『若い女性』に多い「スキルス胃がん」とは?症状と厄介な特徴も医師が解説!

スキルス胃がんとは、胃の壁を硬く厚くさせ広がるタイプの胃がんです。そんなスキルス胃がんは、高齢の方だけではなく若い女性にも罹患する可能性があることをご存知でしょうか?
本記事では、スキルス胃がんについて以下の点を中心にご紹介します。
- スキルス胃がんは若い女性に多いのか
- 若い女性もかかりやすいスキルス胃がんの特徴
- 若い女性がスキルス胃がんを患うリスク
若い女性のスキルス胃がんについて理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

監修医師:
本多 洋介(Myクリニック本多内科医院)
目次 -INDEX-
スキルス胃がんは若い女性に多いのか
通常の胃がんの発症率は50代以降に急増しますが、スキルス胃がんは働き盛りの世代、なかでも20代や30代に多く発生するとされています。
そのため、子育てやキャリアの途上で治療を余儀なくされることが多く、生活の質や家族関係にも深刻な影響を及ぼすことがあります。長期入院や症状悪化のために休職や退職をして治療に専念しなければならなかったり、子どもの成長を近くで見守れなかったりといった事例が挙げられます。
さらに、胃がん全体で見ると男性が多いのとは対照的に、スキルス胃がんは女性に多いという特徴もあります。
このように若い世代のスキルス胃がんのリスクは無視できないため、健康診断や定期的なチェックを怠らないようにしましょう。
若い女性もかかりやすいスキルス胃がんの特徴
以下では、スキルス胃がんの主な特徴を3つご紹介します。
がん細胞が広がるスピードが早い
がん細胞の浸潤(しんじゅん)とは、悪性細胞が周囲の健康な細胞に広がること速さを指します。なかでも若年性のスキルス胃がんは、ほかのタイプの胃がんと比べてその浸潤速度が速いとされています。
また、治療開始時にはその湿潤速度からすでにがんが広範囲に広がっていることが多く、治療成績はほかの胃がんと比べて著しく悪い傾向にあります。そのため、スキルス胃がんは難治性の高いがんとされています。
初期症状がない
スキルス胃がんは、ほかの胃がんや大腸がんと同様に、初期段階では目立った症状がないため、病気の進行を見逃しやすいです。また、スキルス胃がんは進行が速く、症状が現れる頃にはすでに手遅れな場合が多いです。
例えば、腹水が溜まっていたり、吐き気が続いたりする頃には、がんが広範囲に転移していることが少なくありません。また、通常の胃がんでは腹膜播種の確率が約2割ですが、スキルス胃がんでは約6割にも達します。
このように、スキルス胃がんは初期症状がほとんどなく、進行が速いため厄介な病気です。
スキルス胃がんが早期発見できない理由
スキルス胃がんは、ほかの胃がんとは異なり、壁内を這うように広がります。また、がん細胞が塊を作らず、通常の胃がんに見られるような粘膜の凹凸が不明瞭です。そのため、胃の粘膜にわかりやすい変化が現れず、内視鏡検査でも早期に見つけるのが難しいとされています。
さらに、スキルス胃がんは進行が速いため、症状が出る頃にはすでにリンパ節や腹膜に転移している傾向にあります。これにより、発見時には根治的な手術が困難で、治療成績も著しく悪化します。
スキルス胃がんの5年生存率は約7%未満と低く、その早期発見の難しさが原因とされています。
若い女性がスキルス胃がんになる原因
若い女性がスキルス胃がんになる場合、どのような原因が考えられるのでしょうか?
以下で詳しく解説します!
