「舌がんの生存率」はご存知ですか?症状や予防法も解説!医師が監修!
あなたは舌がんをご存知でしょうか。
舌がんは発生頻度が低く、希少がんのひとつとされています。
認知度が低いため、病名を知っている程度の方が多いのではないでしょうか。
舌は鏡を使えば自身で確認できる部位なので、早期発見しやすいがんといえるでしょう。
しかし実際は、初期症状が口内炎と区別がつきにくいため見過ごされ、初診時には進行がんに移行しているケースも少なくありません。
また近年、死亡者数が増加していることから問題になっているがんでもあります。
この記事では舌がんの生存率について、症状・予防方法と併せて解説します。
早期発見のためのセルフチェック方法も紹介しているので、慢性的に口内炎でお悩みの方はぜひ参考にしてください。
監修医師:
渡邊 雄介(医師)
所属
国際医療福祉大学 教授
山王メディカルセンター副院長
東京ボイスセンターセンター長
目次 -INDEX-
舌がんとは
舌がんは口腔がんの一種で舌にできる悪性腫瘍です。好発年齢は50歳代後半ですが、20~30歳代の患者さんもときどきみられ、男女比は約2:1です。
舌がんの多くは扁平上皮細胞という表面の細胞から発生し、進行とともに舌の組織の深い部分に広がります(浸潤)。がん細胞はさらに血管やリンパ管に入り込み、別の場所に移動・増殖(転移)します。
舌がんのなかには早い段階で頸部リンパ節に転移し、急速に進行するケースもあるため注意が必要です。舌がんは早期発見が重要ですが、早期では痛みや腫れなどの自覚症状が少なく、症状も軽いため口内炎と見過ごされるケースも少なくありません。
放置しているとその間にもがんは進行し、病期(ステージ)も進み生存率にも影響します。口内炎のような症状でも、長く続くような場合は医療機関を受診してください。
舌がんの生存率
舌がんは、がんの大きさ(最大径)・浸潤の深さ・多臓器への転移の有無によりステージ1~4に分類されます。
ここでは、各ステージの生存率・治療法を紹介します。がんの生存率とは、治療でどのくらい命を救えるかを表わすものです。
がんと診断された患者さんのうち5年後に生存している割合を示す5年生存率をみてみましょう。
ステージ1
ステージ1の5年生存率は90.0%です。腫瘍の大きさは2cm以下で転移はありません。
舌部分切除術が一般的な治療選択肢ですが、放射線の組織内照射が行われることもあります。
ステージ2
ステージ2の5年生存率は83.0%です。
腫瘍の大きさは2cmを超えて4cm以下で、リンパ節転移はありません。
場合によっては舌半側切除となり、再建手術(体のほかの部分の皮膚を移植)が行われることもあります。
腫瘍が深部にまで及んでいる場合は、頸部郭清術(頸部を広範囲に摘出)を併用することが多いです。
ステージ3
ステージ3の5年生存率は67.7%です。
リンパ節転移がなくても腫瘍が4cmを超える(周囲の骨・筋肉にまでは広がらない)場合や、腫瘍が4cm以下でも頸部リンパ節転移(3cm以下)が1個だけある場合が該当します。
ケースにより舌亜全摘出術(半分以上を切除)・再建手術・頸部郭清術・放射線治療・抗ガン剤治療などが行われるようになります。
ステージ4
ステージ4の5年生存率は50.1%です。
腫瘍が周囲の骨・筋肉・顔の皮膚などに広がった場合や、腫瘍が小さくても3cmを超えた頸部リンパ節が1個以上ある場合が該当します。
救命のため舌全摘手術となる場合もあるのです。治療はケースにより舌(亜)全摘出術・再建術・頸部郭清術・放射線治療・抗ガン剤治療となります。
舌がんの症状
舌がんの多くは舌の側面に生じます。早期では腫れ・痛みなどの自覚症状は少なく、しこりや舌の変色などの軽い症状のため口内炎と見過ごされることが多いようです。
痛み・腫れなどほかの症状が現れた頃には、すでにがんが進行している場合があります。
ここでは早期発見の助けとなるように、舌がんでみられる5つの症状について詳しく紹介します。以下のような症状がある場合は速やかに受診しましょう。
しこり
口内炎のしこりはやわらかいですが、舌がんのしこりは硬いのが特徴です。
触ってみてほかの部位と明らかに違うと感じる程硬い場合は、がんの可能性があります。
腫れ・痛み
腫れ・痛みなどの症状が現れた場合はすでにがんが進行している可能性があります。約1/3から半数では、さすような激しい痛みを伴います。
出血
進行した舌がんは、出血が現れる場合もあります。腫れが舌の外側に膨らむことで、出血が生じます。
ただし、初期の舌がんに出血が伴うとは限らないため、出血がみられた場合は進行している可能性が高いでしょう。
