「大腸がんと直腸がんの違い」はご存知ですか?症状や治療法も解説!
一般的な健診を受ける際に大腸がんの検査について目にする機会は多いものの、大腸がんとは一体どのような病気なのか詳しく知る機会はなかなかありません。
この記事では、直腸がんと大腸がんとの違いやどのような病気なのかを詳しく説明します。また、大腸がんになると出やすい症状・治療方法・よくある質問にもお答えします。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
目次 -INDEX-
大腸がんとは?
大腸がんとは、食べ物の通り道である消化器官のうち、肛門につながる器官である大腸にできるがんのことです。
大腸の粘膜から直接がんができることもあれば、良性のポリープだったものががんになることもあります。
近年、食生活の欧米化により日本人も大腸がんに罹患する方が増えており、2022年の統計では日本人のがん死亡数の第2位となっています。
大腸がんになるリスク因子としては肥満・加齢・飲酒・喫煙・肉中心の食事・食物繊維の不足・運動不足などが挙げられ、一部は遺伝の影響もあるのです。
初期症状はほとんどないといわれているため、定期的に健診を受けて早期発見をすることが重要です。
早く見つければ高い確率で治ることが多いがんですが、進行するにつれて肺や肝臓などのほかの臓器に転移したり、リンパ節転移を起こしたりします。
大腸がんと直腸がんの違いや発生部位
大腸がんと直腸がんはどのような違いがあるのでしょうか。発生部位とともにわかりやすく解説します。
直腸がんは大腸がんの一種といえる
大腸がんは、がんができた場所によってそれぞれ呼ばれ方が異なります。
大腸の部位によって、盲腸がん・上行結腸がん・横行結腸がん・下行結腸がん・S状結腸がん・直腸がんに分かれており、直腸がんは大腸がんのなかの一種です。
日本人ではS状結腸がんと直腸がんが多く、大腸がんのうち70%を占めることがわかっています。
直腸がんの発生部位
大腸のなかでも肛門に近い場所にある直腸にできるのが直腸がんです。
直腸は肛門から15〜20cm程度の臓器で、直腸に便がたまって圧が高まると便意が発生し、便を外に排出する機能があります。
大腸にできるがんには結腸がんもある
大腸のなかでも、上行結腸・横行結腸・下行結腸・S状結腸にできるがんは総称して結腸がんといわれます。
直腸がん・結腸がんはどちらも同じ大腸がんとして検査や治療を行います。
大腸がん・直腸がんの症状
大腸がん・直腸がんは早期の段階ではほとんど自覚症状はありませんが、がんが大きくなり病気が進むとともに症状が現れます。
次のような症状が気になっている方は、早めに医療機関へ受診されることをおすすめします。
血便・下血
S状結腸や直腸など、肛門近くのがんの場合は鮮血の血便が出ます。
痔を持っている方の場合、いつもの痔の出血だからといって自己判断せず定期的に検査をすることが大切です。
食道・胃・十二指腸など肛門から遠い場所での出血になると黒っぽい血となり、これは下血と呼ばれます。
便の表面に血が付く
黒っぽい血や鮮血が便に混ざったり、便の表面についたりする場合もあります。
肉眼ではわからないくらい微量の血液の場合でも、便鮮血の検査をすることで血液が混ざっているかどうか調べることができます。
この検査は検便のみで簡易的なのでがん検診で行われますが、便潜血だけでは確定診断にはなりません。
便が細くなる
がんがある程度進行しサイズが大きくなってくると、便の通り道が狭くなるため便が細くなることがあります。
がんがなくても食べたものや腸の動きによって便が細くなる場合があるものの、残便感や血便などほかにも症状がある場合は要注意です。
便秘・下痢
がんがあるために便が狭いところを通れず便秘がちとなります。
下痢やゆるい便は狭くても通ることができるため便秘と下痢を繰り返すなどの症状が現れることもあります。
便が細い場合と同様にほかの症状がある場合は検査したほうがよいでしょう。
貧血
腸から断続的に出血すると、物理的に血液が少なくなり貧血になります。
そして、血液が運ぶ酸素の量が減少し、動悸・息切れ・目の粘膜が白くなる・疲れやすい・顔色が悪いなど、血液が不足して全身にさまざまな症状が出ます。
採血をして一定の数値を下回ると輸血が必要です。
お腹の張り
