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「肺がんが脳転移」した場合に見られる症状はご存知ですか?【医師監修】

 公開日:2024/08/22
「肺がんが脳転移」した場合に見られる症状はご存知ですか?【医師監修】

肺は、ガス交換の役割を担う重要な臓器です。肺に発生したがん細胞は増殖を繰り返し、リンパ流や血流に乗ってほかの臓器や骨、脳に転移します。

腫瘍によって脳が損傷を受けると、手足にまひが生じて日常生活に影響を与えるだけでなく、呼吸障害や意識障害など生命維持に関わることもあります。

また、転移した部位や腫瘍の特性によっては治癒が困難な場合もあるため、肺がんの早期発見と早期治療が重要です。

この記事では、脳に転移した場合に見られる症状や治療法などを解説しますのでぜひ参考にしてください。

山下 正勝

監修医師
山下 正勝(医師)

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国立大学法人 鹿児島大学歯学部卒業 / 神戸大学歯科口腔外科 勤務 / 某一般歯科 7年勤務 / 国立大学法人 山口大学医学部医学科卒業 / 名古屋徳洲会総合病院  呼吸器外科勤務 / 専門は呼吸器外科、栄養サポートチーム担当NST医師

保有免許・資格
歯科医師
日本外科学会 外科専門医
緩和ケア研修修了
JATEC(外傷初期診療ガイドライン)コース修了
NST医師・歯科医師教育セミナー修了
嚥下機能評価研修修了

肺がんとは

肺がんとは、気管や気管支、肺胞などの細胞ががん化する病気です。初期には明らかな自覚症状がないため発見が遅れるケースが多く、罹患数・死亡数ともに上昇傾向にあります。
さらに、がん細胞がリンパ流や血流に乗ってほかの臓器に転移した場合、生存率は著しく低下します。肺がんの主な症状は、以下のとおりです。

  • 血痰(血が混じった痰)
  • 胸の痛み
  • 息苦しさ
  • 動悸
  • 発熱

これらの症状は風邪やほかの呼吸器疾患でも見られるため、がんを見分けるためには専門の医師による診察や検査が必要です。気になる症状があれば早めに病院を受診しましょう。

肺がんが脳転移した場合に見られる症状

肺に発生したがん細胞が血流に乗ると、脳転移を引き起こすことがあります。このようにほかの部位から脳に転移したがんを、転移性脳腫瘍と呼びます。肺がんは脳転移を起こしやすい病気です。肺がんの症状に加え、以下の症状に心当たりのある方は早急に病院を受診しましょう。

脳のむくみ・頭蓋骨内の圧力上昇

脳を守っている頭蓋骨はとても硬く、脳腫瘍や血種によって頭蓋内の体積が増えても大きく変形することはありません。がん細胞が脳に転移して増殖を繰り返すと頭蓋骨内の圧力が上昇し、頭痛や吐き気、目のかすみなどさまざまな症状を引き起こします。
また、転移性脳腫瘍では腫瘍の周囲にむくみを生じることが多く、これも頭蓋骨内の圧力が上昇する原因の一つです。

頭痛や吐き気

がん細胞の増殖によって頭蓋骨内の圧力が上昇すると、脳が圧迫されて頭痛や吐き気、嘔吐を引き起こします。さらに悪化すると、脳は本来あるべき場所から押し出されてしまい、脳ヘルニアを発症します。
呼吸障害や意識障害など、生命維持に関わる重篤な症状を引き起こすため早急に治療が必要です。

手足のまひ

増殖した腫瘍によって脳の細胞が損傷を受けると、手足にまひがあらわれることがあります。損傷の部位や程度によって重症度は異なりますが、左右どちらかにのみ症状があらわれるのが一般的で、これを片まひと呼びます。
運動神経をつかさどる大脳は、右大脳半球(右脳)と左大脳半球(左脳)に分かれており、損傷を受けた部位と反対側の手足に症状があらわれるのが特徴です。

平衡感覚の異常

脳幹や小脳、前庭神経などの部位が損傷を受けると、平衡感覚に異常がみられます。主な症状はめまいやふらつきなどで、まっすぐ歩くことが困難になります。
転倒による出血や骨折のリスクがあるため、手すりや照明の設置、段差の解消など生活環境の整備が必要です。

肺がんが脳転移した場合の治療法

転移性脳腫瘍に対する治療法は腫瘍の大きさや部位、全身状態などを考慮したうえで決定します。
また、転移したがんは原発巣のがん細胞と同じ特徴をもっているため、原発巣である肺がんの治療効果の判定が重要です。

