「骨肉腫の転移と余命」や発症年齢は何歳が一番多い?【医師監修】
骨肉腫は、骨に発生する悪性腫瘍の一種で、転移しやすいがんといわれています。
本記事では骨肉腫の転移と余命について以下の点を中心にご紹介します。
- ・骨の肉腫の種類
- ・骨肉腫の転移と余命
- ・骨肉腫の予防策
骨肉腫の転移と余命について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。
監修医師:
松繁 治(医師)
岡山大学医学部卒業 / 現在は新東京病院勤務 / 専門は整形外科、脊椎外科
主な研究内容・論文
ガイドワイヤーを用いない経皮的椎弓根スクリュー(PPS)刺入法とその長期成績
著書
保有免許・資格
日本整形外科学会専門医
日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医
日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科指導医
日本整形外科学会認定 脊椎内視鏡下手術・技術認定医
目次 -INDEX-
骨の肉腫とは
骨の肉腫は、骨に発生する悪性の腫瘍です。主に若年層に多く見られ、腕や脚の長い骨に発生する傾向があります。
骨の肉腫は、痛みを主な症状としており、時には症状が出る前にレントゲンで変化が見られる場合もあります。骨肉腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫などのタイプが存在し、それぞれに特徴があります。
骨の肉腫についての理解を深め、適切な治療を心がけましょう。
骨の肉腫の種類
骨の肉腫の種類には、さまざまな種類があります。
以下では、骨の肉腫の種類を4つ紹介します。
骨肉腫
骨肉腫は、骨に発生する悪性腫瘍のなかでも代表的な肉腫の一つです。人口約50万人に1人といわれる病気で、日本では年間約250例とされています。
10~20代の若年層に多く見られるとされていますが、60代以降の高齢者にも発症する場合があります。
また、ほかのがん治療での放射線照射後に発症する二次性骨肉腫も存在します。
好発部位は膝関節周辺や上腕骨近位です。画像検査と生検による病理組織診断で確定診断されます。治療は手術と化学療法が中心で、広範切除術や人工関節置換術が行われます。症例によっては切断術や自家骨移植を併用した生物学的再建も選択されます。
化学療法の進歩により、遠隔転移がない場合の5年生存率は約70%を超えるようになってきたとされています。
軟骨肉腫
軟骨肉腫は、軟骨組織から発生する悪性腫瘍で、主に40歳以上の中高年層に多い傾向があります。大腿骨、骨盤、上腕骨などの長管骨に好発しますが、ほかの部位に発生する場合もあります。
軟骨肉腫の治療は、手術が中心となります。腫瘍の広範切除が基本で、人工関節置換術や骨移植などの再建手術も行われます。
抗がん剤や放射線治療の効果は限定的とされるため、外科的切除が重要な治療の選択肢となります。
ユーイング肉腫
ユーイング肉腫は、現在ではユーイング肉腫ファミリー腫瘍と呼ばれ、骨だけでなく体中の軟部組織にも発生するとされています。
主に20歳以下の若年層に多く見られる傾向にありますが、高齢者にも発症する可能性があります。
好発部位は大腿骨、骨盤骨、脊椎などです。ユーイング肉腫の診断は、融合遺伝子の存在の確認により、以前よりも正確に行えるようになりました。
治療は、抗がん剤治療と手術を組み合わせた集学的アプローチが中心となります。
また、放射線感受性が高いため、脊椎や骨盤などの切除が難しい部位では、手術の代わりに放射線治療が選択される場合もあります。
骨巨細胞腫
骨巨細胞腫は、厳密には悪性腫瘍ではありませんが、WHOの分類では再発率の高さと肺転移の可能性から中間悪性腫瘍と位置づけられています。
好発年齢は20代前後で、膝周辺に発生することが多い傾向です。骨折するまで無症状のことも少なくありません。
従来は手術が中心的な治療法でしたが、2014年以降、切除が難しい症例では新薬が使用可能となり、現在は症例に応じて手術と薬物療法を使い分けています。
骨肉腫の診断方法
骨肉腫の診断は、どのようにされるのでしょうか?
