「子宮頸がんは予防」できるの?検診やHPVの詳細も解説!【医師監修】
子宮頸がんは年間で約1万人程の女性が診断され、約2800人の女性が亡くなっていることがわかっています。
早期発見で治癒しやすいがんといわれているため、予防接種でリスクを減らし、定期的な検診を受けることが重要です。
この記事では、子宮頸がんの予防・検診・HPVワクチンについて解説します。
誰でも子宮頸がんになりうる可能性があるため、認識を改め、正しい知識を身につけ参考にしていただけると幸いです。
監修医師:
馬場 敦志(宮の沢スマイルレディースクリニック)
目次 -INDEX-
子宮頸がんとは?
子宮頸がんとは、子宮の頸部にできるがんです。初期段階では自覚症状がでないことが多く、気付かないまま数年かけて進行してしまう場合があります。
症状がでたときには進行していることがほとんどで、生理のとき以外の出血・性行為の出血・おりものの増加などが症状の特徴です。
子宮頸がんは、CIN(子宮頸部上皮内腫瘍)・AIS(上皮内腺がん)という子宮頸がんになる前の状態を経てから、子宮頸がんになります。
この段階では、症状がでないといわれているため、早めの段階で発見することがとても重要だといえるでしょう。
発症年齢は、20代後半から上昇し、30代・40代で罹患する方が増えています。
子宮頸がんは予防できる?
子宮頸がんになる多くの要因は、HPV(ヒトパピローマウイルス)の感染が多くあり、主に性交渉で感染することがわかっています。
HPVを予防するワクチンがあるため、性交渉前に接種することでHPVに対する予防効果が期待できるといわれています。
その後は、定期的な検診を受けることでより子宮頸がんに対する予防ができるのではないでしょうか。
子宮頸がん検診の詳細
欧米の子宮頸がんの検診率が半数を超えているのに対し、日本の検診率は42.1%と半数にも満たしていません。
世界的にみても日本の検診率はとても低いです。検診について詳しく理解し、不安をなくしていきましょう。
20歳以上・2年に1回推奨
子宮頸がんは、20代後半から多く増えはじめていることから、厚生労働省では20歳以上の方は2年に1回の検診を推奨をしています。
性交渉未経験者の方は、HPVに感染するリスクが低いため、検診を受けるメリットは低いと考えられます。
一部の自己負担で受けられる市町村がほとんど
子宮頚がん検診は任意で行うものになります。会社や市町村が費用を負担することもありますが、基本的には自己負担となります。
費用は市町村や医療機関によって異なることもありますので、詳しくはお住まいの市町村の担当窓口・医療機関にお問い合わせしてみてください。
検診内容
子宮頸がんの検診内容は、次のようなものが主に挙げられます。
- 問診
- 視診
- 内診
- 細胞診
問診では、月経周期・一番最後にあった月経の様子・生理痛の有無・妊娠歴・閉経した年齢などを具体的に確認していきます。
視診では、膣鏡と呼ばれる医療器具を使用して、膣内部や子宮頸部を観察していきます。
内診では、膣の中に指を入れて、片方の手でお腹を押しながら、子宮や卵巣の大きさを確認していく検査になります。
細胞診はブラシを用いて、子宮頸部を優しくこすりながら細胞を採取し、がん細胞などの問題がないかを顕微鏡で調べていく検査です。
精密検査内容
精密検査と診断された場合、次のような検査内容が行われます。
- 細胞診
- コルポスコープ検査
- 組織診
細胞診では細胞診の結果がASC-US(意義不明な異型扁平上皮細胞)だった場合に、コルポスコープ検査が必要かどうかを調べるため、子宮頸部から細胞を採取することがあります。
細胞に異常があり、検査が必要だった場合にコルポスコープという膣拡大鏡で子宮の入り口の状態を調べ、気になる病変部分をつまみ取ります。
採取した病変部分を顕微鏡で確認して初めて、がんかがんになる前の状態なのかがわかるので、精密検査=子宮頸がんと診断されたわけではありません。
焦らずご自身の病変の有無・状態の確認をするためにも必ず精密検査を実施できる婦人科医療機関を受診しましょう。
精密検査を受けることができない・精密検査を実施していないこともあるので、市町村の案内などを参考に確認し、受診してください。
子宮頸がんのHPVワクチンの詳細
2019年時点で3回目までの子宮頸がんワクチン接種率がカナダ・イギリス・オーストラリアは8割が接種しているのに対し日本の接種率は1.9%となっています。
これは全体的にみて圧倒的に低い数字です。子宮頸がんのワクチン接種は国内だけではなく、世界保健機関(WHO)でも推奨しています。
ワクチンの知識を正しく身につけ、自分自身で接種の判断をしていきましょう。
小学校6年生から高校1年生相当の女子が対象
厚生労働省では、小学校6年生から高校1年生の女子がHPVワクチンの接種推奨の対象となっています。
各市町村から接種のお知らせのハガキを送付をしているので、参考にして接種を検討してみてください。
小学校6年生から高校1年生で接種を受けると26〜30歳まではワクチンの効果が持続すると考えられていることから、この年齢を対象に接種が行われています。
性交渉前の接種が望ましい
HPVワクチンは、初めての性交渉前に接種することが望ましいです。
