「舌がんの治療」はどう進む?医師が手術・放射線・薬物療法の特徴や注意点を解説!

舌がんと聞くと、怖い病気で不治の病のイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれません。人によっては馴染みがなく、実際どのような治療方法があるのかわからない方もいらっしゃるのではないでしょうか。 重い病気のイメージもある舌がんではありますが、早期に発見できれば生存率の高い病気です。では実際のところ、どのような症状があり治療方法はどうなっているのでしょうか。 こちらの記事では舌がんの治療方法や症状、検査方法を解説していきます。舌がんと関連する病気や症状も解説するので、参考にしてください。

監修歯科医師:
熊谷 靖司(歯科医師)
目次 -INDEX-
舌がんとは
舌がんは、舌の細胞が異常に増えることでできる悪性腫瘍です。特に舌の側面や裏側にできやすく、初期には小さな潰瘍やしこりが現れることが多いです。症状としては以下のようなものがあります。
- 舌の痛みや違和感
- 口の中のしこり
- 血が混じった唾液
- 飲み込みにくさ
舌がんの治療方法
舌がんの病名自体は何となく知っている方はいらっしゃるかもしれませんが、一体どのような治療をすればいいのかご存知でしょうか。近年はさまざまな治療方法があるので、まずは舌がんの治療方法を解説します。舌部分切除術
舌部分切除術とは、舌の前方3分の2の一部分を切除してがんを除去する治療法です。舌を切除する治療ですが、舌の一部を切除するので手術による影響が少ないとされています。そのため、食べたり飲んだりするときに不便になることが少なく、がんになる前と変わらず日常生活を送りたい方にはおすすめです。
切除部分が大きい場合は、全身麻酔で入院が必要になりますが、切除部分が小さい場合は局所麻酔で手術ができます。局所麻酔の手術の場合、症状が軽い場合ならば入院の必要もなく、日帰りで帰宅することも可能です。
舌半側切除術
舌半側切除術とは、舌がんの症状が舌の半分あたりにある場合に行う治療方法です。舌を半分切除すると半分の大きさになってしまいますが、切除した部分はさまざまな方法で再建するので、舌を半分失っても機能障害を少なく収めることができます。手術は全身麻酔で行うので、数日間の入院が必要です。手術後は1週間程は自由に飲食ができず、点滴ややわらかい流動食を食べながら栄養を補っていきます。
それからは舌部分切除術と同様に、徐々に食べたり飲んだりしながら半分になった舌でも生活できるようにリハビリを行うので、心配はありません。味覚障害などの後遺症も少なく、楽に受けられる治療法です。
舌(亜)全摘出術
舌(亜)全摘出術とは、舌を半分以上切除してがんを除去する治療方法です。舌がんが進行して舌の真ん中あたりまで広がった場合、がんのある部分を切除して、がんの進行を食い止めなければなりません。
手術後には切除部分を再建しますが、残った舌の長さによっては再建ができない場合もあります。ですので、手術後は機能障害を抱える場合もあることを理解しておきましょう。
手術後は1週間程流動食や点滴で栄養を補給して、それから物を噛んだり飲んだりする訓練に入ります。場合によっては1ヵ月以上かかる場合もあるので、辛抱強く訓練を続けなければなりません。
手術後に味覚障害を感じることは多くありませんが、舌を半分以上失うことになるので、飲食や言葉の発音がしにくくなります。
放射線療法
放射線療法とは、放射線をがんに照射してがん細胞を消滅させる治療法です。放射線療法の治療は、体の外から放射線を浴びせるライナック治療法が基本で、25回から30回に分けて患部に針を刺して照射を行います。照射は数分程で、治療期間は短くて1週間、長くて1ヵ月です。
治療によっては入院が必要ですが、状態によっては外来治療のみで治療できる場合もあります。
デメリットは、お口のなかで痛みが残るなど、唾液の分泌障害が起こることです。放射線治療は、一気に治療せず休みながら行うので、治療が長期間になる場合もあります。
薬物療法
薬物療法とは、薬を舌に使用して治療する方法で化学療法とも呼ばれています。舌の動脈内に直接薬剤を注入し、舌にあるがん細胞を消してしまう、いくつかある舌がんの治療法のなかでもシンプルな治療法です。
ただこのような薬物療法は、手術後に転移を防ぎ初期症状のときにがん細胞の広まりを防ぐために行われます。
舌がんの症状
舌がんの症状は、痛みに関してはほとんど感じません。主な症状は、舌の粘膜が白くなる場合や、舌のただれや舌の中にしこりの存在を感じたときです。ここからは、舌がんのときに見られる症状を3つ紹介します。
もし舌に違和感がある場合は、参考にしてみてください。
硬いしこり