以下では血液検査、画像検査、組織検査の3つを解説します。
①血液検査
骨肉腫の診断において、血液検査は補助的な役割を果たします。骨肉腫では、アルカリフォスファターゼ(ALP)が高値を示すことがあります。
ALPは骨の代謝に関連する酵素で、骨肉腫による骨の破壊や腫瘍細胞の活動を反映していると考えられています。
ただし、ALP高値は骨肉腫に特異的ではなく、ほかの骨疾患でも見られる場合があります。
一方、ユーイング肉腫ではLDHの上昇や炎症反応が出るとされていますが、これらの所見も非特異的です。
②画像検査
骨肉腫の診断において、画像検査は重要な役割を果たします。
・単純X線検査:骨皮質の破壊像や骨の溶解・形成像、腫瘍辺縁の性状、骨膜反応などを評価します。所見から、骨肉腫の可能性や進行度を推測できます。
・CT検査:より詳細な骨の変化をとらえます。単純X線では見落としがちな微小な病変を発見できる場合もあります。
・MRI検査:腫瘍の進展範囲を評価し、手術計画を立てるうえで重要です。また、化学療法の効果判定にも用いられます。
・骨シンチグラフィーやPET検査:全身の転移巣の検索に有用とされます。画像検査の結果を総合的に判断し、骨肉腫の診断の精度がより高くなる可能性があります。
各検査方法の特徴を理解し、適切に組み合わせることにより、骨肉腫は診断されます。
③組織検査
骨肉腫の確定診断には、生検による病理組織検査も必要です。生検の方法には、針生検と切開生検があります。
切除生検は、診断確定後に追加切除が必要になるリスクがあるため、あまり行われません。正確な診断に基づいた適切な治療が重要ですが、肉腫の病理組織診断は時に困難を伴います。
診断が難しい症例に対しては、病理医と相談のうえ、セカンドオピニオンを求め、診断精度の向上に努めることが大切です。
骨肉腫の転移と余命について
骨肉腫は、多いとされる転移部位は肺です。診断時に肺転移が見られても、術前の薬物療法と転移巣の切除により、一部の患者さんでは治癒が期待できます。
肺以外では、同じ骨やほかの骨への転移も見られます。広範な肺転移や遠隔骨転移がある場合、治療は難しくなります。
骨肉腫の予後は、病期や治療状況によって異なります。早期発見と適切な治療により、治癒の可能性が高まりますが、進行例や転移例では予後不良となります。肺やほかの臓器への転移は、生存期間の短縮につながります。
転移性肺腫瘍に対しては、原発巣がコントロールされ、ほかの遠隔転移がなければ、積極的な切除が行われます。
原発巣や転移巣の数により予後は異なりますが、骨肉腫の肺転移では、長期生存例も認められています。
今後は補助化学療法の併用により、さらなる治療成績の向上が期待されます。
骨肉腫の予防策
骨肉腫の予防には、リスク因子を理解し、適切な対策を講じることが重要です。遺伝的素因や環境因子が関与している場合を考慮した予防策が求められます。
定期的な健康診断は、異常の早期発見につながります。
また、バランスの取れた食事、適度な運動、十分な休養などの健康的な生活習慣を維持することで、全身の健康状態を良好に保ち、骨肉腫のリスクを減らせるでしょう。
骨肉腫の早期発見は、治療成績を左右します。定期的な医療検査を受け、骨の異変を早い段階で見つけるよう努めましょう。
また、骨の痛みや腫れなどの症状に注意を払い、異常を感じたら速やかに医療機関を受診しましょう。
骨肉腫についてよくある質問
ここまで骨肉腫の種類や転移と余命、予防などを紹介しました。ここでは「骨肉腫」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
骨肉腫の発症年齢は何歳が一番多いですか
松繁 治(医師)
骨肉腫は、主に10代から20代前半の若年層に多く発症する傾向があります。主に思春期から青年期にかけての発症頻度が高いのが特徴です。
具体的には、10代後半から20代前半にかけての年齢層で、骨肉腫の発生率がピークを迎えます。この時期は、骨の成長が活発に行われる時期でもあるため、骨肉腫の発症リスクが高くなると考えられています。
受診の目安を教えてください
松繁 治(医師)
骨肉腫の症状は、ほかの病気や成長に伴う痛みと似ていることが多いため、自身で判断するのは難しいとされます。
以下のような症状がある場合は、骨肉腫の可能性も考慮し、医師に相談することをおすすめします。
- ・数ヵ月以上続く骨の痛み: 長期間にわたって同じ部位の骨に痛みを感じる場合は、骨肉腫の可能性があります。安静時や夜間の痛みは要注意です。
- ・運動とは無関係の痛み:スポーツや運動をしていないにも関わらず、骨に痛みを感じる場合は、骨肉腫の症状かもしれません。
- ・骨の腫れ:骨肉腫が発生している部位に腫れを認めることがあります。腫れが徐々に大きくなる場合は、注意が必要です。
まとめ
ここまで骨肉腫の転移と余命についてお伝えしてきました。骨肉腫の転移と余命についての要点をまとめると以下のとおりです。
- ・骨の肉腫は、骨肉腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、骨巨細胞腫などがある
- ・骨肉腫の転移と余命は、肺への転移が多く、予後は病期や転移の有無で異なる
- ・骨肉腫の予防にはリスク因子の理解と対策、定期的な健康診断と医療検査、健康的な生活習慣の維持が重要である
骨肉腫と関連する病気
骨肉腫と関連する病気は3個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法などの詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
整形外科の病気
- 骨パジェット病
- ロスムンド・トムソン症候群
- ブルーム症候群
具体的な症状や治療法については、担当の医師と相談しましょう。
骨肉腫と関連する症状
骨肉腫と関連している、似ている症状は4個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
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これらの症状が持続する場合、または新たにあらわれた場合、医師の診察を受けることが大切です。