性交渉の経験があっても予防効果は期待できるといわれていますが、すでに感染しているHPVをワクチンで排除することはできません。
そのため感染前にワクチンで予防することが大切なのです。
公費での接種が可能
公費での接種は、次の条件に該当する方が可能となります。
- 小学校6年生から高校1年生の女子
- キャッチアップ対象の女性
HPVワクチンは平成25年4月から定期接種ワクチンとして扱われており、小学校6年生〜高校1年生の女子であれば、公費で接種することができます。
キャッチアップ接種とは、平成25年から8年間ワクチン接種の勧奨を差し控えていたために接種できなかった平成9年度〜平成17年度生まれの女性で過去にHPVワクチンの接種を合計3回受けていない方を対象に公費で接種することをいいます。
キャッチアップ接種の期間は3年間で令和7年3月までとなっているので、検討している方は早めの接種を推奨します。
HPVのうち一部の感染を防げるとされる
HPVは100種類以上の型が存在し、そのうちの7種類(16型・18型・31型・33型・45型・52型・58型)の感染が国内承認ワクチンで防げるといわれています。
これらの種類は子宮頸がんと深く関わっていることがわかっており、その中でも16型と18型が日本人の7割に関係しているといわれています。
日本国内で使用できるワクチンには3種類ある
国内で承認されているHPVワクチンには次の3種類があります。
- 2価ワクチン(サーバリックス)
- 4価ワクチン(ガーダシル)
- 9価ワクチン(シルガード9)
どのワクチンを接種するかはHPVの種類によって異なります。
2価、4価ワクチンは子宮頸がんを引き起こしやすい型の一種でもある16型と18型の感染予防に有効です。子宮頸がんの原因の50〜70%を防ぐといわれています。
9価ワクチンは16型と18型に加え、31型・33型・45型・52型・58型の感染予防に有効で、80〜90%を防ぎます。接種するタイミングは、一定の間隔をあけて、同じワクチンを2〜3回接種していきます。
接種するワクチンや年齢によって、間隔や回数が異なりますが、3種類いずれも1年以内に規定回数の接種を終えることが望ましいとされています。
どのワクチンを接種するかは、医療機関と相談し検討してみてください。
すべての感染を防ぐわけではないため検診も大事
子宮頸がんの発生の多くの要因にはHPV感染があることがわかっていますが、ごく稀ではありますが、HPV感染とは関係のない子宮頸がんがあることも事実です。
子宮頸がんは気付きにくい病気ではあり、数年かけてがん化していくものです。
だからこそ定期的な検診を受け続け、早めの段階で気付くことがとても重要だといえます。
子宮頸がんの予防についてよくある質問
ここまで子宮頸がんの予防法などを紹介しました。ここでは「子宮頸がんの費用やワクチン」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
症状がある場合の検査も公費負担がありますか?
馬場 敦志医師
医療機関が行っている子宮頸がん検診に行かれる場合は、自由診療扱いになり公費負担にはなりません。費用は医療機関によって異なりますので、詳しくは行かれる医療機関のホームページで確認してみてください。その後の子宮頸がんの細胞診検査で要精密検査の診断とされた場合は、HPV感染の検査は保険適用となります。
対象年齢を過ぎていてもHPVワクチンを受けられますか?
馬場 敦志医師
対象年齢に該当しない方でも、任意接種としてHPVワクチンを接種することは可能です。
しかし、この場合は予防接種法に基づく定期接種(公費での接種)の対象ではないため、接種費用は全額自己負担となります。
編集部まとめ
子宮頸がんの予防・検診・HPVワクチンについて解説しましたが、いかがでしたでしょうか。
子宮頸がんは女性特有の病気ですが、女性だけではなく男性にも知っていただき、理解してもらいたい病気の一つです。
子宮頸がんに限らずですが、自分の体は自分で守るしかありません。決断した先に初めて医療機関は手助けができます。
自分自身の体と向き合うことを恐れずに予防・検診を行っていただければ幸いです。
子宮頸がんと関連する病気
「子宮頸がん」と関連する病気は2個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する病気
- 子宮頸部上皮内腫瘍
- 上皮内腺がん
これらの病気は、子宮頸がんのがんになる前の状態です。妊娠にも関わってくるため、早めの段階で気付き、今後の治療方法を検討していく必要があります。
子宮頸がんと関連する症状
「子宮頸がん」と関連している、似ている症状が3個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 多量の出血
- 尿・便に血が混じる
- 骨盤・下腹部・腰の痛み
多量の出血・血尿・血便は、さまざまな病気の症状で該当することがあり、臓器・器官の異常が原因となって経血の量が増えていると考えられます。骨盤・下腹部・腰の痛みなどの症状は子宮の外までがんが広がってしまっていることであらわれます。これらの症状が出る前に検診で早期発見してほしいですが、症状や違和感を覚えた際は、早急に医療機関への受診をしてください。