「胃がんで3分の2摘出となるステージ」はいくつ?診断方法も解説!【医師監修】
食べ物の消化吸収の働きを担う胃に発症するのが胃がんです。
世界的にみて日本における発症率が高く、治療により胃の摘出が必要になる場合があります。
この記事では胃がん治療で胃の3分の2摘出となるケースについて、診断方法やステージの決まり方と併せて解説します。
胃がん治療による食事などへの影響について知り、早期発見につなげていただければ幸いです。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
目次 -INDEX-
胃がんとは
胃がんは胃の内側の粘膜に発生するがんです。
世界的にみて日本や韓国で発症率が高く、国内での罹患率は男性が女性の約2倍となっています。胃がんは自覚症状がないこともありますが、胃痛や胸やけ、吐き気などが症状として現れる場合もあります。
胃がんの原因としてピロリ菌感染や喫煙があり、ピロリ菌の除菌や禁煙が予防に有効です。主な治療方法は内視鏡的切除・外科手術・化学療法の3つで、ステージに基づいて治療方針が決まります。
胃がんで3分の2摘出となるステージは?
胃がんで3分の2摘出となるケースは、胃の上部か下部にがんができた場合です。
胃は食道側の入口を噴門、十二指腸側の出口を幽門といいます。胃がんで3分の2摘出となる手術は、胃の下部を切除する幽門側胃切除術です。
ステージ1~3期の胃がん(がんが胃の表面に出ておらず、遠隔転移がない)のうち、外科手術が必要かつ病変が胃の下部にある場合に選ばれます。切除後は、残った胃の上部と十二指腸または小腸をつなぎ合わせることで食事を取るための機能を再建します。
胃がんの診断方法
胃がんが疑われる場合は、まず胃がん確定のための検査を受けます。胃がんが確定した際は、ステージおよび治療方針の決定のため、がんの進行度を調べる検査を受けます。
代表的な検査は次のとおりです。
- 胃がん確定のための検査:胃部X線検査・内視鏡検査・病理検査
- 進行度を調べるための検査:CT・MRI検査・PET検査・注腸検査・大腸内視鏡検査・審査腹腔鏡・腫瘍マーカー
各検査について解説します。
胃部X線検査
胃部X線検査は、X線撮影によって胃全体の形や胃粘膜の状態を調べる検査です。
胃のX線撮影では造影剤を飲む必要があります。胃部X線検査は胃がんの確定のための検査だけでなく、胃がんの早期発見を目的とした胃がん検診でも用いられます。
内視鏡検査(胃カメラ検査)
内視鏡検査でお口または鼻から内視鏡(胃カメラ)を挿入し、胃の内部をモニターに写しながら確認します。
胃がんが発生している場所や病変の範囲、深さなどを調べます。同時に病理検査に利用する組織の採取が可能です。
病理検査
病理検査はがんの診断を確定するための検査です。
病変から採取した細胞や組織を顕微鏡で観察し、がんの有無やがんの種類を診断します。病理検査でがんが確定した場合、進行度を調べる検査が行われます。
CT検査・MRI検査
CT検査・MRI検査は、リンパ節やほかの臓器への転移の有無を調べるために実施されます。
CT検査はX線を、MRI検査は磁石と電波を用いて体の断面を三次元的に画像にします。
PET検査
PET検査はCT検査で転移の有無がはっきりとわからない場合に利用されます。
静脈から放射性フッ素を付加したブドウ糖を注射し、1時間程安静にした後に撮影を行います。がん細胞に取り込まれたブドウ糖の分布を見ることでがんの全身的な広がりの確認が可能です。
CT検査やMRI検査と組み合わせて実施される場合もあります。
注腸検査・大腸内視鏡検査
注腸検査・大腸内視鏡検査は大腸へのがんの広がりを調べる検査です。
注腸検査は肛門から造影剤を注入して行うX線検査です。大腸内視鏡検査は肛門から内視鏡を挿入し、大腸の内部を観察します。
審査腹腔鏡
審査腹腔鏡は腹膜播種の可能性がある場合に行われます。
腹膜播種とは、腹部にがん細胞が散らばっている状態です。胃がんが漿膜を越えて広がっていると発生する場合があります。全身麻酔をかけ、腹部に開けた小さな穴から内視鏡を挿入して内部を直接観察する検査方法です。
腫瘍マーカー
腫瘍マーカー検査は、補助的に使用される検査方法です。
がんの種類によって特徴的に作られるタンパク質などの物質が腫瘍マーカーです。採血した血液の成分を分析し、腫瘍マーカーの値を測定します。腫瘍マーカーの値だけでは確定診断とはならないため、ほかの検査と組み合わせて使用されます。
胃がんのステージの決まり方
胃がんのステージ(病期)は1期から4期まであり、数字が大きくなるにつれてがんが進行していることを示します。
ステージには臨床分類と病理分類があります。治療前の検査結果をもとに決めるのが臨床分類です。ステージは1・ 2A・ 2B・ 3・4A・4Bの6段階で、治療方針を決定する根拠となります。
