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「直腸がんが転移」しやすい部位はご存知ですか?転移後の自覚症状も解説!

 公開日:2024/04/30
「直腸がんが転移」しやすい部位はご存知ですか?転移後の自覚症状も解説!

直腸がんは日本人に多く発症する病気です。初期段階の自覚症状があまりなく、気付かず進行して転移に至る場合もあります。

転移と聞くと、もう治らないのではと不安になる方も多いでしょう。しかし、直腸がんでは転移しやすい部位がわかっており、治療方法も多く研究されています。

この記事では、直腸がんの転移の仕組み・転移しやすい部位・治療方法を解説します。見逃しやすい症状も解説するので、参考にしてください。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

直腸がんとは?

直腸がんとは、大腸のなかでも直腸に発生するがんです。大腸は、小腸につながる結腸と結腸から肛門につながる直腸からなります。この肛門側の直腸に発生するのが直腸がんです。日本人は、結腸の終わりにあるS状結腸のがんと直腸がんになりやすいといわれています。
大腸は、内側から、粘膜・粘膜下層・固有筋層・漿膜(しょうまく)下層・漿膜の5層が重なった構造です。粘膜に生じたがんは外側の層に向けて進んで(浸潤)していきます。大腸の周りには栄養する血管があり、血管に沿う形でリンパ節があり、大腸がんは大腸の壁を進み、腸管近傍のリンパ節に転移する可能性が高いです。
また、血液やリンパ液を通じて遠隔臓器に転移します。直腸は自律神経に支配される器官で痛みを感じません。
直腸がんの初期段階では、血便・便通異常・腹痛・腹部膨満・貧血などが起こります。しかし、大したことないだろうと見過ごしてしまう患者さんが多いのが現状です。その分、発見が遅れてがんの進行や転移が起こりやすくなります。早期発見のために健康診断を受けましょう。

直腸がんの転移について

直腸がんは初期症状があまりなく、発見が遅れるケースがよくある病気です。がんの進行に気付かず、直腸がんがほかの臓器に転移してしまうケースもあります。
直腸がんの転移形式は、血行性転移・リンパ行性転移・腹膜播種の3つです。

血行性転移

血液性転移は、血管を通じてがんが転移する転移形式です。直腸がんを含む大腸がんには2つのパターンがあります。粘膜に腺腫と呼ばれる良性のポリープが生じてこれががん化するパターンと、正常な粘膜に直接がん細胞が発生するパターンです。いずれの場合も進行すると、粘膜から粘膜下層・固有筋層・漿膜下層・漿膜へと進んでいきます。
この際、大腸の壁のなかの血管にも入り込み、血流を通じて体内のほかの臓器に運ばれて遠隔臓器への転移を引き起こすのです。転移によりがんがわかるケースもあります。

リンパ行性転移

リンパ行性転移は、リンパ液を通じてがんが転移する転移方式です。がんが進行すると大腸の壁のなかに進んでいき血管の周りにあるリンパ節にも達します。
リンパ節は、体内のあらゆるところにリンパ液を運ぶリンパ管の途中にある臓器です。そのため、リンパ節に達したがんがリンパ管を通じて運ばれ、遠隔臓器への転移が起こります。こちらも転移によりがんがわかるケースがみられるようです。

腹膜播種

腹膜播種(ふくまくはしゅ)は、大腸内に生じたがんが腹腔内にばらまかれるように広がる転移形式です。胃・小腸・大腸・肝臓・胆嚢などの消化器官や、卵管・子宮などの女性器は腹膜と呼ばれる細胞層でくるまれています。
大腸の粘膜に発生したがんは進行して大腸の壁に深く侵入して大腸の壁の外側に達すると、腹膜内に出てしまう可能性が高いです。腹膜内にがんが存在し、腹膜内の臓器へ転移するケースも多くあります。

直腸がんが転移しやすい部位は?

直腸がんはその転移方式から、リンパ節・腹膜・肺・肝臓に転移しやすいといえます。

リンパ節

1つめは、リンパ節です。直腸の壁の内側の粘膜に発生したがんは、壁のなかを進行し、直腸の壁のなかにあるリンパ節に転移する可能性があります。
リンパ節は、全身にリンパ液を運ぶリンパ管の途中にあり、血液循環に細菌などの不要な物質を入れないフィルターです。がんが転移すると、リンパ節がフィルターの役割をしてなかにとどまりますが、どんどん増殖します。
その結果、リンパ管を通じてほかのリンパ節に転移して全身に広がり全身への転移が起こりうるのです。

腹膜

直腸がんが大腸の外側に出てしまう腹膜播種を起こすと、腹膜への転移の可能性は高いといえるでしょう。腹膜にがんが転移すると、腹水・水腎症・激しい腹痛などのさまざまな症状を引き起こします。

