15歳から39歳に発症する「AYA世代のがん生存率」は?特徴も医師が解説!
公開日:2025/11/21

- ・AYA世代のがんの生存率
- ・AYA世代の生存率が高いとされている理由
- ・AYA世代のがんの患者さんが抱える問題

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。
目次 -INDEX-
AYA世代
AYA世代は、「Adolescent and Young Adult」の略称で、15歳から始まる思春期を経て30代までの若者を指します。15歳から30代は人生の重要な段階であり、学業、キャリアの形成、家族を持つなどの大きな変化が多くみられます。ネット・サバイバルとは
ネット・サバイバル(Net Survival)は、がんのみが原因である場合の生存率を特定する統計手法です。この手法はPohar-Perme法ともいわれており、ほかの原因による死亡リスクを排除してがん自体の影響のみを分析することを目的としています。一般的な相対生存率の計算と違い、ネット・サバイバルはがんが直接的な死因となる状況のみを考慮し、期待生存率を算出せずに生存率を推計します。AYA世代のがんの生存率
AYA世代のがんの生存率をがんの種類ごとに解説します。下記数値は、国立がん研究センターが公表した数値であり、5年後の生存率は実測の数値のみ公表しています。白血病
5年実測:72.8%、10年実測:70.1%、10年ネット:70.6%リンパ腫
5年実測: 88.0%、10年実測: 86.0%、10年ネット: 86.6%脳・脊髄腫瘍
5年実測: 83.5%、10年実測: 77.8%、10年ネット: 78.2%骨・軟骨腫瘍
5年実測: 68.3%、10年実測: 62.5%、10年ネット: 62.9%軟部肉腫
5年実測: 75.5%、10年実測: 70.5%、10年ネット: 70.9%胚細胞性腫瘍など
5年実測: 93.7%、10年実測: 93.6%、10年ネット: 94.3%黒色腫・皮膚がん
5年実測: 82.9%、10年実測: 79.5%、10年ネット: 80.1%甲状腺がん
5年実測: 99.4%、10年実測: 98.8%、10年ネット: 99.4%頭けい部のその他のがん
5年実測: 83.3%、10年実測: 78.7%、10年ネット: 79.2%肺・気管支のがん
5年実測生存率: 46.3%、10年実測: 38.8%、10年ネット: 39.1%乳がん
5年実測: 90.0%、10年実測: 83.5%、10年ネット: 84.0%腎がん
5年実測: 90.3%、10年実測: 87.6%、10年ネット: 88.3%ぼうこうがん
5年実測: 79.1%、10年実測: 71.5%、10年ネット: 72.0%性腺のがん
5年実測: 81.0%、10年実測: 75.4%、10年ネット: 75.9%子宮頸がん・子宮がん
5年実測: 88.6%、10年実測: 87.2%、10年ネット: 87.7%大腸がん
5年実測: 75.2%、10年実測: 69.9%、10年ネット: 70.5%胃がん
5年実測: 61.8%、10年実測: 59.2%、10年ネット: 59.7%肝内胆管がん
5年実測: 43.1%、10年実測: 36.1%、10年ネット: 36.4%すい臓がんなど消化器系のがん
5年実測: 50.1%、10年実測: 43.6%、10年ネット: 43.9%AYA世代の生存率が高い理由
AYA世代のがんの患者さんの生存率が高い理由には、いくつかの要因が関与しています。まず、AYA世代の患者さんは細胞の活性が高く、がん細胞の増殖速度が速いことがありますが、治療薬が効きやすい傾向にあることが一因です。治療薬が効果を発揮しやすいという特性は、AYA世代の治療成功率を向上させる重要な要素となっています。また、若年層は健康であることが多く、治療に対する耐性が高いことも、高い生存率に寄与しています。より積極的な治療ができ、結果として生存率の向上につながっていると考えられます。
AYA世代のがんの特徴
AYA世代のがんには、年齢に応じて発症しやすいがんの種類が異なるという特徴があります。AYA世代は、小児期から成人期へと移行する過程にあり、それに伴いがんの種類も変化します。15歳から19歳(A世代)では、主に小児がんと同様の希少がんが多く見られます。希少がんとは白血病、リンパ腫、脳腫瘍、骨腫瘍などです。
20歳から29歳では、白血病の発症は減少し、甲状腺がんや胚細胞腫瘍・性腺腫瘍などが多く発症するとされています。20歳から29歳では、新たに成人特有のがんが発症し始めるためです。
30歳から39歳(YA世代)になると、女性では乳がんや子宮頸がんなどの発症が増えます。また、大腸がんや胃がんなどの消化器系のがんも増加します。YA世代では、生活習慣やホルモンの変化もがん発症に影響を及ぼしている可能性があるといわれています。