便秘を繰り返したり、がんそのものが大きくなることで、お腹の張りを感じる場合もあります。
がんが大きくなるとお腹の上からしこりが触れることで気付く方もいます。
進行すると腸閉塞の症状が出る
がんが進行すると、腸のなかが狭くなってついに便が通れなくなり、腸閉塞となります。
排便がまったく出ず、お腹の張り・激しい腹痛・吐き気・嘔吐などが主な症状です。
腸閉塞になった場合は、鼻からイレウス管という管を入れて腸の内圧を逃す処置や、緊急手術が必要になることもあります。
大腸がん・直腸がんの治療方法
がんの進行度によって治療は異なります。また、患者さんの状態によって判断はそれぞれ違う部分があるものの、基本的には標準治療に沿って治療が行われます。
まず、がんが大腸の粘膜や筋肉の層までの深さにとどまっていて内視鏡治療ができる場合、内視鏡治療での切除が第一選択です。
内視鏡で病変を取りきることができれば、それだけで治療を終えられます。
一方、ほかの臓器への転移がなく周囲のリンパ節を含めて手術で病変を取り切れる場合には手術を行います。がんの深さによって、術後に補助化学療法が必要です。
ほかの臓器に転移がある場合は、切除が難しいときは手術はせず、化学療法や放射線治療などを含めた治療となります。
大腸がんと直腸がんの違いについてよくある質問
ここまで大腸がん・直腸がんの違い・発生部位・症状・治療などを紹介しました。
ここでは大腸がん・直腸がんの違いについてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
大腸がんと直腸がんの5年相対生存率を教えてください。
中路 幸之助(医師)
- がんが大腸の壁にある筋肉の層にとどまるステージIの場合:92.3%
- がんが筋肉の層を超えて周囲の組織に浸潤しているステージIIの場合:85.5%
- リンパ節転移があるステージIIIの場合:75.5%
- ほかの臓器への転移があるステージIVの場合:18.3%
進行するにつれて5年後に生存している割合が少なくなるものの、ほかの臓器への転移がない状態であれば7割以上の方が5年後も生存されています。このデータからも、大腸がんにとって早期発見・早期治療は重要であることがわかります。
大腸がん・直腸がんを発症しやすい年代を教えてください。
中路 幸之助(医師)
大腸がん・直腸がんの罹患率を年代別でみると、40代以上から年齢を重ねるごとに増えていきます。特に40代以上の方は、定期的に検査をすることが大切です。会社や自治体の定期的な健診を受けるだけではなく、気になる症状があるときは我慢せず消化器内科の病院へ相談しましょう。
編集部まとめ
大腸がん・直腸がんによって起こる症状や治療方法は、病気の進行度によって違うことがわかりました。特に早期の大腸がんは症状がないことも多く、定期的な検査をして早めに治療することが重要です。
好発年齢に差しかかる40代以上の方は、一度大腸内視鏡を受けて検査しておくとよいでしょう。また、すでに気になる症状がある方は、専門の医師の診察を受けてください。
大腸がんと関連する病気
大腸がんと関連する病気は5個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
クローン病・潰瘍性大腸炎は炎症性腸疾患と呼ばれ、これらの病気にかかっている人は将来大腸がんになりやすいとされています。強い腹痛・下痢・血便などが主な症状です。大腸ポリープは良性疾患ですが、ポリープががん化する場合もあります。家族性大腸腺腫症・リンチ症候群はどちらも遺伝性の病気であり、若いうちから大腸がんになる可能性がある病気です。
大腸がんと関連する症状
大腸がんと関連している、似ている症状は8個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 残便感
- 便秘と下痢を繰り返す
- 血便や下血
- お腹の張り
- 腹部のしこり
- 便が細くなる
- 貧血
- 急激な体重減少
急に強い腹痛や吐き気を感じて便が出ないときには腸閉塞になっている疑いがあるので、すぐに受診してください。また、がんになると栄養ががんに取られてしまうため、急激に体重が減ります。これらの症状が複数当てはまる場合には、念のため病院を受診して詳しく検査することをおすすめします。
参考文献