放射線治療

手術が困難な部位への転移や、腫瘍が小さく複数個存在する場合などには放射線療法が適応されます。
転移性脳腫瘍に対する放射線治療には、全脳照射と定位放射線治療(SRS)の2種類あります。
全脳照射は、脳全体に放射線を照射する方法です。サイズが大きい腫瘍や複数個ある場合に適応となり、MRI検査では見つけられなかった小さながん細胞にも効果が期待できます。
定位放射線治療の適応は、少数かつ小さな腫瘍です。腫瘍を狙ってピンポイントに照射するため、正常な脳への影響が少ないのがメリットです。

外科手術

単発かつ大きさが3〜4cm以上の腫瘍に対しては、開頭術による腫瘍摘出が適応されます。腫瘍の周囲には小さながん細胞が散在している可能性があり、再発のリスクを下げるために放射線の全脳照射を併せて行う場合もあります。

薬物療法

血液脳関門の存在によって、転移性脳腫瘍に対する化学療法の効果は低いとされています。
血液脳関門とは、脳に入る血液のフィルターのようなものです。病原体などの有害物質から脳を守る役割がありますが、抗がん剤もブロックしてしまうため、血液脳関門破綻療法(BBBD)という特殊な治療法を用いる場合もあります。
また、原発巣である肺がんに対する治療効果によっても使用する薬剤の種類は異なります。検討・適応される治療法は患者さん一人ひとりで異なるため、詳しくは担当の医師に確認してみましょう。

脳以外の肺がんが転移しやすい部位

肺に発生したがん細胞は増殖を繰り返し、周囲組織への浸潤や遠隔臓器への転移を引き起こします。ここでは、肺がんが特に転移しやすい部位を4つご紹介します。

リンパ節

リンパ節とは、全身を走行しているリンパ管の途中に存在する免疫器官の一つです。リンパ液に取り込んだ細菌やウイルスを排除し、病原体から身体を守っています。
全身の血液が集まる肺はリンパ流が発達しており、多数のリンパ節が存在するためリンパ節転移を引き起こしやすいといわれています。

増殖したがん細胞が血流に乗ると、骨に転移する場合があります。なかでも肺がんが転移しやすい部位は肋骨や胸椎、骨盤などです。
がんの骨転移は激しい痛みや痺れ、まひを引き起こします。また、骨折によって日常生活が制限される可能性があるため、QOL(生活の質)の維持には早期治療が重要です。

肝臓

血流に乗って肝臓に運ばれたがん細胞が増殖し生着すると、以下のような症状があらわれます。

  • 腹痛
  • 背部痛
  • 黄疸
  • 倦怠感

初期には目立った自覚症状がなく、原発巣である肺がんの経過観察中に検査で偶然発見されることもあります。

副腎

副腎とは、左右の腎臓の上部に位置する2〜3cm程の大きさの臓器で、血圧や血糖値のコントロールに重要なホルモンを分泌しています。がん細胞が副腎に転移し、さらに増殖すると腹痛や背部痛を引き起こします。

肺がんの脳転移についてよくある質問

ここまで肺がんが脳転移した場合に見られる症状や治療法、脳以外の肺がんが転移しやすい部位を紹介しました。ここでは「肺がんの脳転移」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

脳転移した場合の予後と生存率について教えてください。

山下 正勝山下 正勝 医師

転移性脳腫瘍の5年生存率は、24%と低いのが現状です。しかし、脳転移がみとめられる場合でも、早期治療によって症状の軽減や治癒が期待できます。定期的に検診を受け、がんの早期発見と早期治療に努めましょう。

転移を発見するためにどのような検査をしますか?

山下 正勝山下 正勝 医師

がんの脳転移の有無を調べるために、頭部の造影CTや造影MRIを行います。特にMRI検査では小さな病変も発見できるため、診断だけでなく治療方針の決定や治療効果の判定にも有用です。

編集部まとめ

肺に発生したがん細胞が脳に転移すると、頭蓋骨内の圧力が上昇し頭痛や吐き気などの症状を引き起こします。

さらに、がん細胞によって脳の細胞が損傷を受けると手足のまひや平衡感覚の異常がみられ、日常生活に大きな影響をあたえます。

治療法には開頭術による腫瘍の摘出や放射線療法などがありますが、転移した部位や抗がん剤への感受性によっては治癒が難しい病気です。

生存率を上げるためには、原発巣の早期治療による転移の予防が重要です。定期的に検診を受け、がんの早期発見に努めましょう。

肺がんと関連する病気

「肺がん」と関連する病気は6個程あります。各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する病気

肺塞栓症とは、静脈で発生した血栓が肺の動脈に詰まることで起こります。胸の痛みや息苦しさなど肺がんに似た症状がみられますが、急激に発症する点が特徴です。

肺がんと関連する症状

「肺がん」と関連している、似ている症状は5個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 血痰
  • 呼吸困難感

肺がんの主な症状は咳や痰、呼吸困難感などです。しかし、これらは肺がんに特異的なものではなくほかの呼吸器疾患でも見られるため、専門の医師による診察と検査が必要になります。

この記事の監修医師