舌がんの初期症状として代表的なのは、舌に硬いしこりのようなものを感じるときです。見た目の色が白かったり赤かったりするので、一見口内炎の症状と勘違いする場合もあります。
ただ口内炎は痛みを感じるのに対し、しこりは初期の段階では痛みを感じません。もし普通の口内炎より厚みを感じる場合は、舌がんを疑ってみましょう。
舌のただれ
舌のただれは、舌をやけどすることで細菌感染が起きた場合に発症するケースがありますが、まれに舌がんの症状の可能性もあります。ただれの症状は時間の経過で改善しますが、時間が経っても治らない場合は腫瘍の可能性もあるので、専門の医師を受診しましょう。舌のただれは基本的に赤色をしていますが、自覚症状ではがんかどうかははっきりわかりません。
舌の動きの違和感
舌を動かしたときに感じる違和感も、舌がんの自覚症状の1つです。舌を動かすときの違和感だけでなく、ヒリヒリ感やチクチク感みたいな舌の痛みや、舌に熱さを感じるときも同様となります。これらの場合食べ物をしっかりと飲み込めず、唾液の飲み込みが悪くなるので、こうした症状があるようなら速やかに医師へ相談しましょう。
また舌が自由に動かなくなるなど、特定の方向に舌を動かすと痛みを感じるときも、舌がんの可能性を疑いましょう。
舌がんの検査方法
舌がんの検査方法は、医師の視診や触診で症状を確認するほか、細胞や組織を採取する検査や超音波検査などがあります。こうした病理学的診断によって、高い確率で舌がんかどうかを判断可能です。ここからは舌がんの検査方法の詳細を解説するので、もし舌がんの自覚症状で当てはまる場合は、ぜひ参考にしてください。
視診・触診
舌がんの検査でははじめに、医師がお口の中をライトで当てて舌の状態を確認し、しこりやただれの大きさを確認します。粘膜や歯の状態などの異常を確認した後、お口のなかに指を入れてしこりなどの大きさや硬さを確認してリンパ節の状態を確認します。
超音波検査
超音波検査とは、体の表面に超音波を当てて、臓器から返った反射の様子からがんの状態を探る検査方法です。腫瘍の大きさや状態を知るだけでなく、リンパ節やほかの箇所への転移があるかどうかも確認できます。
細胞診
細胞診とは、腫瘍のある周辺の細胞をブラシや綿棒で採取して、顕微鏡でがんの状態を詳しく検査する診断方法です。がん細胞があるかどうかを調べるだけでなく、正常な細胞とどれだけ違うのかなど、細胞の状態を詳しく調べることができます。
舌がんの治療についてよくある質問
ここまで舌がんの治療方法や症状、検査方法を解説してきました。ここでは「舌がんの治療」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
舌がんは何科を受診すればよいでしょうか?
舌がんはお口の中に発生する病気になるので、歯科医院や口腔外科を受診すれば舌がんの検査を受けることができます。またリンパ節の腫れも関係しているので、耳鼻咽喉科でも検査が可能です。それ以外には、各行政や歯科医師会が中心となって行う口腔がん検診でも、検査を受診できます。これらの検査は検査費用がかかりませんので、募集要項にしたがって受付すれば検査を受診可能です。舌がんはほかのがんと比較しても発見しやすく、早期に発見できれば5年生存率が90%と、高い確率となっています。
舌がんの原因を教えてください。
舌がんになる原因は、過度の喫煙や飲酒などの不摂生な生活によるものが大半です。飲酒でも舌がんの危険性はありますが、タバコに関しては吸いすぎると舌がんのリスクが高まります。なので過度な喫煙と飲酒は、舌がんになるリスクをさらに上げることになるので、こうした習慣は断つようにしましょう。
編集部まとめ
今回の記事では、舌がんの治療方法や症状、検査方法を解説してきました。 舌がんはほかのがんと比較しても早期発見できる確率の高いがんですので、舌の粘液が白かったりしこりのようなものを見つけた場合は、すぐに耳鼻咽喉科や歯科医院で検査しましょう。 治療方法に関しては、初期の段階の場合は放射線や薬物療法、進行が進んだ場合は舌を切除すればがんの除去ができます。 ご自身またはご家族で気になる症状や異変を舌に感じたら、1人で悩まずに早めに医療機関に相談しましょう。舌がんと関連する病気
「舌がん」と関連する病気は3個程あります。各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
関連する病気
- 粘液のう胞
- 舌痛症
- 口腔粘膜下線維症
舌がんと関連する症状
「舌がん」と関連している、似ている症状は6個程あります。各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 先天性角下異常症
- 梅毒
- 慢性カンジタ症
- 無煙タバコ角化症
- エプーリス良性腫瘍