肺も直腸がんが転移しやすい部位です。血流の流れが豊富な場所にがんが転移するケースが多くみられます。肺も血流の流れが豊富な場所です。後に解説する肝臓を経て転移したりリンパ節を介して転移したりします。

肝臓

肝臓も直腸がんが転移しやすい部位です。大腸の血流は、肝臓の門脈を経由しています。そのため、直腸で発生したがんの肝臓への転移がよくみられます
肺への転移は、肝臓と肺は肝静脈でつながっており、肝臓に転移したがんが肺へ運ばれるためです。

直腸がんが転移した場合の治療

腸がんが転移している場合の治療は、手術・薬物療法・放射線療法の3つです。これらの方法は、がんの状態によって選択されます。

手術

直腸は骨盤に囲まれた狭い空間にある臓器です。骨盤内には、女性なら膀胱・膣・子宮、男性であれば膀胱・前立腺などの重要な臓器があります。また、排尿や性機能を担う神経が多く通っています。
直腸がんの手術では、周囲の臓器や神経を温存するケースが多いです。そして、直腸とがんが転移した周囲のリンパ節を切除するリンパ節郭清(リンパせつかくせい)を実施します。
肝臓・肺などのほかの臓器に転移している場合、大腸に存在するがんを原発巣、転移しているがんを転移巣といいます。原発巣と転移巣の両方を取り切れる場合は、両方を切除する手術が実施されるでしょう。転移巣は取り切れない状態で、原発巣が原因で貧血・穿孔(腸に穴が開くこと)・腸閉塞などの可能性がある場合は、原発巣だけを切除します。
そして、切除が困難な転移巣に対しては薬物療法や放射線治療が一般的です。逆に転移巣は切除可能であるものの原発巣の切除が難しい場合は、切除以外の原発巣緩和手術・薬物療法の一種である化学療法・放射線療法などを実施します。

薬物療法

がんの原発巣や転移巣の手術での切除が困難な場合は、薬物療法が行われます。薬物療法は、がんを小さくして手術可能な状態にしたり、がんの進行を抑えて延命や症状を軽減したりするのが目的です。
また、手術後にがんが再発するのを予防するための薬物療法もあり、補助化学療法と呼ばれます。

放射線療法

放射線療法には、2種類あります。1つめは、根治を目指す治療です。転移や再発したがんでもその場にとどまっていれば放射線単独で治療する場合もあります。また、化学放射線療法と呼ばれる方法もあり、薬物療法と組み合わせる方法です。
放射線療法は、手術や薬物療法の補助療法としても実施されます。2つめは、緩和的放射線治療です。痛み・吐き気・嘔吐・めまいなどのがんの再発や転移に起因する症状を和らげる目的で実施されます。

直腸がんの転移についてよくある質問

ここまで直腸がんの転移について、転移しやすい部位・治療などを紹介しました。ここでは「直腸がんの転移」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

直腸がんが転移した場合には自覚症状が出るのですか?

中路 幸之助医師中路 幸之助(医師)

直腸がんが転移した部位に症状が出るでしょう。例えば腹膜に転移して進行した場合には、腹水が溜まる・大腸や小腸が狭くなるなどの状態が起こります。この場合の自覚症状は、腹部膨満感・腹痛・吐き気などです。肝臓の場合は、初期の自覚症状がほとんどありません。転移が進行すると、原発巣からくる症状やがんの進行に伴うだるさ・痛みなどの症状が出るでしょう。転移した肝臓のがんが大きくなると、体が黄色くなる(黄疸)・腹痛などの症状が出ることもあります。黄疸は自分でも確認できる症状ですので、注意しましょう。

転移が疑われる場合どのような検査を行いますか?

中路 幸之助医師中路 幸之助(医師)

転移の可能性がある場合は、転移が疑われる箇所のCTやMRI、PETーCTなどの画像検査を行います。肝臓への転移が疑われる場合、肺への転移の可能性が十分考えられるでしょう。そのため、肺に関してもCTやPETーCTなどの検査を実施して、転移の有無の確認をします。

編集部まとめ

今回は、直腸がんの転移を解説しました。転移しやすい部位や治療も解説したので、転移しても回復する可能性があると希望を持たれた方もいるでしょう。

直腸がんは初期の自覚症状があまりなく、気付かずに進行して転移してしまうこともあります。早期発見をして適切な治療を行えば、転移に至る可能性はかなり低くなります。

ご自身やご家族に気になることがある場合は、一人で悩まずなるべく早めに医療機関に相談しましょう。

直腸がんと関連する病気

「直腸がん」と関連する病気は4個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

これらの病気がある場合、大腸がんになる可能性が高いといわれています。定期的に検診を受けて早期発見をしましょう。

直腸がんと関連する症状

「直腸がん」と関連している、似ている症状は3個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

これらの症状がある場合、大腸がんの疑いがあります。早めに医療機関を受診しましょう。

この記事の監修医師