「男性乳がんの特徴」はご存知ですか?治療法や予防法も解説!【医師監修】
男性乳がんには、どのような特徴があるでしょうか?
乳がんの基本的な症状や治療方法は女性も男性も変わりませんが、男性乳がんには女性の場合と違った特徴もあります。
乳がんは女性だけの病気と思わず、男性であっても兆候に気をつけて早期発見・早期治療するのが重要です。
この記事では男性乳がんの特徴・原因・予防法などを解説します。
乳がんの家族歴などで注意した方が、正しい知識を持って適切に対処するための参考になれば幸いです。
監修医師:
上 昌広(医師)
目次 -INDEX-
男性の乳がんとは
乳がんは女性特有のがんと思われていますが、男性でも発症することはあります。
女性と比べて未発達ながら、男性にも乳腺は存在しており、乳腺でがんが生じれば男性であっても乳がんとなるため、乳がんは誰でも起こりうるがんです。
乳がん患者さんのうち男性の割合は約1%で、米国のデータでは男性の約1,000人に1人が生涯のうちに乳がんを発症します。
男性は乳がんの検査を受ける人が少なく、しこりなどの症状があっても放置してしまうため、発見されたときにはかなり進行しているケースが少なくありません。
男性の乳がんの原因・症状からみる特徴
乳がんは乳房の組織である乳腺や小葉で生じるがんで、乳腺の発達している女性の患者さんが大多数を占めます。しかし男性にも乳腺がある以上乳がんのリスクはゼロではなく、乳がんになる原因や症状は女性と変わりません。
乳がんの主な原因と症状を解説します。
原因:遺伝的要因
乳がんは遺伝的要因が影響し、近親者に乳がんを発症した人がいるとリスクが高くなります。
男性乳がんの患者さんで、近親者に乳がん経験者がいる割合は10~15%という報告もあります。ただし、乳がん全体では遺伝性乳がんの割合は10%以下とされており、近親者に乳がん患者さんがいる人が特別ハイリスクなわけではありません。
原因:ホルモン要因
乳がんは女性ホルモンの影響でリスクが高まるとされており、女性では閉経後にホルモン補充療法を受けている方で注意が必要です。
男性では何らかの原因で女性ホルモンが増えたり、男性ホルモンが減ったりした場合に乳がんのリスクが高まります。女性ホルモンが相対的に増える病気には、クラインフェルター症候群・肝硬変などがあります。
原因:環境要因
男女ともに、胸部への放射線被ばくは乳がんのリスク因子となります。特に若年期に被ばく量が多かった場合には、乳がんのリスクが高まるとされています。
頻回の胸部X線検査や、放射線治療などを受けた方は、特に注意が必要です。
症状:乳房のしこり(腫瘤)
乳がんの代表的な症状は乳房のしこりで、医学的には腫瘤といいます。女性は乳房の中にしこりが生じますが、男性の場合は乳頭の下にできるケースがよく見られます。
乳がんのしこりには痛みがないことが大半で、初期段階では触るとコリコリと硬く動かせるのが特徴です。
がんが進行するとしこりが胸部と癒着して動かなくなり、手術での切除も難しくなるため、早期治療を心がけましょう。
症状:乳頭からの分泌物
乳頭の下で乳がんが生じると、乳頭から出血したり透明の分泌物がでることがあります。乳腺は乳頭とつながっており、乳腺で生じた腫瘤からの出血や膿が、乳管を通じて乳頭からでてくることが少なくありません。
男性の乳がんの治療法からみる特徴
男性の乳がんであっても、基本的な治療方法は女性の場合と変わりません。
乳がんの進行度に応じて適切な治療を選択していき、早期である程身体への負担は少なくなるでしょう。男性乳がんの主な治療法を解説します。
外科手術
乳がんの治療は、外科手術による切除が基本です。女性であれば乳房の完全切除と部分切除を検討し、できる限り部分切除で乳房を残すことを目指します。
男性の場合は乳房がほとんどなく、乳頭付近にがんが生じるため完全切除となることが少なくありません。がんが胸部に癒着して固定されていたり、広範囲に広がっている場合は手術は難しくなります。
術前・術後の薬物療法
手術でがんを切除する前に、薬物療法でがんを小さくしてから手術を行うこともあります。
手術前にがんを小さくできれば切除する範囲も少なくなり、身体への負担を軽減できるでしょう。また、手術後にも再発を防ぐための薬物療法を数ヵ月間行うことが少なくありません。
使用する薬物はがんの分類によって異なり、適切な薬物の選択が重要となります。女性ホルモンが多い場合には、女性ホルモン阻害薬を用いたホルモン療法が行われます。
放射線治療
がん細胞にX線を照射してがんを小さくしたり死滅させたりする治療法で、手術前にがんを小さくするために行われます。また、手術後に取り切れなかったがんを放射線治療で死滅させることもあります。
がんが進行していて手術が難しい場合には、薬物療法と放射線治療でがんの進行を食い止めながら、症状を緩和していくのが基本です。
