんも多くいます。
喀血
肺がんは咳に伴って痰の量が増えるのも特徴です。がんの浸潤によって気管支粘膜のびらんや潰瘍が生じ、痰に糸状の血が混じったり赤みのある痰が出たりする血痰がみられるようになります。
ステージ4まで進行し大きな血管への浸潤が進むと血痰が増え、やがて少量の喀血が起こるでしょう。ただし、肺がんで大量の喀血が生じることは稀です。
息切れ
腫瘍による気道の圧迫・狭窄化、もしくは肺や心臓に水が溜まる胸水・心嚢水で臓器が圧迫されることにより、息切れも生じやすいです。
初めは軽い息苦しさを感じる程度でも、がんの進行に伴い動作時以外にも息が吸えないまたは吐き出せないと感じるようになるでしょう。特にステージ4では呼吸困難になる割合が多く、余命6ヵ月以内の患者さんの約70%が呼吸困難を感じているといわれています。
さらに胸水や心嚢水が貯留している場合や、がんが肋骨や神経に浸潤している場合は、胸の痛みも伴うでしょう。
体重減少
肺がんに限らず、がんになると体重が減少する患者さんが少なくありません。これは、がん細胞から炎症を加速させる炎症性サイトカインという物質が分泌されるためです。その結果、代謝バランスが崩れて食欲が減退し、脂肪だけでなく骨格筋まで減少します。
このようながん自体が引き起こす合併症を悪液質と呼びます。がんが進行するにつれて早期満腹感も認められ、少量の食事摂取で満腹感を覚えるようになるでしょう。味覚・嗅覚の低下、甘味・苦味の域値の上昇などの要素も加わり、食欲不振が加速して病前の体重よりも10%以上減少する重症例もみられます。
肺がんの場合、食道への直接浸潤や食道周囲のリンパ節転移により食道狭窄が起こると嚥下困難となる恐れもあり、注意が必要です。
疲労感
悪液質は筋肉を減少させるため、全身の疲労感・倦怠感も引き起こします。肺がんステージ4では息切れ・呼吸困難も合わさり、さらに活動が制限されやすいです。
がんに伴う疲労感や倦怠感は肉体的・精神的・感情的な側面をもっており、心身ともにエネルギー不足になっている状態です。しかし、ただの疲れや年齢のせいとみなされて放置されることもしばしばあります。
肺がんステージ4の治療方法
肺がんがステージ4まで進行していると通常、手術による治療は難しいのが現状です。手術以外で選択される可能性がある3つの治療法を解説します。
放射線療法
症状の緩和や延命を目的として放射線療法が選択されることがあります。非小細胞がんの場合、切除できないステージ3の症例で適応されるのが一般的ですが、状態によってはステージ4でも選択できるでしょう。
小細胞がんの場合は、限局型のみが放射線治療の対象です。初回の治療で画像検査でわからない程がんが縮小し身体の状態もよい患者さんには、脳転移予防のための予防的全脳照射が推奨されています。
化学療法
放射線照射ができない程がんが広がった肺がんステージ4では、化学療法が優先されます。病気の進行を遅らせて症状を和らげ、QOL(生活の質)を向上させることが目的です。主に以下の治療から選択されるでしょう。
- 細胞障害性抗がん薬
- 分子標的治療薬
- 免疫チェックポイント阻害薬
使用する薬剤は、がん遺伝子検査およびPD-L1検査の結果に基づき検討されます。効果と副作用は患者さんの身体の状態や薬剤の種類によって異なるため、担当医と患者さんの間でよく相談して治療を進める必要があります。
光免疫療法
光免疫療法とは、薬剤を体内に投与した後に特定の波長の光をがん細胞に照射する治療です。正常な細胞に影響を与えずに直接がん細胞を破壊するとともに、免疫細胞を活性化させる効果があります。
身体への負担が少ないため、体力が低下している患者さんでも適応可能で、ステージ4でもがんの縮小が期待できます。ただし、肺がんに対する光免疫療法は日本で承認されておらず、承認に先駆けて治療を行っている少数の病院のみでしか受けられません。
肺がんステージ4の余命についてよくある質問
ここまで肺がんステージ4の余命・生存率・症状・治療法などを紹介しました。ここでは「肺がんステージ4の余命」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
肺がんステージ4の余命を延ばすことはできますか?
松本 学(医師)
手術が適応できない肺がんステージ4の治療の目的は、主にがんの進行抑制と症状の緩和です。病状に合った治療を行うことにより、患者さんによっては多少余命を伸ばせる見込みがあります。また、体重と筋力が減少していくと免疫力も低下してしまいます。できるだけ高カロリーでバランスの取れた食事と簡単な運動を取り入れ、規則正しい生活を送るよう心がけることも大切です。
肺がんステージ4は治る可能性はありますか?
松本 学(医師)
肺がんステージ4はほかの臓器にも転移が生じているため、すべてのがんを治すのは難しいです。とはいえ光免疫療法ならがん細胞を徹底的に攻撃できるうえ、副作用が少なくより効果的な治療を行えることが報告されています。転移が少ない患者さんであれば、大部分のがん細胞を破壊できる可能性があります。光免疫療法を受けられる病院は数少ないものの、検討する価値はあるでしょう。
編集部まとめ
この記事では、肺がんステージ4の余命と治療を解説しました。余命は決して長くはありませんが、診断されてすぐに人生を諦める必要はありません。
適切な治療を行うことで、良好な結果を得ている患者さんも増えてきています。前向きに治療を受け、医師とともに大変な時期を乗り越えていきましょう。
肺がんと関連する病気
「肺がん」と関連する病気は6個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
これらの病気は肺がんと症状が似ています。また、肺がんの合併症となって治療をさらに難しくする場合もあるため、なるべく早期発見し治療を進めることが重要です。
肺がんと関連する症状
「肺がん」と関連している、似ている症状は5個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 持続的な咳
- 喀血
- 息切れ
- 体重減少
- 疲労感
肺がんの症状はがんが進行するまで現れないケースが多く、これらの症状が見られた時点ですでに進行している可能性があります。定期的にがん検診を受け、気になる症状が見られたらすぐに医療機関を受診してください。