白斑・紅斑
舌がんの初期は白色や赤色の病変が現れることがあり、なかでも白斑や紅斑は前がん病変の可能性があり要注意です。
前がん病変とは、将来がん化する可能性の高い病変のことです。白斑状のざらざらした病変は白板症の可能性があり、約3~5%ががん化するといわれています。
境界がはっきりとした赤色でビロード状や表面がつるっとした場合は紅板症の可能性があり、約半数はがん化する非常に危険な病変です。
強い口臭
口腔がんの疾患病巣があると口臭が発生することが知られており、がんと臭いの研究が進み口腔がん特有の臭いがあることもわかっています。
がんが大きくなると一部が栄養不足となり腐り落ちて(自壊)潰瘍となり、進行とともに浸出液・出血・臭気・疼痛といった症状がでるようになります。
がんの潰瘍臭は鼻をつくような刺激性の強い臭いです。
舌がんの予防方法
舌がんの主な危険因子として喫煙・飲酒による化学的慢性刺激があげられます。
舌がんの予防のためにはまず飲酒・喫煙を控えることが重要ですが、がん全般の予防方法の基本であるバランスのよい食事をとることも大切です。
飲酒・喫煙を控える
たばこの煙には約70種類の発がん性物質が含まれており、アルコール中のエタノールとその代謝産物であるアセトアルデヒドにも発がん性があることがわかっています。
男性の口腔・咽頭がんと飲酒・喫煙の因果関係を調べた研究によると、がんになるリスクが飲酒で1.8倍・喫煙で2.4倍・飲酒と喫煙の両方で4.1倍に増えたそうです。
女性でも飲酒・喫煙の影響で口腔・咽頭がんになるリスクが上昇することが確かめられています。
たばこから立ち上がる副流煙にも発がん性物質が多く含まれるので、禁煙をおすすめします。飲酒に関してはアルコール量で1日23gビール大瓶1本)までとしましょう。
バランスのよい食事をとる
がん研究振興財団のがんを防ぐための新12か条には、予防方法としてバランスのよい食事をとることがあげられています。
野菜・果物はポリフェノール・ビタミンA・C・Eなどの抗酸化作用のある物質を多く含んでおり、がんの要因である活性酸素の発生や働きを抑える作用があります。穀類・肉・魚類だけでなく野菜・果物などバランスのよい食事を心がけましょう。
舌がんの生存率についてよくある質問
ここまで舌がんについて生存率・症状・予防方法などを紹介しました。ここでは「舌がんの生存率」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
舌がんのセルフチェック方法を教えてください。
渡邊 雄介(医師)
- 舌に硬いしこりがあるか
- 舌に出血しやすい部分があるか
- 舌に白や赤に変色した部分があるか
- 口臭がひどいといわれるか
- なかなか治らない口内炎や潰瘍がないか
日頃からセルフチェックし、早期発見につなげましょう。
舌がんは手術が必要ですか?
渡邊 雄介(医師)
舌がんの治療は手術が中心ですが、ステージ1・2で転移が認められない場合は、放射線治療のひとつである組織内照射を行う場合があります。どちらの場合も約30%の方は、治療後1~2年の間に術後頸部リンパ節転移が起こります。どちらを選択するかは主治医とよく相談して決めましょう。
編集部まとめ
舌がんの初期段階では症状が軽いため、口内炎と見過ごされやすいです。
しかしリンパ節転移の早いケースもあり、舌がんとわかったときにはかなり進行していたという例が少なくありません。
がんが進行すると、切除手術が広範囲になって体に負担がかかるだけでなく、生存率も低くなります。
舌がんを見過ごすことのないよう、なかなか治らない口内炎の場合は早めに医療機関を受診しましょう。
舌がんと関連する病気
「舌がん」と関連する病気は4個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
初期の舌がんは口内炎と見分けがつきません。白板症(白斑状のざらざらした病変)・紅斑症(赤色のつるっとした病変)は、将来がん化する確率の高い前がん病変です。口腔がんは上部消化管がん(咽頭がん・喉頭がん・食道がんなど)や、肺がんと重複することが多いことが知られています。
舌がんと関連する症状
「舌がん」と関連している、似ている症状は4個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- しこり
- 白斑・紅斑
- 痛み
- 出血
舌がんは口内炎と見過ごされやすいものです。これらの症状が長引いている場合は早めに医療機関を受診しましょう。