男性の乳がんの予防法からみる特徴
男性乳がんの100%予防はできませんが、がんのリスク因子を避けて健康的な生活をおくることで、結果的にがんのリスクも減らせるでしょう。
近親者に乳がん経験者が多い方や、胸部の放射線被ばくが多かった方は乳がんのリスクが増えるため、特に予防にも気を配る必要があります。
男性乳がんの特徴から、予防のために重要なポイントを解説します。
健康的な生活習慣の維持
乳がんは女性ホルモンの影響を受けており、男性の女性ホルモン過剰は乳がんの危険因子となります。
男性であっても女性ホルモンは分泌されており、通常は男性ホルモンとのバランスで女性ホルモンが抑えられている状態です。
男性ホルモンが減少すると相対的に女性ホルモンが増えてしまい、乳がんや女性化乳腺症などを発症するケースが少なくありません。
男性ホルモンが減少してしまう原因は、主に以下のような生活習慣があります。
- 喫煙
- 運動不足
- アルコール多飲
- 肝硬変
これらのリスク因子を避けて、健康的な生活習慣を保つことで、結果的にがん全体の予防にもつながるでしょう。
定期的な健康診断の受診
男性で定期的な乳がん検診を受ける方は少なく、男性乳がんは進行した状態で発見されることが少なくありません。
健康診断で乳がん健診は含まれていませんが、ほかの生活習慣病などの兆候から医師に相談し、乳がんが見つかることもあります。
健康診断は身体の全般的な健康状態を調べるものであり、健康診断を受けることで生活習慣への意識が高まり、結果的にがんを予防できることもあるでしょう。
ご自身の身体のチェックのためにも、健康診断は毎年受診するようにしてください。
男性の乳がんの特徴についてよくある質問
ここまで男性乳がんの症状・治療法などを紹介しました。ここでは「男性乳がんの特徴」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
女性の乳がんとどのような点が違いますか?
上 昌広(医師)
女性の乳腺は乳房全体に広がっているのに対して、男性は乳頭の付近にわずかな乳腺があるだけです。この乳腺にがんが生じるため、乳頭付近に境界明瞭なしこりができやすいのが男性乳がんの特徴です。また、女性の乳がん患者さんは40~60代が多いのに対し、男性乳がんの患者さんは60~70代に多く、好発年齢が高くなっています。
セルフチェック方法を教えてください。
上 昌広(医師)
乳頭を指で押してみるのが、簡単でわかりやすい方法です。硬くゴリゴリしたしこりがある場合には乳がんの可能性があるため、乳腺外科を受診してください。胸にしこりができる病気はほかにもありますが、乳がんの場合は痛みが少ないのが特徴です。炎症性乳がんの場合には胸の広い範囲が赤く腫れたり、皮膚がただれたりして、痛みを生じます。乳頭付近や胸全体に、見た目や触った感覚で痛みがないかを定期的にチェックしましょう。
編集部まとめ
男性乳がんの特徴と治療法・予防などを解説してきました。
症状や基本的な治療方法は女性と同じですが、男性乳がんの場合は乳頭付近にしこりができやすい特徴があります。
男性は胸に違和感があってもまさか乳がんとは思わず、放置してがんが進行してしまうことが少なくありません。
がんは早期発見・早期治療が基本であり、男性乳がんは早期発見できる程手術で切除する範囲も小さく、身体への負担も少なくなるでしょう。
乳頭付近のしこりなど胸に違和感を感じた場合は、早めに乳腺科か内科を受診するようにしてください。
男性の乳がんと関連する病気
「男性の乳がん」と関連する病気は3個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する病気
- 乳腺症
- 線維腺腫
- 葉状腫瘍
乳腺の病気は男性乳がんと似た症状で、乳頭のしこりや乳房の肥大化などが特徴です。ホルモンバランスが乱れる思春期には乳房が膨らむなど女性化が見られることがありますが、ほとんどは自然に治るため経過観察となります。数ヵ月以上も症状が続いたり、痛みを伴う場合には早めに検査を受けた方がよいでしょう。
男性の乳がんと関連する症状
「男性の乳がん」と関連している、似ている症状は4個程あります。
各症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 胸のしこり
- 乳頭の陥没
- 乳頭からの出血・分泌物
- 乳頭や乳輪のただれ・びらん
男性乳がんは乳頭付近で生じることが多く、もともと乳頭が大きく硬い方はしこりに気付きにくい場合があります。がんが進行して皮下組織が破壊されると、乳首が陥没したり出血・ただれが生じます。乳頭の痛みや見た目の変化が生じた場合は、早めの検査を受けるようにしてください。