AYA世代の患者さんが抱える問題
AYA世代は若い世代ですが、AYA世代の患者さんのがんの悩みはどのようなものがあるのでしょうか。孤立
AYA世代のがんの患者さんは、その年代特有の問題を抱えていますが、そのなかでも孤立は大きな課題の一つです。AYA世代の患者さんの数は少ないため、病院で治療を受ける際に同年代の患者さんと出会うことは稀です。多くは高齢者が多い成人診療科の病室で過ごすことになるか、あるいは小児科であれば幼い子どもたちが多い病棟での治療を余儀なくされます。このような状況は、AYA世代が自らの経験や感情を共有できる相手が周囲にいないという孤立感を強め、心理的なストレスを増加させる可能性があります。
学校(進級の問題など)
AYA世代のがんの患者さんが抱える学校に関する課題は、教育過程に影響を与えることです。なかでも高校生になると、学校のサポート体制に差が見られることがあります。がん治療を受ける生徒は、長期にわたる治療や入院により、定期的なテストの受験や必要な出席日数の確保が困難になる可能性があります。よって、進級や卒業が困難になる場合があります。小学校や中学校では、特別支援学校が都道府県に設置されており、院内学級も存在するため、フォローが行き届いているとされていますが、高校ではこのような支援が充分ではない場合が多いとされ、院内学級が設置されている例は少なく、高校生への学習支援が制度化されている自治体も一部に限られています。
仕事
AYA世代のがんの患者さんが抱える仕事の問題は多岐にわたります。AYA世代のがんの患者さんは仕事をしている方も多く、治療を受けながら仕事を続けるために企業側も配慮するケースが増えているとされていますが、初めての就職時や職場復帰時にはさまざまな判断が必要であり、社会全体でAYA世代を支える体制が必要といわれています。 厚生労働省はがんを理由にした差別を禁止し、仕事と治療を両立できるよう「療養・就労両立支援指導料」を導入しています。療養・就労両立支援指導料とは、主治医が産業医と協力し、患者さんのニーズに合わせた治療プランを作成することで、診療報酬が支払われる仕組みです。これにより、仕事と治療が両立しやすくなります。社会全体でAYA世代を支える体制が必要です。AYA世代のがんの生存率についてよくある質問
ここまでAYA世代のがんの生存率を紹介しました。ここではAYA世代のがんの生存率についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
AYA世代で多いがんはなんですか?
根来 和輝 医師
AYA世代で多いがんは、日本では女性では乳がん、男性では消化器がん(なかでも胃がんや大腸がん)が多い傾向があります。AYA世代のがんの特徴は、年齢によって発症しやすいがんの種類が異なる点です。繰り返しになりますが、15歳から19歳では小児にも発症しやすい希少がんが多い一方で、20代以降は乳がんや消化器がんなどが増加します。
AYA世代のがんとそれ以外のがんの特徴の違いはなんですか?
根来 和輝 医師
AYA世代のがんには希少がんが多いとされ、希少がんは白血病や胚細胞腫瘍、骨軟部肉腫、脳腫瘍などが含まれます。白血病や胚細胞腫瘍などのがんは通常の世代だと発生頻度が低く、治療法も確立されていない場合が多いため、診断や治療が困難となる場合があります。
まとめ
ここまでAYA世代のがんの生存率についてお伝えしてきました。AYA世代のがんの生存率についての要点をまとめると以下のとおりです。- ・AYA世代のがんの生存率はがんの種類によって異なる。白血病やリンパ腫は高い生存率を示し、甲状腺がんも高い生存率が見られる。一方で、肺がんや肝内胆管がんなどは生存率が低い傾向がある
- ・AYA世代のがんの患者さんの生存率が高い理由は、細胞の活性が高く治療薬が効きやすい傾向があること、若年層の健康状態と治療耐性の高さが要因
- ・AYA世代のがんの患者さんの悩み・問題は孤立感、学校での進級の問題、仕事と治療の両立で、同世代の患者さんが少ないことで心理的負担が増し、学業や仕事にも影響を及ぼす
aya世代のがんと関連する病気
aya世代のがんと関連する病気は10個ほどあります。 各病気の症状・原因・治療方法などの詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。 具体的な症状や治療法については、担当の医師と相談しましょう。aya世代のがんと関連する症状
aya世代のがんと関連している、似ている症状は11個ほどあります。 各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。関連する症状
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