ホルモンが影響している可能性
スキルス胃がんの具体的なメカニズムや影響はまだ明確には解明されていませんが、女性ホルモンが関与している可能性が示唆されています。
そのため、若年層の女性は注意が必要です。小さい子どもを抱えながらの闘病生活は大変であり、その影響は家庭にも及びます。
今後、女性ホルモンと胃がんの関係についてのさらなる研究が進むことで、予防や治療の新たな方法が見つかることが期待されています。
女性の生活習慣の変化
近年、女性の喫煙率や飲酒率が上昇していることが、スキルス胃がんのリスク要因として挙げられています。これらの生活習慣の変化は、胃がんの発症リスクを高める要因となる可能性があり、注意が必要です。
健康な生活習慣を心がけることは、男女を問わず胃がんの予防に重要です。
バランスの取れた食事、適度な運動、ストレス管理など、日常生活のなかで健康を維持するための対策を講じることが求められます。
また、定期的な健康診断や胃がん検診を受けることで、早期発見と早期治療に繋げることが大切です。
ピロリ菌の存在
胃がんの主な原因として挙げられるのが、ピロリ菌(ヘリコバクターピロリ)の感染です。
胃がんの患者さんの約90%以上がピロリ菌に感染しており、感染者の胃がんリスクは非感染者の約10倍にもなります。
ピロリ菌は萎縮性胃炎を引き起こし、この炎症が胃がんの発生につながるとされています。
しかし、スキルス胃がんの発症原因は明らかになっておらず、ピロリ菌との因果関係ははっきりとしていません。
予兆なくスキルス胃がんは発生するのか
スキルス胃がんは、初期には小さな未分化型がんとして存在し、粘膜下層に浸潤しながら進行していきます。これが粘膜病変から典型的なスキルス胃がんになるまでには、少なくとも約2〜3年かかるとされています。
初期段階では症状がほとんど現れないため、定期的な胃内視鏡検査が重要です。
早期に発見されれば、2cm以内の小さながんであれば内視鏡治療ができます。
また、手術が必要な場合でも、スキルス胃がんに進展する前に治療を行えば完治の可能性が高まります。
したがって、スキルス胃がんは予兆なく突然発生するわけではなく、初めは小さな凹んだタイプのがんとして存在し、徐々に進行します。
若い女性がスキルス胃がんを患うリスク
スキルス胃がんは、20〜40代の働き盛りの世代に多く見られ、進行が速いため早期発見が難しいというがあります。
スキルス胃がんを患うリスクは、患者さんの状況によりさまざまですが、治療に専念するために休職や退職といったライフスタイルの変更をせざるを得ないケースもあり、身体面のみならず、金銭的にも大きな影響を与えます。
さらに、子育てをしている場合は、子どもの成長をそばで見守れない、保育園や学校の行事に参加できないなど、家庭生活にも影響を及ぼします。
なかには、若い母親が家族を残して親より先に命を落としてしまうこともある残酷な病気です。
このように、スキルス胃がんはライフスタイルに深刻な影響を与えるため、定期的な健康診断や早期の検査が重要です。
若い女性をスキルス胃がんから守るために
ここまで述べてきたように、スキルス胃がんは、早期発見と早期治療が重要だということがわかりました。
検査のタイミングやポイントについて、以下に解説します。
どのような症状があるときに検査をするべきか
初期段階では症状がほとんど現れないため、見逃されがちです。そのため、以下のような症状がある場合は、早めに検査を受けることが重要です。
・胃やみぞおちの痛み・違和感
・飲み込みにくさ
・胸やけ
・吐き気
・食欲不振
・体重減少
・貧血
これらの症状は、胃炎や胃潰瘍とも似ていますが、スキルス胃がんの可能性もあります。
胃がん検診の頻度
30代でも胃がん検診は必要です。なかでも、スキルス胃がんのリスクがある若年層や女性は注意が必要です。20〜30代では、まずピロリ菌検査(ABC検査)を受け、ピロリ菌が見つかった場合は胃内視鏡検査を受診することをおすすめします。
40歳未満でも、胃がんリスクが高い方は早めに検診を受けるべきです。定期的な検診により、胃がんの早期発見と治療ができ、健康を守れます。年に一度の胃がん検診を検討しましょう。
スキルス胃がんについてよくある質問
ここではスキルス胃がんについてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
スキルス胃がんは完治しますか?
本多 洋介 医師
スキルス胃がんの完治は難しいとされています。通常の胃がんの5年生存率は約60〜70%ですが、スキルス胃がんの5年生存率は10%程度に過ぎません。スキルス胃がんは進行が速く、発見時にはすでに腹膜播種やリンパ節転移が進行していることが少なくないため、手術による治癒が困難です。
早期に発見され、腹膜播種やリンパ節転移がない場合は、手術によって完治する可能性もありますが、その確率は低いとされています。
スキルス胃がんに家系は関係しますか?
本多 洋介 医師
スキルス胃がんは、遺伝子の変異が関与している可能性が考えられており、遺伝的な要因は無視できません。このため、家族歴がある人は定期的な検診を受けることが推奨されます。早期発見と適切な対策が、リスク軽減につながります。
まとめ
ここまで若い女性のスキルス胃がんについてお伝えしてきました。スキルス胃がんについて要点をまとめると以下のとおりです。
⚫︎まとめ
- スキルス胃がんは働き盛りの世代、なかでも20代や30代に多く発生するとされている
- スキルス胃がんはほかの胃がんとは異なり、進行が速い
- 若い女性が発症すると子育てやキャリアの途上で治療を余儀なくされることが多く、生活の質や家族関係にも深刻な影響を及ぼす
スキルス胃がんと関連する病気
スキルス胃がんと関連する病気は9個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法などの詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
具体的な症状や治療法については、担当の医師と相談しましょう。
スキルス胃がんと関連する症状
スキルス胃がんと関連している、似ている症状は9個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
これらの症状が持続する場合、または新たにあらわれた場合、医師の診察を受けることが大切です。