病理分類は実際のがんを評価したものです。切除した病変の診断で決まり、手術後の治療方針を検討する際に利用されます。病理分類のステージは1A・1B・ 2A・ 2B・ 3A・3B・3C・4の8段階です。
ステージは以降で解説するT・N・Mの3つのカテゴリの組み合わせで決まります。
がんの広がり方や深達度(T)
がんが胃壁のどの層まで広がっているかを示すのがTの値です。
胃の壁は5層に分けられ、内側から順に粘膜・粘膜下層・固有筋層・漿膜下層・漿膜となっています。胃がんの進行に伴い、病変は外側の層へと深く進んでいきます。
リンパ節の転移の広がり(N)
領域リンパ節への転移の有無を示すのがNの値です。
領域リンパ節とは、胃の近くにあり胃がんが転移しやすいリンパ節です。がんの深達度が大きい程転移が起こりやすい傾向にあります。Tの値が同じ場合は、領域リンパ節転移がある方がより進行しているとみなされます。
ほかの臓器への転移の有無や程度(M)
Mの値は遠隔転移の有無を表します。
遠隔転移とは、胃から離れた場所にある臓器やリンパ節への転移です。がん細胞がリンパ液や血液によって移動することで発生します。遠隔転移がある場合は、深達度や領域リンパ節転移の有無に関わらず臨床分類のステージが4Bとなります。
胃がんで3分の2摘出となるステージについてよくある質問
ここまで胃がんで3分の2摘出となるステージ、胃がんの診断方法とステージの決まり方を紹介しました。ここでは「胃がんで3分の2摘出となるステージ」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
摘出手術後の生活はどうなりますか?
中路 幸之助(医師)
胃がん治療で胃を摘出した場合、胃が本来持っている消化吸収の機能が失われます。そのため、食事のとり方を工夫する必要があります。手術後3ヵ月程度は消化のよいものをやわらかめに調理し、よく噛んで少量ずつ食べるのが基本です。胃を摘出したからといって食べていけないものはありません。手術後の胃の状態に慣れれば食べる楽しみを取り戻すことが可能です。また手術後は、胃切除後症候群(胃を切除したことによる後遺症)に注意が必要です。胃の3分の2を切除する幽門側胃切除術を行った場合は特に、ダンピング症候群や貧血のリスクがあります。ダンピング症候群は食後に動悸やめまい、発汗などの全身症状が起きるもので、食べ方の工夫により予防が可能です。貧血は胃の切除により鉄分やビタミンB12の吸収が悪くなることで起きやすくなります。サプリメントなどで栄養素を補うことで改善が可能です
胃がんの治療方針はどのように決まりますか?
中路 幸之助(医師)
胃がんの治療方針は臨床分類のステージに応じた標準治療を基本とし、患者さんの希望や体の状態などを含めて決まります。がんが浅く遠隔転移とリンパ節転移がない場合は、内視鏡を使用して粘膜のがん部分のみを切除する内視鏡的切除が選ばれます。がんが粘膜下層より深く、遠隔転移がない場合は、胃切除とリンパ節郭清の治療が基本です。手術は腹部を切開、または小さい穴を開けて器具を挿入し行います。がんの場所に応じた範囲で胃を切除するとともに、胃の周囲にあるリンパ節の切除と消化管再建を行います。遠隔転移がある場合は、抗がん剤を用いた化学療法が標準治療です。手術後は病理分類のステージに基づいてその後の方針を決定します。
編集部まとめ
胃がんで3分の2摘出となるケースは、胃の上部か下部にがんができた場合です。
がんが粘膜下層より深く広がっており、病変が胃の下部にある場合に、胃の下部約3分の2を切除する幽門側胃切除術が選ばれます。
胃がんのステージは、検査によってがんの確定診断および進行度の判断を行うことで決まります。ステージを決める要素は、がんの深達度、領域リンパ節の有無、遠隔転移の有無です。
胃を摘出した場合でも、食事のとり方を工夫することで後遺症を防ぎ、食べる楽しみを取り戻すことが可能です。
胃がんと関連する病気
「胃がん」と関連する病気は2個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する病気
- 胃炎
- 胃潰瘍
胃がんとよく似た症状が起きる病気です。
上記の疑いで検査を受けた結果、胃がんが見つかることもあります。
胃がんと関連する症状
「胃がん」と関連している、似ている症状は4個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 胃の痛み
- 胃の不快感
- 胸やけ
- 血便
胃がんの自覚症状として代表的な症状です。
ほかの病気の場合もありますが、上記のような症状がある場合は内科や消化器内科を受診しましょう。